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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
1章 学校ダンジョン
47/129

#47 海野 紗奈の不安

 8月19日(月)


 海野 紗奈視点


「取り敢えず、ここから電車で3時間圏内で候補を絞ってみたわ」

「3時間て、結構な範囲ですね」


 昨日から3連休中の筈の源先輩と、私が源先輩の専属代理を務めるクローバーのリーダー春斗くんが、地図を見ながら相談している。


「初めて行く時は電車移動だけど、2回目からは唯佳ちゃんの転移で行けるから、少し遠目のダンジョンも候補に入れさせてもらったわ」

「確かに、俺達は2回目からは楽ですけど、可憐さん達はどうするんですか?」

「私達は引っ越して向こうに住む事になるわね」

「なるほど」


 どうやら私は引っ越すらしい。

 一応東京23区生まれの私は、近くに何でも揃っている環境で育って来た。

 今の職場は東京都内だけど、郊外の為か周りにお店が少ない。

 徒歩圏内には、コンビニ1軒と中華屋さんはあるけどそのくらいしかない。

 ここでも最初の頃は不安だったのに、今度行くのは過疎地域にあるダンジョンらしい。

 まあ、過疎地域と言っても、限界集落みたいなホントの過疎地域という訳ではないみたいだけど、それでも不安だ。


「山中湖ってこんなに時間掛かるんですか?」

「電車だと掛かるらしいわ」

「車だと1時間ちょっとだったと思うんですけど...」

「高速使うとそのくらいみたいね」

「そもそも山中湖って探索者少ないんですか?」

「山中湖のある山中湖村の人口は、去年の統計で約5,000人、山中湖村のある南都留郡の人口は約50,000人なんだけど、同じ南都留郡内の河口湖の方にもダンジョンがあって、人が集まらないらしいのよ」

「河口湖の方が人口多いんですか?」

「ええ、はっきりとは覚えてないけど、4〜5倍は多かった筈よ」

「なるほど、あの辺りは昔、家族と唯佳達とでよく行っていたので、楽しかった思い出があるんですよ。なので、力になれるのなら力になりたいですね」

「じゃあ、山中湖ダンジョンに行くって事でいいかしら?」

「女子達が着替えから戻って来てからになりますけど、俺は山中湖ダンジョンに行きたいですね」

「分かったわ」


 どうやら山中湖ダンジョンに決まりそうだ。

 人口5,000人の村か〜でも、観光地だしお店とかも多いかな?あっ!観光地ってお店が閉まるの異常に早かったりするけど、お仕事終わる時間には閉まってたりしないよね?流石にコンビニは閉まらないよね?うう~凄く不安だよ~


「紗奈ちゃん、どうしたの?」

「えっ?あっ!いえ、何でもないです」

「そう?何かあれば、紗奈ちゃんも意見を出していいんだからね?」

「はい」


 こんな個人的な悩み言えないよ~

 代理とはいえ専属担当の1人の私が、探索者のやる気を削ぐ様な事は言えない。


 しかも春斗くん達は、一昨日50階層のダンジョンを完全攻略して、Bランク探索者になったとはいえ、まだ16歳の高校1年生達だ。年上の私が足を引っ張りたくはない。


 でも、不安なものは不安なのだから仕方ない。

 私は、高校卒業後すぐにダンジョン協会に就職した。


 源先輩の様な探索者経験はなく、一般枠で採用された。


 普通一般枠で採用された職員は、事務などの裏方に回る事が多く、受付など表に出る事はない、それは探索者がクレームを言ってきたりした時に、暴力を振るわれる可能性も考慮して、探索者経験のある職員が対応出来る状態を維持する為でもある。


 だから私も事務職として採用された筈だった。

 なのに、初日に緊張しながら出勤した私は何故か受付に立っていた。

 急遽1人辞めてしまい、その代わりに私が選ばれたらしい。何でかは分からない。


 不安で不安で堪らなかったけど、それでも一生懸命働いた。


 3年間頑張っていたら、仲の良い探索者も出来たし同僚や上司からも評価してもらえる様になった。


 そんな時に、今の支部へと異動になった。

 支部の周りは、私が育ってきた環境と比べて不便で、また不安で不安で堪らなくなったけど、源先輩はそんな私の事を専属代理に抜擢してくれた。


 前所属支部での評価と短いながらも一緒に働いてみての源先輩の評価で選んでくれたらしい。嬉しかったな~


 源先輩は優秀な事で近隣の支部でも有名な人だった。

 そんな人に評価してもらえるなんて思っていなかった。


 専属担当のクローバーもみんな礼儀正しくて明るいいい子達だったし、春斗くんと唯佳ちゃんのご家族とは、飲み友達レベルで仲良くなった。


 凄いスピードで、どんどん攻略階層が進んで行く彼らを心配した時期もあったけど、その心配は杞憂に終わってくれた。


 ここのダンジョンを完全攻略した彼らから、転籍する事にしたと聞き、専属代理もお役御免だと思い、少し寂しく思っていた私に源先輩が、


「クローバーの転籍先が決まったら、住む家を急いで見つけて、私達の異動手続きと引っ越しを終わらせないといけないから、ちょっと忙しくなるわよ」


 と言ってきた。


「私達?」

「ええ、私と紗奈ちゃんは、クローバーの転籍先に異動する事になると思うわ」


 代理の私も一緒に行けると聞いて凄く嬉しかった。でも、行き先が所謂過疎ダンジョンだなんて聞いてないよ~


 そんな事を考えていたら、着替えていた女子メンバー3人が、更衣室から出て来た。


「おっまた〜」

「すみません。遅くなりました」

「2人が私のおっぱい揉んで来るからでしょー!もう!反省しなさーい!」


 どうやらまた、唯佳ちゃんの胸を揉んでいたらしい。ホントに仲がいいわねこの子達。

 

 私も最近狙われてる気がするから、唯佳ちゃんの気持ちがよく分かるんだよね~


「おっ?なになに?山中湖に丸付いてるけど、今度は山中湖に行くん?」

「まだ、本決まりじゃないけどな」

「山中湖って昔よく行ったあの湖?」

「ああ、その湖だよ。まあ、河口湖とか奥多摩湖とかもよく行ったけど」

「お二人の思い出のある場所なんですか?」

「ああ、それで第一候補にさせてもらっちゃったんだけど、どうかな?」

「アタシはいいよ~」

「私も構いませんよ」

「私もー」


 これで山中湖に決まりの様だ。


「アタシ達が山中湖に潜る様になったら、可憐姉と紗奈姉はどうすんの?」

「さっき春斗くんにも言ったんだけど、引っ越して向こうに住む事になるわ」

「そうなのー?私が転移で送ってあげるよ?」


 !?その手があった!って、ダメダメ。そんな面倒を掛ける訳には行かないわ。

 そう思っていると


「あら、本当にいいの?」

「うん!」

「助かるわ~引っ越すにしても、今の所も借りたばかりだから、色々と面倒なのよね~。だから引っ越さなくていいのなら助かるわ」


 あ、あれ?源先輩?いいんですか?確かに私も借りたばかりだから助かりますけど。


「じゃあ、朝の7時50分にここに来るから、送ってもらえる?」

「はーい」

「紗奈ちゃんもそれでいいかしら?」

「えっ、ええ、私はいいんですけど、唯佳ちゃん迷惑じゃない?」

「全然迷惑じゃないよー」

「じゃあ、決まりね。唯佳ちゃんよろしくね?」

「はーい」


 引っ越し先の住環境を不安に思っていたけど、引っ越さなくてよくなってホッとしてしまった。


 唯佳ちゃんホントにいい子だよ~


 その後の話し合いで、夏休みの間に山中湖以外にもいくつかのダンジョンに行って、唯佳ちゃんが転移出来る所を増やしておく事になった。


 移動は結局、源先輩がレンタカーを借りて同行するらしい。


 私もお手伝いしたいけど、運転免許を持ってないので役に立たない。


 運転免許取ろうかな~身分証にも使えるし、持ってて損はしないかな~?でも、高いんだよね〜、どうしよう〜


「あっ!そうだ!ばあちゃんが美味しいお酒が買えたから、可憐さんと紗奈さんを今日夕飯に誘いたいって言ってたんですけど、予定空いてますか?」

「空いてる空いてる。美味しいお酒って何かしら〜」

「さあ、そこまでは聞いてないです」

「私も空いてるよ」

「じゃあ、2人共行けるって連絡しておきますね」

「じゃあ、みんなで帰ろっかー」

「そうですね。今日もお邪魔しますね。春斗くん」

「よろしくね~春斗っち」


 悩みは色々あるけど、今日も美味しいご飯を食べられそうでよかった~

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