第五十二魚 人孔
おサンマをキメる時は周囲を明るくし、精神状態を整え、周りの目を気にしながらキメましょう。
『三魔との約束だ!』
「僕の名前は荒筋亜番。ある時、異形のサンマを目にし、世界の真実を知りました。闇の中で秋刀魚を武器に異形のサンマと戦う日魔星達を見て、僕の中で何が変わりました。そんなある日、色々あって色々ありました。日魔星がいつの日か全てのサンマを討ち倒すことを信じて…!!」
「それでは、せーのっ!」
「闇ありし所にサンマあり。
(Saury in the dark)
死をもたらす災厄の化身。
(Incarnation of the disaster that causes death)
サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。
(Despair and die by saury)
だが、人は希望の光を手に入れた。
(But people got the light of hope)
人を守り、人を導く存在。
(Those who protect and guide people)
人は彼らを称えてこう呼んだ。
(People praised them and called)」
『日魔星』
貫け!走れ!
刃を振るえ!
金色の夢を抱いて〜
常闇の街に
狂笑が鳴り響く〜
絶望の到来
終末の鐘が鳴り渡る〜
誓いを込めた
刃を胸に
サンマを裂く刃金
金色の夢を抱く者よ
飛び立て〜闇黒の空に~
闇を討ち倒すために!
貫け!走れ!
獅子の如く駆けろ!
喪おうとも吼えろ!
魔を裂く刃となれ
三魔~~~!!
『駆けろ!三魔』
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サンマサセッチュー工科大学すらも及ばない恐るべきサンマテクノロジーの髄を集めた工場。
密集する機械群の中で世にも恐ろしいサンマの実験が行われ、新たな驚異が生まれようとしていた。
「万浄くん、進捗はどうですか?」
「万全です。他の日魔星はまだしも、あの三魔という男からは良いデータがとれました」
「ということは…完成は近いのですか?」
「はい、もう完成と言っても良いでしょう」
「サンマスクドライバーシステム…なかなかに恐ろしいものですね」
サンマヌーバが嗤う。
恐ろしきサン魔共の目線の先には、サンマスクドライバーと呼ばれる新兵器。
それは七輪であった。
秋刀魚仮面を発展させた新システムである。
つい先日、秋刀魚仮面を完成させたばかりだというのに、もう後継機が完成まじかとは、やはりサンマの科学力は恐ろしい。
「しかし、七輪の力を使うとは…もしこれが日魔星の手に渡れば…」
サンマヌーバが危惧し指摘する。
「ええ、確かに。七臨界エネルギーをサン魔力に転回する画期的なシステムを使用したこのサンマスクドライバーが日魔星の手に渡れば大きな驚異になるでしょう…」
万浄がサンマヌーバの指摘に頷く。
「しかし、ここが奴らに見つかるわけがありません。また、もし見つかってもここまでたどり着けるわけがないありません。我らの中に裏切り者がいて、持ち出されない限りその恐れはありません」
万浄が断言すると、サンマヌーバが得心したように頷き返し、踵を返して工場から出ていった。
「このサンマスクドライバーを使って俺は…!!」
サンマスクドライバーを見つめ、万浄が唸る。
七輪の炎と同等の新年の火を燃やし、己の決意を飲み込む万浄。
「…鍛錬にでも行くか」
滾る気持ちを抑え、万浄が工場を後にした。
その数分後であった。
工場内で小さな爆発が起きた。
工場を吹き飛ばすでもなく、ただ、働く人々の目をくらます程度の小さな。
「な、なんだぁっ!?」
鮮烈な光の中、人々は瞼を押さえつけ恐慌に陥った。
その中で、一人。
肉付きの良い、二十歳程度の男が爆発を想定していたかのごとく、慌てることなく恐慌の波を押し分けて歩いていた。
目指す先はサンマスクドライバー。
男はサンマスクドライバーを手にすると、一目散に駆け去り工場を後にした。
やがて恐慌が収まり、その場に残っていた人々が異変に気づく。
「た、大変だー!サンマスクドライバーが盗まれた!!」
悲鳴が上がる工場を背に、男は駆けていた。
「やっぱり三魔さんのさんまの塩焼きは美味しいでありますね〜!」
マリアンヌがさんまの塩焼きを一口食べると感嘆する。
「七輪の火加減がコツだ」
マイ七輪を懐から取り出すと、火加減について語る。
マリアンヌはさんまの塩焼きにサンマーマレードをかけながら耳を傾けていた。
俺も席に着いて箸を持つとさんまにつける。
小麦のような黄金色に焼けた皮目が心地よいパリパリとした感触を立て開くと、顕になった身から鼻を撫でるような塩と脂の匂いが広がり食欲をそそられる。
柔らかい身を箸で持ち上げ口の中へ運ぶ。
脂が溶け広がると同時に旨みが口の中を駆け巡る。
我ながら良い火加減だ。
自画自賛しさんまの身を一心に運ぶ。
まさに至福の時。
だが、その時は不意に破られる。
「サンマの出現を確認!至急、日魔星はこれを討ってください!」
サンマイクが言い終えると同時に立ち上がる。
「行くぞ」
マリアンヌに声をかけると、馬小屋に向かい秋刀馬に跨る。
「ンマーン」
独特な鳴き声を響かせ、秋刀馬が駆け出した。
「はっ…はっ…はっ!」
男が七輪を胸に抱え、路地を走っていた。
その背を追うサン魔が一体。
「待て」
「待てと言われて待つやつがいるかばーか!」
男は息を乱しながら走っている最中であるが、持ち前の口汚さでサン魔を煽ることは忘れない。
ばーかと罵られたサン魔は激高し唸る。
「人間如きがサン魔様を馬鹿にするんじゃねぇ!!」
怒り心頭。
サン魔は先を走る男を必ず根絶やしにしてやると誓い、一層身に力を入れて走る。
されど、サン魔の意気込みとは真逆に差は広がっていく。
身に力を入れて乱雑に走って早く走れるわけもなし。
見る見る差が広がっていく。
このまま差が出来れば男はサン魔の魔の手から逃れることができるだろう。
一瞬の安堵。
瞼を閉じるがごとき刹那。
それが行けなかった。
男は目の前のマンホールが空いていることに気づかず、穴とサンマリアージュ。
一切動くことが出来なくなったのだ。
「なんだー!!!これ!!!ちょっ!!なんでマンホールがおい!!」
「はっはっはっ!マヌケめ!俺はサンマンホール!あらゆるマンホールは俺の支配下にある!」
男の頭上より、邪悪な声が降ってきた。
サンマンホールと名乗るサン魔に追いつかれたのだ。
まさに窮地。絶体絶命。
男はこのままサンマンホールの魔のマンホールにかかり絶命してしまうのか?
男は天に問うた。
己はここまでなのかと。
マンホールでなぶり殺されてしまうのかと。
振り下ろされるマンホール。
男は固く目を閉じ、天を呪った。
こんな間抜けな終わりを用意した天を。
だが、しかし。
天は男を見捨ててはいなかった。
「サンマンホールというのか」
マンホールを弾く鉄の声。と、同時に人の声が響いた。
「き、貴様は?」
「俺は日魔星。日魔星の秋水三魔だ!」
名乗り上げと同時に三魔が秋刀魚を振るう。
その一閃をサンマンホールは手にしたマンホールで受け止め、鈍い音が鳴る。
手応えでその剛強さを察したのだろうか。
三魔は顔を顰めながら、秋刀魚を構え直した。
「俺のマンホールは特別製だ!斬れるものなら斬って見せなさい!」
「…あぁ、斬ってやるさ」
踏み込みと同時に一閃。
だが、再び鈍い音が鳴るばかり。
三魔が放つ目にも留まらぬ一太刀を、サンマンホールは正確にマンホールで受けたのだ。
まさにマンホールで守られた堅牢な要塞。
マンホールの守りを抜けなければ勝機はない。
「ちっ…!」
一度舌打ちを打つと三魔は続け様に刃を放つ。
鈍い音が一度。二度、三度。
獅子のように獰猛、されどハチドリの羽ばたきのように俊敏なそれは全てマンホールで阻まれた。
「がはははっ!その程度か日魔星!」
サンマンホールが勝ち誇る。
対して三魔は冷や汗をかくばかり。
傾きつつある趨勢を見守り、やきもきする。
「ちっ…まあ、こいつならいいか」
懐に手を伸ばす。
「おい、日魔星。こいつを使え」
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DX秋刀魚仮面ッ!!
すごい秋刀魚仮面の登場だ!
サンマの力で君もサンマックスに変身だ!
「Saury Change!(紛争根絶を願うスナイパーみたいないい声)」
「秋刀正国っ!(秘密結社ナントカ団のエリートっぽい声)」
鮮魚売り場にて好評発売中!!
サンマファミリ〜
森の中のサンマのお家だよ〜
「ご本読んでー」
「ママのさんま美味しい〜」
サンマファミリー~森の小さな鮮魚売り場~
好評発売中!
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「おい、日魔星。こいつを使え」
マンホールにハマっている男が懐から七輪を取りだした。
「そいつは?」
「こいつはサンマスクドライバー。とにかく使えば分かる受け取れ!」
男はそう言うと七輪を俺に向かって投げつけた。
「おい、七輪を投げるな。子供が真似したらどうする」※よいこはマネしないでね
七輪を受け取りながら悪態をつく。
「うるせぇばか!!七輪を投げるなんて真似するばないねーよ!」
男が悪態を悪態で返す。
「ば、ばかな!それはサンマスクドライバー!」
対面するサンマンホールが声を震わせた。
その慌てぶりから見て、この七輪は強力なものらしい。
「どうやって使うんだ?」
「そいつでさんまを焼いて食べろ!!」
「さんまだと!?そんなもの持っているわけないだろ!!」
「持ち歩いてろよクソ!!ばか!!まぬけ!!あーもうこれ使え!」
一通り罵声を浴びせ、男が懐からさんまを取り出し投げつけてくる。
無言でさんまを受け取ると、サンマンホールは顔を青ざめさせ叫ぶ。
「や、やめろ!」
「もう遅い」
七輪の火をつけ金網に載せる。
「SET . Saury change」
七輪から奇怪な電子音が響き、見る見るさんまが焼けた。
そして、焼けたさんまを頭からかぶりつく。
瞬間、体の内側からサン魔力が溢れ、光が俺を包み込んだ。
迸る光と共に、さんまが現れ三魔を包み込む。
(サンマを討て〜)
「Saury change!!Saury change ! !」
(運命の戦士よ〜)
奇っ怪な電子音が響き、なり止むと。
(闇は蠢く爪を研ぎ)
そこに、漆黒の鎧を纏った鎧武者が立っていた。
(人を貪る 暴虐のサンマ)
「へ、変身した…だと!?だが、俺のマンホールの前では!!」
サンマンホールが叫び、マンホールを構える。
対する漆黒の鎧武者は村正刀魚を向け、駆け出す。
サンマンホールが放たれる刃をマンホールを受けようとした刹那の出来事であった。
(サンマを討て〜)
漆黒の鎧武者が放った村正刀魚による一閃。
(運命の戦士よ)
それは音を置き去りにし、光にすら迫る速度でサンマンホールの腕へと走った。
(必殺の太刀で)
「ぐえええええっ!!」
サンマンホールが悲鳴をあげ、肘より先を斬り落とされた腕を上げる。
血が飛びかい、飛沫が宙を舞う。
しかし、その血飛沫さえも漆黒の鎧武者に触れることは叶わない。
「俺が終わらせてやる」
(己の剣 燃やせ!サンマインド!)
サンマンホールに届くはずもない一説を三魔が唱える。
「零刀・散魔」
「三魔人剣!!」
急速に村正刀魚へサン魔力が集まり、冷気が大気を染める。
(七輪が如く灼熱の焔!)
「戒刀」
冷気が荒れ狂う冷気すらも村正刀魚へと凝縮され、その一刀が成される。
(おお〜サンマを断つ)
「秋刀魚ノ開闢」
(戦士!日魔星!!)
「Finish!!!」
『燃えよ!サンマインド』
(ドカーーーーンンンン)
(強烈なサン魔力の一撃により爆散するサンマンホール)
「無事か?」
しゃがみこみ、男に問いかける。
「どーみたら無事って判断できるんですか?え?どうみたって普通の人生では一度とないアメージングデンジャラスですよ?これ!!!」
喚きたてる男に手を伸ばし、マンホールから引き上げる。
「命があるだけありがたいと思え」
「そりゃそうだけどさ。流石にマンホールにハマったまま死ぬのは勘弁だけどさ、これを人に見られてもう死にたい」
テンションの起伏が激しい性格らしく、何やら喚いているが、ともかく色々聞かねばならない。
「ともかくだ、お前は何者だ?」
「ん?あ、疎塩」
友達に挨拶するかのように気の抜けた返事をした。
「どこから来た?」
「どこからって…」
「俺たちの所からな」
疎塩が口にするよりも早く、後方より声が響いて遮られる。
振り返るとそこには。
万浄が立っていた。
「返してもらうぞ、その七輪」
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夕陽に縛られて
広がるあなたの影
その影に縋りたくて
あなたの傍を歩きたくて
振り返らず
「さよなら」は言わないで
夕闇に溶けた
思い抱えて走るよ
いざ進め!私よ進め!
恐れを振り払って
涙は要らない
いざ進め!私よ進め!
きっと いつの日か
たどり着くと
信じて───
『進め!日魔星』
ナレーター「次回の三魔は!?」
未来は未定。
だからこそ、今の生に意味がある。
幸福と不幸の連関、それがこの瞬間。
ナレーター「次回、未定。幸福に生きよ!三魔!!」
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宗教法人三魔の会
SANDAI
三間建設




