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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
1章 学校ダンジョン
48/129

#48 木村 ひなたの悲喜交交(ひきこもごも)

 8月20日(火)


 ノーブルローズ木村 ひなた視点


 ピンポーン


 インターホンを鳴らし待っていると、勢いよく玄関のドアが開いた。


「ひなたちゃんいらっしゃーい」


 出て来たのはエプロン姿の超絶美少女、同じ高校の後輩であり、私が所属するパーティー、ノーブルローズの恩人でもある白坂 唯佳ちゃん。


「こんにちは唯佳ちゃん。ふふっ相変わらず元気ね」

「えへへー元気だよー」

「唯佳ちゃん、玄関で喋ってないで入ってもらいなさい」


 家の中から、品の良い女性の声がした。


「あっ!はーい。ひなたちゃんどうぞー」

「おじゃましま~す」


 中に入ると、先程の声の主と思われる女性がいた。


「いらっしゃい。道具と材料は出してあるから、自由に使ってね。分からない事があれば、何でも聞いてね」

「あっ!はい。ありがとうございます」

「おばあちゃんありがとう。美味しいアップルパイ作るからねー」

「ふふっ楽しみにしてるわね」


 サラッとハードルが上がった気がする。

 廊下からリビングに入ると、唯佳ちゃんのパーティーのリーダー黒木くんが、ソファーに座ってサッカーを観ていた。


「木村先輩、いらっしゃい」

「黒木くん?何でここに?」

「ん?ここ僕の家ですから」

「えっ?じゃあ、唯佳ちゃんの家は?」

「私の家は隣だよーでも、大体こっちにいるけどねー」


 どうやら、2人は幼馴染で家も隣同士、小さい頃から唯佳ちゃんとお姉さんは、黒木くんの家にいる事が多く、今もほぼ黒木くんの家で寝泊まりしているらしい。


「ひなたちゃん、キッチンこっちだよー」

「あっ!うん」


 キッチンに案内され、お菓子作りを始める。


「唯佳ちゃんもお菓子作りするんだよね?」

「うん!偶にだけどねー」

「そっか、アップルパイは作った事ある?」

「前に1回だけあるよー」

「今日は基本的なやつを作ろうと思ってるんだけど平気そうだね」

「うん。たぶん大丈夫ー」

「まずは、オーブンを200度に予熱しておこうね」

「はーい」

「ふふっホントに妹が出来たみたい」


 一人っ子の私は、かわいい妹が出来たみたいでとても嬉しく感じる。


「じゃあ次は、お鍋にグラニュー糖を入れて、少し茶色くなるまで火に掛けようか」

「はーい」


 ここで焦がすと台無しになってしまうので、ちょっと真剣に色の変化に気を配る。


 その間に、唯佳ちゃんにりんごを剥いて、芯を取っておいてもらった。


 ゴムベラでかき混ぜながらいい感じで色づいて来たので次の工程へと進む。


「じゃあここに、りんごと無塩バター、バニラペーストとシナモンを入れて、りんごを煮詰めて水分を飛ばします」

「はーい」


 この工程でも、かき混ぜながら焦がさない様に気を付ける。


「このくらいでいいかな?」

「そだねー」


 煮詰めたりんごを、パッドに取り出して粗熱が取れるまで冷ます。


「冷めるまでの間に、クッキーを潰しておこうか」

「はーい。粉々にしまーす」

「ふふっ」


 りんごを冷ましてる間にクッキーを粉々に潰して、おばあさんが解凍してくれていたパイ生地を型に嵌めて、フォークで穴を空けて行く。


「それじゃあ、生地の上にクッキーを敷いて、その上に冷ましたりんごを乗せるよ」

「はーい。もうすぐ焼きだねー」

「そうだね~」


 生地にクッキーと煮詰めたりんごを乗せ、細長く切ったパイ生地を網目状になる様に乗せて行く。


 はみ出た部分は切り取り、溶き卵を生地に塗ったらオーブンヘ


「200度で20分焼いたら、180度に温度を下げて、また20分焼いて行こうと思ってる」

「はーい」


 取り敢えず、20分の間に使った道具を洗って行く。


 他所様の家のキッチンをお借りして、汚したままなんてあり得ないからね。


 鍋やパッド、ゴムヘラにまな板、包丁にフォーク、それにシンクも忘れずに洗い、三角コーナーと排水溝の所のネットも交換させてもらった。


 洗った道具を拭き終わったタイミングで、オーブンが止まった。


 使い慣れないキッチンだと、お片付けにも時間が掛かっちゃうな~


 オーブンの温度を下げて、再度焼き始める。

 片付けも終わっていたので、唯佳ちゃんに誘われるままリビングに移動した。


「いい匂いがしてきたわね。キッチンの片付けまでしてくれてありがとうね。いつもより綺麗になっていて嬉しいわ」

「あっ!いえ、使わせて頂いたのでこのくらいの事は当然です」

「ふふっいい子ね~」

「えへへーでしょー?」

「何で唯佳が自慢気なんだ?」

「友達が褒められたら嬉しいもーん」

「唯佳姉、お兄ちゃん友達いないから分かんないんだよ」

「いるわ!俺にだって友達くらいいるから!」

「はいはい」


 いつの間にかリビングにいた女の子、たぶん黒木くんの妹さんが、黒木くんにキツい一言を突き刺している。


「凛、まずは自己紹介くらいなさい」

「あっ!ごめんなさい。黒木 凛です。出来れば唯佳姉の妹って覚えて下さい。宜しくお願いします」

「えっ?あっ、はい。木村 ひなたです。宜しくね。凛ちゃん」

「凛ちゃんは、妹だよー。えへへー」


 唯佳ちゃんと凛ちゃんは仲が良いらしい。

 黒木くんが凹んでいるみたいだけど、兄妹仲は大丈夫なのかな?


「春くーん、ヨシヨシ。凛ちゃんも本気じゃないから落ち込まないでー」


 唯佳ちゃんが黒木くんを慰めている横で、凛ちゃんがテレビのチャンネルを変えている。


 ネットで映画を観るらしい。

 黒木くんがサッカー観ていたけどいいのかな?


 映画を観ながら話していると、オーブンが焼き上がりを知らせて来た。


 黒木くんは、スマホでサッカーを観ている様だ。

 何だか不憫だな~


「わーい。焼けたー」

「うん。いい感じに焼けてるね」

「うわ~いい匂〜い」

「ほんとね。お皿を出すわね」

「あっ!ありがとうございます」

「5人分に切り分けるよー」

「飲み物はアイスティーでいいかしら?温かいのが良ければ、すぐ淹れるわよ?」

「私は冷たいのがいい〜」

「私もー」

「じゃあ、私もアイスティーでお願いします」

「俺も冷たいので」

「分かったわ」


 アップルパイを切り分け、おばあさんがアイスティーを淹れてくれ、全員が席に着いて食べ始めた。


「美味しい〜」

「うん。丁度いい甘さで美味しいねー」

「ほんとね。お店で買って来た物ですって言われても信じちゃうくらい美味しいわね」

「いや、ホントにそのレベルだね。美味いな」

「よかった~喜んでもらえて嬉しいです」

「あとでレシピを教えてもらえる?」

「はい。勿論」

「今日使ってたグラニュー糖、何かこまかかった様な気がしたよー」

「そうなの?」

「微粒子グラニュー糖っていうのを使ったんです。だから、普通のグラニュー糖よりも細かったんです」

「そういうのがあるのね。お菓子作りはあまりやらないから知らなかったわ」

「普通の料理には、あまり使わないですからね」


 おばあさんと唯佳ちゃんと3人で、お菓子作りや料理の話で盛り上がってしまい、気付いたら17時半を過ぎていた。


「あら?もうこんな時間なの?夕飯の支度をしないとだわ」

「あっ!すみません。すぐに片付けますね」

「ああ、いいわよ。それよりも、ひなたちゃんも夕ご飯食べて行かない?あっ!でも、ひなたちゃんのお家でもご飯作って待ってるわよね?」

「この時間なら、まだ作っていないと思いますけど、ご馳走になってしまっていいんですか?」

「うちは全然問題ないわよ」

「じゃあ、ちょっと連絡してみます」


 お母さんに連絡して夕ご飯をご馳走になって帰ると伝え、おばあさんと電話を替わってお母さんからもお礼を伝えてもらった。


 その後、黒木くんのご両親と唯佳ちゃんのご家族もやって来て、賑やかな夕餉ゆうげの時間が過ぎて行った。


 黒木家と白坂家は毎日一緒に夕ご飯を食べているらしい。

 唯佳ちゃんと凛ちゃんが本物の姉妹みたいに仲が良いのも納得だし、唯佳ちゃんのお姉さんと黒木くんや凛ちゃんも本物の兄弟姉妹みたいに仲が良かったのも同じくらい納得出来た。


 あと、黒木くんのお父さんがあの、剣鬼だったのは驚いたな~


 私達ノーブルローズは、10ヶ月くらい富士森公園ダンジョンに通っていたから、先輩達から嫌という程どれだけ怖いか聞かされている。


 「絶対に逆らうな、目を付けられる事すらするな」と言われ続けた相手が目の前にいる。


 緊張で固まった私に、剣鬼が送ってくれると提案してくれた。

 断る事も出来ず、家まで送ってもらった。

 救いは唯佳ちゃんが一緒に来てくれた事。

 話し相手がいて良かったよ~


 でも私、剣鬼に顔覚えられちゃったよ~

 みんなごめん!でも、悪い印象は与えてないと思うから許してね。

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