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Y・Hファイル  作者: 白百合リーフ
林堂 友理サイド
24/29

第24話 「野良猫達の定め」

夏休みも終わり、始業式が始まって

かれこれ2週間もの時が過ぎていった頃、

仁川市だけでなく国全体が寝静まった真夜中だった。

立ち入り禁止区域にある住宅街。

その1つの家に近付き、

みるみる内に恋花の部屋が映し出され

大きなシングルベッドの布団の上で

1匹の猫が体を丸めて眠っていた。

恋花「スゥ〜……はぁ…スゥ〜……はぁ…スゥ〜

ムニャムニャ。

んん〜……ふふふ♪奏太、おはよ〜…スャ……」

ニコニコと楽しそうな目で寝返りを打ちながら

恋花は、寝言を口にしていた。


時を同じくして・・・


頭の中がザッザーという砂嵐に襲われたと同時に

暗い視点に切り替わる。

それは、誰かと誰かが空き地を走っており

何かを喋りながら女性らしき人が

ポケットから手鏡を取り出してきたのだ。

すると次の瞬間、

手鏡を受け取ったもう1人が不思議な力を使って

鏡から控えめな白い光を放ち続々と猫の群れが

その光へと飛び込んで行った所が映し出される。

パチッ!!・・・

陸「んん〜…………ハッ!

かな…た???(汗)

な、何かの間違え……だよね?あはは………

うん。今日は、寝よう!!おやすみっ!」


翌朝・・・

陸「……だあぁぁぁ〜め、だったぁ(涙)」

母親「こら、陸!

朝ご飯、早く食べてさっさと行って来なさい」

陸「は、はいぃ。もぐもぐもぐ(汗)」

食パンをムシャムシャと口いっぱいに頬張り、

4本足を素早く動かしながら

しょぼしょぼな目で洗面所へと行き、

歯磨きをした。

陸「シャカシャカシャカ、カッカッカッ。

ガララララ………ピシャ!ガラガラガラララ……」

洗濯カゴを脇に挟みながら

ハンガーを取りに洗面所へ入って来た母親が、

驚いた顔で陸にこう言った。

母親「ちょっとぉ、陸…まだ家に居たの?!

……ペッ!!なんか悪いですか?(ジト目な陸)

悪いも何もアンタ、昨日の夜に

急に日直があるから早く起こしてくれって

言ってたじゃない!」

陸「ふ〜〜〜ん。

・・・あっ、そそういえば、そうじゃーん!?

アンタ、昨日の今日で忘れ過ぎよ(呆れる母親)

じゃあ行って来る!」

母親「あ、ちょっと待ちなさい。

陸、口の周りにまだ付いてるわよ」

陸「んんっ???」

と母親に言われるまま、洗面台の鏡を覗き込むと

口元には歯磨き粉の泡が付いていたのだ。

陸と比べると母親の方が断然高いせいか、

前足の膝だけを(かが)ませポケットに入れて置いた

ハンカチを取り出し、拭き取ってくれた。

母親「はい、これで大丈夫♪

ほら日直は今日1日だけなんだから

頑張って来なさい!!」

陸「う、うん(照)行って…来ます」

母親「いってらっしゃい」

家を出てすぐ陸は、4本足を上手く使って

住宅街を風のように駆け抜けて行く。

陸「……ってぇ〜

僕は、朝から何やってるんだ!!!!!!

(昨日の夜見た予言は、一体何だったんだろう?

奏太と誰か…女の子と一緒だった。

もしかして彼女?!

でも奏太って女の子と関わってる所、見た事…無い。

えっ、ええぇ……えっと(汗)

とにかく奏太に直接、聞いてみよう!」

加賀江市の長い住宅街ロードを走って行ったのだった。


一方・・・

同じくして校門前に丁度、到着した奏太は

陸がそんな事を考えているとも知らず、

門を潜ろうと足を踏み込んだ時だった。

聞き覚えのある声が近付いて来たのだ!!

恋花「かーなーたーーー!!!!!!

んっ?(奏太)

お・は・よ・う☆☆☆」

と言って奏太の背中に抱き付こうとした所、

一歩手前くらいでコケてしまい

半ば強引に頭突きする形となってしまったのだ。

その(かん)、奏太は訳も分からず

顔から地面に落ちたのであった。

恋花「アイタタタッ、あれ?奏太は???」

奏太の背中に乗っかっていた恋花は、

頭をぶつけただけでそこまでじゃなかった…が。

奏太「恋花………お前ぇぇぇ!!!!!!(怒)」


保健室にて・・・

パステルカラーのグリーンカーテンの側で

丸い椅子に座らされていた奏太は絶賛、治療中。

奏太「……イッ、タタタ(汗)」

鬼塚「はい、あんまり動かないのぉ〜

全く、あなたはいつになったら

保健室離れ出来るのかしらねぇ???」

奏太「知らねぇよ!

そもそも今回の原因は全部、恋花のせいだ。

俺だって来たくてここに来てないっつうの(汗)」

恋花「いやぁ〜それ程でも☆」

2人「褒めてない( ねぇ)わよ!!」

鬼塚「あなたも大変ね、あら?

もうすぐ…授業が始まるわね。

とっとと済ませましょう、

()みると思うけど我慢なさい。止めないから」

奏太「アタタタ、イデデェ(涙)

少しは手加減しろって言ってんだろぉぉぉ!」

恋花「う〜ん。奏太、まだなの〜?

(あたし)達、これから体育なんだけど

ホームルームが終わったらすぐに着替えないと〜」

奏太「だ・か・ら!!

お前のせいでこうなってんだよ?!

うぃぃぃ……イタイ、イタイイタイ!(涙)」

鬼塚「我慢なさい。

これくらい、もう慣れっ子でしょう?

ただでさえあなたは、

学校に来る度に傷が増えてるんだから」

奏太「ば、バカッ!!

恋花の前でその話すんなってあれ程〜(焦)

平気よ、もう居ないから(鬼塚)

へっ???そうなの?

アイツ…いざ、居なくなれば居なくなる程、

無性に腹立つな(怒)

元々は、アイツのせいで

こうなったっていうのによっ!」

鬼塚「相変わらず、喜怒哀楽激しいわね。

あの子だけは、あなたにとって特・別だものね♪」

と鬼塚が、ほんの少し奏太を茶化したつもりが

裏目に出たのか一気に顔をバッと真っ赤にさせて

強く反論してきた。

奏太「はぁ?!ち、ちげぇし……

俺があんな奴の事が、好きな訳ねぇだろ(恥)

耳腐ってんじゃねぇのクソババァ」

鬼塚「あっ?(怒)

誰がクソババァだ?このクソガキィィィ!」

奏太の頭を鷲掴み、

ガッコン!!という鈍い音が鳴り止む頃には

椅子から崩れ落ちており、奏太は白目剥いた目で

頭にはおっきなタンコブが出来ていたのだ。

奏太「ぼ、暴力…反対……ガックシ(汗)」

鬼塚「ガキがしゃしゃり出るからこうなるのよ(怒)」

陽花「何をどうしたら、そうなるんですか?

鬼塚先生、また生徒に暴力ですか(汗)」

鬼塚「はっ、ハルちゃん?!

やめて下さい、その呼び方(即答する陽花)

こ、これは〜………違うのよ。

それにまたっていうのも少し語弊があるのだけど〜」

陽花「そうね。

結構前にあったものは、患者の暴走を

鎮静化させる為の…ただの処置だったわよね♪」

鬼塚「何で……笑ってるんですか?(震)

ホントですよ!?

確かに、その場にハルちゃんは居なかったわ!

けど現に患者が暴れ出したのは、

昔も今も現在進行形だっただ・け・でぇ〜(汗)」

陽花「もう少しマシな言い訳は、無いんですか?

昔はそうだったとしても

今回は、私がこの目で目撃した事は事実であり

そ・れ・にこんな事、他の先生にでもバレたら

もうこの学校にも居られなくなりますよ。

そうね。例えば〜………

先生が可愛がっている生徒達に

今後、接触する機会を減らすとか、ね♪」

鬼塚「げっ!?そ、それは……(焦)」

陽花「大丈夫ですよ?

その子達には、鬼塚先生から信頼を得ている

私から事情を話しますので」

鬼塚「まっ、待って!!それだけはっ!?!!!!

この学校に務めるに当たって最大の楽しみが

減らされるのはあんまり…なんじゃぁぁ(涙)」

陽花「でしたら、お1人様に絞りましょうか。

それとも全員一緒に会う頻度を減らします?

ぜ、全員は無理よ、私には無理っ!(鬼塚)

じゃあ、お1人様に会う事だけを

お控えて頂く事をここに約束して下さい!!」

鬼塚「は、はい………って待って

まさか、その1人って!?!!!!」

陽花「うふふ♡今更、気付きまして?」

鬼塚「あっ、うぅ〜…申し訳ございません(沈)」

陽花「精々、反省する事ね。

私だったから見逃されている点……を

お忘れなく先生っ☆

ハルちゃ〜ん、もう時期…行かないと〜(閻来)

えぇ、分かったわ!

それじゃあ[彼]には、私から……ね?うふふ♪」

ガラガラ・・・

鬼塚「お、終わった。

私にとっての人生最大の楽しみの面会がぁ〜(涙)

(もう、最悪!!

よりにもよってハルちゃんにバレるなんてぇ〜

あの子、私の失態だけは必ず隠し通してくれるから

それは心配していないわ。

けど、問題はそこじゃない!

私が……見て来た彼女は、

とっても純粋な子で

あんなにも当初はいたいけだった子が

今では、、、反抗期…なのではっ?!(興奮気味)

私が趣味で可愛がってきた子達の中で

勿論、彼もそうだけど

彼女はまた別ベクトルであってそんなんじゃ〜♪)」

とクヨクヨ体を動かしながら

鬼塚は、ルンルン気分で

迅速に奏太の治療に取り掛かったのだった。


一方・・・

2年C組の教室では、

3限目に突入し世界史の授業が半分終わった所で

陸は、世界史の教科書を机に立てて

うつ伏せの状態でずっと考え込んでいた。

陸「(け…結局、僕は〜………

朝の日直の仕事を終えて

すぐ奏太の教室に行ってみたんだけど〜

今日に限って居なかった。

でもでもカバンは、机の横に引っ掛けてあったから

欠席な訳じゃないけど…なぜか見当たらなくてぇ〜

一体、どこへ行ったんだろう???

はぁ……昨日は、平日だったから

ちょっと夜更かししちゃって

今じゃ、もう眠くて眠くてぇ〜…

予言もいつなのか正確に把握しないと限りは、

勝手な行動は、慎まないと!!

大体……僕の予言は、

1日に2・3回くらい見れるチャンスがあるって事を

最近、研究に研究を重ねて分かったんだよね〜☆

だから確認する為にも

まずは僕が、予言を見ないと始まらない!

この授業だけでも寝て、

不確定要素を少しでも僕1人の力で暴くんだ)

スゥ〜……スゥー…スゥ〜……スゥー…スゥ〜」

隣の子「おーい、牧田?

今、世界史の授業だぞ?!!!!!

あの先生に見つかったら

タダじゃ済まされないぞ!?(小声)

おいおい……呑気に寝やがってよぉ〜

俺だって寝てぇのに、はあ〜ぁ(あくび)」

先生「おい、そこ聞いているのか!!

さっさと隣の人と意見交換しなさい」

隣の子「は、はいっ!?

お〜〜〜い、牧田。こりゃ、当分…起きねぇな(小声)

(形だけでも見えるよう机だけでもくっ付けとくか)」

ゴロゴロと自分の机だけを引きずりながら

机同士をピッタリくっ付け陸の体を少し起こし、

陸を頬杖(ほほづえ)付かせ、かなり下向きではあったが

さっきまで露骨に寝ていた姿よりかは、

マシな姿勢となっている。

隣の子「はぁ……はぁ…何で俺がこんな事を(汗)

(に・し・て・も牧田の奴、

授業中にも関わらず

よくこの状況下で寝れるよな。

そ〜いや寝ないと予言がどうのこうって

前に話してくれたっけな?

んじゃあ、今まで所構わず寝てたのは〜

全部の予言の為だったとか!

なるほどな〜………

でもなぁ?牧田が戻って来るまで

俺は、ずっとあのタチの悪い先生から

守ってきたんだ。

礼の1つや2つ言って欲しいもんだぜ)

全く……ニヒッ♪」


夢の中・・・


昨夜、見た時と同じように

夢の世界に浸ろうとする陸、

うっすらと視界には砂嵐が混じっており

最初よりかは断然、見やすくなっていた。

陸は、空き地にポツンと立たされており

目の前が薄暗い事には変わらなかった。

すると、何やら鳴き声が聞こえてきて

耳を澄ませながら左に視線を向けた先には、

にゃごにゃごにゃあにゃあという鳴き声と共に

子猫の姿の猫又達と大きな化け猫が1体。

その猫達の前を率先して走って来る2人の人影、

それが奏太と1人の女子だった。

髪色までは、暗くてよく見えなかったが

昨夜見た時には無かったセリフが、

追加されていたのだ。

奏太「ここまで来れば平気…だと思うが、

もう少し逃げるべきか?

それとも別の場所へワープすっかぁ〜

(どうする。迷っている暇は、無いぞ俺(汗)

やっぱりもっと離れるべき…だな)

幸い、俺は気付かれて居ないとはいえ

恋花はしょうがないが君は〜………

いや、今はそんな事…どうでもいい!!

とにかくここから遠ざかる方法をでもどこへ逃げる?

方法があっても、どこへ飛ぶべきだ?!(ボソッ)」

女子「では、ここへ飛んで下さい!

えっ?はぁ?!それ、どこだよ!?(奏太)

私達にとって極めて安全な場所…です♪」

とポケットから手鏡を取り出す。

奏太「初対面の人は、ほぼ信用ならないが仕方ない。

ここは、君を信じて平気なんだろうな?

はい、きっと気付かれないかと!!(女子)

……分かった。

それじゃあ行くぞ、とにかく真っ直ぐ進め」

と言って奏太は、女子から手鏡を貰い受けて

すぐに手鏡が光出し皆んなの視界を覆った。

ガタン!・・・

机の下から膝を勢いよく突き上げて

その痛みからか目を覚ましてしまったのだ。

陸「……アタッ〜!!

んっ?!んっ?あ、あれ???

なん〜か、人が少ないような。

おっ?起きたのか随分、長かったな〜(隣の子)

西野くん?

僕、もう起きちゃったの………うぅ〜ん(汗)

もう…って何だよ?とっくに昼過ぎだぜ(西野)

ふ〜ん。ええ!?!!!!嘘だ!?

じゃあ昼休み始まってからどのくらい経った?

えっ、あぁ〜ざっと15分くらいだな☆(西野)

・・・。

ぼ、僕……奏太、探しに行って来るぅ!」

そう言ってスライドドアを勢いよく開けて

少し滑りかけながらも廊下を走って行った。

西野「ま、また行っちまった。はぁ〜(汗)」


屋上にて・・・

いつもなら部室で昼休みを過ごす3人だったが、

天気の良い日には時々、屋上へ訪れる。

そこにはなぜか千秋も混ざっており、

二人羽織の羽織のように日向に覆い被さっていた。

誠也「……んで、何でお前がまた居んだよ!?

期限は、明日までだっつうのに

これ見逃(みよが)しに隙あらば、日向に会いに来るよな?!

1日くらい待ったって良いじゃんか!!(汗)」

千秋「んっ?

それだとこうして、くっ付けないだろ???

知るかっ!(誠也)

まぁ、日向が満足してるから良いだろう。別に♪」

誠也「そういや〜〜〜…そうだった。

何でこういう時に限って反論しねぇんだよ!!

もう夏の季節じゃねぇが

秋にしては、まだ暑苦しいと思うんだが(汗)

別に良いも〜ん(ぬくぬく日向)

はぁ……そういえば、年中冷え性だったなお前」

蘭「えっ?

日向くん、冷え性だったの?意外〜♪」

誠也「・・・。

あっ、蘭は知らないんだっけ?

何が???(蘭)

毎年コイツ、超苦労してるんだぜ。

まず春は、花粉症に弱いし

夏は、熱中症で倒れるわ〜〜〜

秋は第2波の花粉…んで、冬が風邪の4連コンボ、

引く程当たるんだよ……」

蘭「日向くん、よく今まで生きて来られたね。

(わたし)、逆に心配になって来ちゃった(汗)」

日向「年中過ごしてれば、これくらい慣れますよ」

誠也「お前の慣れ具合は、バクり過ぎんだよ」

千秋「まぁ、日向は外からの刺激に弱いって事、

次いでに力も…(笑)うぐっ!」

と言うと皆んなから見えない所で

千秋の腹に拳を突き出す。

日向「何か言った?(キレ気味)」

千秋「ほら見ろ、手とは思えないくらいの非力さ♪

そういう所、含めて可愛いんだよな〜」

日向「うるさい!!」

2人(日向(の奴)くん、

非力だけはいじられたくないんだよ(な〜)ね)

千秋が日向の手の甲をコネコネしていると

今度は、足で顎に仕返したのだ。

千秋「イッタァ!?

お前、いつから足技するようになった?!(焦)」

日向「先週から。雄鬼さんに教えて貰った」

誠也「あぁ〜

前に日向が、校則破った代わりに

アイツの手伝いさせられたって話してたやつか?

マジで俺だけなのかよ、あの扱いわっ!(汗)」

千秋「アイツの仕業か(イライラ)

はぁ……まぁ、日向が防戦一方になるよりかは

護身術だか何だか持ってる方が安全ちゃ安全か。

俺は、嬉しいぞ〜♪」

と千秋が褒めていると

日向の少し長めの髪を避けてうなじを

鼻の先でなぞるように改めて自分に抱き寄せる。

誠也「それは、良いのかよ(ボソッ)」

日向「・・・。

そっか、そっか☆うんうん(千秋)

んんーさっきの事、まだ許してないから!!」

千秋「あ〜はいはい。

そんなに気にしなくとも日向は、

十分成長してるぞ?

アレは、俺が相手だったから無理であった訳で〜

うわ〜全然、フォローする気ねぇな(誠也)

あっ?むしろ褒めてんだが???

うぜぇ〜コイツ、次いでにムカつく(誠也)

んじゃ、俺は日向とのイチャイチャも

終わった事だし教室、戻るわぁ〜☆」

日向「イチャイチャ言うな(即答)」

千秋「んっ?

う〜〜〜ん。じゃあデイリーで良いや!」

誠也「へいへい……って今更だけど、

お前、日向と同居してる癖に

昼休みだけ狙って来るのは、何なんだよ!!」

千秋「そりゃあ最初は、遠目から日向の事を

見守るだけで留めるつもりだったさ。

おい!(日向)

けど、それだと俺だけが無防備な状態になって

もし雄鬼が奇襲して来た時に

反射だけで避けられる程、

俺は、簡単じゃないと思ってな?

だから日向の側に居れば、

周りを気にしながらでも一緒に居れる。

それだったら一石二鳥ってわ・け・だ☆」

誠也「はぁ〜………なんか聞く前から

分かったような気がして余計に腹立ったわ」


千秋「ニヒッ、じゃあ俺は校舎にもど……」

蘭「千秋…くん?

校舎に戻るには、もうちょっと時間あるけど〜」

2人(ま、まずい……(汗)

そう2人が思った途端、

千秋は屋上から後ろにある校舎へ

ひとっ飛びする所をクイッと足元を回す。

それは、後ろではなく紛れもない日向の方だった。

日向「鈴木さん!!(焦)」

誠也「蘭、空気読めバカ!」

蘭「えっ、えぇ???どうして?(汗)」

誠也が溜め息混じりに頭に手を置いていると

即座に立ち上がった日向の懐の中に既に居た。

勢い余って2人は、床を転がり込みながらも

千秋の大きな体で受け止められて無事だったのだ。

日向「危ないからそれ、やめてっ!(赤面)」

千秋「平気だったんだから別に良いだろう♪

そっか〜まだ時間あったのか☆

俺も日向みたいに腕時計付けたいなー………

付けりゃ良いじゃんか(誠也)

それが無理だから言ってるんだ。

んんっ?(2人)

千秋の腕じゃデカ過ぎてはち切れちゃうの(日向)

お〜ぃ、デカい言うなデカいってはぁ〜……」

数分経って一通りしょぼくれた後、

最初の二人羽織のような体勢へと戻した。

ニッコニコ顔で和んだ顔で抱き締めている。

誠也「きめぇ〜な(汗)

日向は、それでホントにいいのかよ?

払った所で変わらないからこうなの(諦めな日向)

お前も大変だな、色んな意味で」

日向「うんうん」

蘭「(あ、もう10分しか残ってない?!

私と誠也は次、体育だし

旧校舎まで行くのもここからじゃ時間が……)

千秋くん、そろそろ戻った方が〜………(汗)」

千秋「もう少し、もう少しだけでいいから

なぁ、良いだろ???(パッチリお目目)

離してよ、いい加減。あとキモい!(日向)

両手両足を千秋の体によって拘束され、

身動きが取れない日向に

残りの時間だけでもとやけにくっ付いて来る。

蘭「昼休みもう終わっちゃうよ(汗)」

千秋「なぁなぁ、なぁ〜♪♪♪」

誠也「いーや、蘭。

俺らは、次の授業に遅れない為にも

先に戻ってようぜ」

背中を向けた誠也の肩を掴み、

静止するように蘭は口を開いた。

蘭「誠也、今面倒くさいとでも

考えてないでしょうねぇ?

日向くんだって、授業に遅れちゃうんだから

止めてあげなさい!!

何で俺が……(誠也)

私の力で出来るとでも???(ムスッ)」

誠也「うっ、わったよ!分かったから

おい、佐野だか佐川だか知らねぇけど〜

離れろよ…って力強っ!?」

蘭に言われるがままに

誠也が千秋の肩に手を掛けて揺すろうとした所、

その揺すりですらビクともしない事に驚いていた。

一方、千秋の中で焦り始める日向の顔を

間近で見つめながらも

千秋自身の力加減がバクっている事に気付くと

日向は、瞬時に顔色を変えた。

とりあえず千秋から抜け出す為に取った行動、

それは過去に部活勧誘された際、

誠也に腕を掴まれた時と同じ手段で

足を透けさせ1回目より遥かに強めな足技が

顎にヒットさせたのだ!!


その反動で千秋は、後ろの網にまで吹っ飛ばされる。

千秋「ぐっ!(汗)

・・・(警戒心MAXの日向)

イッタァ、少しは手加減してくれよ〜!

手より足の方が強いんだからさ(涙目)」

日向「……知らない。

千秋が緩めなかったのが悪いっ!!

僕、先に戻ってるから(焦)」

やっと千秋から解放された日向は1人で

そそくさ屋上を後にし、2人を置いて行ったのだ。

誠也「アイツ、何怒ってんだ?(汗)

蘭「さぁ???

とりあえず、抜け出せたんだから

私達も行きましょう。

千秋くんが、何したか私達には分からなかったけど

帰りにでも仲直りしてあげて♪(小声)

蘭、早くしねぇと着替え遅くなるぞ(誠也)

分かった!!それじゃあね♡」

うふふと優しく微笑み掛けながら

2人が立ち去ると千秋は重い腰を上げ、

冬でもない外で白い息を吐く。

屋上からひとっ飛びした所で

10秒も経たずに旧校舎前へと着地し入って行った。


授業が始まる手前まで

着席して待っていた日向に瞳が声を掛けて来た。

瞳「新條くん、浅見先輩が呼んでいますよ。

……んっ?何だろう???(日向)

さぁ、私にもよく分からないけど〜

とにかく早めに行って来て

もうすぐ授業、始まるわよ」

淡々と喋りつつもどこか目が泳いでおり、

瞬きする回数も多かった。

逆に日向は、先程の千秋の粗相が

無かったかのように切り替え瞳に返事を返す。

日向「来ちゃったものは、仕方ないよね。

うん、いつも知らせに来てくれてありがとう♪

出来るだけ早く終わらせて来るよ」

と言って瞳から離れ、

廊下で待っていた陽花と閻来が会話を交わした。

残された瞳は、目元だけは見えなかったが、

微かに口が波打っており、ニッコリと微笑んでから

自分の髪に触れて立ち去ったのだ。


翌朝・・・

朝食を済ませた陸は洗面台に歯を磨きに

鏡の前でシャカシャカと音を立てている。

まだ寝ぼけているせいか、

線で分厚く引かれたような目で

コップの水を口に含む。

陸「ガラガラガラ…ピシャ!ガラララ……ピシャ。

(そういえば昨日、奏太は学校に来てたのかな?

朝も昼も放課後も結局、見当たらなかったし

朝にはあったバックも無くなってた。

今日のは予言じゃなくてただの夢だったし

大体、いつになるのか把握…出来ない事には〜

………ってそうじゃん、奏太の予言!?!!!!」

ハッと今思い出したかのように

朝から急に叫んだとほぼ同時に手に持っていた

コップをうっかり離してしまい、

水と一緒に床に濡れてしまったのだ。

陸「……あっ。ああぁぁぁ?!!!!!

う、うぐっ………母ちゃ〜ん!!(泣)」

ダッダッダと1人とは思えない足音が

廊下で鳴り響くと洗面所に颯爽と現れ、

陸の頭に軽めのチョップをかました。

それから四肢を折り曲げ正座姿勢になった母親が、

スポンジでゴシゴシと力強く床を擦っていた。

母親「もう〜陸は、昔から泣き虫なんだから

これくらいでいちいち泣かないの!

昨日は〜たまにある事だけど、

コップとかはいつもなら落とさないのに

どうしたの?」

陸「……うぐっ、じ…実は〜………(涙目)」

と目から涙を出しながら震え声で

母親に予言の事を伝えた。

母親「なるほどね〜〜〜

事前に起きる事を知れるのは私達くだんの役目、

でも(わたし)が、いつも言ってるでしょ?

変えられない未来なんて無いって♪

いくらでも足掻いて、暴れても構わない

精神じゃないとやっていけないわよ。

そ、それは…僕には到底………(陸)

そうね。

ガーーーン(白目剥く陸)

それでも陸は、もう1人じゃないでしょう?

お友達共々、巻き込んで各々別行動して

[起こらせてはいけない未来]を阻止できたら

きっと良い活力になるわよ☆」

陸「起こらせてはいけない未来(涙目)

う、うん。僕、やってみるよ母ちゃん♪」

母親「そうそう、その調子。その調子!!

あと予言に関わる人物を事前に特定したりする事が、

大事だからまずは知り合いに知らせる所からでも

遅くはないんじゃない?」

陸「うん!母ちゃん、ありがとう」

と言いながら尻尾をブンブン振り回していた。


学校・・・

陸「(よ〜し、予言はあと1回しか使えないけど

奏太と予言が起こる日と出て来る人の特定も込めて

気合い入れて寝るぞー!!)

よっ!陸、いつもより早く来てるな(西野)

あ、西野くん。おはよう♪

そうだ。僕、西野くんに

お願いしたい事があるんだけど☆☆☆」

西野「なっ、何だよ急にぃ〜

あとキラキラした目を俺に向けんな!!(焦)」

陸「僕、今回の予言を確実にしたいから

授業のどっか寝たいんだけどさ……その〜(汗)

あ、はいはい。居眠りしたいんだろ(西野)

そ・う・な・んだよ☆

お願い、僕を………寝かし付けて!」

西野「・・・あっ?そっち?!」

陸「どっち???

今日は夢見心地、良かったから

中々寝れないと思って手伝って欲しいんだ♪」

西野「まぁ、そういう事なら良いけど」

陸「ふふん♪ありがとう、西野くん!!」

放課後・・・

西野「で結局…寝れなかったな。

まぁドンマイドンマイ、陸!

次がある。次があるからまた明日、頑張ろー」

陸「うぐっ……ごめんね、宣言したのに(涙)

お、俺が力不足だって陸は気にすんなよ(西野)

んんっ。ごめんね、夢見て」

西野「あぁ〜いや、そういう訳じゃなくて(焦)

と、とりあえず俺はそろそろ帰らないとだから

また明日な!(汗)」

慌てた様子で逃げ…風のように立ち去って行った

西野、残された陸はポツリと自分の机で突っ伏した。

陸「はぁ〜……寝る前から気合いも

頭で考え過ぎるのもよく無いって言うけど、

ホントじゃん!?

やっぱり僕なんかが先取りした所で

止められないんじゃ、元も子もないよ(汗)

僕って意外と母ちゃんにだけは流されやすくてぇ〜

あぁーもうどうしよう!!ぐぬぬぬ。

………って机、気持ちいい」

ひんやりとした机に頬をくっ付けて

ゴソゴソ動いていると急にシーンと静まり返り、

眠りに付いていたのだ。


夢の中・・・


前回と前々回の予言とは異なる始まり方で

暗い空の下には丁度、廃ビルが配置されており、

ビルが突如として大きな爆発と共に

細い何かが煙の外へ出ていく所だったのだ。

場面が切り変わり、晴れた綺麗な満月の夜の下で

ロングポニーテールの女性が化け猫を相手にし、

短髪の男性の真っ向には奏太がおり

地面を蹴り上げた瞬間、

奏太はすぐ心臓から逸れた位置に

目にも止まらなぬ速さで男の拳が炸裂し、

体に風穴が空いたシーンが陸の瞳に映し出される。

陸「……えっ?かな…た???(恐怖)」

風穴が空いた体で木にもたれ掛かった状態の奏太に

容赦なくトドメを刺そうとする男に陸が叫んだ。

陸「やめてー!!!!!!」

???「お〜い、陸。陸、そろそろ起きろ〜

放課後で寝るなんてどうした?」

手を伸ばす陸を静止するように視界が光に包まれた。

パチッ!・・・

陸「ハッ!?」

ガバッと机から顔を上げると陸の前には

黄緑色の瞳と水色の瞳をした奏太が、そこに居た。

2つの瞳は、どこか淡く光っていたが

陸はそれどころじゃ無かった為、

机越しで奏太に抱き付いた。

陸「奏太!!奏太、大丈夫???(焦)」

奏太「え、何が?

昨日からずっと探してたんだよぉ(涙する陸)

……っ!

と、とりあえず最終下校時刻も近いんだから

一旦校舎、出よう」

状況が状況だけに奏太は困惑しながらも

一度、話しを逸らし教室を出るよう促したのだ。

終始泣き続ける陸に対し奏太は、

陸が話を切り出すまで黙って前を見続けた。


そして、廊下の半分を超えた所で

予言の話を持ち掛けたのだ。

陸「あ、あのね…さっきも僕、言ったけど

奏太の事、昨日からずっと探してたんだ。

うん、さっきも聞いた(奏太)

奏太に会いたかったのは、

これから起きる事が奏太にとって

この先に関わる予言……だから

その〜事前に伝えるつもりだったんだけどね」

奏太「ごめん、昨日はちょっと体調不良で

陸に何も言えずに早退しちゃってな。

(どっかの保健室の先生のせいだが…(汗)

陸「そうだったの?!

でも、さっき寝落ちしたお陰で確信したんだ!

これから起こる大まかな出来事をさ☆

んっ?(奏太)

まず一昨日見た予言はね、

奏太が猫又?と女の子と一緒に走って

ゲートだっけ???鏡でどっか行ったの」

と歩きながらも身振り手振りでかなり動く陸。

奏太「ホントにざっくりだな(汗)」

陸「それでね、それでね!!

昨日の授業中で見た予言が、

奏太と女の子が会話しててその子から鏡を受け取って

ワープ?してたよ!」

奏太「他人の鏡を使うのは、ちょっと野暮だな。

(て、その女子って誰なんだ???

夜になれば恋花は、猫又もしくは[幻獣化]し

姿が変わらない場合だと俺の知る限りではいない。

じゃあ俺は、誰に同意して鏡を………)」

陸「まだそんな事、言ってるの?

鏡が2つ有ったらワープ出来るんでしょ!!

便利じゃん♪

そ、そうだけど。俺らの鏡は〜……(奏太)

で奏太が小テストを終わるまで

待ってようと思ったら机が冷たくて寝ちゃってさ。

サラッと流された…っていうか呑気だな〜(奏太)

それでね!それで、ねぇ(涙)

その後がどうなるかまでは見れてないんだけど、

勘違いであって欲しいって今でも思う………

それでもちゃんと伝えるよ。

奏太は、この予言で死んじゃう…かもしれない。

んっ?それ、どういう事だ。陸???(奏太)

分からない!

分からないんかい?!(奏太)

分からないけど、相手は多分…ううん。

ほぼ確定で[龍生(りゅうせい)ペア]が関わってて

奏太は、間違いなく男の人にやられて

体に穴が空いちゃってたぁぁぁうわ〜ん(泣)」

奏太「なるほどな〜……それで陸は。

う…ゔん(涙する陸)

ていうか、猫又が一緒となると皆んな来るのか。

よりにもよって引っ越しの日にぃ〜……

でも、何でその2人が居るんだ???

分かんない(陸)

(龍生ペア、その名の通り

[龍の妖怪]でこの学校にも2人存在し、

1人は久龍先輩そして、もう1人が青石先輩。

どちらも同じ3年生。

この2人は、特殊部隊の五大勢力の1組で

こっちが1000人という圧倒的な人数差でさえ

真っ向から戦えば、

まず全滅するくらいには異常な強さを誇る程だ。

特殊部隊の五大勢力はいわば、幹部そのもので

任務の為なら例えそれが一般人でも邪魔者は

容赦なく殺されるし、奴らは罪にも囚われる事も

あり得ない。

大体は、無慈悲な奴しか存在しないと

風の噂で聞いたな〜(汗)

皆んなは知りたくもない情報でも

陸には、[言う権利]と[責任が担う役目]に

必しも成らなければならない。

だからこそ、この予言が本当に当たっているのなら

俺は間違いなく死ぬ可能性もあるし、

何より陸をその場に行かせる訳にはいかない!!

これは、俺の問題だ)」


陸「ねぇ、奏太?

さっき猫又がどうとか言ってたけど、何かあるの?」

奏太「えっ!?

(ま、まずい。

陸には野良猫を…恋花を拾ったなんて言ってないし、

言うつもりも更々無い!

あくまで俺が興味を持っているのは、

学校で陸と日向と一緒に過ごす事が楽しい時だけ

プライベートっていうか俺は雲外鏡だし、

遊んでる暇が無いから話す事もあんまり無い。

校外で起きた事は、

陸には全部、内緒にしてるんだった。

なのに俺はつい、うっかりぃ(焦)

いや、もう完全に口走ってしまった事は仕方ない。

後悔した所で陸には気付かれているんだ。

それに隠し通す事なんて出来ない)

陸、俺は前々から隠してた事があるんだ!!

実は………俺っ!

やっぱり奏太に彼女が居るんだぁぁぁ?!(陸)

え???いや、いやいや違う!!(焦)

俺に彼女なんて出来る訳ないだろ!!!!!!

それもそっか、奏太だもんね♪(即答する陸)

おい!それはそれで酷いとは思わないのか!?

まぁ、いい。良くはないが今はいい!!

俺が中1の頃にたまたま出会った猫又が居たんだ。

餓死寸前だった事もあって

しばらく様子見で匿ってた時期があってだな。

それくらい猫又達は、生きる事に必死でさ

だから俺は、ソイツとソイツの仲間を

安全な場所まで連れて行きたいんだ!

それを邪魔する奴らが居るなら

猫又達の味方に付くつもりで居る。

俺は、別に陸を決して疑ってる訳じゃないが、

もし予言の場所に陸が行きたいとか

我儘言っても無駄だからな。

危険なのは俺自身も分かってる!!

だからこそ、譲れないんだ。分かってくれ!(汗)」

と言って周り廊下でオレンジ色の空を背景に

陸に対し頭を深々と下げる。


目元を暗くさせ俯く陸、両手をだら〜んと伸ばし

沈黙が続く中で最初に口を開いたのは陸だった。

陸「……そっか、そっかそっか(笑)

んっ?陸???(奏太)

じゃあ奏太も自分なりの目的が見つかったんだ♪

僕、嬉しいよ!!

???(奏太)

だって奏太、いつも言ってたじゃん。

他人に興味も無ければ、この世界にも興味無いって

僕が奏太と出会った時から

本当に無頓着過ぎて驚いた事、今でも覚えてるよ☆

雲外鏡の妖怪として今まで生きてきたら

そりゃ奏太みたいになっちゃうかもしれないけど、

僕だったら知らない世界に初めて踏み込んだら

じっとなんてしてられないし、

きっと好奇心しか溢れないと思う!

だから奏太が世間知らずの世界から抜け出せた事が

僕はすっごく嬉しいんだよ♪

陸も案外、世間知らずな所もあるけどね(奏太)

そ、そんな事ないよ!?(尻尾を回す)

だって今でも言葉に実感持ててないじゃん(奏太)

それはまだ体験してないから言えない事であって

意味くらい僕でも分かるよ!!

じゃあ〜牛尾(ぎゅうび)って何か分かるか?(奏太)

・・・。へ???(点目)

え、あ…あのお、お尻???

惜しいね、答えは牛の尻尾って意味だよ(奏太)

……ハッ!?(恥)うぇ〜ん、奏太の意地悪っ!」

ボカボカと奏太の背中を叩きながら

泣きじゃくる陸の顔を見て安心したようだった。

奏太「ふん(笑)

そういう事だから仕方ない仕方な〜い」

陸「もう〜(プンプン)」


終始笑いながら下駄箱へ到着し、

膨れっ面で隣を歩く陸と一緒に玄関口から出て

すぐ夕日の光に2人は思わず、目を瞑る。

するとそれを遮るように前には人の影が伸びて来て

それは、紛れもなく友理と恋花達のものだった。

恋花「友理ちゃ〜ん、おっまた〜☆

いやぁ〜この為だけに放課後まで緊張とかで

お腹下してた割にはあっさり終わっちゃったよ〜」

友理「良かったですね!

恋花さんが、勉強したお陰で早く終わったんです。

むしろ恋花さんは自分の事を褒めるべきだよ♪」

恋花「(あたし)が私を???

あはは(笑)小テストぐらいで大袈裟だよ。

もう〜友理ちゃん、面白いな☆んっ?

あっ、奏太だぁ〜☆☆☆奏太、お〜〜〜い!!」

両手いっぱいに手を振ってから

タッタッタッと奏太の目の前まで走って行き、

ニコッとした目で恋花を見て

奏太は、少し口を開けた状態で固まっていた。

一方陸は、止まった奏太の背中から目線ズラし

友理を見るなり目を丸くしていた。

陸「……っ!」

恋花「あれ?奏太〜???どしたの?お〜い」

奏太「あっ、いや………(赤面)

な、何でもない!!それより恋花、今日さ……

ああぁぁぁ?!!!!!(陸)

うわっ!?びっ…くりしたぁ〜

何だよ?陸、急に叫んで???」

いきなり奏太の真後ろで叫んだ声に驚きながらも

振り向く際に尋ねてみると

陸は、奏太の手を引っ張って玄関口まで引き寄せる。

奏太「ちょ……ちょっとぉ、どうしたんだよ?!

あ、あっ。あぁ…あの子っ!(陸)

あの子?恋花の事か???」

陸「違うよ!!

そっちじゃなくて、その子の後ろに居る子!!

あの子が、奏太の隣にいた子だし鏡渡してた」

奏太「あれが???(汗)

うーーん。俺も特に恋花の友達までは、

把握してないから初めて見るかもな。

んんっ?(キョトン顔の陸)

べ、別に変な意味じゃないぞ?!

でも恋花にも一応、伝えた方が良いよな?

予言の事、変に動かれると大変だしぃ(汗)」

陸「うん!

むしろ相手に予言の事、伝えてあげないと

予言とはまた違う行動を取る可能性だって

あり得るもん。

それが、どんなに些細な事でも

ネジの締まり具合によっては、

物が傾く程度には十分あるからね」

奏太「だよな〜てか、分かりやすっ!?(焦)

おーい、恋花。

今日、引っ越しの準備するって話についてだが……」

と奏太から言われた途端、

恋花はハッとした目で2人に一声掛けた。

恋花「そうだった!!

私ってば、こんな時に限って補習受けてぇ(焦)

ごめん。奏太、友理ちゃん。私、先に帰るね!」

ほぼ早口で聞き取りづらいくらいには

2人に伝え終えると恋花は、

1人校門から出て行ってしまった。

友理は訳もわからず、呆然と立っている所を

これを好奇だと思い奏太が友理の腕を掴んだ。

友理「・・・?

……えっと、何の…用でしょうか???」

奏太「君は、恋花の友達で合っているか?

え、あ…はい。そうですが〜……(慌てる友理)

だったらこれから俺が言う事をよく聞いて欲しい。

これは、急を要する事なんだ!!」

友理「???」


真夜中・・・

大きな裂け目の入った廃ビルの無数のヒビ、

未完成な満月の淡白い光がビルの中まで差し込む。

が、すぐ暗い雲が月を隠してしまい

猫は少し落ち込んでいる様子。

建物の外見は、全体的に苔やつる植物などが

沢山絡み合っており、

部屋の角っこには真っ黒な影が滲んでいた。

廃ビルから突き刺すように嵌め込まれている

謎の黒い街灯の上で朱色の猫が佇む。

恋花「・・・。

(よし。今日こそは、

ここの皆んな共……この長い長い生活にも

やっと休止符が打たれるんだ。

最後まで誰1人として欠ける事もなく

生き残れたのは、全部…奏太のお陰だね♡

ここまで来るのに

4年、3年半も掛かっちゃったなぁ〜(涙)

ううん、まだ泣くのは早い。早過ぎるよ、(あたし)

無事に私達の家に皆んなを連れて帰えるんだ。

絶対に私は、最後まで諦めない!

この世の中で生き抜く為には足掻く事が、

もっとも私達の中で必要な活力なんだから☆)

皆んにゃあ、そろそろ集まってにゃあ♪」

と言って街灯を伝って歩いていくと

すぐ他の猫又達が廃ビルに出来たあらゆる隙間から

ルンルンに駆け寄って来たのだ。

黒猫「にゃににゃに?ご飯???」

茶猫「あちゃち、もっと食べたいにゃあ♪」

白猫「違うでしょう、忘れたの?

今日でここは、さよならする日なのよ」

ハチワレ「うにゅ?」

灰猫「そうにゃ、そうにゃあ!

アンタ、今思い出したでしょう?(白猫)

にゃ〜?にゃんの事か分からにゃいにゃあ」

白猫「あ、そう。ふん」

恋花「こらこら、皆んな静かにするにゃ。

これから皆んなで遠足気分で帰るんだから

はしゃぐのは帰ってからだよ?

姉ね〜ミケちゃん、どこに居るか知らにゃい?(黒猫)

ミケちゃん、見てないの???

1週間くらい前に出て行っきりよ(白猫)

えぇ〜!?

それは、大変にゃ。皆んなで探してぇ………

にゃ!!皆んな、静かにぃ(汗)」

耳に何らかの音をキャッチした恋花は、

皆んなに一声掛けてから恐ろしい剣幕で背を向ける。

そして、即座に幻獣化し化け猫の姿へと変化させた。

恋花「ゔゔぅぅぅーーシャッーーー!!!!!!」

かなりの唸り声を上げて

建物の外から影がバッと出て来た瞬間、

その相手に噛み付こうと前へ出た。

すると、その姿は友理のものである事に

気付いた恋花は、急ブレーキを掛ける。

友理「……んっ?

わぁ〜!?本当に猫又がいっぱいだ!

可愛い…って、なんか1匹だけ凄いのが居る(焦)

猫又の(ぬし)みたいなものかな?!」

そう言って友理がワチャワチャと喚いていると

恋花は、呆気に取られていた。

恋花「ゆ、ゆゆ…友理ちゃん!?!!!!

えっ?ええぇぇー?!その声、恋花さん!?(友理)

ど、どうしてここに???」

友理「私は、今日恋花さんに

降り掛かろうとしている不幸から守りに来た

ボディーガードみたいなものです♪

私に降り掛かる……不幸???(恋花)

ある人が、恋花さんの身に起きる予言を聞いて

私も居ても立っても居られなくなったので

助っ人しに来ました☆」

恋花「予言…?

くだんの妖怪から、そう聞かされたの???

はい、そうなんです!!(友理)

・・・(汗)

あ、あのね。

友理ちゃん……私達、今日の為に

沢山この子達と訓練したり、

ここを拠点に暮らして来たんだけどね。

そろそろ捨てて新しい住処に引っ越そうと思って

私が今住んでる仁川市の立ち入り禁止区域の住宅街、

そこに、皆んなを安全に連れて行くのが私の役目!

でも皆んなを危険な目に会わせるくらいなら

今日は、諦めとこう…かな(苦笑い)

えっ???(友理)

あと、もう少しで満月の日が近いから

見晴らしの良い私の家なら結構、綺麗に見えるんだ。

だから皆んにゃに見せてあげたかった……の(汗)」

友理「・・・駄目。駄目だよ、恋花さん!!

友理…ちゃん???(恋花)

予言は、[絶対]に当たる。

恋花さん達が、ここから逃げても逃げなくとも

もっともっと悲惨な事が起こるかもしれないんだよ。

この建物は、まもなく爆発するの!

逃げなかったら皆んな皆んな、死んじゃうよ。

……っ!?それ、本当なの?(焦る恋花)

だから、そうなる前に早く逃げよう!!

じゃないと(必死)」


???「そこを…動かないで下さい」

恋花「んっ?!……さ、[桜ちゃん]!?」

2人の目の前には、

綺麗な白い髪がヒラヒラと(なび)いており

天使のような儚い見た目とは裏腹に

目は力強かったのだ。

桜「驚きましたね(冷静)

まさか…清見さんが、猫又だったなんて

同じクラスとして生徒として同情したい所ですが、

これは私達の仕事なので

猫又達には、速やかに処分させて貰います」

凄く冷たい目付きで緩んだ口元を見せる桜は、

どこか嬉しそうな顔で恋花に鞘の入った妖刀を

目の前で見せ付ける。

恋花は、目の色を変えて

皆んなを守る為に桜に飛び掛かろうとしたのだ。

恋花「待つにゃあぁぁぁ!!!!!!」

桜「清見さんは、その場で動かないでっ!!

何もせず、ただただ仲間がやられる姿を………」

と桜の光った目を見てしまい、足が自然と止まった。

恋花「ゔぐぐぐ……!皆んにゃあ!!早く逃げっ…」

(止まって、止まってよ桜ちゃん!

この子達は、誰も悪くない。

普通に生きていたい子達なのに

体が…体がどうしても動かない……よ。

・・・どうして、奏太。奏太、助けてよっ!(涙)」


コツコツと桜の履いている

ヒールのような靴の音が恋花の耳に残る中で

突然、建物の中だけが爆発音が鳴り響き

黒灰色の煙が視界を阻んだのだ。

自然と恋花の体にのし掛かるような重さも消え、

コンクリートの床に化け猫のお腹が置かれると

目の前には両手を大きく広げた友理が立っていた。

友理「止まるのは………神城さんの方です!!

……っ!(桜)

恋花さん達が…猫又達が、

何したって言うんですか?!

この子達は、ただ生きる為に必死なだけで

それで……何がいけないんですかっ!!(汗)」

恋花「友理ちゃん………」

桜「・・・。

はぁ……清見さんは、ここ数日の内に

猫又の1匹が行方不明な事、ご存知ですか?

…えっ???(恋花)

その個体って、[三毛猫]だったりするかしら?

……っ!ミケちゃんが、どうしたの?!(白猫)

先日、千葉県の海渡(かいど)市近くにある

発電所がやられました。

双子川(ふたごかわ)付近の民家は、今だに停電のまま。

だからこうして私もパトロールしに来たのです」

恋花「それとこれとで

ミケちゃんに何の関係があるっていうの?!」

桜「結論から言いましょう。

発電所を襲撃したのは、化け猫だったそうよ。

幸い、夜にも関わらず点検しに来た

作業員が鬼火だった暗くても目視できたお陰で

証言が取れました。

まさか………(猫又2匹)

犯人は、その[三毛猫]だと判断し、

特殊部隊総出で現在捜査中です。

それと私達が

なぜ、ここに居るのかと言いたげな顔ですね。

それは、特殊部隊の幹部の2人と

私が猫又を見つけるよう命じられたから」

と桜が話を終えた途端、ニコッとした顔で

その場を立ち去るのと友理が何かに反応した事で

恋花に声を掛けるタイミングが同じだったのだ。

桜「それじゃあ…さようなら(ボソッ)」

友理「恋花さん、皆んなを連れて外へ。早く!!

この建物周辺に強力な妖気が2つ反応して……(汗)」

と友理が言い切る前に

瞬間的に2人の姿を覆う程の黒い影が現れる。

それは、廃ビルに出来た大きな裂け目から

ギョロッとした目が視界にデカデカと映し出され、

建物の正面から至近距離で

青い破壊光線が、撃ち放たれたのです。

大きな爆発音と共に街中に轟いて行き、

真夜中である羽田市のみならず

加賀江市にまで届く程の爆音だったのだ。

塵1つ残す事も許されず、

廃ビルがあった場所には小さな空き地が出来ていた。


建物を覆っていた巨大な煙から外へ行き、

細く見えて意外と太い1匹の龍が飛んでいった。

龍の体には、角や髭などが銀色に

綺麗な青黒く硬い鱗に覆われており、

暗い空の上で街を眺めていた。

龍が抜けるのと同時に

脱出できた2人の姿を確認すると

ポニーテールの女性が、密かに2人を追跡した。

音もなく風もなく心臓の音でさえも遮断され、

空気を蹴るように迫り来る。

この場に居る全員の耳には届かない程の声で

友理が[黒煙(こくえん)]と口遊(くちずさ)み、

女性の前で勢いよく焚き上げたのだ。

久龍「……っ!

黒い煙、閻来の仕業ではなさそうね(汗)

あの子…うふふ、とても興味深いですね♪」

黒煙をバッと遠心力で振り切り

一度、足を止めてからも再度、走り出す。

一方・・・

廃ビルからギリギリ脱出し逃げ切った2人を

追い掛けて来る久龍を人知れず、

撒く事に成功させた友理達は言われた通りの場所まで

走り続けた。

開けた場所で待っていたのは、奏太であり

石塀の壁に掛けたゲートを

既に開き切っていて入るよう急かされる。

恋花「奏太!?

どうして、ここに奏太がっ!(汗)

いいから早く入れ、追われてるぞ(奏太)

えっ、私達…追われてるの???」

奏太「いいから、話は後だ(焦)

とにかくここから離れないと危険だ!!」

恋花「う、うん。

落ち着いたら、後で話して貰うから(照)」

化け猫の姿の恋花と猫又達は、

続々と白い光を放つゲートの中へと入っていく。

2人の話を聞きながら友理は終始無言で

奏太とアイコンタクトしてからゲートを潜ると

最後に残った奏太は、黒服姿で周りを確認し

ワープしたのだ。


その間、3人がゲートを通じてワープしてから

僅か数秒後で久龍も到着し、

すぐ辺りを見回しながら何回か目を閉じて開いてを

繰り返し確認していた。

久龍「あらら〜

目標(ターゲット)が範囲外に逃げられてしまいました。

今からなら私の足でも追えなくもないですが、

龍生と勝手に離れちゃうと怒られちゃうからね。

見た目も性格も良いのに束縛が無かったら

ただの良いイケメンなのに、勿体ないな〜♪

まぁ、それも良いだけどね(ウィンク)」

そんな事を呟いていると

上から龍が降りてきて久龍に話し掛ける。

青石「智神(ちか)、とりあえず姫さんと合流して

一度、支部に戻るぞ。

俺らは司令官の指示を放棄したんだ!

戻る義務がある」

久龍「えぇ、分かったわ。急ぎましょう♪」

と言って久龍は、青い龍の背中に

ホウキを横向きに乗るようにして

桜の元へと向かって行った。


一方・・・

龍生により至近距離からの破壊光線を

ギリギリ逃れる事が出来た2人だったが、

休憩する暇も無く背後から近寄って来た久龍を

少しの間、足止めする事に成功した。

それでも執念深く追って来る久龍を完全に撒く為、

逃亡経路の中間ポイントで待ち構えていた

奏太の力でワープし、

命からがら住宅街をひたすら駆け巡る。

3人の内、恋花だけは化け猫の姿のまま走っており

地に足を付けた猫又達は、自らの足で走り始め

2人の足元をちょこちょこと走っていた。

奏太「すげぇ、走りずらいな(汗)」

恋花「そんな事で文句言わないで!

それで奏太は、どうしてあそこに居たの???」

奏太「んっ?

そりゃ〜恋花の引っ越しには手伝ってやるって

前々から宣言しただろう。

忘れたのか???」

恋花「そ、そうだけど〜(照)

でも………友理ちゃんからは、

奏太が居るなんて一言も聞いてないよ?!」

奏太「んんっ?

それは〜……うっかり忘れてたんじゃないか。

忘れ過ぎじゃない?(恋花)

さぁ〜な…ってか、恋花。

さっきから怖い顔してるぞ〜

化け猫の姿なんだから、もっと表情和らげろよ(笑)」

恋花「そうも言ってられないの!

んじゃ、もう少し早く走るぞ。チビ達(奏太)

あっ、奏太。それ言っちゃ……」

猫又達「シャッアァァァァァ!!!!!!

チビ言うな、このクソガキッ!(怒)

そうだそうだ。

こんな奴らと(わたし)を一緒にするな!!(白猫)

僕だって大きくなれば、お前の方がチビだ!」

と猫達から噛み付かれるという猛攻撃に

奏太は、痛がりながらも手で取れる範囲で

捕まえて気合いで走って行った。

奏太「イッテェな!!

昨日の怪我が悪化するからやめろ、バカ(汗)

とっとと離れて安全地帯まで走るぞ!

(とは言ってもな〜どこへ行けやいいんだよ?

ここまでワープしたのだから

あの2人からは、かなりの距離を離した筈だ。

日頃から動いてないせいで俺は既にクタクタだし、

そろそろ歩いても良いんじゃね?

いやいやいや(焦)

こんな一大事にゆっくりしてられっかよ!!

悩むより先に動いてた方が絶対良いに決まってる。

まだ外に出歩いてる限り、

油断もするな。隙も見せるな。とにかく走り続けろ!

だが、流石にノープランで行動するのも

なんか気が乗らねぇ話だな。

一層の事〜羽田市から離れてぇ〜………)

と奏太が思い悩みながらも

とうとう開けた空き地へと辿り着いた所で

猫又達がにゃごにゃごにゃあにゃあと

愚痴を言い始め、恋花は必死に皆んなを宥めている。


その声に釣られて奏太が横を向いた途端、

ずっと黙って走っていた友理が

ようやく口を開き始める。

友理「・・・雲外鏡さん(真顔)

私…良い隠れ場所、知ってるんです☆☆☆

そこへ行ってみませんか?!」

奏太「えっ???

(あれ?

陸から聞いてた話と少し違うような〜……(汗)

もう少し緊迫した状況で

俺がこの子の勢いに押されて鏡を渡される筈、

こんな和らいだ雰囲気じゃ…ない。

まさか俺が〜……

どこかで未来を変えるような行動をしたからか!?

でも、どこでだ???

そもそも予言の俺は、どこに居るんだよ?!

恋花が危険な目に晒されてるっていう時に

俺は、今までどこで何してたんだ。

俺自身なのに見損なったぞ、俺っ!!(汗)

・・・。

いや、その気持ちも何となく俺も分かっていた筈だ。

ただ意識したくなかったんだけだ!

もしも、俺が陸と友達で無くとも

恋花とは出会う運命には何も変わらないし、

このまま首を突っ込まずに

失ってた可能性だってあり得る。

それでも俺は、

恋花を失うよりも俺が死ぬ事でも…違う。

俺は……俺自身が、

もっとも恐れていた事は、

予言の未来を変えた代償として

全て俺の[責任]に降り掛かる事が、

怖かったんだ…!!(潤む瞳)

終われば、皆んなの記憶からも消えるし

俺も居なくなるけど…それでも恋花と出会った時から

そうなる未来しか無かったのかもしれない。

ただ、それが怖くてぇ冥界送りにされた奴は

犯罪者じゃない以上は、

例え事故でも事件の被害者であっても

無害な奴程、必ず戻って来る仕組みだ。

そん時に俺は………果たして、

恋花の側に…ちゃんと居れるのだろうか?)

……さん???雲外鏡さん、大丈夫ですか?(友理)

ハッ!

何でもない。それでやろう(即答)」

友理「はい♪

では、今お渡し致しますね!!」

と言って友理は、

ポケットから取り出そうとゴソゴソと手探り始めて

奏太は、少しでも予言と同じように振る舞おうと

友理に鎌をかけてみた。

奏太「ちなみになんだが〜(汗)

それは、どこへ行くやつなんだ?

えっと〜私達にとって極めて安全な所です!(友理)

……っ!!

ふん(笑)俺が言い始めた事だけど、

ほぼ初対面の君を信用ならないが仕方ない(汗)」

恋花「えっ!?

それってあんま………ん〜んん(焦)」

と奏太は、意地でも恋花に言わせないよう、

化け猫の口を手で抑え付ける。

奏太「ここは、君を信じて平気なんだろうな?

はい、絶対に気付かれない場所かと!!(友理)

…分かった。

(ちょっと返答が違ったな(焦)

それじゃあ行くぞ、とにかく真っ直ぐ進めっ!」

そう言って友理からスライド式手鏡を貰い受け

すぐに表面の鏡が光出した瞬間、

壁にかざし始めた。

するとその鏡に照らされた壁は、

白い光に包まれたゲートが現れ猫又達が入り

恋花、友理、奏太の順に入って行く。


視界を光に包まれた奏太達が辿り着いた場所は、

いつの日かに来た特別部隊の秘密基地だったのだ。

壁掛けには友理から渡たれた手鏡が、

もう1つ掛けられていて

逃亡経路を事前に考えた上で

友理は行動していた。

猫又達は、初めて見る物ばかりで

テンションがぶち上がり、

一斉にレトロな家具などに群がった。

奏太「んっ?

ここは……ってどこなんだ???

私達の秘密基地です♪(友理)

私達?(恋花)

ここがどこかはともかく、

そろそろ恋花は、子猫に戻ったら…どうだ?」

恋花「ハッ…!?お恥ずかしい(赤面)

ボフン・・・

んんっ(恥)皆んにゃあ!!

しばらくの間、この家?

部屋で過ごす事になるけど、貸して貰ってるんだから

爪とか歯で噛んだりしたら駄目だよ〜〜〜!

にゃ〜い♪にゃおにゃお☆(猫又達)」

奏太「ホントに守るのかよ?

当たり前にゃあ!!一緒にするにゃ(威嚇する白猫)

ホントかよ(ボソッ)」

友理「どうかな?どうかな?2人共???

私達、特別部隊の秘密基地は〜♪」

恋花「あ、うん!

結構、居心地良い所だね〜友理ちゃん。

特別部隊?の秘密基地なんてあるんだ〜

……それって…何だっけ???」

奏太「忘れたのか、恋花?

始業式の時に特別部隊について話してたろう」

恋花「そういえば、そんな話あったね」

2人「・・・。ええぇぇぇぇぇ!?!!!!(焦)」

恋花「ゆ、ゆゆ友理ちゃんが、

その特別部隊だったの?!」

友理「そーだよ?

そうだよ、じゃなくて!!!!!!(2人)

あぁ〜…言っちゃ駄目なんだっけな。

でも、恋花さんだから良いんや!

え、俺は???(奏太)

恋花さんの知り合いだから良いよ☆

ガバガバだな〜……(奏太)

秘密な事なのには変わりないけど、

いずれ花梨さんにも話すつもりだから♪

任せてー!!」

恋花「うん、なんかありがとう。

友理ちゃんが特別部隊の1人なのは、

めちゃくちゃ驚いたけど〜

それって始業式にも言ってたじゃん!

特別部隊は特殊部隊のいわゆるお手伝いさん。

友理ちゃんが私の事、助けてくれたのは有難いよ?

でも、それじゃあ友理ちゃんが……(汗)」

友理「平気だよ♪

確かに、私達は特殊部隊の仕事を手伝ってるけど

それだけの関係であって

今回は、私は私として行動してるだけだから

恋花さんは私よりも猫又達を心配してあげて。

手伝いだとか権利が無いとか関係ないよ!

私は、恋花さんの1人の友達として

巻き込まれてるなら助けてあげたい!!」

恋花「……っ!

友理ちゃんは、もうぉ…そんな事、言われたら

断れないじゃない(涙目)」

友理「えへへ♪大丈夫だよ。

私は、最後まで恋花さんの味方で居るからね♡」

テーブルの上にうつ伏せに寝っ転がる

朱色の猫の目に溜まった雫を拭い、

友理はスリスリと小刻み撫でていた。

安心し切った恋花は、

猫又の誰よりも早く眠りに付いたのだ。

じっと2人の様子を見守りながらも

奏太は1人で

今後について頭を巡らせていた。


時を同じくして・・・

とある街のど真ん中に建てられた

特殊部隊の小さな支部に帰還した3人は、

足並みを揃えて司令室へと入って行く。

入ってすぐ目に入ってきたものは、

司令室の内装は、基本的に台形で

中心から逸れた位置に地図上マップの台が置かれ、

正面にはデカデカと主張する程の大きな画面。

その画面だけは電源が落ちており真っ暗だが、

壁際には複数の画面が貼り巡らされており

中央に設置された玉座のようなデカい椅子が、

こちらを振り返る。

司令官「……戻ったか?

久しぶりだな、龍生ペアよ」

久龍「戻りましたぁ〜♪

司令官もお元気そうで何よりですよ」

青石「そうですね。

帰って来て早々、仕事に出払っているのですが

どこかで長期休暇、要求しても…良いですよね?」

司令官「あぁ、それは構わなん!!

この仕事が終わったら存分に休めば良いさ、

今回は、こちらの不手際だからな。くれてやる♪

それでは早速、本題に入ろうじゃないか!!

例の発電所襲撃事件についてだが、

(わたし)は、偵察に行って来いと指示した筈だ。

なぜ、動いた?」

2人「・・・」

久龍「それは〜………

偵察しに行ったのは、本当ですよ…司令官♪

私達が帰って来てすぐの招集だったもので

気持ちが昂ってしまった……かもしれません。

ねぇ、そうよね?龍生♡」

青石「あぁ…俺も少し見誤ったと思っています。

ここに来る前の仕事が

丁度、後始末し終わった所だったので

偵察だけじゃ、早く終わるような仕事じゃないと

判断した上で先に仕掛けさせて貰いました」

久龍「ですって♪

いや、駄目だろ!?……コホン(司令官)

私達が勝手に動いた事は、不敬に値します。

ですので、この仕事を終えたら

3週間程の謹慎処分を快くお引き受けする事を

ここに、約束致しましょう」

司令官「・・・。

はぁ〜……全く、2人はお人好しが過ぎるぞ(汗)

言いたい事は分からんでもない。

そのくらいの謹慎処分なら…構わん!

桜、急ぎたい気持ちも分からなくもない。

だが、こうして2人の人柄を見ていると

分かるであろう?ここの気持ちが。

龍生はともかく、久龍は人当たりも良く

誰にでも頼られる程の信頼を得ている。

んっ?(久龍)

それと比べて自分はどうだ、桜よ?

・・・。全くもって違います(桜)

それをどう勝ち取るかが、今後の重要な課題だな。

この機によ〜く考えてみるといい。

それでだな、今回の仕事内容だが

こう結論付ける事にした。

3人は〜……猫又達と交渉を持ち掛けに行きなさい。

詳細についてだが〜…………」


支部の廊下にて・・・

2人の後ろをゆっくりと付いて行く桜に

久龍は、青石に世間話しをしていた。

青白い光に照らされる3人、

横長な四角い床を歩きながら2人は話し続ける。

桜「(私は……一体、何をしているんでしょうか?

私が強くなりたいが為に

着かなければならない地位に行きたいが為に

急がなければ、いけない!

ただ今回は、私1人が招いた事では無い事、

私の身勝手な考えのせいで

先輩方にまで謹慎処分が及んでしまった(汗)

良い人達なのは、私でも分かっている!

だけど、私自身は今すぐにでも欲するものがある。

その為に特殊部隊に入ったというのに、

私は……何をしているの???

いいえ、今考えても間違った過ちを悔いた所で

何も始まらないし、どうこう言い訳するよりも

私は、2人に言わなければならない事がある……)

先輩っ!!少し、よろしいですか?

んっ?どうしたの桜ちゃん???(久龍)

・・・。

その…先程は、

庇って頂き本当にありがとうございました。

私が勝手な行動をしたばっかりに

先輩方にとんだご迷惑をお掛けしました。

申し訳ございません………(汗)」

毅然(きぜん)とした姿勢でお辞儀する桜の姿を見て

キョトン顔の久龍、青石はその姿を見ても動じず

逆に落ち着いており、涼しげな表情で

両手をポケットの中へと入れる。

久龍「んんっ?あら♪

私は、別に桜ちゃんの行動で迷惑が掛かったなんて

一度も思った事はありませんよ。

むしろ所構わず、我儘言える方が新鮮だわ〜♡

それに……ちょっと不謹慎かもしれないけれど

謹慎処分中は、長期休暇として使えるから

むしろ有難いわ♪

そ、そういえば…そういう話でしたね(桜)

だから私達の事は気にしないで

桜ちゃんは、やりたいようにやって良いのよ!

流石に限度と言うものはあるがな?(青石)

良いの、良いの♡

それは全て、私達がカバーしてあげるから♪」

桜「仕事上の関係とはいえ

しばらくの間、お手数お掛けしますが

こんな私を……どうかよろしくお願いします!!」

久龍「えぇ、それじゃあ託したわ。龍生!」

青石「俺になる…のか?(点目)」

久龍「うふふ、冗談で〜す♪

少し龍生をからかいたかったの。ごめんね〜」

青石「・・・(照)」

伏せた目でパーカーの襟に口を埋める。

桜は、龍生の顔を見ながら首を少し傾げており

この意味が何なのか気付いていなかった。


翌朝・・・

校門を抜ける前の恋花は、いつにもなく俯いた顔で

落ち込んでいるとカバンのハンドルの片方が落ちた。

恋花(友理ちゃんは、ああ言ってくれたけど

やっぱり…申し訳ないな。

最初は、友理ちゃんが特別部隊って言った時は

驚いたし、何だか心強かった♪

でも……何でだろう。

聞いた時は、物凄く嬉しかったのに安心したのに

この拭い切れない気持ち…は一体、なに???

私にとっての[大事なもの]って、何だろう?

私が強くなりたかった理由は、

浅見先輩のような強くて頼れる人に成りたくて

猫又の皆んなを守る為に強くなりたかった事、

家族皆んなで私達の家に生きて連れて帰る事っ!!

だけど、私は…それだけの為………なのかな?

もっと何かあった筈、何か……思い出せない。

何だっけ???)

恋花の目には苦しみや怒り、悲しみが渦巻き続け

耳に入って来るのは砂嵐のような雑音のみ。

黒い空間に閉じ込められるように

孤独と寂しさの波が足に押し寄せて来る。

恋花は、形の見えない耳を両手で塞ぎ続けた。

雑音に苦しむ恋花は思わず、うずくまってしまい

不快な音が耳から取り除かれず、

頬には涙が伝っている事に気付いた瞬間だった。

???「恋花さん、どう…なさいましたか?」

という物静かな声が、

黒い空間の中で一際目立った光が差し込まれ

無我夢中に手を伸ばしていた。

光を掴む所で黒い空間から目を覚まし、

校門前に立った景色が広がっており

恋花の肩に触れていた雫の顔は、不思議そうだった。

雫「どうしたんですか?

こんな目立つ場所で立ち止まって」

恋花「・・・。

……あっ、ユキっち。ユキっちだ♪(涙)」

そう言って恋花は、

そっと雫を持ち上げるように抱き締めていた。

雫「えっ、え。えっ!?

ユキっちは、ちっちゃくて可愛いね〜♪(恋花)

ど、どどどうしたんですか?!

ちょっと…ここじゃ、アレなので校舎っ!!

校舎に一度、入りましょう!(焦)」

と周りの視線が2人に集まる中で

雫は、慌てて校門から高等部の校舎まで走っていく。

校門の周りでその様子を見ていた

他の人達からは、恋花への小言が止まらなかった。

女子「えっ、あれってホントに清見なの???」

女子2「今…物凄い所、見ちゃったよ。

私達に絡んで来る時って

いっつも低級妖怪を馬鹿にしたり軽蔑してた奴が、

あんな一つ目なんかにぃ、何で!!(汗)」

女子3「今までの行いを悔いたんじゃない?

あの一つ目の子も私達と同じ被害者で

謝っている所だったり♪」

女子2「えぇ〜無い無い!あり得ないよ(笑)」

女子「だって清見って、意外と無神経だからさ

人の心とか1回も考えた事、無いっしょ!」

奏太(すっげぇ、言われよう。

恋花の奴、今まで何したんだよ(汗)

それよりアイツ、本当に大丈夫か〜?

昨夜はあんな事があったせいか

あの後、全然…寝付けなかったとか何だか言って

先に出て行ったけど。

猫にストレスは厳禁ってか、

用事を済ませた後でも会ってみるか)

と言いながら小言を言い続ける女子生徒の後ろを

通り過ぎながらズボンのポケットに片手を入れる。


1年Aクラス・・・

小走り程度に廊下まで走って来た2人。

教室に着いても恋花は、雫から離れようとせず

くっ付いたまま呑気に座っていた友理に助けを求め

やっと離してくれた。

友理「もう〜朝から何してるの恋花さん!」

恋花「いや、ごめんごめん♡

(あたし)ってさ、極稀にぃ〜

急激に寂しくなる衝動に襲われるもんで

つい、ちっちゃくて可愛いユキっちに

しがみ付きたい欲が勝っちゃいまして

ごめんねぇ〜☆(照)」

雫「そ、それならそうと先に言って下さい!!

私にも心の準備というものが…あります」

恋花「それってくっ付いても平気ってこ・と?

それは私自身、とても嬉しい事なので(雫)

ふ〜〜〜ん。そっかぁ〜そうなんだね!

でも、何でそう簡単に受け入れてくれるの?

普通は躊躇(ためら)う事なんじゃないの普通は???」

恋花としては、不思議でならない問掛けに対し

雫は多少フリーズしながらも平然と答えた。

雫「誰しも寂しい時はありますから

くっ付いたり、側に居るだけで

……それだけで心が調和されるくらいなら

安心するのは、当然な事だと思います♪

人の温もりを知るだけで

大切な誰かと一緒に過ごしていれば、

ありのままの自分を知れる良い機会だと

そう、信じて来ましたから♡」

恋花「(ありのままの自分を知る機会)

・・・ふん(笑)何だか、不思議だな〜♪

えっ!?ふ、不思議っ!何がですか?!(雫)

何でもな〜い☆ふふ♡

(そっか、そうだったんだ!!)」

そう恋花が何かに気付いた途端、

E組の廊下側から羨望な眼差しだったり

黄色の歓声を上げ始める。

恋花達が視線を向けた頃には

その歓声の正体が、

[特殊部隊の3人]のものである事が分かった。


体からはみ出る程のうねったロングポニーテール、

太ももまで長く毛先は細い。

紺色からシアン色のグラデーションメッシュが

掛かった綺麗な髪色の久龍は右後ろに立っており、

手を前にクロスした姿勢で歩いて来る。

左後ろに立つ青石の見た目は、グレーの短髪!

両手をブラブラとさせながら廊下を歩いて行く。

その中央には、白髪の女性がおり

それは紛れもない桜の姿だったのだ。

後ろの2人は廊下の中心で止まると

桜だけは、どこか不機嫌そうな顔をしていて

2人の前へ現れたのです。

桜「昨日の事、忘れていませんからね?

特に……林堂 友理っ!!

私っ!?(友理)

あなたが、この件に足を踏み入れていなければ

こんな事には巻き込まれず、

済んだかもしれないというのに!

自分から関わってきた事を後悔する事、ね?

まぁ、今すぐにも離脱するなら

話は別ですが〜………

(私があの場に駆け付けた際、

清見と猫又以外の反応は感じられなかった。

なのに彼女は、

いつ…どこからあの廃ビルに居たの?

外には先輩方が待機していた中で

どうやって入った来たのか分からない。

分からない事だらけだけど、

ただ私には彼女が、[得体の知れない何か]としか

考えられない。

私のアレを見られた数少ない人であり、

かつ、凄く不気味な…存在)」

そんな事を桜が考えていると

友理は、大きな声を上げて廊下でこう宣言したのだ。

「いいえ、私は絶対にここから離れません!!

・・・(桜)

1人の友達が困っていながら

自分だけ安全な場所で

ただ待つ事しか出来ないなんて

そんなのおかしいです!

足を踏み入れたのは、私自身なんです。

関わった事実には変わりありませんし、

最後まで見届ける事が本当の友達だと思います!!」

恋花(……友理ちゃん(涙)

桜「そうですか…そうですか。

では、こんな時に言うのもなんですが、

[交渉]………しませんか?

交渉???(2人)

そう、私は特殊部隊として……そっちは猫又として

この街で居座るか、立ち去るかは、

あなた達、次第…ですが。

交渉の日時については、明後日の夜。

昨日と同じ夜中にしましょう。

もし、来なかった場合は?(友理)

その時は、特殊部隊なりの手で。

通達……しましたからね?それでは…」

と言い捨てて桜達は、その場を後にした。


雫「んんっ?

お2人は、何をしたんです……かっ!?」

ダンダンと床を手で叩きながら

バツ目で廊下を転がり込む。

恋花「うぇ〜ん、もう嫌だ嫌だ嫌だ(涙)

たださえ、桜ちゃん達を相手にしたくないのに

いつか特殊部隊と対面する時があるって

分かってたけど、いざそうなると違う!

それに、あの子達は皆んな良い子なのにぃ〜

どうして退治されないといけないのさっ!!

もう泣ぎだいぃぃぃ(泣)」

雫「泣いてますよ!

あれ?おかしいですね〜

私、聞く人間…違えましたでしょうか???

神城さんが言うには、

林堂さんも一緒だったんですよね?

でしたら、林堂さんに〜お聞き……

雪乃さんっ!(友理)

あっ、はい!?!!!!

雪乃さんは、あの2人の詳細は?!

あの2人と言いますと〜

神城さんではなく…後ろに居た先輩方でしょうか?」

友理「うんうんうん!!(高速頷き)」

雫「え、えっと(汗)

その〜なんて言えば、よろしいでしょうか?

何々???(友理)

正確に申しますと私達1年生と3年生は、

あまり接点が無いんです。

廊下や校舎ですれ違う事も極稀ですし、

本当に先輩方と直接会いたい場合は

3年生専用の階段辺りで

出待ちするくらいには滅多に会えません。

だからその〜……お2人の事は、よく知りません!」

友理「そっか。

じゃあ先輩には、先輩達に聞いてみよう!!

まだ授業まで時間があるんだし、

今からでも情報収集するべきだよ!

私達にとって絶対、有益な情報掴んで来るから

恋花さんは、そこで待ってて♪」

雫「え、あっ!?

ちょっと…何で私までぇ〜〜〜!!(バツ目)」

恋花「行っちゃった。ふふ、うん。待ってる」

涙をそっと人差し指で拭い、

どこか嬉しそうな顔をしていた。


2階の渡り廊下前・・・

誠也「で、何で俺らなんだ?」

友理「何か知ってると思って☆☆☆」

雫「はぁ……はぁ…はぁ……早過ぎで〜す(グル目)」

蘭「まぁ、他の人から

テレパシー送られて来たの久しぶりだったから

つい叫んじゃったよ(恥)

それは、それで大丈夫なんですか?(日向)

私達も雫ちゃんと同じように

正確には知らないけれど、

名前と妖怪だけなら私でも分かるよ」

雫「やはり、1学年違うだけで

情報が少ないようですね(焦)」

友理「・・・」

蘭「えっと、じゃあ授業も

もうすぐで始まるから手短に言うとね?

髪の長い女性が[久龍(くりゅう) 智神(ちか)]先輩、[龍神]で

髪の短い男性の方が、[青石(あおいし) 龍生(りゅうせい)]先輩。

[青龍]っていう妖怪よ♪」

誠也「その2人となると〜

あの九城と同じ[特殊部隊の五大勢力]の1人だな」

雫「ご、ご五大勢力っ!?えぇっ!!」

知ってるの?(冷静な友理)

そ、それは勿論ですよ!

前にも言いましたが、特殊部隊の人達は

皆さん[Sクラス]なんです!!

五大勢力となれば、それ以上の力を誇るんです。

そんな人達を相手にしようとしてるんですか

林堂さん?!

駄目ですよ、絶対に駄目〜!(焦)」

友理「……へぇ〜そりゃ凄いね(笑)」

こっそりと嘲笑う友理の表情を見て日向は、

不思議そうな顔で首を傾げる。

日向「???」

蘭「これくらいしか私達は、知らないから

あんまり役に立てないけど〜

でも、どうして急にこんな話を…?」

友理「(睨む)友達を……助ける為なんです!」


カクカクシカジカ・・・


誠也「ふーーーん」

と言いながら腕をクロスさせて

頭の後ろに手を回す。

蘭「そっか、そんな事があったのね。

でも私達じゃ、力になれないや(汗)

・・・(真顔な友理)

初めから絡んでたら別だったかも……だけど、

私達はあくまで特殊部隊のお手伝いさんだから

今回は、手伝えないかな。ごめんね!!」

そんな蘭の迷ったような目を泳がせ、

苦笑う表情に対し友理は冷め切った目で言い放った。

友理「そうですか!

蘭先輩は、特別部隊としての特権の方が

大事なんですね♪

友理…ちゃん?(動揺する蘭)

はぁ〜……そんなんだからいつになっても

自分に自信が持てないんじゃないんですか?

え、えぇっ???(蘭)

ていうより、はなから自信を持とうだなんて

思っていないし、意志も意欲も低く

ランク付けにも微塵も興味が無い。

だって先輩、責任から逃げようとしてますよね?」

その言葉を聞いた蘭は、

後退りながら青ざめな顔で目を泳がし続けた。

蘭「え、あ。いや…そんな事………私は(焦)」

明らかに動揺しており、

胸元の内ポケット辺りを握り締めながら

言葉を詰まらせる。

誠也「それ……どういう事だよ、友理?」

日向「・・・(汗)」

雫「林堂さん???」

友理「蘭先輩が気にしている責任は、

誠也先輩が四大妖怪に挑んて特別部隊を

壊滅させるようなペナルティーの責任でもなく

日向くんの規則違反に対しての問題でも無い。

んっ?(日向)

問題は、蘭先輩自身が分かってる筈で……」

日向「止せ!!」

と日向が瞬きをした一瞬の隙を突いて

影がバッと動いた。

それを静止するよう言った時には、

もう遅く誠也の拳が友理の顔目掛けて

放たれる所だったのだ。

その瞬間、友理は顔色一つ変えずに

目をかっぴらき誠也の勢いは、

友理の鼻と目の先で止まっていた。

誠也「……っ!?

ごめんね(友理)

にぃっ!動かねぇ?!何したんだよ、友理!!」

動揺した誠也の言葉にさえも耳を向けず、

横を通過し、蘭に近寄った。

友理「・・・。

蘭先輩、私は今回…特別部隊として

出向く事はしません!

私は……私の大切な友達を守る為に、

ですから特別部隊の皆さんに責任を押し付ける事も

中途半端な所で終わらせるつもりもありません。

例え私が、特別部隊を脱退する事になっても

命に変えても私は、友達を…守りたいんです!!

……それでは、失礼します」

キリッとした目付きで体を斜めに向け

外から差し込まれた陽の光が丁度、友理の体を照す。

蘭の心を見透かしたかのように

和らいだ笑みを溢して

友理は、雫を置いてその場を後にした。


終始、蘭は俯きながら友理の背中を目で追い、

居なくなるまで目を離さなかった。

[はぁ…]と肩を落とし落胆する蘭を見て

動けるようになった誠也が、口を開く。

蘭「・・・」

誠也「……蘭、大丈夫か?

蘭が、気にする事ないって☆

友理…も少し気が立ってるだけかもしれないし、

蘭は部長として十分、頑張ってるよな(笑)」

日向(珍しい……!)

無理に笑った作り笑顔ではない笑顔を見せる誠也、

それをチラ見するだけだったが

時間差で[ふふ]と口元が笑った所で蘭は、

こう口を開いた。

蘭「…もう、誠也は♪

ニヒッ(誠也)

ありがと♡

雫ちゃん、私から折り入ってお願いがあります!

はい?何でしょ……ってえ!?(雫)

私は、決して特別部隊の特権が剥奪される事に

心配した訳では、無いと言ったら嘘になるけど

本当に今回は手伝えないの。

それだけはごめんなさい!!

でも、それでも雫ちゃんには………

友理ちゃんの事、手助けてしてあげてっ!」

毅然とした態度で雫に頭を下げて頼み込む姿を

見た雫は、目を泳がせ変な汗が顔に現れたのだ。

雫「…えっ?

あ、あのぉ……頭、を上げて…くだっ(汗)」


フラッシュバック・・・


男子「うっわ、あの先輩。1年に頭下げてるぞ」

男子2「何でその1年が、

よりにもよって一つ目なんだよ。

あんな奴に頭下げんなよな(笑)」

女子「先輩も先輩だよ。

こんな公衆の面前で頭下げるの良くないと思う!

あっ、もしかしたらあの1年の子が

無理矢理、先輩に頭下げさせたんじゃない(笑)」

女子2「うわ〜ホント、最低。

わざわざ先輩を巻き込むなってぇ〜」


中学の頃、雫は初対面にも関わらず

先輩と廊下で出会った。

しかもこれは、謝罪の礼ではなく

すれ違い様に挨拶の礼で

頭を下げる所を1人に見られたら最後、

瞬く間に話が一人歩きしていく世界。

無数の手が雫を指差し、

圧迫感のある目付きで視線を飛ばして来る。

全員「お前が……悪い。お前が悪い!お前が!!」

そんな視線に勘付いた先輩は、

ガヤ達に鋭くガンを飛ばすと

一瞬にして一網打尽にバッタバッタと倒れていった。


フラッシュバック終了・・・


その恐怖を思い出した雫は、

3人から後退りながら大きな目を腕で隠す。

そんな素振りにいち早く気付いた日向は、

蘭の肩に触れ小声でこう言った。

日向「駄目ですよ、鈴木さん。

無闇やたらに頭を下げている所を

誰かに見られたら変な噂が飛び交うのは、

間違いなく目の前に居る雪乃さんですよ!

ハッ!?私、そういうつもりじゃ……(蘭)

分かっています。

こちらが分かっていても野次馬達は、

勝手に解釈をし、勝手に撒き散らす人しか居ない。

これは学年関係なく起こり得る事です。

今は、誰も見ていなかったお陰で

何も起こりませんでしたが、

軽率に頭を下げる行為は頂けません」

蘭「う、うん。ごめんね雫ちゃん(焦)

嫌な事、思い出させちゃって!!」

雫「……いっ、良いんです。

私の覚悟が足りなかっただけなので

わざわざ鈴木先輩が、謝らなくても!

先輩達の代わりに私が、林堂さん達を助けます。

最善を尽くします!!

そ、それでは…私は、これで(汗)」

不安な目で訴えながら雫は、

長い廊下をひたすら走って行ってしまった。

蘭「・・・。

それじゃあ2人共、私先に教室に戻ってるね♪

今日に限って授業の準備するの忘れてたから

まあね、日向くん」

と言って蘭は逃げるように離れて行き、

2人はゆっくりと廊下を歩いた。

誠也と日向が教室を戻ろうとした途中、

ふと誠也は何かを思い出したかのように

日向に話し掛ける。

誠也「そういや日向、青石は知らねぇけど

昔、久龍とどっかで接点無かったっけ?

あるよ、委員会でね。でも少しだけだよ(日向)

少しでも何か分かるんなら

お前だけでも協力したら、どうなんだ?

性格とか戦い方とか〜」

日向「言った筈だよ。

確かに僕は、中等部くらいの時に

久龍先輩と接点はあった…けど、そのくらいだよ。

ほんの一握りしか会っていないし、

会話もそこまでして無い」

誠也「けどよ?

お前、変に気に入られてなかったか???」

日向「それは……僕も知らない!

とにかく僕が知ってる先輩は、

性格は、非常に温厚で誰にでも優しい理想的な人。

仮に僕が見て来た今までの先輩が、

表向きの顔だったら

特殊部隊としての顔だと非常に冷淡な性格だって

あり得る。

ただ…それだけの事だよ」

誠也「ふーーーん」

両手を頭の後ろに組んだ誠也を見ながら

日向はこう思った。

日向(こう見えて誠也は

一見、話を聞いていない様に見えて

意外と冷静に物事を理解している事が

最近、分かってきた。

普段怠けてる人達こそ、聞いていない人が多いが

誠也の場合は前々からちゃんと聞いていたみたい。

たまにボーっとしてる時があるが

それ以外は、普通だ。

普通じゃない事といえば、誠也の性格にも

少し変化があった。

前は、もっと周りをヒヤヒヤさせる奴だったのが

かなり消極的になった気がする。

さっきのは、手が出てしまったが

鈴木さんと友理さんの事、

ちゃんとフォローもしてたし、いつもの誠也なら

想像が出来ない程の紳士っぷりだ。

まぁ手は出るけど、このまま戦闘狂の方も

解消されるともっと良いんだけどな〜〜

横目でチラッと誠也の事を見ていると

日向側の誠也の手が震えており、

何かを噛み締めていた。

日向(・・・。まさかね〜(笑)


そんな事を思いながら

一方日向の横を歩く誠也は、こう考えていたのだ。

誠也(友理に、後輩を殴り掛けたのは

俺の落ち度だっ!

だが、それ以前に俺は、友理が蘭を見て

何が分かったのか知りたいんだ。

俺には、蘭と出会った時から

蘭の素性も今だによく分からない。

けど、それでも俺が目指しているのは間違いなく

[アイツ]を蘭から遠ざける事っ!!

アイツだけは、

俺が絶対に蘭を守ってやるんだ(怒)

……とまぁ、今怒っても

俺に勝ち目なんて無い事だけは、

俺でも嫌になるくらい自覚した。

だからこそ俺は、四大妖怪相手に

何度でも喰らい付いてやるんだ(笑)

前の俺だったら蘭の気持ちなんてお構いなしに

愚痴ってただろうけど、今回は違った。

俺でも驚いている。

ムカ付きはしたし、怒りを呑む事すら出来なくて

体が勝手に動いた…気がする。

でも、アレは完全に友理の何らかの力で

抑制させられてたとはいえ、

日向にも止められた事も関係してっかな?

普段なら止めてくる日向にも掴み掛かる所を

俺は、その気にもなれなかった。

理由は単純。

アイツの過去を知ってから

日向にも当たりづらくなったのもここからだ。

前の俺は、気に障る言動や棘のある言葉の数々に

何が何でも許さなかった。

けど、あのよく分からん男に報復するとか

何とか言ってた時に事前に話してくれた時からかな。

日向への見方も変わった気がする。

[友達]、友理も[友達]って言ってたな?

アイツは〜……身近な存在が急に消えて

心細かっただろうし、何より寂しい思いを

全部1人で抱え込んだまま俺らと出会ったのか。

本当に寂しかったんだな………

記憶から消えなくても、もし蘭が居なくなったら

俺は、どうなるんかな?

そんな非現実的な事が起こったらと考えてみると

日向がああなってもおかしくないんだろうなって

ひしひしと感じるよ。

昔の日向も案外、見てみたい感はあるし

もう終わった事だから……別にそんな事、

考えなくても良いんだろうけど〜

それでも。また…日向が1人にならないよう

俺も精進しないと、な♪)

そう考えながら横に居る日向の表情を

顔ごと向けて見ていた為、流石に露骨過ぎたのか

日向も気になり出す。

日向「なに?

いや……別に。ただ〜(誠也)

ただ、何さってぇ〜…えっ???」

そう日向が質問すると、

誠也はあまりにも意味深に返すせいか

一度、廊下で立ち止まろうと足を止めた。

するといきなり日向の後ろから抱き着いてきたのだ。

日向「えっ、えっ?!な、なに???(焦)」

誠也「今まで、気付いてやれなくて悪かった」

そんないつもの誠也なら

絶対に言わない言葉や行為に訳が分からず、

動揺を見せる日向は拒否った。

日向「いきなり何っ?!(汗)離れてよ!

分かった分かった。落ち着けってぇ(焦る誠也)

お前だよ!!

そろそろ授業始まるから先、帰る」

プイッと顔を背けて

日向は、少し小走り気味に誠也から離れ

顔を赤くさせていた。

日向「・・・もう(恥)

(今まで、気付いてやれなくて悪かった)なんて

急に言われて、何の話?!知らないよ!」

と何回か袖で顔を拭い気持ちを切り替え、

一呼吸吐いてから歩き出そうとした所を

[ある人]が、日向を静止するよう現れたのだ。

日向「んっ?」


放課後・・・

校門前の壁を背にして誰かを待っている恋花。

何度も見てきた夕日の時間が、

こんなにも自分を追い込む程の苦痛を

伴う事になるとは思いも寄らなかった。

恋花「(結局、授業前に聞きに行ったきり

友理ちゃんとは、まともに話せていない。

昼休みも放課後も会おうとしたんだけど、

今日に限って教室出て行くのが

早かったんだよね〜(汗)

情報…上手く掴めなかったのかな?

でも下駄箱には、まだ靴が入ってたから

どこか寄ってるのかな?

いやいやいや、友達の友理ちゃんばっかりが

行動して貰っていうのに

私、何もしてない?!どうしよう!!

動くとしても何したら良いのかな???

友理ちゃんは、情報収集だし

奏太は〜………何してるんだろう?(真顔)

日頃から雲外鏡の仕事ばっかで

学校以外で会った事も見た事も無いし、

よく…知らない。ヤバい!

私の中で大問題過ぎる壁にぶつかっている気がする。

え?えぇ〜?私って、奏太に嫌われてる?!

そもそも雲外鏡の仕事って何するの?

遊び相手としての遊びじゃなくて、デー…ト!?

無い無い!私、何考えてんのバカバカ(恥)」

奏太「あれ?まだ居たのか、恋花???」

恋花「にゃあぁぁぁぁぁ?!!!!!」

ほぼ下向で地面をボッーと眺めていた恋花に

突然、現れた黒い影から奏太の声が聞こえ

思わず瞳孔が開き叫んでしまったのだ。

奏太「う、びっ……くりしたぁ〜(汗)

はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…脅かさない、でよ(恋花)

いや、別に脅かすつもりは無かったんだが〜

で、何でこんな所で居るんだ。

誰か待ってたのか?」

恋花「そ、そんなの……私の勝手でしょ!

友理ちゃんの事、ずっと待ってたんだから☆

あ、うん?何で???(奏太)

何でって、作戦会議に決まってるじゃない!!

2人が動いてるのに私だけ動いてないんだよ(汗)

どうすれば良いの?!どう〜やれば良いの!」

伏せた目を恋花から逸らすと

奏太は、少し動揺した様子で口を開いた。

奏太「あぁー…それか。

それしかないよ?!(恋花)

それなら裏門から出て行く所、

さっき教室で見たぞ?

えぇ!?裏門って使う人って居るんだ(恋花)

使ってる人に謝れっ!

でも何でだ?

友達なんだから話くらいは、出来るだろ別に」

恋花「そ・う・だ・け・ど〜今日は違うの!!

友理ちゃんがね、特殊部隊の五大勢力の2人の情報を

集めに行ったきり話せてないんだよぉ〜……(涙)

しかも3人一緒に来たんだから。

3人?2人じゃないのか?!(奏太)

え、そっか。奏太、あの場に居なかったもんね。

実は〜…………

カクカクシカジカ・・・

……だったから、大変だったんだよ」

奏太「あの2人がわざわざ1年フロアに来たのか?

珍しいな。

珍しい?何が???(恋花)

3年生となると[面会謝絶]並みに

用事が無ければ、本当に会えないんだよ(汗)

その2人が一緒に来るとなると

恋花と友理だったか?

2人を偵察しに来た可能性が高い。

偵察???どうして?(恋花)

桜が誰だか知らないが、

ソイツとも手合わせはしてないんだろう?

今まで一度も」

恋花「同じクラスで戦った事は、無いかも。

そういえば、花梨から始業式で聞いたんだけど

2年生からマジで戦う事、多くなるの?(汗)」

と恋花の中で勝手に緊張が走るような事を聞くが、

奏太は、アッサリと言い放った。

奏太「あぁ、そうだな。

・・・。奏太のバッカーーーッ!!(恋花)

何でだよ(即答)

恋花の質問に答えたまでだ。

嘘を吐いて(なん)になる???

グサッ!(恋花)

大体、3人居るなら

もう少し早めに情報を落としてくれないか?

俺が勝手に予言の内容を知ってるとはいえ、

3人居るのは初耳だぞ!!」

恋花「グサッ!グサッ!えっ?

ちょっと奏太も予言って言ってるけど何の話っ?!

ヤッバ!!2日連続、口滑らしたわ(奏太)

で、奏太が知ってる範囲の予言って何だったの?」

奏太「うーん……はぁ。

今回は、俺の不注意だ。手短に話すぞ?

(と言っても俺が今日死ぬかもしれない事は、

恋花には言わないでおこう。

帰って来た時に愚痴でも何度でも聞いてやるけど、

そうならないように俺は、予言を回避して見せる)

カクカクシカジカ・・・

これでお互いの状況整理が付いたな。

分かったか?

カーーーン。無理…かもぉ(白目剥く恋花)

おいおい、やる前から諦めんなよ!

猫又達を助ける為には、これしか方法がねぇの。

今回、弱音しか吐いてじゃないか?

いつもの恋花らしくもない」

恋花「だって、私の相手って久龍先輩なんでしょ!?

ヤバいよ!?ヤバいじゃん!

絶対に無理。勝てないよ、私なんかが!!

にゃあぁぁぁ(涙)」

奏太「それは俺も同じだ!

俺は、既に対策済みだが〜………(汗)

(あたし)の意思はっ!?(恋花)

むしろ、そんなに嫌なら行かなくても良いんだぞ?

猫に全て抱え込ませるのも良くない。

覚悟が無いならお前は、すぐにでも離脱しろ」

白いシルエットが恋花を覆い尽くし、

ツインテールが風に流され瞳孔を剥き出しに

反論して来た。

恋花「……っ!(あたし)は、嫌だよ!!(焦)

それじゃあ、それじゃあ友理ちゃんや奏太が

手伝ってくれた分も全部、裏切る事になっちゃう。

何より…私は、

皆んなが安心して暮らせるような環境を作る為にも

……私は、やるよ。

決心なんてとっくに付いてるよ!!

でも、いざこうなると私、怖いよ(涙)

怖いけど桜ちゃん達に勝とうだなんて思わないけど、

それでも………手伝ってくれた2人の為にも

私、戦いたい!

例え敵わない相手でも

皆んなの為なら全力で戦えるよ、(あたし)☆」

瞳の中のハイライトが白く揺れる所を見て

奏太は、恋花の横を立ち頭にポフッと手を置いた。

奏太「それでこそ、恋花だ♪

勝とうだなんて思うな。

いざという時は、俺が絶対に恋花を守ってやる!

結果はさておき、こっちには予言がある。

予言が味方してる限り、

こっちは相手より一歩リードしてるんだ。

それだけでも頼もうしいと…思わないか?(笑)」

恋花「うん!!そうだね。ねぇ、奏太(照)」

奏太「んっ?」

と言って恋花の方に横目で見る事を見越してか

恋花は、奏太の左耳を甘噛みして来た。

バッと顔を真っ赤にさせて耳を抑え

狼狽える奏太の顔を見て恋花は、

色気のある表情でサイレントニャー をしながら

恋花「また後で、ね!奏太♡」

そう言って奏太を1人置いて先に帰ってったのだ。

奏太「アイツ……俺の心臓が持たない事、

知っての態度だったら、許さないからな…(恥)」


その夜・・・

恋花「ペ〜ロ。ペロペロペロ、ペロ」

交渉の時間まで

子猫化した恋花は部屋のベッドの上で

ひたすら自分の体を舐めて毛繕いをしていた。

良い感じに毛並みが整った所で

恋花は、ベッドの上で体をのび〜んさせてから

窓の縁に乗り移る。

真ん丸お月様が見える夜空を眺め終えると

部屋の窓から外へ出て

屋根の上をランニング程度に走り抜け、

秘密基地へワープした空き地まで走って行った。

そこには、既に奏太と友理が待っており

2人で何か話している所だった。

恋花「お待たせ〜!はぁ…はぁ2人共☆」

友理「あっ、恋花さん。こんばんは♪

ごめんね、学校の時は〜!!

良い情報が全然集まらなくて、

でも対策なら万全の状態だから平気だよ☆」

奏太「・・・」

恋花「何かも分からないのに、対策?

友理「うん!

これで心置きなく戦えるよ、恋花さん!!」

恋花「……う、うん?分かったよ」

奏太(さっき俺が目の前で話した人とは、

思えない程の別人っぷりだ。

これだから初対面の人は、嫌い…なんだ)

友理「どうやら、来たみたいだね」

いつもの友理とはワントーン下げた声色で

2人に警戒を呼び掛けた。

緊張の走る状況にも関わらず、

冷静過ぎる友理の対応にかなり驚きながらも

2人は目の前に目線を飛ばす。

気配のしない3人の姿が、

空き地に入る一歩手前で露わとなる。

桜と龍生ペアは、

妖怪化しておらず人の姿を保てており

気配を消したまま3人に近寄るつもりだったのだ。

恋花「す、凄い……?!」

龍生と久龍「妖気ドーム(だな)ね」

2人が同時に口に出すと

横目でチラッと見る龍生とニッコリと微笑む久龍。

不思議そうな顔で桜は、久龍に顔を向けた。

桜「妖気ドーム?何ですか、それは???」

久龍「そうね。分かりやすく言えば〜

目に見えない[空間把握能力]…と言った方が

分かりやすいでしょうか?

それぞれが持つ能力ではなく、

単純にスキルの話です。

なるほどっ!(桜)

あら〜?

子猫には、この手の話はまだ早かったかな♪」

いつの間にか友理の肩に乗った恋花が、

前屈姿勢で伸びていたのだ。

恋花「う〜〜ん(しょんぼり)」

奏太「そもそも考える気、無いだろ」

恋花「アハッ♪バレた?」

ちょこっと出した舌を揺らす呑気な顔に

少々、呆れ気味に溜め息を吐く。

桜「それでは、話が脱線した所で

本題へ入りましょうか!

あっ、はい?!(恋花)

交渉の内容としては、そちらの要望次第では

私達の今後に関わる事ですので

ちゃんとお考えになって下さい、清見さん」

鋭い目付きで制圧させるような威圧感に恋花は、

思わずギョッとしていた。


恋花「・・・。

(さっきのゆるふわな空気から

一気に流れが変わった。

えっと、交渉内容は何だっけ???何だっけな。

あぁ〜ミケちゃんの行方と皆んなの安全確保!!

それに奏太が言ってた予言の話、

私が久龍先輩と戦う意味ってホントにあるのかな?

話をするだけなら

桜ちゃんと2人っきりで話せれば、

別に良いと思ってた。

けど、あの先輩達も一緒だと

桜ちゃん1人だけを離す事は難しいぃ。

やっぱり戦わないと…だよね?じゃないと

ミケちゃんの為にも、猫又の皆んなの為にも

ここは頑張らなきゃ!!)

私が、猫又の代表として言わせて頂くけど

全国各地に出歩いている猫又達が、

安心安全な暮らしが可能な環境が欲しいです!

例えば???(桜)

それは〜……街の中を自由に歩いたり、

猫又が人に危害を加える危険な妖怪じゃない事を

全国民に知らせて貰えればと

こっちとしては、もう願ったり叶ったりですよ!!」

奏太「おい、恋花…欲を言い過ぎだ(汗)

少し弁えろ!

ホントにそうなるかは、また別だぞ?!(小声)」

恋花「だ、だってぇ〜

今までの鬱憤が溜まりに溜まり過ぎて

ズカズカ言っちゃったんだもーん(涙)」

奏太「お前なぁ〜……

交渉だけは、真面目にやれよ!!(小声)」

龍生「随分な要望だな(真顔)」

奏太「ほら見ろ、全然興味無い顔だぞ。アレは」

久龍「まぁ、ある意味こちらの不手際なんだし

被害者側の言い分も分からなくもないわ。

むしろ、妥当な判断ね♪

感心…してる場合か???(龍生)

だってそうじゃない?うふふ♡」

桜「とにかく、そちらの要望は分かりました。

では、次に私達の要望を聞いて下さいますか?

にゃ!?にゃんでしょう、か?(恋花)

忘れてたな(奏太)

前にも言いましたが

今回、私達が関わっているのは他でもありません。

[発電所の件]で調査しにやって来ました。

んっ?(友理)

三毛猫の子は、あなた達のお仲間であり

数日前から行方知らずが本当…でしたら

三毛猫に何らかのトラブルが起こっていた場合は、

免除…という形で対処する事をお約束致します。

……えっ?(恋花)

ですが、この街に居座る代わりに

猫又達には、我々と共に戦場まで

ご同行して下さるととても助かります。

これくらいの対価は、当然ですよね♪

何言ってぇ…るの桜ちゃん???(恋花)

………そちらの要望を私が、聞いたのですから

これが最善な事でしょう。

それとも……何ですか?

私の意見以外にも清見さん達は、

最善の案があるとでも???」

恋花「そ、それは………でもそのやり方じゃ、

ど、言い方はアレですが[奴隷]じゃないですか!

そんなの被害者達の弁明を無視してるだけぇ(焦)

それが交渉…というものですよ?(桜)

違う!!絶対、間違ってる!

私達がはなから戦う意志が無くてもですか(焦)」

桜「その場合は、戦場に物資を届けて下さい。

私達よりも小柄な猫又なら可能ですよね?」

恋花「うっ、それでも納得いきません!!」

久龍「うーん、困りましたねぇ(汗)

とても良い考えじゃありませんか♪

戦闘は私達、特殊部隊に任せて

猫又さん達は物資支援または、

隠密で戦略する….…のは、どうかしら?」

恋花「どうかしら、じゃないですよ!?

私達がもし仮に

特殊部隊の人達が周りに居なかった場合、

いざという時は戦えない子だって居ます!

一定の関係を作らない限りは、

私達は気まぐれなのでお勧めは出来ませんよ(焦)」

奏太「そんな事の為に

丁寧に反論しなくて良いんだよ、恋花。

こっちの言い分が通らないなら

手なんて1つしか無いだろ?(小声)」

恋花「・・・(汗)う、うん。

分かった…私も覚悟は、もう出来てるよ!」

奏太「あぁ、行って来い☆」

と言って恋花は、友理の肩から奏太の肩へ乗り移り

前に伸ばした腕に沿って駆け抜ける。

すると、子猫の姿から化け猫の姿へと変化し

瞬時に爪を剥き出し、久龍ではなく

龍生に襲い掛かったのだ!!

終始、目を瞑ったまま後ろで待機していた龍生は

事態が変わったにものの焦り一つ見せず、

地面から足を離した。

空気を足で切るように[青電縄(せいでんなわ)]と言って

黒い縄に青い電気を帯びさせた

拘束を作り出し、恋花の爪と接触する。

ガジン!!!!!!・・・

金属音のような爪の音を鳴らし、少し離れた所で

化け猫の前足に巻き付け空き地に放り投げたのだ。

空中で何とか体勢を整えた。

化け猫「んにゃあぁぁ?!ヴゥーーー!(睨む)

今にゃあ、奏太っ!!」

奏太「恋花は黙っとけ!

作戦が全部、筒抜けになるっての(汗)

と恋花を飛ばし終えた龍生は降下し、

化け猫の方へ目線を向けていると

龍生の体に重みが掛かる。

龍生「んっ?どういうつもりだ?」

奏太「こっちに誘い込む為のフェイクだよ!!」

そう奏太が言い放つと

胸ぐらを掴み、龍生の左手を握り締めたと同時に

足を引っ掛け後ろにあらかじめ設置して置いた

ゲートに落とし入れる。

友理も奏太から事前に言われた通り人知れず、

桜の腕を掴み自らワープしたのだ。


久龍「龍生?桜ちゃん???」

奏太が龍生と一緒に入って行くのを確認し、

尽かさず恋花も決められたゲートに追い込もうと

キョロキョロと周りを見回す隙だらけな久龍に

勢いよく突進して行った。

恋花「にゃあぁぁぁぁぁ!!!!!!」

久龍「あらら、2人と離れされちゃった。

でもまぁ、これで躊躇(ためら)いもなく

本気でやれそうだわ♪」

そう言って久龍は、

とてつもない速度で突進して来る

化け猫の頭、背中、尻尾に軽く触れ

体操選手のような身軽な柔軟を駆使して

後ろへと間合い込み、急ブレーキを掛けた。

恋花「にゃあ?!ぐぬぬぬ(焦)

はぁ……はぁ…はぁ……はぁ…はぁ……はぁ………

(えっ、今の動き何っ!?

早くてよく見えなかったけど、

体に触れられた感覚があるのに何も…されてない?

いや、でも何かされた事には、違いない!

分かんないけど、時間差で来るパターンにゃ)」

奏太が設置しておいたゲートの入り口が、

徐々に閉じていき跡形も無く消えていったのだった。

久龍「大丈夫ですよ〜♪

私は、この場から離れる事もしませんから

好きに戦って下さいな。

ではでは、久しぶりに楽しみましょうか♡」

恋花「……っ!(汗)」

足並みを揃え、両手を前にクロスさせた姿勢で

久龍の紫色の瞳と

ポニーテールの下部(かぶ)がシアン色に濃く光る。


恋花VS久龍・・・

化け猫は、瞳孔をかなり開けた目で

じっとこちらの様子を見ている久龍を睨み付ける。

尻尾をフヨフヨと動かしてから

恋花は、風を切るように素早い足取りで

久龍の目の前でジャンプをし、

上から攻撃を仕掛けたのだ。

恋花「妖術:ねこねこ肉球っ!」

ぷっくらとした肉球や爪、手などに妖力を込めて

襲い掛かるも久龍は軽くあしらい、

手首を捻るように手の平で空気を押し切り

化け猫を弾く。

パッン!!!・・・

ほんの一瞬の出来事だった。

前足を久龍に振り下ろすだけの妖術ですら届かず、

恋花は満月を背景に打ち上げられたのだ。

力技で体を捻り返し、

空気を蹴るように空き地のど真ん中に着地した

恋花は怯みながらも泣きそうな顔で

無我夢中に足を止める間もなく、喰らい付く。

恋花「(勝てるなんて思うなっ!

そんな甘い事、考えても叶わないしぃ、

それに弱音を吐いてたって

誰かがこの問題に触れなきゃ、解決する事なんて

夢のまた夢じゃない(悔)

こうでもしないと私は………私達はっ!!

生きる意味も見出せなくなる。

それでも私は、皆んなとそして花梨の為にも

ここは……私が倒れてでも

前へ進まなきゃいけないんだ(涙)

妖術:紅蓮魔(あかれんま)!」

化け猫に変化した姿の時にチラ付いていた

橙色の炎の(たま)が尻尾の周りをずっと彷徨(うろつ)いており、

人魂がブワッと火力を上げる。

すると、2つに分かれた二股尻尾をぶん回し始め

風と橙色の炎が巻き起こって

恋花「にゃにゃあ!にゃあぁぁぁあ!!」

と猫語を言って首を前へグイッと向けた。

その炎にゆっくりと瞼を開けて見ていると

微かに笑っており、キラキラした目でこう口にする。

久龍「楽しい……そう来なくっちゃ♪

あなた達、猫又の思いの丈を私にぶつけて頂戴!

そして、見せて♡(ボソッ)

例え…抗えない事でも、その人が抱える想いでも

私は、その我儘を聞いてあげる。

包み込んであげるから、希望を……捨てちゃダメ♪

私にその思いの丈をぶつけるの…さぁ、戦って!!

[神聖なる、この地に流れる力の権化よ。

全ての力を(われ)に分け与えたまえ]!

妖術:蒼炎(そうえん)業火(ごうか)♪」

フワッとした声で詠唱を唱え終えると

久龍の手から湧き上がる蒼い炎の人魂が

ブワッと現れ、腕を振り下ろす。

蒼い炎柱が渦を巻くように回転し、

恋花の炎と久龍の炎が激突したのだ!!

・・・・・・・・・・

恋花(結果は、惨敗。

久龍先輩の攻撃は、私が出した炎と衝突して

すぐ私の元へ加速して来た。

今の私は、化け猫の姿で地面に横倒れている。

こんなにもあっさりやられるなんて

思っても見なかったけど、流石…覚醒した実力者だ)

糸が切れたように目を閉じ、恋花は死を待った。


ゆっくりと歩み寄って来る久龍に

釘を刺すかのように背後から銀色の人魂が、

智神を襲うも手刀で横一文字に炎を切り裂いた。

久龍(今の攻撃、陽炎(かげろう)下位互換(かいごかん)である火炎球(かえんきゅう)?!

普通の妖怪じゃ、まずあり得ない威力だわ(汗)

こんな夜遅くに……この街を出歩く強力な存在、

今…野放しにでもすれば、

この街が危険に晒される可能性も………

それに場所は、既に割れている。

もう少し隠れる場所があるでしょうに

茂みの裏に居るだなんて。

私に向けた攻撃が、誰なのか知る権利がある。

場合によっては排除しなくてわ)

キリッとした目付きで

民家の近くに生えていた茂みへと近付いていく。

そんな久龍の足音が自分から離れて行く事に

違和感を覚えた恋花は、再び目を開けた。

無音のようでズッシリとした重力感、

相手を怯ませる目的で足音を鳴らし

???が、頭を抱えながらも縮こまっていたのだ。

(どうしよう、どうしよう(焦)

(わたし)、撃っちゃったよ!?

妖気ドームで気配遮断してる筈なのに

久龍先輩に気付かれたっ!

やっぱり来ない方が、良かったのかな……(涙)

でも鈴木先輩に頼まれた事を放棄できないし、

林堂さんも危険に晒されてるんだ。

だから私も助けてあげたい!!

けど、気付かれた事を悔いても仕方ない。

ここは報復すべき…こと(汗)

来た事に後悔していたのは、紛れもなく雫だ。

お辞儀1つで過去の事を蒸し返されてしまい、

恐怖心が勝っていたが先輩からのお願いを

無視する事が出来ず、

それを証明する為にも遥々やって来たのだ。

今では、来た事よりも久龍を撃った事への責任に

対しての震えが止まる事を知らない。

雫の居る茂みの前に散っていた枯葉を踏んだ音で

久龍の足が止まった。

間一髪の所で久龍は何か気付き、

雫が隠れている場所から離れ

石塀の向こう側を覗いた先に久龍が見たのは!!


奏太と龍生・・・

龍生「何の真似までだ、水雲(みずも)

こんな場所に連れ込んで来て

一体、(なん)になるってんだ?」

奏太「別に、ただあの場に留まれば戦場と化する

可能性を考慮しただけに過ぎない。

例え分散したからとはいえ、

俺ら個人で戦った所で2人の先輩方に勝てる

保証なんて最初からありませんから。

どの道、こうなる運命なのには

変わりないん何でしょう、青石…先輩?(睨む)」

龍生「お前達からは、そんな風に見えたんだな。

逆に俺からして見れば、

水雲は随分と万全な状態を装って

少し焦っているようにも見えるけどな?」

奏太「・・・(汗)

(これだから俺の事を知り尽くしている

先輩とは戦いたくなかったんだ!

それでも俺は、あらゆる事態に備えて準備して来た。

陸から聞いた予言の条件を整理すると

[1つ、満月の日であること。

1つ、羽田市の空き地ではないこと。

1つ、俺が青石先輩と戦うこと。

1つ、殺される未来であること]

2つ目だけは、どうしても情報足らずで

何回聞いてもそれ以外のヒントは無かった。

どうやら予言は、本人が見たいものが

映し出される訳じゃないみたいなんだ。

それだけが、たった一つの誤算だったな〜(焦)

全てを見通せるような万能な能力は

ほとんど存在しないが、

それでもどこかで役に立てる場面がある筈だ!!

陸も陸で思い出そうと必死過ぎて

ちょっとキャパオーバーしてた事が、

少し心残りだけど。

まぁ全部、終わったら何かお礼しないとな♪

だからこそ、ここで終わる訳にはいかない。

俺が、死ぬ可能性を少しでも逸らす事が出来るなら

どこまでも足掻いてやるさっ!)

柄谷町のあの空き地のど真ん中で

2人は、向かい合いながら立ち尽くしていた。

敵を目の前にして

奏太もようやく覚悟が決まったかのように

真っ直ぐな目付きで龍生を見る。

すると、奏太は驚く。

なぜなら、目の前に立っているのは

龍生であるがいつもの紳士っぽさが抜け落ち、

完全に仕事モードへと移行したのだ。

それは、久龍と同じように髪は光る事は無いが

龍生の青い瞳が濃く光っている。

龍生「そうか。

なら俺と智神を離した報い、晴らさせても良いんだな?

そんじゃ息の根を止めてやろうか、水雲(ガチギレ)

奏太「ブッー!ケホッケホッ。

(前々から分かってた事だけど〜

何で青石先輩、久龍先輩以外の人には

殺意がこんなにも高いんだよ?!

違う、殺意もそうだが

この人…歴とした[ヤンデレ]だったなぁ(汗)

何か俺に失礼な事、言ってないか?(龍生)

いや、ぜっんぜん!!事実ですけど!?」

と思わず、考えている事を口走ってしまい

それを聞いた龍生は、

良い顔で瞳をもっと光らせたのだ。

龍生「ほぉ?

ちょっとは、調子が上がって来てるみたいだな。

良いだろう。とっとと、失せろ!弱い奴(笑)」

奏太「だから何でそんなに殺意高ぇんだよ!!

確かに、青石先輩の言う通り俺は弱いです。けど!

恋花と陸を泣かす奴は、誰であろうと

俺が……絶対に許さない!!」

龍生「良い威勢だ、それは褒めてやる。

が、所詮…お前は雲外鏡だ。

日頃から運動もしてない怠けた奴が、

俺より偉そうな事を言うと痛い目合うぞ?」

奏太「ヘッ(笑)別に自分はどうだって良いね☆

俺は、タフだから…な♪」


龍生「・・・ふん、そうかよ(笑)」

と前に組んでいた腕を崩し、足を横に引くと

砂埃が消える前に龍生の足が

目の前に飛んで来る。

その速度に圧倒されながらも奏太は怯む間もなく

内ポケットに手を伸ばし、

手の平にはカチャッという音が聞こえた。

かなり年季の入った古い丸鏡であり、

飛んで来る龍生の足の前に突き出す。

鏡によって引き込まれた足が死角から現れ、

ゲートを通じて襲い掛かって来たのだ!

それを全て見越したのか龍生は、

足を上げた状態でその場にしゃがみ込み

自分の足を回避する。

奏太「……っ!?(汗)」

龍生「そんな見え見えな戦術が、通用するとでも

手の内を相手に晒し過ぎだ。

それに水雲、その鏡…壊されたら都合が悪いのは

お前の方なんじゃないのか?」

と鏡から足を振り払うような足の動きに

今度こそ奏太は怯んでしまう。

その隙にもう片方の足で奏太を転ばせ、

目にも止まらぬ早技でゲートから右足を引っ込めて

すぐ鉤爪で奏太の服を引き裂いた。

不恰好な姿勢で間一髪で避けれたのが、

不思議なくらいの運動神経の無さ。

奏太「あっぶねぇ?!

(今の一瞬で体勢を崩された挙句に腹部には爪の跡。

加減したのか知らねぇけど、

肌に接触………していないな(汗)

この人、龍化どころか

近接戦ですら持ち込めないとか反則過ぎるだろ!!

そんな先輩と比べて俺は、情けないな…全く。

アレだけでビビってちゃ相手にもされないし、

見向きもされねぇってのに……どうすればっ!

どうすれば、あと少し時間を稼げるんだ。

ぶっつけ本番で例の件を実行できる程、

俺に…余裕があんのかよ?(焦)

とにかく、妖力を減らされない為にも

極力控えないとな……)」

龍生「来ないなら、

こっちから仕掛けさせて貰うぞっ!」

と素早い足捌きで足技が炸裂するも

不慣れな足取りで避け続ける奏太の顔スレスレに

振り上げられた足に気を取られ、

龍生の黒い爪が奏太に向く。

目の前から消えた手は、片耳を引き裂き

そのまま足先まで容赦なく振り下ろされたのだ。

ギリギリ真っ二つにされずに済んだが、

体には激痛だけが残る。

奏太「ああぁぁぁ!?!!!!

はぁ……はぁ…はぁ……はぁ…はぁ……はぁ(汗)

うっ、相変わらずお構いなしなんですね。

もう…怖気付いたのか?話にならないねぇ(龍生)

・・・。

今は、そんな余裕…俺には無い……ですよ(汗)

(まずい、意図的に妖力をジリジリ減らされていく。

魂から近い場所を集中されると消耗が激しい!

俺の武器は、鏡が無い限りはほぼ無力に近いし

青石先輩の事だ…どっちも対応が出来る筈。

結局、俺は自分の身を守る事で精一杯ってか

[あの人]の言う通りだ。

ちゃんと……上手くやらねぇと許さないからな(笑)」

龍生「・・・」


友理と桜・・・

羽田市の空き地から離れて

各々戦っている最中、

今、桜が居るのは友理の自宅だったのだ。

明るい電気のリビングの下でテーブルを囲い、

呑気にお茶を(すす)っていた。

一息吐いた所で桜から口を開く。

桜「それで、私だけここに連れて来た訳を

そろそろ教えて頂けますか、林堂さん?

んっ?まだしらを切るつもりですか(友理)

さぁ、何の事でしょうか?

私は先程も申しましたよね。

私達、特殊部隊の判断としては

[戦場経験]または、[戦場での支援要求]だけだと」

友理「確かにその事は、

神城さんの口からちゃんとお聞きました。

ですが、それは…[ウソ]の内容ですよね?

どうしてですか???(桜)

そう言えば、きっと私達が武力行使に出ると踏んで

わざと仕掛けた罠……そう、私は思ったんです。

根拠は?別に可笑しな話では無いでしょう(桜)

そうですね。

確かに神城さんは、

妥当な事をおっしゃっていると思います。

それでも発電所を襲った猫又の拘束や事情聴取など

受けていない容疑者が居ないのもまた事実。

そんな安易に信用できる内容でしょうか?」

桜「・・・」

沈黙する桜の顔色を伺いながら友理は、こう続けた。

友理「あの夜、急に襲い掛かった人とは思えない

行動をしているから…じゃ理由は弱いですね。

それでは、なぜ我々を脅迫しに

わざわざ目の前に再び現れたのですか???

・・・(桜)

そういう真似をした訳は、

今夜にでも事件の真相を明かし

私達からの条件を聞き出す事で

はっきりとした判断材料を探す為……ですね!!

そうじゃなきゃ、神城さん達が戦う意志も無く

戦っている事に合点がいきませんから」


桜「・・・。

お見事ですね、林堂 友理さん♪(優しい声)

あなたの言う通り、

私達は戦いに来た訳じゃありません。

ただ…あなた方が3人で来る事だけが、

少し想定外だっただけで

他に問題は生じませんでしたから

勝手ながら実行させて頂きました。

清見さんの主張としては、

[平和]に過ごしたいと言う要望が強かったので

その意見とはそぐわない事を言えば、

きっと抵抗して来るだろうと踏んだまでです。

なるほど〜!(友理)

不本意な事であるのは重々承知の上です。

それにあなた以外のお2方は、

私達の事を相当、警戒していましたから

争う事には変わり無かったんです(汗)

それと先日の件は、

私の身勝手な行動で起きたものとして

発電所の件は、無かった事に決まりましたので

そこはご安心を……!!」

友理「本当にそのつもりだったんですね!?

何かすみません。

私みたいな一般人が偉そうに言っちゃってぇ(焦)」

桜「いえ、事実ですので私も反省すべき点です。

それで再び本題なのですが、

どういった意見で

今回、猫又の対処した方が宜しいでしょうか?

えっ?そこまでは…まだ何ですか?!(友理)

はい。何せ、簡単に解決できる程の内容が

見つからなくてですね(汗)

こちらとしてもいくつか案はあるのですが、

どう足掻いても戦闘に参加せざる終えないのです。

それは、どうしてですか???(友理)

ここだけの話ですが、

林堂さん達にも知る権利があります!

実は最近、特殊部隊を悩ませている

とある事態が本格的に進行して来ています。

それって一体……(友理)

いくつかの[市を取り囲む結界]が、

弱体化しているんです。

この結界はご存知の通り、

主に[野良妖怪対策]として貼られたものです。

その結界が今では弱体化しているという

情報を掴んだのは、猫又達が結界を通り抜け

街にまで現れるようになった事から発覚しました」

友理「・・・えっ?

それって結界が解けたら

この街は、どうなっちゃうんですか???(焦)」

桜は、目元を暗くさせ

スカートの生地を手に巻き込ませながら

一呼吸置いてすぐ口を開いた。

桜「それは、この街のみならず

全国各地…いえ国中の結界が解け、

ゆくゆくは野良妖怪達の侵略が始まるでしょう。

……っ!?(友理)

その為の即戦力として

猫又達には身の回りに居て欲しいと考えています。

非常に身勝手な事ではありますが、

事態が深刻化してからじゃ…もう遅いんです!

ですから猫又達が平和を求めるのなら

私達も同じように平和への道を(いそ)しむ為にも

ここは結託しなければ、いけないのです!!

なっ、なるほど?!(友理)

はぁ……少し暑くなり過ぎてしまいましたね。

ごめんなさい(汗)

平和な世界を維持する為にも

私達と同じようにパトロールして頂き、

野良妖怪達を見つけ次第、

国民に倒す許可を下ろそうとも考えています。

これは勿論、未来の即戦力になり得る

可能性の子達を倒してしまわないよう

気を付ける手立てを研究してる最中です!」


友理「・・・」

桜「非常に難しい事だと思いますが、

どうか知恵をお貸し頂けないでしょうか林堂さん」

友理「うーーーん。

(どう足掻いても戦い合う事には変わりない…けど、

それは、戦う相手が違うだけであって

それだったらその条件を受け入れた上で

猫又の希望を通す事と神城さんの意見も通す。

・・・んっ?

そういえば、人間界にあって妖魔界に無いもの

というか欠けてる部分があったような〜?

それがこの世界でも

もし、実現出来るなら画期的なのでは?!)

神城さん!!

今思い付いた意見が出来たらの話ですが、

聞いて頂けますか?(汗)

はい、こちらが可能な限りでありましたら

私から司令官にお伝えする事も出来ますよ。

はあ♪

では、今までの情報をまとめると

・猫又は、安心安全な暮らしが可能な環境がある事。

・神城さんは、猫又達を側に置きたい。

簡単に言えば、こういう事……ですよね?

そうですね、それで合っています(桜)

でしたら私が思い付いた案としては、

ズバリ、[猫又ペット化計画]です!!!!!!

ペット?猫又を…ですか???(桜)

はい!!

この世界では、

既に野良犬がペットとして飼われており

一緒に散歩してる所を街でよく見掛けます!

けれど、猫は散歩もしませんし

ましてや猫又が以前まで駆除対象として

見ていたのなら実現していないという事ですよね?

それっておかしいと思うんです!!

猫好きだってこの世界にもきっと沢山居る筈です☆」

桜「確かに野良犬は、

ペット化している……にも関わらず

野良猫だけを駆除対象でしか見ていないのは、

おかしな話ですね(汗)

私はその時、特殊部隊には属していましたが

特に野良猫を狩った事はありません。

今まで思い付かなかったのが不思議なくらいです。

じゃあ!すぐにでも実現できそうですね(友理)

そうですね。

猫又が、発電所を襲う意味も無い筈ですから

何らかの原因で起こってしまったかもしれませんね。

その三毛猫から聞き出せれば、いいのですが(汗)」

友理「そういえば、まだ見つかって無いんでしたね。

報告とか情報は、何か手掛かりとかは〜?

まだ何も(桜)

うーーん…って、あっ!?

どうしたんですか?突然、大きな声を出して(桜)

あの〜………

私と神城さんは、特に戦うつもりもなく

呑気にお話していましたけれど、

あとの2人ってまだ…戦っているんですよね?!

それじゃあ急いで誤解を解きに行かないと!!」

桜「それなら心配ありませんよ。

えっ?で、でも(友理)

今回の仕事では、

殺しを専門にする程の事態にはならないと

判断したまでです。

殺し?!そこまでやるんですか!?(友理)

特殊部隊の五大勢力となれば、

殺しても罪には問われない事をご存知ですか?

し、知らなかったです……(友理)

そもそも現場に向かう特殊部隊の人達が

任務内容もしくは、状況判断の下で

決められる重要な項目ですから

許可が降りてるとはいえ、安易には出来ません。

ここに居る人達は、ほぼ常識人ですし

そこまで殺しを専門に選ぶ方は

あまりいっらしゃいませんが

とりあえず、止める事まではしなくても

仲裁はしないとですね♪

着いて来て下さい、林堂さん」

友理「あっ、はい!(汗)」


一方、奏太と龍生・・・

龍生の攻撃を回避する為に

広い空き地の中を転がり回る奏太の体中には、

爪で引き裂かれた服の跡と分厚い長袖だったのが

今では切られ、半袖となっていたのだ。

服だけが引き裂かれるだけで

肌にはかすり傷程度で済んでいたが、

そんな余裕すら無い奏太は、防戦一方だった。

人間体にも関わらず、

龍生は体を捻らせながら休ませる暇を与え無い。

段々と一本の木の方へ誘導されていくと

奏太の両足が一瞬だけ地から離れた隙を狙って

黒い鉤爪を即座に頭上から振り下ろしたのだ!!

その攻撃に対し、慌てて避けるように

咄嗟とはいえ空中で大勢が傾きながらも

足を思いっきり一振りしたものが、

龍生の首に当たる。

奏太「はあっぁぁぁ!!!!!!」

そんな奏太の必死な行動のお陰か

頭に振り下ろされる筈だった鉤爪は、

額を深くエグッたが致命傷だけは免れ

左の瞼を沿って黒い血が流れる。

外傷があるとすれば、

耳ごと持っていかれた攻撃によって

ボロボロな体で木に寄り掛かったのだ。

奏太「はぁ……はぁ…はぁ……はぁ…はぁ………

いい加減、諦めれば楽になれるってのによ(龍生)

はぁ…はぁ……諦めて、たまる…もんかぁ(汗)

折角、猫又達が

安心して暮らせるようになれるってのに

そう簡単に諦め切れっかよ!

・・・。水雲は、死に来てるのか?(龍生)

……っ!?」

龍生「はぁ…ホントくだらないな。

こんな事の為に犠牲になろうだなんて、馬鹿なの?」

奏太「こんな事の為だと?(キレ気味)

青石先輩には、

俺が……猫又がどんな気持ちで

失った仲間達の命が消えたと思ってんだよ!!

それでも今も日々、生き続けている猫又だけでも

安全な場所で平和に暮らせればなんて誰でも思うし

第一そんな事、思わない奴の方がいねぇだろ!

はぁ…はぁ……はぁ…(汗)」

龍生「今回の件は、お前1人の感情論だけで

どうにかなるような簡単な内容じゃないんだ。

夢見てる暇があるならさっさと立ち上がれ、

でないと俺は、智神の元へ向かうよ。

言葉でしか言えないお前と居ても時間の無駄だ」

そう冷たく言い捨てると

奏太は、寄り掛かっていた木を背に

おぼつかない足取りで立ち上がった。

奏太「待ち……やがれ(汗)

お前なんかを恋花の所へ行かせてたまるかよ!!

今頃、倒されていても…か?(龍生)

それでもだ!

お前は、俺の相手だけをしやがれ!!」

と言って奏太は、

目のハイライトを揺らしながら

片目だけ開く水色の瞳を光らせる。

同時に龍生の青い瞳を濃く光らせて

奏太の事を見下し切った目で見つめた。


左腕を右手で握り締めながら

最後の戦いが始まろうとした瞬間だった。

龍生がひと足先に地面を強く蹴り上げ、

腕から手を動かす動作だけで

目にも止まらぬ速さで拳は、

奏太の心臓から逸れた位置に炸裂したのだ!

その拳は、奏太の胸ではなく右の手の平だった。

龍生「!?」

奏太「……ニヒッ(汗)間に…合ったぁ。

無茶苦茶な事、偉そうに言いやがってよ☆」


回想・・・

これは、恋花が校門前で

友理を待っていた時よりも少しの前の事だ。

奏太と友理はお互いに

校舎のとある場所で待ち合わせしていた。

それは、控え室兼特別部隊の部室であった。

奏太「それで俺は、青石先輩の攻撃を受けて

体に風穴が空くみたいなんだ。

どう防げば、良いと思う???(焦)

いつもの俺なら初対面の奴を信用しない、が」

友理「それくらい恋花さんの事が大事なんですね。

はぁ?!ち、違う!!(赤面する奏太)

んっ???

じゃあ雲外鏡さんは、

自分がもし死んじゃうかもしれないって

聞いてどう思ったんですか?」

奏太「そ、それは…俺だって死ぬのは怖いさ。

もし予言の通りだとしたら

青石先輩が俺の相手じゃ、

やる前から勝敗はもう決まってるようなものだろ。

普通に考えれば、勝ち目なんて…無いんだょ」

この時の奏太は、かなり弱気だった。

放課後、恋花と話した時よりも

希望に満ち溢れた笑顔も無く自信を失っていた。

友理「・・・うふ♪

だったらまず、勝とうだなんて思わない事こそが

大切な事だと思いますよ。

自分の力が信用ならないなら攻撃しなくても良い、

格好悪くても逃げ回れば、それで良いんですよ。

でも、それじゃあ……防ぎようが(奏太)

大丈夫です。

相手が雲外鏡さんの事を殺す気じゃない限りは、

きっと魂より逸れた場所を狙うと思うんです!

攻撃方法が[拳]なら尚更の事。

だったら雲外鏡さんは、目と拳に妖力を込めれば

相手の攻撃を見切れると思いますし、

何より早く動けて先に防げるかと思いますよ♪

そ、そんな無茶苦茶なぁ…(奏太)

スゥ〜……クラスなんて関係ありません!!

私達が同じ妖怪である以上、

妖力を込めれば、誰だって早く動けるんです!うふ。

妖力の込め方、奏太さんにも教えましょうか?」

奏太「・・・ふん(笑)

そんなもの必要ないね、俺は雲外鏡だ。

妖力操作なんて基本中の基本だよ☆」

と拳を胸の前で強く握り締めながら

目のハイライトを揺しどこか嬉しそうだった。

たったそれだけの方法で

未然に防げるのであれば、誰だって希望を湧かせる。


回想終了・・・


振ら付かせていた腕を相手に向けた途端、

反射的に龍生は、

奏太の腹に膝蹴りしてしまったのだ。

奏太「ぐはっ!?

ケホッ…ケホッ……はぁ…はぁ……はぁ…はぁ……」

龍生「(今の…動き、フェイントを掛けられたのか。

何もされないとはいえ、

つい反射的にやってしまった(汗)

・・・。

これ以上は、やめておくか)

水雲、大丈夫か?

今のは流石にやり過ぎた、すまないな」

奏太「……うっ。

水雲???(龍生)

今の以前に耳ごと逝かれた方が重症な気するけど?!

イッタタタァ。

殺す気ないなら、もう少し手加減しろって(汗)」

体がガクガクな中、少し顔が青ざめていた。

龍生「それは、すまない。

だが…智神は、どこへやった?(キレ気味)

早く教えないと拷問まがいな事をしてまで

吐かせる事は俺でも出来るぞ?」

奏太「えっ!?

ちょ、ちょちょっと待った?!

それは俺でもマジで知らない!!」

龍生「ほぉ?俺が引き込まれる手前くらいで

智神の後ろにもゲートが設置してあったが、

それは誰が仕掛けたって言うんだ?」

奏太「俺です!

紛れもなく俺ですけど、場所まで知りません(汗)

(だって事実入ってねぇし、

どこに居るかなんて俺が知る訳ないだろう!!

知ってたら、もう言ってるつうの。

てか、今俺…めちゃくちゃ大怪我してるんですけど)」

と心の声で言い訳していると

奏太の足をガッと掴み、

プロレスのような地獄の足固めをしまくる始末。

奏太「痛い痛い痛い!!!!!!

やめて下さい、青石先輩?!イタィィィ(汗)

ホントに、ホントに知らないですかーーーら!」

桜「何してるんですか、青石先輩?(呆)

久龍先輩なら移動する前の空き地に

ずっと居ますよ。

連絡取れば、済む話じゃないですか?」

奏太「いや、この人に久龍先輩が関わったら

まともな判断なんて出来からっ!!痛い痛い(涙)」

龍生「随分とまだ調子に乗ってるようだな。

日が昇るまでずっとこのまま締められるけど、

体が持つ保証は無い。全て自己責任だ?

なぁ、付き合ってくれるよなぁ〜?(笑)」

奏太「えっ!

いやあぁぁぁそれは、ちょっと待てぇ〜!?

あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!(断末魔)」

友理「・・・神城さん。

私達は、恋花さんの方へ向かいましょうか。

なんかお取り込み中のようなので

邪魔しちゃ悪いですから」

桜「そうね、先に合流しましょう。

では青石先輩、気が済んだら

支部まで帰って来て下さいね!」

龍生「あぁ、分かったよ…姫さん。

ちょっとばかり時間掛かりそうだわ(ニコニコ顔)」

2人「程々に、ね(苦笑い)」


一方・・・

久龍は絶賛、

日向を抱き枕のようにベッタベタにくっ付いており

嫌そうなのか嬉しいのか

何とも言えない表情で溜め息を吐いていた。

日向「はぁ……(汗)

(何で僕がこんな場所に居るかというと

見ての通りである。

ちょっと来るのに遅れて

恋花さんっていう人、ていうか猫又が

既に久龍先輩によって倒されたのだろうと分かる。

ついさっきまで戦ってた人が今では〜………)」

久龍「日向くんと夜に会えるだなんて夢見たい♪

私、とっても嬉しいわ〜♡♡♡

はは……僕もですよ…(日向)

ふふ、スゥ〜スゥ〜〜♪」

後ろに回り込むように

久龍は、日向の髪の匂いを楽しむ。

日向「・・・。

(実際問題、

なぜこんなにも僕が好かれているのか

理由が分からないまま。

そんなこんなで僕が、ここに居る経緯としては……)


回想・・・


これは、友理が蘭達に

久龍と龍生2人の情報を求めに行った後の事。

誠也に突然、抱き締められ

ポッカポッカに熱くなった顔を冷まし

いざ気持ちを切り替えた日向の前に

現れたのは、紛れもない奏太だったのだ。

日向「んっ?

奏太、どうして…ここに居るの?

もう授業は、始ま……って」

と日向が言い掛けた途端、

奏太は、出会って早々…

頭を深々と下げてこう言った。

奏太「頼む、日向っ!!

今回ばかりは、手伝ってくれ」

日向「えっ、あ……いや、どういう事???」

奏太「その〜詳しくは今説明できない…けど、

俺にも助けたい奴が居るんだ!

でも、何で僕なの?(日向)

その恋花の相手が、久龍先輩だから

日向は、何故だか知らないけど

妙に可愛がられてるから

少しくらいなら動きを封じられると思ってぇ〜………

はぁ…分からなくもないけど、保証は無いよ(日向)

それでも日向に頼みたいんだ!!」

日向「(どうやら友理さんと同じ立ち位置に

奏太も居たなんて思いもしなかった。

久龍先輩を僕が止めに入る形になるとはいえ、

奏太の相手は、必然的に青石先輩になる)

僕は、奏太の方に行かなくて良いの?」

そう尋ねてみると

ニコッとした顔付きでこう言う。

奏太「俺なら平気、手はあるからさっ♪」

そんな一言を聞いたら

誰しもそうなんだ!と納得して

皆んな奏太から離れていくが、

日向だけは、それを見破れる。

日向「(まだ何も考えてないんだね)

奏太、無理しちゃ駄目だよ♪」

奏太「……っ!!

悪い、それじゃあ恋花を頼む」

日向「うん。

(………所で、恋花って誰???(汗)」


回想終了・・・


久龍「日向くんとこうして話すの久しぶりだよね。

中等部の頃も高等部の時は、

私から日向くんに園芸部にして欲しいって

頼んじゃったのに、あんまり行けなくてごめんね(汗)

日向「特殊部隊も本格的に

忙しくなって来ちゃいましたからね。

仕方ないと思いますよ♪

日向くんは、本当に優しい方ですね(久龍)

普通だと思いますけど。

でも、久龍先輩に何かと頼まれるのは

悪い気はしませんし、とっても嬉しい事ですよ」

久龍「うぅ〜〜〜(涙)

……えっ!?(日向)

私もとっても嬉しいですよ!!」

抱き締めていた手をガッと自分に引き寄せ、

ミシミシと骨を(きし)ませる音がした。

日向「くっ、ぐるしぃ…です(汗)」

久龍「あっ。ごめんなさい!?

龍生以外の人に褒められるの慣れてなくて

嬉しくてつい、つい締めちゃう所でしたぁ〜(恥)

ホントに申し訳ないと思ってます?(日向)

だから…その〜……うぅ(赤面)

私の事、これから[智神(ちか)]と下の名前で

呼んで頂けませんか?」

かなり嫌そうな顔で久龍を見つめると

好きな人の告白の返事を

待っているような恥ずかしそうな表情をしていた。

日向「えぇ〜…(焦)

(それだと、久龍先輩と会う度に

名前で呼んだら青石先輩がどう思うかなんて

そんなの自殺行為でしか無いのに?!

変に久龍先輩に好かれてる理由すら分かんないのに

青石先輩からは、妬まれるしぃ(汗)

いくら久龍先輩が良いと言っても

他の先輩達からどう思われる、かまでは(焦)」

久龍「そ、そうだよ!!

ごめんね。あはは………(苦笑い)」

日向「・・・。

呼び捨ては出来ませんが、

[久龍さん]となら呼んでも構いませんよ」

パァッとキラキラした目で

日向を見つめ、再び骨を軋ませる。

久龍「はあ♪

本当ですか?!とても嬉しいです♡♡♡」

日向「はな…じ……で…ぇ(汗)

数分後・・・

そういう事なので、久龍さん。

はいっ!何ですか♪(久龍)

ここで僕と出会った事を

青石先輩には、内緒にして欲しいんですが。

龍生に???(久龍)

(こんな夜遅くに出歩いてる方がおかしいのに

久龍さんは、僕に気を取られて忘れてるのか

雪乃さんも逃げられた事だし、

僕もそろそろ………)」


久龍「そういえば、日向くん♡

んっ???(日向)

妖怪化して……ないんだね♪」

唐突に久龍が質問を投げ掛けてくると

どこか暗い顔で地面に視線を飛ばす。

日向「・・・。

その…なんて言うか自分の姿、

そんなに好きじゃないんで……

自分なりに努力してこの姿を保ててるんです」

久龍「そっか。

……でもその気持ち、私も分かるな〜

久龍さんも?(日向)

私達、特殊部隊の全員は天狗様のお知恵のお陰で

妖怪化も防げて皆んな出来るように訓練されてるけど

実は、私も…自分の姿、そんなに好きじゃないんだ。

だって………見てよ!

私、龍神だから人間体にまで龍の鱗なんてあるのよ。

人前で無闇に肌を露出する事も叶わないし、

海とかも行けないから……」

と袖を(めく)り上げると腕から肩まで

暗めの青い鱗が覆われており、

露出してる肌の方がまだ広い方だ。

日向「それって妖怪化、関係なくですか?」

久龍「常日頃からあるものなの…隠せないわ。

・・・(日向)

でも、私としては

日向くんの妖怪の姿、個人的に見てみたいわぁ〜」

日向「いくら久龍さんでも見せたくないです。

冗談よ、見たいのは本当だけど(久龍)

それ〜冗談じゃないですよ」

久龍「でも分かったわ。

んんっ?(日向)

ひとまず龍生には

日向くんに会った事、秘密にしてあげる。

気持ちが落ち着いたら、私にも見せてね♡

さぁ、そろそろ行って。

桜ちゃん達が来てしまうわ」

日向「あ、うん。

……ってやっぱり見たいんじゃないですか!!(焦)」

久龍「ふふ。気を付けて帰ってね〜♪」


桜と合流・・・

久龍「あら?

龍生は、一緒に居るんじゃないの???

青石先輩は、もう1人と(じゃ)れ合っています(桜)

戯れ合ってない!戯れ合っての!!(奏太)

あらら〜どうしたのその怪我???

龍生、治してあげなさい!あなたの後輩でしょ?」

龍生「へいへい、ちょっと来い(怒)」

奏太「へっ???」

ドスの効いた声で

奏太の反対側の肩ごと持って行かれたのだ。

はぁ…と桜が溜め息を吐く

後ろで辺りをキョロキョロしていると

子猫の姿で丸くなっていた所を見つける。

友理「あ、恋花さん!!大丈夫ですか?!

怪我の方は、私の方で既に完治済みです(久龍)

ほ、本当だ。

元がどうだったのか分からないけど…(汗)」

恋花「ん〜にゃあ?痒いにゃ」

友理「地面にずっと倒れてたもんね」

恋花「んにゃにゃあ……」

友理に抱えられながら

恋花は、精一杯後ろを足を伸ばし

耳の後ろをかいかいする。


数分後・・・

桜「ですので、清見さん。

真剣に考えた上で私に再度、ご連絡…下さいね!

それでは久龍先輩、青石先輩。

私達は、支部へもど………」

恋花「それで皆んなが安心して暮らせるのなら

私は、喜んでお願いしたいです!!

恋花?今、真剣に考えろって言って……(奏太)

その上で私も考えたの!

そにゃ〜皆んなと離れ離れになるのは、

寂しいけど、今よりもっと困り事が解消されるなら

それは…嬉しいかな♪

今まで奏太にしか頼ってばっかりで

ずっと食糧とか貰ってたし、

負担が大き過ぎるからさ…(涙目)

……恋花(奏太)

だから、お願いするにゃあ!!」

奏太「だが全員が全員、ペットに出来るかは

また別の問題じゃないか?(汗)

桜「そうですね」

友理「というより猫又の全員がペットになるのが、

難しくても猫又の皆んなに要望を聞いてみるのは

どうかな?

というと???(龍生)

つまり、恋花さんのように人間体になりたい猫又や

猫の姿のまま生きたい猫又も居るんじゃないかな?

猫のまま生きたい子達だけをペットにしたら

少しは、良いバランスになるんじゃないかな♪」

一同「・・・ポン!」

桜「なるほど。

確かに、その手ならどうにか通りそうですね」

恋花と友理「じゃあ!!」

久龍「そう、司令官にお伝えしてみますね!

今回は、お3方には大変ご迷惑をお掛け致しました。

この無礼も含めて

猫又のペット化計画を持ち帰らせて頂きます♪」

桜「それでは、私達はこれで」

龍生「水雲、これに懲りて

しばらくの間、[あの趣味]だけは大概にしろよな」

奏太「うっせぇ!!

誰がアレ見て趣味だと思うんだよ?!

青石先輩が自意識過剰過ぎるわっ!!!!!!」

恋花「やっ…たの(あたし)???」

友理「やったね、恋花さんっ!

これで猫又の皆んなが救われるね☆」

恋花「はあ♪

やっだにゃあ。私、本当にやったんだにゃあ。

やっと、やっど叶ったんだねぇぇぇ!!

にゃああぁぁぁぁぁ(鳴き声)」

友理「うん、うん。

夢が叶って良かったね、恋花さん♪」

友理の腕の中で今まで溜まっていた何かが白い光に

包まれ、鳴いていた。

子猫を自分に抱き寄せながら

友理も涙を浮かべて

恋花と一緒に喜び合いつつ泣き合った。

その2人に釘を刺すかのように奏太は、口を開く。

奏太「いや……まだ決まってねぇんだから

ここで泣くなよ(超冷静)

全部、終わってからやるものだろう。それは〜?

い、良いのぉ!こういうのは雰囲気にゃの(恋花)

ふーーーん、よく分んねぇの」

恋花「奏太は、鈍いからね☆」

奏太「急なディスり…傷付くわぁー(汗)」

突如、暗い夜空に朝日の光が空き地に差し込み

奏太は、眩しそうに手の平で隠す。

すると3人はギョッとし、

慌てた様子で空き地を後にする。


1週間後、猫又ペット化計画が採用され

猫を飼って良い事が許された。

お陰で全国のペットショップ屋さんは、

大繁盛を収める事となったのだ。

今回の登場キャラ・・・


名前:久龍(くりゅう) 智神(ちか) 正体:龍神


髪型:ロングポニーテール(太ももまで)

髪色:上半分は紺色で

下半分がシアン色のグラデーションメッシュ

瞳:青紫色

制服:青緑色のブレザー、白プリーツ、

              黒リボン(白ライン)


キャラ説明・・・

神様の1人でありながら

その実力と才能にも恵まれ期待の新星ではあるが、

まだ[神見習い]という地位に着く。

そんな智神は現在、高校3年生で

中等部半ば頃、

司令官と出会い共に勧誘された過去がある。

本格的に覚醒したのは、高等部に入ってすぐだった。

これは神様であるから当然ではなく、

彼女自身の忍耐力の強さと血の滲むような戦闘を

繰り返した事により、

乗り越えられた努力の結晶だった。

そんな智神の中で変な噂が流れながらも気にせず、

今では特殊部隊の五大勢力として

龍生のパートナーとして健気に頑張っている。

やけに、日向を気に入っている訳とは………???


名前:青石(あおいし) 龍生(りゅうせい) 正体:青龍


髪型:短髪

髪色:グレー

瞳:青色

制服:青緑色のブレザー、白ズボン、

              黒ネクタイ(白ライン)


キャラ説明・・・

四神の東に位置する神様で智神と同じ[神見習い]。

龍生は、覚醒者ではなく

素の状態で規格外の強さを誇る!!

九城が相手では届かないが、

龍化した時の威力は絶大で破壊されれば

最後、住宅地を更地にする事も容易(たやす)い。

高等部に入ってすぐ龍生は、

気に食わない奴が居れば

怒りを露わにする程、かなり短気な時期があった。

校内では、新しく入った1年生に覚醒者が現れた

噂で持ち切りだった。

そんな噂を聞いた龍生からすれば、

Sクラスより更に上、[覚醒者]。

その上がトップである以上、

自慢や馬鹿にする奴なんだろうと勝手に思っていた。

同じ神様とはいえ、

住んでいる神界が違えば、ほぼ面識は無い。

そして、ついに2人は出会う。

高校生にもなると特殊部隊は、正式に任命され

パートナーを持つ事を許される!!

この時は、智神から話し掛けに来たが

龍生は自分以外を嫌い、神界から出た時から

ずっと1人で生きて来たのだ。

振り帰り際に断ろうと智神に顔を向けた瞬間、

あまりの智神の綺麗さや可愛いさに一目惚れする。

こうして、2人は無事出会い今では[恋人同士]である。

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