#31 狙うは2億
「じゃあ、戻って換金してしまいましょう」
「可憐さんその前にちょっといいですか?」
「ん?何?」
「ほのか、ド派手で高威力の魔法をあそこら辺に撃って威嚇しとけ」
「ふふっはい。アイシクルステイク!!」
以前〝ダンジョンの気まぐれ〟で現れたマーダーグリズリーを倒した魔法だが、威力はあの時の比ではなかった。
5mはあろうかという巨大な氷柱が空中に現れ、地面に襲い掛かった。
大きな地響きを轟かせ、地面を揺らしたほのかの魔法に、戻ろうとしていたギャラリー達は唖然としている。
「模擬戦の相手が私なら、これを試してみたかったんですけどね?」
にこやかな表情で恐ろしい事を言うほのかを、絡んで来た先輩達が、顔を青褪めさせて呆然と見つめる。
「まあ、私の相手が唯佳さんなら、この魔法の威力でも守りは抜けないでしょうし、その間に負けちゃいますけどね」
「えへへー」
ほのかの発言と自慢気な唯佳の表情で、真実と思ったのか、唯佳を畏敬の念の籠もった視線で見つめるギャラリー達。
実際にあの威力の魔法でも、唯佳の結界は止めきれるだろう。ただし、横からの攻撃ならばだ。
結界は、かなりの高度まで展開されている様だが、屋根の様な物はない為、上から降ってくる物には対応していない。なのでアイシクルステイクの様に、上からの攻撃は止められない。
まあその攻め方をするには、ほのかの様に魔法を相手の真上で発動させなければならず、それが出来るなら、唯佳の眼の前で発動させても変わらないだろうから、そういう相手には結界自体無意味という事になる。
「ほのかちゃんのいいデモンストレーションになったわね。それに、その後の発言のお陰で、唯佳ちゃんの評価も上がったわ」
「ハハッあの発言は事実なので、嘘偽りのない感想ですよ?」
「唯佳っちの結界があれば、中からほのかっちが魔法撃ちまくるだけで、余裕で勝てるしね~」
「でも、その私達2人の出番はあまりないんですけど?」
「うんうん。2人が接近戦ですぐに殲滅しちゃうもんねー」
「流石は専属付きのパーティーね」
俺達の狙って行われた会話を聞いていたギャラリー達が、唯佳だけではなく俺達全員に、先程以上の畏敬の念の籠もった視線を向けている。
これで、下手に絡まれなくなるといいんだけどな。
そんな事を思いながら、ダンジョンから出るのだった。
「さて、改めて換金しちゃうわね。この後は、春斗くんのお家にお邪魔するんだしね」
「はい。お願いします」
「おばあちゃんには、遅れるって連絡しておいたよー」
「ありがとう唯佳」
「はーい」
「雪の結晶が312個、レアドロップのパンテラ・アンシアの毛皮が1個、合計で689,700円ね」
「よ~し、換金も終わったし着替えて帰ろ〜」
「おー」
「はい」
「雛?帰ろ〜じゃなくて、行こ〜だろ?」
「いいのいいの〜」
わいわい言いながら、更衣室に向かい、着替えて可憐さんと紗奈さんと合流した俺達は、俺の家へと向かった。
「今日も泊まるのか?」
「もっちろ〜んそうだよ~」
「ご迷惑ですか?」
「いや、いいんだけどな?家の人は心配していないのか?今月だけでめちゃくちゃ泊まってるだろ?」
「うちは大丈夫だよ~迷惑じゃないかは心配してたけどね~」
「うちも同じですね」
「ふふっ今日は、美味しい地酒を手土産に用意しちゃったわ。琴子さん達喜んでくれるかしら?」
「私はおつまみ用意しました。間に合ってよかったです!」
年長組の2人は、今日も飲む気満々だな。明日も仕事でしょ?飲み過ぎないでね?
「「ただいま〜」」
「「「「お邪魔しま〜す」」」」
「2人共おかえり、皆さんもいらっしゃい」
「琴子さん、これ美味しい地酒を買って来たので一緒に飲みましょう?」
「あら?いいわね。ありがとう」
「琴子さんこれ、昨日釣ったイカを沖漬けにしたのでおつまみで食べましょう?」
「紗奈ちゃんが自分で釣ったイカで作ったの?凄いわね」
「えへへ~」
「何だか女として負けた気がするわね...」
「おばあちゃん、お風呂入っていい?」
「ええ、入ってらっしゃい」
「雛ちゃん、ほのかちゃん行こー」
「お〜!」
「はい」
「ゆきくんも行くよー」
「キュッ!」
唯佳達3人が雪兎を連れてお風呂に行った。
着替えを終えリビングに行くと、大人の女性陣がお酒の試飲会?をしていた。
量が試飲会の量じゃない気もするけど。
「これ美味しいわね」
「ほんとですね。口当たりが凄く滑らかですね」
「果物みたいな甘さがありますね〜美味しい〜」
「気に入ってもらえて嬉しいな~」
「軽く酸味みたいなのも感じますね~美味しいです〜」
「あら、紗奈ちゃんよく分かるわね?」
「味覚には自信あるんです〜」
「可憐ちゃん、これ何ていう銘柄なの?」
「奈良にある酒造会社の〝みもろ杉純米吟醸火入〟っていう銘柄です。漢字で〝三諸杉〟って書いてあるのもあります」
「同じ物なの?」
「私も最近日本酒に嵌って知ったので、同じかどうかは分からないですけど、製造元は同じ会社ですよ」
「こっちでも買えるのかしら?」
「売ってるお店もありますし、ネットでも買えますよ?」
「じゃあ今度探してみますね、お義母さん」
「お願いね。香代さん」
「智佳姉、お酒って美味しいのかな~?」
「私も飲んだ事ないけど、美味しそうに飲んでるから美味しいんじゃない?」
「智佳は、来年には一緒に飲めるわね」
「ふふっ楽しみだわ」
「私もおばあちゃんとお酒飲めるの楽しみだよ〜」
わいわいとお酒を楽しんでいる(一部を除く)女性陣に対し、父さん達は、静かにサッカーを観ている。
今日は、いわきの試合か?下田は出てるかな?
父さん達、見逃し配信で観ている事が多いから、いつの試合か分かりづらいんだよな~
「春くーん、お風呂空いたよー」
「ああ、入ってくるよ」
今日は誰の邪魔も入らず、リラックスしてお風呂に入れた。
「そうだ。春斗くんゴーレムコアⅡでやりたい事があるって言っていたけど」
「ああ、この後やりますけど、融合してるんです」
「春斗、融合って何だ?」
「ん?アイテム融合っていうスキルで、見せた方が早いか。唯佳」
「はいどうぞ」
「ありがとう。こうやって2つのアイテムを融合させて、1つのアイテムに出来るスキルなんだ」
「今のはゴーレムコアか?錬金術とは違うのか?」
「うん。錬金術は、例えば鉄のインゴットから剣を作ったり出来るでしょ?物の形を変えてさ。でも、アイテム融合は2つのアイテムを融合させられるだけで、必ずどちらか片方の形は維持したままなんだ。どちらの形を維持するのかは、任意で選ぶ事が可能だよ?」
「なるほどな。融合した物はどうなるんだ?ただ、数が減るだけでは勿論ないんだろう?」
「基本的には、元々融合した物が有していた能力も融合されるけど、融合すると新しい能力が発現する事もあるしう~ん、アイテムが成長する事もあるっていう感じかな?」
「成長?」
「うん。今、融合させたゴーレムコアⅡだけど、これ今はゴーレムコアⅡ★☆☆っていう感じになってるんだ。鑑定で判るよ?」
「源?」
「はい。鑑定の結果、確かに」
「それで、これに融合を重ねるとゴーレムコアⅢになる」
「はっ?」
「そういう反応になりますよね~」
「源?お前は知っていたのか?いやまあ、専属だから知っていてもおかしかないが」
「ええ、以前に武器を融合させるのは見た事があるので」
「アイテムってそうか、武器も含まれるのか」
「うん。俺達が使っているのは、融合して出来た武器だよ」
「それで春斗、さっき源が言っていたお前のやりたい事っていうのは、ゴーレムコアⅢを造る事っていう事か?」
「ううん。続きがあるんだ。これをこうして行くと」
そう言って作業を続けた結果、手元には3つのゴーレムコアⅣと1つのゴーレムコアⅢ★★★★★☆☆、1つのゴーレムコアⅡ★☆☆が残った。
「それで、これが昨日造ったゴーレムコアⅣだからこれも合わせて、手元にはゴーレムコアⅣ★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆が1個とゴーレムコアⅢ★★★★★★☆が1個、ゴーレムコアⅡ★☆☆が1個になった」
「「「.....」」」
父さんと可憐さん、紗奈さんが固まっている。
「どうしたの?」
「いや、どうしたの?ってお前、今融合したゴーレムコアⅣは、1000万円の換金額のアイテムだぞ?」
「「はあ〜〜〜!?1000万円!?」」
「うん。知ってるよ?でもゴーレムコアⅤを造るには、仕方ないんだよね~」
「お兄ちゃん!?馬鹿なの!?ううん、馬鹿だわ!3000万円が消えてなくなったんだよ!?分かってるの?馬鹿兄!!」
「そうだよ春斗?間違っちゃったならお姉ちゃん慰めてあげるよ?」
「いやいや、ゴーレムコアⅤになれば、2億円だからね?」
「「2億〜〜〜!?」」
「1日2、3個ペースだから、あと5日位で出来ると思うんだよな~」
「頑張ろうね春くん!」
「2億だ〜頑張るぞ~」
「そうなれば、資金にも余裕が出来ますね」
やる気を見せるパーティーメンバーと
「「「「「「「「「.........」」」」」」」」」
唖然とするその他一同
「キュッ?」
よく分かっていない雪兎という、カオスな空間が出来上がった。
「この話はこれくらいでいいとして、ばあちゃん、旅行の宿って取れたの?」
「えっ?ええ、全員分予約出来たわよ?10月12日から2泊3日よ。予定は入れないでね?」
「うん。分かった」
その後は旅行の話となり、リビングに賑やかさが戻った。
可憐さんのお土産のお酒の名前は、一文字変えてます。
わざとなので間違いではありません。




