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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
2章 目指せSランクパーティー
73/129

#73 順調な攻略

 9月18日(水)


 昨日の続きから探索を再開した俺達は、昨日と同じ様にほのかとエレンの魔法で魔物と水を押しやり、雛の言う方向に進んでいる。


 途中には幾つもドアがあって、開けてみたりもしたのだが、いずれも外に出る為のドアではなく、個室に繋がっているドアで、雛が興味を示さなかった為スルーして来た。


「スルーして来た部屋に階段があったりしないよね?」

「雛の勘に引っかからなかったんだし大丈夫だと思うぞ」

「雛さんの勘には実績がありますから、自信を持って下さい」

「そうそう、自信持ってー」

「うう~この先にちゃんと階段があります様に」


 俺達からの信頼が重荷になってしまっている様なので、何か別の方法も考えて上げるべきなのか、それとも雛自身が自分の運を信じられる様に持って行くべきなのか、ちょっと話をした方がいいかもしれないな。


 そんな事を考えながら30分くらい進むと、雛がドアを自分から開けた。


 そのドアは外と繋がっていて、広い通路とその向こうに別の建物が見えた。


 ほのかとエレンがそれぞれ別方向にレイジングストリームを放ち水を押しやり、その間に外に出て唯佳が結界を張った。


「この建物だけの階層じゃなかったんだね〜」

「中国のお城はいくつもの建物が敷地内に建っていたりするので、それを再現しているのでしょうね」

「それにしても、1つの建物が大き過ぎだよねー」

「何kmも同じ建物内を移動して来たからな」

「中国のお城の敷地内の建物って、1つ1つがこんなに広いん?」

「流石にここまで広くはないと思いますが、行った事はないのではっきりとは言えませんね」

「それで雛、今度はどっちに行くんだ?」

「う〜ん、あの建物が気になるけど、なくても怒んないでね?」

「怒ったりしないよ。雛の勘や運に頼っているのは、俺達からお願いしたからなんだし」

「そうですよ雛さん。私達から頼んでおいて、外れたからと雛さんを責める様な事はしませんよ」

「そうだよ雛ちゃーん。安心してー」


 俺達の言葉に安心したのか、雛の表情が明るくなった様に見える。


 雛が気になると言った建物の前まで移動してドアを開くと、中に次階層への階段があった。


「雛、自分の勘に自信を持っていいと思うぞ?」

「ここまで見事に当て続けているのですから、雛さんも自分の勘を信じて下さい」

「それに外れても、勘なんだから外れる事があるのが普通なんだし、気にしないで次の気になる方に行けばいいだけだよー」

「今までだってそうして来ただろ?」

「...うん。そうだね。そうしてみる」


 俺達の言葉に納得してくれた様で、雛が満面の笑みを浮かべ俺達に抱き着いて来た。

 いつも通り何故か俺が真ん中にされ、幸せな感触を感じられた。


 一頻り4人で抱き合った後、階段を降りて53階層を確認した。


 53階層もスタート地点は水中だったのだが、52階層と違い広い空間が広がっていた。

 上を覗くと屋根があり、建物内である事が分かる。


「今度は大きな広間みたいな所からのスタートみたいだな」

「中国の時代物の映画などで武将や文官の人達が集まって、軍議などをやっている場所みたいなイメージでしょうか?」

「じゃあ、何処かに玉座みたいなのがあるかもねー」

「あのね?アタシここを真っ直ぐ行った所が気になるんだけど」

「じゃあ、そっちに行ってみよう」

「はーい」

「分かりました」


 雛が言う方に進んで行くと、周りより少し高くなっている場所に、水から完全に出ている状態で、玉座の様な椅子が見えて来た。


「おー!玉座あったー」

「凄く立派ですね」

「中国の王様ってこんなおっきな椅子に座ってたんだ〜」

「いや、流石にでか過ぎるだろ...」


 近くまで行きそれぞれ感想を口にしたのだが、絢爛豪華な装飾の施された椅子の背凭れは、高さ5m程もあり、横幅も2mくらいある。


 いくら派手好きだったとしてもこんなに大きな椅子に座るものなのか?


「折角なんだし春斗っち座ってみ」

「雛が座ってみればいいじゃないか」

「ここはやっぱ、リーダーからでしょ」

「そうですね。その後で順番に座ってみましょう」

「さんせーい!」


 リーダーだからって、別に最初じゃなくてもいいんだけど、言い出したら聞かないから大人しく座るか。


「そうそう、大人しく座って座って」

「また、声に?」

「出てたよー」


 いつになったら直るのかな~などと考えながら椅子に座ると、椅子の後方で何かがずれる音が聞こえた。


「今の何の音だ?」

「椅子の後ろからだったよー」

「あっ!階段があるよ!」

「もしかしたら、この椅子に座る事で次階層への階段が出て来る仕掛けだったのかもしれませんね」

「だとしたら簡単な仕掛けだな」

「だよね~。こんなの座ってみたくなるもんね~」

「だねー」

「この階層から出て来た魔物も倒して、通常ドロップとレアドロップも手に入れられたし、さっさと先に進むとしようか」

「「「は~い」」」


 この階層から出て来た壷ダコという魔物も、ほのかとエレンの魔法であっさりと討伐出来た。


 正直、魔物の強さだけで考えれば、このくらいの階層なら苦戦はしないし時間も掛からない。


 階段を降りる前に順番に椅子に座って感想を言っていったのだが、全員一致で硬くて座り心地最悪との事だった。


 階段を降り54階層にやって来た俺達の前には、大きな屋根が見えているだけで、水は見えていない。


「あれ?水は?」

「今のところ見えないな」

「後ろには複数の建物が見えますけど、水に浸かってはいませんね」

「でも、水がないなら楽でいいねー」

「だね~」

「取り敢えず、どっちに進む?」


 俺が雛に進路を聞いたタイミングで、上空から魔物が襲って来た。


 間一髪のところで雪兎が撃退してくれ、事なきを得たが危ない所だった。


「春くん大丈夫!?」

「ああ、雪兎のお陰で無事だったよ。ありがとな雪兎」

「キュッ!」

「今の魚じゃなかった!?」

「トビウオみたいな羽が付いた魚でしたね」

「魚って事はやっぱり何処かに水があるって事か?」

「でも、こっちは水ないよー。あっ!ここに見えない壁があるよー」

「という事は、そこはエリア外という事ですね」

「だから水がないんか〜」

「じゃあ、やっぱりこの階層も水浸しになってるんだろうな」

「取り敢えず、いつも通り雛さんの勘に従って進みましょう」

「さんせーい」

「そうだな。雛どっちに行く?」

「うんとね~こっちかな〜」


 俺達はいつも通り雛を先頭に進んで行く。


 さっき襲って来たトビウオと陸上でも行動できるらしい壺ダコに何度か襲われたものの、陸上で戦える状況なので、楽に瞬殺して先に進める。


 この階層から出て来たトビウオは、風刃トビウオというらしい。

 トビウオの羽部分が風魔法のウィンドブレードで出来ていて、斬り付けて攻撃する事が可能。更に風魔法で攻撃して来るらしい。


 30分くらい進んだ所で、漸く水が見えて来た。


「やっと水が見えて来たねー」

「51階層のスタート地点から見えた広場みたいになっていますね」

「アタシの勘だともっと先に進んだ所に階段があると思うんだけど」

「なら、どんどん進もうか」


 雛の指し示す方に更に50分くらい進んだ所で、雛が止まった。


「多分、この辺だと思う」

「水中か、唯佳結界を張ってくれ」

「はーい」


 唯佳に結界を張ってもらい、俺達は水中に潜った。


 結界内にいた魔物を殲滅し、階段を探すが視界が悪く5m先までしか見えない。


 少なくとも結界内には階段がない事は分かったので、結界はそのままに一旦水上に顔を出し、打ち合わせをする事にした。


「視界が悪くてよく見えないけど、結界内に階段はなさそうだったな」

「そうだねー」

「この後はどう動きますか?」

「アタシが階段見つけて来るよ。この辺にあるって言ったのアタシだし」

「なら、俺と雛で階段を探して来るから、唯佳とほのかはこのまま結界を張った状態で水上で待っていてくれ、雪兎とエレンは2人の護衛を頼む」

「キュッ!」

「パオ!」

「分かりました」

「春斗っち、アタシだけで探してくるから、春斗っちもここで待ってていいよ?」

「いや、魔物の数も多いし一緒に行くよ」

「なら、みんなで行った方がいいんじゃなーい?」

「視界が悪い中、接近戦に慣れていない唯佳とほのかを連れて行く事は出来ない」

「そっかー...」

「唯佳さん、ここは大人しく待っていましょう」

「うん」

「雛、俺と雛3人は、見える程度の距離で広がって、同じ方向に進もうと思う。進む方向は雛が決めて、ジェスチャーで教えてくれ」

「オッケ~」


 打ち合わせを終え、俺と雛は水中探索を開始した。


 水中探索を始めてから20分くらいで、次階層への階段を発見出来た。


 俺は雛にジェスチャーで水上に上がる様に指示を出し、自分も浮上した。


「やっと見つかったね~」

「そうだな。雛、みんなを連れて来てくれるか?俺はここで待っているから」


 俺は離れた所に見える結界の方を向いて、雛に頼んだ。


「分かった。呼んで来るね」


 そう言うと、雛は目の前から消え、1分もしない内にみんなと一緒に戻って来た。


 全員揃ったので再度水中に潜り、55階層に降りる階段内に進んだ。


「今日は時間的にも終わりにしようか」

「「さんせーい」」

「そうですね。この先にある筈の転移陣で戻りましょう」


 55階層の転移陣を利用する為に階段を降りて行くと、水に浸かっていない小さな個室に出た。

 転移陣は階段横にあった。


「転移陣があるから水がないのかなー?」

「そうかもしれませんね」

「転移して来ていきなり水の中は、分かっていても嫌だしね~」

「そうだな」

「ねえ、春くん。一旦着替えに戻ってからカウンターに行ってもいい?」

「あっ!アタシもそうしたい!」

「そうですね。春斗くん以外の男性に、この格好を見られたくありませんからね」

「ああ、いいと思うぞ」


 という事で、学校の支部にある自分達の個室に転移して、着替えてからまた55階層に戻って来て、転移陣で鋸南町支部に戻って来た。


 装備を着けずに転移陣から出て来た俺達に、支部内がざわついたが気にせず専属カウンターに行き、可憐さんにドロップアイテムを渡し、帰路に就いた。


 因みに、50階層台に出て来ている魔物はいずれも新種で、換金までに数日掛かるので、今日は受け取れる物はなかった。

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