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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第五十三魚 冒涜

 おサンマをキメる時は周囲を明るくし、精神状態を整え、周りの目を気にしながらキメましょう。

『三魔との約束だ!』


「僕の名前は荒筋亜番。ある時、異形のサンマを目にし、世界の真実を知りました。闇の中で秋刀魚を武器に異形のサンマと戦う日魔星達を見て、僕の中で何が変わりました。そんなある日、サンマを倒すために現場に行くと、疎塩と名乗る男が現れ、サンマスクドライバーを渡してくれました。サンマスクドライバーの力でサンマンホールを倒すと、万浄が現れました。白銀の鎧武者と漆黒の鎧武者。道が違う二人が激突し、余波で疎塩が死んだり、色々ありましたがなんとかその場を凌げました…。日魔星がいつの日か全てのサンマを討ち倒すことを信じて…!!」

「それでは、せーのっ!」


「遥か太古、闇の時代より

(Saury in the dark)

  ポニーテールは人とともにあった。

(Incarnation of the disaster that causes death)

 戦いを収め、平和へと導く希望。

(Despair and die by saury)

 だが、闇に住まいし者は希望の光を闇へと変えた。

(But people got the light of hope)

 人を嘲り、人を堕落させる存在。

(Those who protect and guide people)

 人はそれを恐れてこう呼んだ。

(People praised them and called)」



『闇ポニーテール』


 貫け!走れ!

 刃を振るえ!

 金色の夢を抱いて〜


 常闇の街に

 狂笑が鳴り響く〜

 絶望の到来

 終末の鐘が鳴り渡る〜


 誓いを込めた

 刃を胸に

 サンマを裂く刃金

 金色の夢を抱く者よ

 飛び立て〜闇黒の空に~

 闇を討ち倒すために!


 貫け!走れ!

 獅子の如く駆けろ!

 喪おうとも吼えろ!

 魔を裂く刃となれ

 三魔~~~!!


『駆けろ!三魔』


 ────────────────────────

 口の中でさんまの脂の旨味とともに塩の香りが広がる。

 解けていく身を噛み締め、溢れ出る唾液とともに飲み下す。

「よい焼き加減だ…いや、それだけでは無い」

 脇に置いていたサンマスクドライバーを持ち上げ、手の中で転がす。

「サン魔力での直火焼き…!!これがさんまを美味しく焼くコツかっ!!」

 サンマはなんと恐ろしいものを生み出したのだ。

 その言葉を飲み込む。

 日魔星である以上、サンマを褒め称える訳にはいかない。

 そんな日魔星のプライドを抱えつつ、普通の七輪では到底到達しえない焼き加減に舌づつみを打つ。

「さ、最高であります!」

 対面して座っているマリアンヌが目を輝かせ感嘆する。

「サンマスクドライバー、さんまを美味しく焼くための新型七輪でありますか!」

「ああ。この新型七輪は正に到達点。これ以上の七輪など人には作り出せまい」

 高ぶる気持ちを抑えきれず、サンマスクドライバーを褒めたてる。

「こんな凄い七輪を渡してくれた方に感謝であります。今度お礼を言いたいであります」

 悪気のない無邪気な表情でマリアンヌが笑った。

「…それは無理だ」

「え…?」

「この七輪を渡してくれた人はもう…」

「…申し訳ない…であります」

 わざわざマリアンヌに伝える必要はなかった。

 俺から伝えておくと場を濁すことも出来た。

 だが、俺の口からは真実がついて発せられた。

 自ら招いていながらも、居心地の悪い雰囲気に耐えられそうもなくさんまの塩焼きに意識を向ける。

「やあ、こんにちは、マリアンヌちゃん」

 不意に俺の背後より声が響く。

「達さん、こんちはであります」

 マリアンヌが顔を上げ、挨拶する。

「美味しそうなものを食べてるね?」

 達がさんまの塩焼きを指さして興味を示す。

「三魔さんが作ってくれたであります」

「いい七輪が手に入ったんでな」

「うぉっ!?三魔いたのか?」

 わざとらしい反応をしながら、達が俺に目を向ける。

「ツインテフェチは目が悪いか。通説通りだな」

「ポニテフェチは口が悪いんだったか?」

 立ち上がり、村正刀魚に手をかける。

「ふっ…今日は喧嘩はなしだ」

 達は両手を上げて戦意がないことを示すと、ひとつ空けて俺の隣に座った。

「で、この美味そうなさんまの塩焼きは俺に用意してくれないのか?」

「もうさんまがない」

「そいつは残念。腹が空いてるんだがな」

「さんまを買いに行ってこい」

「腹が空いてると言ったろ?動きたくないんだ…そういや、三魔、この前の傷は治ったか?」

 にっこりと笑いながら俺に問いかけてきた。

 初めて万浄と相対した時のことを指しているのだろう。

 あの時は達が助けに来てくれなかったら危うかった。

「ああ、万全だ」

「そうか。それはよかった。ところで俺は腹が空いてる」

「……くっ……少し待ってろ」

「お?買いに行ってくれるのか?三魔はいい子だ」

 満足気に笑みを浮かべる達に腹を立て、歯噛みながらも背を向ける。

「待て三魔」

 足を踏み出していた俺に達が声をかける。

「闇ポニーテールの噂は知っているか?」

「闇ポニーテール…?」

 振り返りながら問いかける。

「知らない…か。いい、気にするな」

 達がそう返すと俺から目線を外す。

 闇ポニーテール。

 どこか不吉さを感じさせる言葉を胸に収め、さんまを買いに向かった。


 道行く人々に目を走らせ、ため息を零す。

「何故だ…なぜ…」

 悲鳴にも似た声を上げ、慟哭する。

「何故、ポニーテールの人がいないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 視界が揺らぐ。

 足が震え、平衡感覚を失った体は地に投げ出される。

 頬を伝う涙がアスファルトの地面を染めていく。

 ポニーテール欠乏症。

 男児たるもの誰でも悩まされるおぞましき病に侵され、命の灯火はさながらサンマッコウクジラの前のさんまのよう。

 絶体絶命である。

「このような惨い仕打ち……サンマの計略他あるまいッ!!」

 胸に滾る七輪の焔より熱き憎悪のまま吼えたてる。

「サンマ…討つべし」

 怒髪天。

 天を突く怒り。さながら、塩漬けされていない秋刀魚寿司を出された時と同等の怒りである。

 鉛のように重い体を無理やり立ち上げ、歩き出す。

 まずは調査を行ってサンマの足跡を見つけなければならない。

 何か手がかりはないだろうか…。

 と、考えたところでふと思い当たる。

 闇ポニーテール。

 達が口にしていたその単語を。

 その口ぶりから、闇ポニーテールなるものの噂が立っていることが窺えた。

 すぐ右隣にあったサンマルガリータピザの店に入る。

「ボンジョルノ!」

「ボンジョルノ!」

 店員と爽やかな挨拶を交わし、席に着くとメニューを開く。

 ・サンマルガリータピザS

 ・サンマルガリータピザM

 ・サンマルガリータピザL

 色とりどりのメニューの中から、サンマルガリータピザSに決め、店員を呼ぶ。

 辺りを見渡し、客が俺以外居ないことを確認すると、オーダーを伝え切り出した。

「申し訳ない、少し尋ねたいことが」

「なんでーすかー?」

「闇ポニーテールの噂を知っているか…?」

「や、闇ポニーテールぅぅ!??」

 闇ポニーテールの言葉を発した瞬間、店員は顔を青ざめさせオーダー表を落とすと後ずさる。

「どうした…?」

「お、お客さん…………何故それをお聞きに?」

「小耳に挟んでな」

 店員は口を震わせながら続けた。

「いいですか…一度しか言いませんよ」

 発せられた闇ポニーテールの噂は想像を絶する怪異の話であった。

 人の世にあってはならない、冒涜的な髪をも呪う恐ろしい物語………。

 ────────────────────────

 DXマンホール!

 光る!鳴る!食べられない!

 DXマンホールの登場だァ!!

 三魔「DXマンホールで君も日魔星!」

 〜鮮魚売り場にて〜


 人界魔討伝〜三魔〜のブルーレイが発売決定!!

 豪華初回限定盤にはさんまが付属するぞ!

 三魔達の熱い戦いの物語を君の手の中に!

 予約を急げ!!

 ────────────────────────

「や、闇ポニーテール…………でありますか」

 あまりにも恐ろしい単語を聞き、マリアンヌが震える。

「ああ、闇ポニーテールだ」

 その呪言を繰り返し、おぞましき怪異譚の内容を告げる。

 サンマルガリータピザ屋の店員曰く。

 ここ数日間の間、暗い夜道をポニーテールの女性が歩いていると何処からか視線を感じることがあるらしい。

 しかし、辺りを見渡しても周りには何もいない。

 気のせいかと再び歩き始めると、次の瞬間にはポニーテールが下ろされ、ストレートヘアに変えられているらしい………。

 それだけでもかなりの恐怖であるが、話はまだ続く。

 同様に夜道には闇ポニーテールと呼ばれる何者が彷徨いており、その闇ポニーテールに目を引かれたが最後、その何者かに襲われ命を奪われるという。

 何とも冒涜的でおぞましき話だ。

「は……………はぁ……………?」

 全てを話終えると、マリアンヌはあまりにもの恐ろしさに思考を放棄したのか気抜けた返事をした。

「俺はこれはサンマの仕業だと睨んでいる」

「サン……マ…………?」

「ああ。このような鬼畜の所業、サンマ以外できるはずもない。きっと、今まで戦った中でも類を見ないほどの恐るべきサン魔の仕業に違いない」

「そう…で…ありますね…」

 この恐るべき事態を漸く飲み込んだのかマリアンヌが虚ろな目で首を縦に降った。

「そこでた。頼みがある」

「はぁ…?」

「協力して欲しい。具体的にはポニーテールになって夜道を歩いて欲しい。もちろん心配いらない」

 マリアンヌの肩に手を置き、目を覗き込んで固き決意を口にする。

「お前のことも、ポニーテールも、俺が守る」


 月光と星光り。

 夜空より降り注ぐ二つの光条。

 遥か遠い(キャンパス)に描かれる星図。

 悠久の時と共に描かれてきたそれを、人は同様に悠久の時と共に愛して行くのだろう。

 それらは確かにそこにある幻想(ゆめ)

 その美しさに触れることは出来ない。

 幻想(ゆめ)は遥か遠い地上でのみ見ることが叶い、決して触れることは叶わない。

 どれほど恋焦がれようと。

 人は宙の幻想に届かぬ。

 …されど。

 確かに地上に。

 人が手にできるそこに。

 幻想はある。

 ポニーテール。

 そう、字名される人の星。

 深い夜の闇。僅かな光に照らされ、真夏の太陽のように眩しく存在を躍動させるマリアンヌのポニーテールは、宙の幻想よりも美しかった。

 後頭部の低い位置で髪を束ね流したローポニー。

 マリアンヌの綺麗な金髪とは対照的な黒のヘアゴムで纏め、大人っぽい素朴な美しさを表現していた。

 自然があるがままに美しいように、ヘアゴム以外の装飾を排し、ローポニーの美しさを表す。

『色褪せつつ なおいっそう美しく

  夕闇が闇に消えてゆく

  その表情は 半ば かくれ

  明滅しつつ 消滅しつつ

 

  また輝きをとりもどす───』

 自然の美しさを謳った詩人、エミリー・ディキンソン。

 彼女が遺したあらゆる詩は美しさを謳い、それに献身した。

 美と自然の一体。

 マリアンヌのローポニーは正に一つの完成された美しさである。

 その美しさを十間程離れた電柱の陰から享受していた。

 マリアンヌの協力を取り付け、日が落ちた暗き夜道を歩いていた。

 サンマの気配を感じられず、マリアンヌのローポニーを堪能する時間が流れる、

 永遠の幸福。

 そう言い換えてもよいほどの時が経つ。

 ローポニーの光輝の前に、次第に俺の心が支配され、気が抜け始めていた。

 マリアンヌを守ると口にした上での体たらく。

 全くもって恥ずべきことである。

 そう、俺が思い治るよりも早く、事態は動いた。

 一瞬。

 瞬きすることも許されぬ、否、例え瞬きをしていなくても捉えられぬほどの一瞬。

 およそ、人の目では捉えられぬ速度でマリアンヌのローポニーが解かれ、ストレートヘアに変えられた。

「なっ………!?」

 驚嘆の声を上げる。

 惚けていたとはいえ、決してマリアンヌから視線を外すことはなかった。

 だというのに、目の前で起きた事態を認識することも出来なかった。

「え…?」

 一瞬でストレートヘアに変えられたマリアンヌも自身に起きた怪異の原因が掴めず、驚愕の表情を浮かべていた。

「やはりあなた達はノロマですね」

「ッ!!」

 背後より声をかけられ、悪寒が走ると共に振り返る。

 その場にはサン魔が立っていた。

「構えなさい。意味などありませんがね」

 サン魔に挑発され、村正刀魚を構える。

「行きますよ」

 サン魔が声を発し、そしてその声が届くよりも早く俺は宙に投げ出されていた。

「ぐはっ…!!」

「やはりノロイノロイ」

 地に体を打ち付けながら、体制を整え立ち上がる。

 懐からサンマスクドライバーとさんまを取り出す。

「それが例の?よいでしょう、速さ比べと参りましょうか」

 素早くさんまをサンマスクドライバーで炙り、口の中に放り込む。

 よく焼けたさんまの味が口の中で広がる。

「魚オオオオオオオオオ!!Delicious!!」

 掛け声と共に体の内側からサン魔力が溢れ光が俺を包む。

「Saury change!!」

 俺の周りをさんまが浮遊し、光とともに俺へと収まっていく。

「はあっ!!!」

 変身を遂げ、村正刀魚を構える。

「俺が終わらせてやる」

「ええ、行きますよ」

 二合目はサン魔の()を捉えられる。

「っ…!?」

 変身した上でも捉えられるほどの速度でサン魔が俺に迫る。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 視認することも出来なかった一撃を浴び、弾き飛ばされると再び地面に叩きつけられた。

「私はサンマッハソニック。最速のサン魔です」

 目にも止まらぬ速さで駆けながらサンマッハソニックが謳う。

「さあ、斬れるものなら斬ってみせなさい」

 ────────────────────────

 夕陽に縛られて

 広がるあなたの影

 その影に縋りたくて

 あなたの傍を歩きたくて

 振り返らず

「さよなら」は言わないで

 夕闇に溶けた

 思い抱えて走るよ

 いざ進め!私よ進め!

 恐れを振り払って

 涙は要らない

 いざ進め!私よ進め!

 きっと いつの日か

 たどり着くと

 信じて───


『進め!日魔星』


 ナレーター「次回の三魔は!?」

 ポニーテールはいい。

 ポニーテールなのだから。

 ああ、ポニーテール。ああ、ポニーテール。

 ナレーター「次回、未定。ポニーテールはいいぞ!三魔!!」


 この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りしました。


 宗教法人三魔の会

 SANDAI

 三間建設

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