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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
2章 目指せSランクパーティー
74/129

#74 幸運の女神爆進!!鋸南町ダンジョン完全攻略

 9月19日(木)


「今日明日で完全攻略して、土日は遊びに行くぞ~」

「おー!」

「ふふっ頑張りましょうね」


 今日学校で話し合って、今週中に完全攻略したら土日月は休みにしようと決まった。

 月曜日は秋分の日の振替休日で休みなので、3連休にしようという事になったのだ。


 それを聞いていた雛のギャル仲間が、雛を遊びに誘っていた。

 ほのかも久し振りに友達を誘って遊びに行く事にしたらしく、今日の探索はいつもよりやる気になっている。


「出来れば今日中に57階層までは攻略してしまいたいな」

「りょうか〜い!まっかせて!」

「頼りにしてるよー」

「時間も勿体ないですし、探索を始めましょう」

「「お〜!!」」


 雛がやる気になると目的の物がすぐに見つかるのは、以前に実証済みである。

 今回も探索開始から僅か20分で次階層への階段が見つかった。

 更に40分程で57階層に降りる階段を見つける事ができ、探索予定時間を1時間残している事を考えると、ホントに57階層まで攻略出来そうな勢いだ。


「よ~し!順調順調!」

「この調子で宜しくお願いしまーす」

「57階層と言わず、もっと進んでもいいですよ?」

「頑張っちゃうよ~」


 そう言って階段から出た雛が、素っ頓狂な声を出した。


「ふぇっ!?」

「雛ちゃん、どしたのー?って、これー!」


 雛を追って階段から出た唯佳が、横を見て驚きの声を上げた。


 まさかとは思うけど、そう思ってほのかと一緒に雛達の所に移動した。

 そこにはやはり階段があった。


「取り敢えず、この階層から出て来た魔物を確認して、58階層に行こうか」

「そうですね」


 それから、近くにいたカモフラージュスカイジェリーフィッシュを4体倒し、通常ドロップとレアドロップを回収してから58階層に降りた。


 因みに、ジェリーフィッシュとはクラゲの事で、海や空の色に擬態しながらプカプカ飛んでいるクラゲの魔物だった。


 触手みたいな部分から麻痺毒と消化液が分泌され、意外と力も強く絡みつかれると厄介な魔物の様だった。


「何か50階層台の魔物って言っても、山中湖ダンジョンの時程は苦戦しないで来れたね~」

「山中湖ダンジョンの時は、慣れていなかった事と、レベルも少し低かったですからね」

「そだねー」

「俺達は、レベルが1上がるとそれ以上に強さが増すからな」

「そっか、ほのかっちのウィンドアーマーの性能も上がるもんね」

「ああ、だからほのかにもちゃんと感謝しないとな」

「そうだね~ほのかっち、いつもありがと〜」

「ほのかちゃん、ありがとねー」

「ふぇっ!?ちょ、ちょっと止めて下さい!当たり前の事をしてるだけですから」

「いや、助かっているのは事実だからな」

「そうだよほのかちゃん、助かってるよー」

「それにいつもアタシに拝んでるんだから、拒否はなしだよ~」

「うっ、そ、それは...」


 雛の一言に何も言い返せなくなったほのかが、怨めしそうに俺の事を見て来る。

 言い出したのは俺だから仕方ないが、間違った事は言っていないので気にしないでおこう。


 探索を再開した後も、雛の快進撃が止まらなかった事もあり、僅か50分で60階層までやって来ていた。


「時間的には帰る時間なんだけど、どうしようか?」

「ここまで来たんだし、完全攻略しちゃおうよ」

「さんせーい!」

「そうですね。今日の雛さんなら、すぐにボス部屋も見つけてくれそうですし、もう少し探索を続けましょう」

「分かった。じゃあ、雛頼むな」

「オッケ~」


 一旦転移陣で支部に戻り、女子達は直ぐ様60階層に戻って行った。


 俺はずぶ濡れのまま専属カウンターに行き、可憐さんにもう少し探索して来る事を伝えてから、転移陣で60階層に戻った。


 転移陣と59階層から降りて来る階段がある個室から出ると、水の中だったので水中を移動して行く。


 この階層から出て来た魔物は槍烏賊という、2m程の大きさのイカで、足の先が槍の穂先の様になっていて、10本の槍状の足を伸縮させて攻撃して来る魔物だった。


 更にヤリイカの曲に頭部分には硬い甲があり、防御力もあって、なかなか厄介な魔物だったのだが、俺達にとってはやはり苦戦する程ではなかった。


 水面に見えない天井があり、51階層の様な広場にも拘らず、完全に水没している階層を進んで行くと、大きな扉の前に辿り着いた。


 ジェスチャーで開ける事を伝え、みんなが頷いたのを確認してから扉を開けた。


 中にいたのは案の定イカの魔物だった。

 鑑定の結果


 〘クラーケン〙

 〘北欧に伝わる海の怪物〙


 凄く短い説明しかなかった。

 取り敢えず、伝える術がないので、倒して戻ってから伝える事にして、攻撃をする事にした。


 既に雛3人と雪兎が接近戦を挑んでおり、ほのかとエレンが魔法で攻撃を仕掛けている。


 瞬歩で俺も接近戦に参戦しようと近付いたのだが、時既に遅くクラーケンは光の粒子へと変わっていた。


 一先ずドロップアイテムを回収して、ボス部屋の奥にある転移陣に向かった。


 転移陣のある部屋はやはり、水のない空間になっていた。


「やった〜完全攻略だ〜」

「これで3連休だねー」


 転移陣のある部屋に入った途端、雛と唯佳がはしゃぎ出した。


「取り敢えず、一旦個室に戻って着替えてしまいましょう」

「そうだな。そうしよう」

「「は~い」」


 昨日と同様、自分達の個室に戻り着替えを済ませてから、ボス部屋の後ろにある転移陣の部屋に戻って転移陣で支部に戻って来た。


 俺達が転移陣から現れると、大きな歓声が響いた。


「完全攻略して戻って来た時のこの歓声って、何回聞いても気持ちいいよね~」

「私はまだ恥ずいよー」

「私も唯佳さんと同じで、まだ慣れませんね」

「まあ、その内に慣れるさ」


 ダンジョンを完全攻略すると、ダンジョンに変化が起こる。

 入り口のゲートと各階層を繋ぐ階段の色が黒から白に変わるのだ。

 その変化で、他の探索者やダンジョン協会の職員さんなどにも、ダンジョンが完全攻略された事が分かる様になっている。


 どうしてそんな風になっているのかは分かっていない。


 歓声を受けつつ俺達は専属カウンターに移動して来た。


「源さん、お願いします。1度でいいから食事だけでも付き合って下さい!」

「何度もお伝えしていますが、私にその気はありません。私の担当パーティーが戻って来ましたので、お引き取り下さい」


 専属カウンターでは、以前から可憐さんに猛アプローチを掛けていた北条さんが、懲りずにまたアプローチしている。


 俺達に気付いた可憐さんに退く様に言われ、こちらに憎々しげな目を向けて来たが、そんな目で見られても困る。


「可憐ちゃん、これよろしくねー」

「はい。あら、ここのボスはクラーケンだったのね」

「そだよー」

「可憐姉、有名なボスなん?」

「そうね。比較的よく聞くボスね」

「レアドロップのクラーケンの内円錐は、この階層のボスのレアドロップの割には、よく見掛けるアイテムですね」

「そうなんだー」

「じゃあ、このクラーケンの墨は通常ドロップなんだね~」

「そうね。高級インクの材料になるわ」

「えっ!?イカスミでインクを作るんですか?」

「ええ、イカスミって言っても、クラーケンの墨は普通のイカスミとは違って、食用には向かないし、臭みも一切ないのよ?」

「ヘ〜イカスミって生臭いイメージだった」

「ねー」


 そんな話をしながら、換金出来る物は換金して、新種の魔物のドロップアイテムは鑑定に回してもらう為に預けて、鋸南町支部を後にしようとしたのだが、北条さんに捕まってしまった。


「ちょっと待て!俺をお前達のパーティーに入れてくれ!」

「お断りします」


 俺は北条さんの頼みを、食い気味に断り唖然としている北条さんを置いて歩き出した。


 みんなも俺の後に付いて来たのだが、唖然状態から復活した北条さんが詰め寄って来た。


「な、何でだ!?歳もそんなに変わらないし、仲良くやって行けると思うんだよ」

「何をどう見たらそう思えるのか分かりませんけど、可憐さんに近付く為にうちのパーティーに入りたいっていうのがバレバレな時点でお断り案件です」

「い、いや、源さんに近付く為じゃないからな!?」

「仮に可憐さんに近付く為じゃないとしても、Eランクの北条さんがAランクパーティーに入れる訳ないじゃないですか。純粋に足手纏です」

「Aランクって言っても、俺よりも年下のお前達が、そんなに強いとは思えないんだが?」

「あなたがどう思っているかは知りませんけど、こちらとしては足手纏を受け入れるつもりはありません」

「そこまで言うなら俺の実力を見せてやるよ!模擬戦の相手をしろ!」

「ハァ〜こちらにメリットがありませんよ?」

「春斗っち、いいじゃん。アタシが分からせるよ」

「ハッ!何だよ自分じゃ怖くて戦えねえのか?」

「春く〜ん。私が戦いたーい」

「いえ、ここは私に行かせて下さい」


 何だか女子達が凄いやる気になっているんだけど、何でだ?


「いや、そもそも相手をする必要がないだろ?」

「ああいう輩には、1度分からせないと行けません」

「うん!ギタギタにしないと!」

「勘違い野郎にはキッチリ躾が必要なんだよ春斗っち」


 うちの女子達も一切引く気がない様なので、雛に任せる事にした。


「加減しろよ?」

「分〜かってるって」


 場所をダンジョン1階層に移して、雛と北条さんが向かい合う。


「何だか既視感があるな...」

「前にもあったねー」

「あの時も雛さんでしたね」

「そう言えばそうだったわね」

「バトルジャンキーだからな」

「「確かに...」」


 俺達がそんな話をしていると、向こうも話し始めた。


「俺が勝ったらそっちのパーティーに入れてもらうからな!」

「はいはい。こっちが勝ったら可憐姉含むアタシ達にこれ以上関わんない事。オーケー?」

「ああ、泣いて入って下さいって言わせてやる」


 お互いが勝った時のペナルティを確認したタイミングで、審判役の職員さんが開始の合図を出した。


 開始の合図と同時に、雛の影縛りで北条さんの動きは完全に封じられ、動けない北条さんの周りを3人の雛が取り囲み、手に持った木刀を北条さんの首筋に3本共突き付けた。


「な、何だよこれ!」

「審判さん、まだ終わりじゃないん?ホントに攻撃当てちゃうよ?」


 雛の言葉に、それまで固まっていた審判役の職員さんが我に返った。


「そ、そこまで!勝者クローバー桃井 雛さん」

「ちょ、ちょっと待てよ!3人掛かりなんて卑怯だぞ!お前、三つ子だったのかよ!」

「これはアタシの分身体だよ~」


 そう言って雛は、分身体を消した。


「分身体?えっ?消えた...?」

「約束通りもうアタシ達には関わんないでね。ほのかっち、デモンストレーションやっとく?」

「そうですね。じゃあ、この前と同じじゃつまらないので、エクスプロージョン!」


 ほのかの詠唱の後、離れた場所で大爆発が起こり、地面と大気が揺れ、熱風が通り抜けて行った。


「派手過ぎない...?」

「ちょっとやり過ぎちゃいましたかね?」

「ほのかちゃんすごーい!」

「ほのかっち、最強でしょ」

「ふふっ当たり前だけど、ますます凄くなってるわね」

「じゃあ、帰るか?唯佳、ここから転移で帰っちゃおう」

「はーい。転移」


 呆然とする北条さんと審判役の職員さん、それから見学者達を置いて、彼らの目の前から唯佳の転移で学校の支部へと帰って来た。


 鋸南町ダンジョンは完全攻略してしまったので、予定を1日早めて明日から4連休に変更した。

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「じゃあ、帰るか?唯佳、ここから転移で帰っちゃおう」 「はーい。転移」  呆然とする北条さんと審判役の職員さん、それから見学者達を置いて、彼らの目の前から唯佳の転移で学校の支部へと帰って来た。 え?…
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