第五十一魚 虐殺
おサンマをキメる時は周囲を明るくし、精神状態を整え、周りの目を気にしながらキメましょう。
『三魔との約束だ!』
「僕の名前は荒筋亜番。ある時、異形のサンマを目にし、世界の真実を知りました。闇の中で秋刀魚を武器に異形のサンマと戦う日魔星達を見て、僕の中で何が変わりました。ある日、三魔さんと共にサン摩耶山でサンマガモとの戦いを終えたあと、万浄と名乗る男に強襲に遭いました。なんとかその場は凌ぎましたが…日魔星がいつの日か全てのサンマを討ち倒すことを信じて…!!」
「それでは、せーのっ!」
「闇ありし所にサンマあり。
(Saury in the dark)
死をもたらす災厄の化身。
(Incarnation of the disaster that causes death)
サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。
(Despair and die by saury)
だが、人は希望の光を手に入れた。
(But people got the light of hope)
人を守り、人を導く存在。
(Those who protect and guide people)
人は彼らを称えてこう呼んだ。
(People praised them and called)」
『日魔星』
貫け!走れ!
刃を振るえ!
金色の夢を抱いて〜
常闇の街に
狂笑が鳴り響く〜
絶望の到来
終末の鐘が鳴り渡る〜
誓いを込めた
刃を胸に
サンマを裂く刃金
金色の夢を抱く者よ
飛び立て〜闇黒の空に~
闇を討ち倒すために!
貫け!走れ!
獅子の如く駆けろ!
喪おうとも吼えろ!
魔を裂く刃となれ
三魔~~~!!
『駆けろ!三魔』
~~~~~☆最近この番組がインターネット等のSNS
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四方を真っ白なアスファルトで囲い構成されていた一室。
簡素なデスクとソファーのみで整えられたその部屋は、かつては一介のしがない探偵の事務所であった。
されど、今になっては真っ白な壁は主の血で染まり、訪れる依頼人のために簡素ながらも清潔に保たれていた部屋は雑然としている。
偶然。
ただの偶然。
たまたま道端の小石を目に停める程度の偶然で、事務所を構え、この地で生きづいていた者はサン魔によって絶たれた。
サン魔の目に触れたという理由だけで。
「お父さんのことは残念ですね」
生前、主の探偵が最も長く過ごしていたであろうデスクチェアに腰掛け、サンマヌーバが零す。
「大義のために果てたのです。後悔はないでしょう」
デスクの前に立ち、父の死に顔色ひとつ変えることなく万浄が答える。
「大義ですか」
「はい。俺たちは大義のためであれば幾らでも死ねます」
万浄は父の死を悼んではいない。
大義の二文字を口にする度に鬼気迫る表情は、彼らが求めているものの尊さを雄弁に語る。
「それは貴方達の命より重いのですね」
「それが人が生きるべき意味ですから」
万浄は己の爪がくい込むほど強く拳を握りしめ宣言する。
「人の幸福…それの為ならば俺はサンマになる」
「もう動いてもいいのですか?」
対面に座す母秋刀魚が問いかけてくる。
「見た目ほど酷い怪我ではなかった」
昨日、万浄と名乗る男の猛襲に遭い、為す術もなく怪我を負ったが、幸いにも見た目に反しては傷が浅かった。
だが、もし達とマリアンヌの助けがなかったらこうして軽症に胸を撫で下ろすことすらなかっただろう。
「データを取ると言っていた…恐らくまだ試用段階だったのだろう。そのおかげだ」
「…実際目にしてはいませんが…それほど強力なものが…」
「秋刀魚仮面…あれを被ってからまるでサンマのように」
「秋刀魚仮面…ですか」
母秋刀魚が言葉にしながら顔を歪ませる。
「心当たりが…?」
表情を歪ませた母秋刀魚に問いかける。
「……確証はありません。ですが…その昔、人でありながらサンマの力を振るう邪法があったと…その一種ではないでしょうか」
「人でありながらサンマの力を…!?さんまをグリルで焼くが如き無法…!!」
「ええ…さんまをグリルで焼くどころか、さんまの塩焼きに大根おろしを添えないほどの悪逆です。そんなもの…到底許されるはずもありません。その邪法は確かに款詰されたはずです…」
「ならば何故…」
一言呟き、胸の内に一つさんまの骨が引っかかったような違和感が走った。
「いや…まさか…」
「どうしたのですか?三魔」
「サンマーベリック…奴も秋刀魚仮面をしていた」
「何か関係があると?」
「…日魔星の勘と言うやつだろうか」
万浄がサンマーベリックと同じ秋刀魚仮面をしていたという事実。
偶然であるのか、必然であるのか。
その区別もつかないのだが、俺の勘がただ警鐘を鳴らしていた。
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三魔ライジング!!
三魔ライジングにサンマキシマム襲来ッ!!
最強のサン魔を討て!!
三魔ライジング第003弾〜襲来!!最強のサン魔〜
鮮魚売り場にて好評稼働中
驚天動地!!
シリーズ初!!
三魔、遂にゲーム化!!!
サンマンテンドーサンマッチに三魔が登場!!
人工サンマ監修、本編では描かれなかったオリジナルストーリーをその目に焼き付けろ!!
初回限定盤には旬のさんまがついてくる
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月光。
魔を誘う怪しい月明かりが路地を照らす。
人の灯は絶え、降り注ぐ光がぬらぬらと当たり一面に塗り付けられた血を映し出す。
その場に転がる死体は全部で三つ。
生命の灯が絶え、流れるままに血を滴らせ永眠る体。
胴体から袈裟斬りにて絶たれ、無惨にも斬り捨てられたそれはただ潰えていくのみ。
それら全ては。
サンマのものであった。
人を貪る魔の存在は、人の矛にて絶たれ、水揚げされたさんまの如く地に投げ出されていた。
その傍らで。
赤く濡れた抜き身の矛を携え、人が笑っていた。
己の命を脅かす魔を討ち、安堵と共に高揚しているのだ。
別段、人がそれを咎めることは無い。
むしろ、人はそれを称えるのだろう。
悪しきサンマを倒したと、彼らの剛勇を。
ヒーローは称えられる。
その蛮勇の意味を知らず。
刃金の意味を知らず。
ヒーローが笑い、刃を掲げる。
己の行いを誇り、吼えたてる。
勝利の雄叫びは夜闇に広がり、人の営みの存続を謳う。
声が響く一本路。
薄らかな光のみに照らされた定かではない路に一人の男が現れた。
殺戮が行われたその場をものともせず。
自分に目を向け不思議がるヒーロー共の視線をも、ものともせず。
サンマを七輪で焼くが如き当然の摂理として。
「三魔堕天」
日魔星達の前に現れた男は万浄。
「OK!Saury change!Come on!サンマックス!!」
これより始まるのは虐殺。
人でありながらサンマに与するものによる、一方的で残虐な所業である。
「Saury change!!Saury change!!」
秋刀魚仮面が電子音を響かせ、サン魔力をほとばせると無数のさんまが現れ、俺を包み込む。
さんまで遮られる視界。とっくに日は落ちているというのに、さんまから発せられる光が当たりを昼のように照らす。
やがて、光が引いていくと同時に外界へと包まれて行き、対敵の前に姿を晒す。
秋刀魚仮面の力で三魔人サンマックスへと変身した俺はサンマックスバリューの秋刀正国を抜刀する。
「秋刀正国!!HIGONOKUNI=SAN!!」
抜き身の刃を日魔星共に向けるが、対敵はこの状況を呑み込めていないようで、呆然としている。
対敵は四人。
データを取るために少しでも長く抵抗をしていもらいのだが、まずはその気になってもらわないといけないだろう。
一足にて飛び上がり、まずは一人首を刎ねる。
まるでさんまのように鋭い形をした秋刀正国はいとも容易く日魔星の首を斬り落とす。
「さあ、狩りの時間だ」
今から行われることを冷徹に告げる。
「なっ…そんなっ…」
一瞬で首を斬り落とされた仲間を見て、日魔星達が愕然とする。
「構えろ、データが取れない」
「データっ!?」
秋刀正国を肩口に構え、再び飛び上がる。
日魔星は迫る俺を捉え、なんとか形だけは受けの姿勢をとる。
が、あまりにも。
あまりにも、膂力に差がありすぎた。
七輪を持ち上げるが如き、軽い所作で秋刀正国を振り下ろしただけで、日魔星は受けた秋刀魚ごと両断される。
秋刀正国がさんまの表面のように綺麗に、滑らかな断面を作り出し、血に染まる。
「あっ…ひぃ…!!」
悲鳴をあげることなく絶たれた二人の代わりに、残る二人が悲鳴を上げる。
その次に二人が取った行動はあまりにも対象的であった。
二人の日魔星は片方が小柄で、片方が長身と対象的な姿形であった。
そのうち、小柄な日魔星は俺に背を向け走り出す。己の生存を願い、この場に果てた仲間たちのことなぞ顧みず、無様で懸命に駆け出した。
残る長身な三魔は果敢にも俺に向かって吶喊する。
「魚オオオオオオオオオオオオオオ!!」
雄叫びを上げ、気力を振り絞り駆ける。
何とも勇ましく、無意味な行動。
男は己の生存を、日魔星としての誇りを賭けて俺に向かって来たのだろう。
だが、その動きは俺にとってあまりにも鈍重過ぎた。
「その程度ではデータにならん」
秋刀正国を走らせると一蹴する。
上体と下体に分かれる体。
顔は己が斬られたことなども悟ることなく、鬼気迫る表情で俺を睨みつけていた。
下体から投げだされた上体が地に着き転がる姿に背を向け、俺は残る一人に向かって走り出す。
小柄な男は懸命に駆けていた。
足はもつれ、地に投げ出されそうになりながらも、俺から逃れるために、陸に揚られたさんまがのたうち回るように懸命に。
男は叫んでいた。
ただ、俺を恐れて。
悲鳴を上げ、俺から逃れることだけを望んでいた。
足を伸ばし、蹴りだし。
それを繰り返し。
そして、それが最早無為であることに気づかずに。
男は己の体が縦に割られ、既に絶命していることに気づかずに足をはばたかせていた。
「…無為な時間だった」
秋刀正国の血払いを済ませ、納刀する。
無為な時間であった。
一応の完成を終えた三魔堕天だが、まだ試用段階である。
この力を今よりも強力なものにするには少しでも多くのデータを得体ところだったが、役不足であった。
無意味な死を遂げた四人の日魔星の死体をそのままに、俺は路地を去った。
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夕陽に縛られて
広がるあなたの影
その影に縋りたくて
あなたの傍を歩きたくて
振り返らず
「さよなら」は言わないで
夕闇に溶けた
思い抱えて走るよ
いざ進め!私よ進め!
恐れを振り払って
涙は要らない
いざ進め!私よ進め!
きっと いつの日か
たどり着くと
信じて───
『進め!日魔星』
ナレーター「次回の三魔は!?」
前回の次回予告なんぞ何も意味をなさない!
未来は常に確定していないのだから!
人は今を生きるのだ!!!
ナレーター「次回、未定。次回予告なんてものは飾りだ三魔!!」
この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りしました。
宗教法人三魔の会
SANDAI
三間建設




