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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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劇場版三魔〜特別番組〜

おサンマをキメる時は周囲を明るくし、精神状態を整え、周りの目を気にしながらキメましょう。

『三魔との約束だ!』


「僕の名前は荒筋亜番。ある時、異形のサンマを目にし、世界の真実を知りました。闇の中で秋刀魚を武器に異形のサンマと戦う日魔星達を見て、僕の中で何が変わりました。日魔星がいつの日か全てのサンマを討ち倒すことを信じて…!!」

「それでは、せーのっ!」


「闇ありし所にサンマあり。

(Saury in the dark)

 死をもたらす災厄の化身。

(Incarnation of the disaster that causes death)

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

(Despair and die by saury)

 だが、人は希望の光を手に入れた。

(But people got the light of hope)

 人を守り、人を導く存在。

(Those who protect and guide people)

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

(People praised them and called)」


『日魔星』


 貫け!走れ!

 刃を振るえ!

 金色の夢を抱いて〜


 常闇の街に

 狂笑が鳴り響く〜

 絶望の到来

 終末の鐘が鳴り渡る〜


 誓いを込めた

 刃を胸に

 サンマを裂く刃金

 金色の夢を抱く者よ

 飛び立て〜闇黒の空に~

 闇を討ち倒すために!


 貫け!走れ!

 獅子の如く駆けろ!

 喪おうとも吼えろ!

 魔を裂く刃となれ

 三魔~~~!!


『駆けろ!三魔』

 ────────────────────────

「はい、良い子の皆さんこんにちはー!!!」

「荒筋亜番だよ!」

「今日はね、みんなに人界魔討伝〜三魔〜の新しい情報を伝えるためにやってきたんだー!」

「その前に、人界魔討伝〜三魔〜ってどんな話かみんなで振り返ろうか!」

「三魔はね、みんなが知ってのとおり、悪いサンマを我らがヒーロー三魔さんが倒す物語だよ!」

「そんなみんなが大好き三魔。なんと今日は劇場版の新情報を持ってきました!!」

「いよいよ公開される劇場版三魔。楽しみだね〜」

「僕が仕入れた情報によると、今回はあの人の物語みたいだよ?誰かな〜」

「ということで、ここでなんと本編映像の冒頭部分だけを特別に公開するよ!」

「みんな準備はいいかな〜?それでは、どうぞ!」

────────────────────────


闇ありし所にサンマあり

古来より人に仇なす異形の存在

鋼鉄すらも容易に裂くサンマの鉤爪の前では人はあまりにも無力

人はサンマに貪られ続けてきた

だが、人はただ貪られるだけではなかった

人は矛を研ぎサンマに抗う力を手に入れた

人を守り 人を導く 人の希望

人は彼らを称えてこう呼んだ

『日魔星』


僅かな街灯で照らされる路地裏でサンマが蠢いていた。

地には自身の血で埋もれる上半身だけの人間。

下半身は強引に千切られ遥か後方で無惨に転がっている。

無論、その瞳に生命の灯火などなく。

それはもう既に死骸と化していた。

血の海と変わり行く路地裏。

サンマは灰色の地面を赤に染め、快楽のままに吼え立てていた。

そのサンマの暴虐の前に、二人の兄妹がお互いを抱いて立ち尽くしていた。

もはや悲鳴は枯れ果て、力なく俯くと絶望に暮れている。

否、絶望する心を保っていられるかどうかも既に怪しい。

人は暴虐たるサンマの前では絶望による死しか残されていない。

人がサンマに絶望することは正しい。

少年と少女は当たり前のように絶望して。

それすらも果てたのだ。

若き二人にはこの邪悪はあまりにも酷であった。

自身が死に絶えることを悟りきり、絶望することすら諦めたのだ。

彼らは絶えるしかない。

ただの人なのだから。

人はサンマに勝てない。

サンマはあまりにも巨大すぎるのだ。

…だが、死は必然ではない。

それは奇跡。

若き者の尊んだ者による奇跡。

サンマは人に勝てない。

否。

人はサンマにも打ち勝てる。

人にはサンマを討つための矛がある。

その矛の名を『日魔星』。

街灯の明かりを背に、一人の日魔星が現れた。

そのもの名を達。


「派手に散らかしちゃって…。生かしてはおけないね」

秋刀魚を抜刀し、サンマに向ける。

「お二人さん、ちょっと待っててね」

サンマの向こうで立ち尽くすツインテールが似合いそうな少女と、兄らしき少年に声をかける。

呆然と立ち尽くす二人から反応はないが、その瞳は確かに俺を捉えている。

彼らは生きている。

であれば、助けるより他はない。

秋刀魚を下段に構え吶喊する。

狙うはサンマの喉元。

サンマは吶喊する俺に威嚇しながらその場で鉤爪を構える。

虎のように鋭い爪は、俺の体を裂くために狙いを定められ、放たれる。

「はぁっ!」

空を裂きこの身に迫る鉤爪に秋刀魚を一閃する。

鉄同士がぶつかりあったような重い衝撃と共に火花が散る。

秋刀魚で一閃された鉤爪が弾かれ、サンマが驚嘆したように目を見開く。

「今は自分が狩られる側だと気づいたか?」

秋刀魚を肩掛けに、サンマの懐に踏み込むと同時に袈裟懸けに斬り落とす。

サンマの胴体に一条の切り傷、そこから打ち付けるように鮮血が迸る。

勢いよく飛び散る返り血を浴びながら、秋刀魚を引く。

「終わりだ」

サンマの喉元に向けて秋刀魚を突き出し、肉を穿つ。

悲鳴を上がることなくサンマはその場に果てた。

秋刀魚の血払いをし、顔にもかかってしまった血を拭う。

「怪我はないかい?」

二人に歩み寄り、問いかける。

「.....」

応答はなく、二人は依然その場で立ち尽くす。

「お~い?」

手を伸ばし再び問いかけようとする。

俺の手が迫ると少女は、

「い、やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

と金切り声を挙げる。

サンマを前に理性を放棄していた少女は、俺の腕に対し反射的に恐怖を感じたのだ。

兄は妹の事を撫で付け、落ち着けと繰り返す。

「あ、安心してくれ!俺は人間だ!」

手を引いて声を上げる。

「大丈夫だ。大丈夫だから!」

「いやっ......いやぁ!!」

少女には俺の声が届かず、兄を突き飛ばすと俺に背を向けて走り始めた。

「待ってくれ!」

少年と追いかけるが、俺たちが追いつくより早く少女が路上に躍り出る。

そして。

アスファルトを強く擦り付ける音に続き、鉄の塊が重いものに衝突する低い音。

少女の体が宙を舞った後に地面に叩きつけられ、跳ねる。

どさっ。どさっ。どさっ。

連続して三回、少女の体が打ちつけられ地を滑ると止まった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

少年が絶叫し、その場に崩れ落ちた。

「そん…な…」

目の前で起きた光景で視界が揺らぐ。

「なんてこった!!」

車のドアが勢いよく開き、男性が現れる。

血だまりで横たわる少女の体に駆け寄り、その場に崩れる。

「ちくしょう…なんて日だ…ちゅくしょう!!」

男性は立ち上がると、振り返って己の車へと引き差がろうと足を踏み出す。

そこで。

俺たちを視界に捉え、表情が凍り付いた。

「おまえら…見ていたのか?」

声を震わせながら、俺の方へ踏み出す。

「見ていたんだな?」

目前まで迫ると出を伸ばし、俺に掴みかかる。

「見ていたんだろ?なあ!!」

襟首を掴みながら男が吼える。

「見ていたんだろ…お願いだ…黙っていてくれ」

震える声を絞り出し男が懇願し始める。

「なんでもする…!!なんでもだ。金は幾らでも払う…だから、な?」

腰を低く、頭を下げ頼み込んでくる男。

俺はその懇願に答えず、呆然とする。

「聞いているのかよ!!」

男の怒声。

その怒声で崩れ去っていた少年が声を上げてすすり泣き始める。

「なぁ!!」

男が叫ぶとともに男性に突き飛ばされよろめく。

「こんなに頼んでいるのになんで!!なんでなにもこたえっ…うっぐ…」

逆上し喚く男。

しかし、その叫びは呻き声に変わり喀血する。

「ぐっぶっ…なんで…」

男の胴体に孔が穿たれていた。

背後から鋭い何か...サンマの鉤爪で貫かれ、とどめなく血を滴らせる。

「うるさい人間は嫌いでね」

男の胴から鉤爪が引き抜かれ、体が俺の方に倒れてくる。

反射的にその体を受け止める。

「うっ……くっ」

致命傷を受けながら男はまだ息をしていた。

「いいのか?そんなことをしていて」

サンマ、否、サン魔の嘲笑が響き、我に返ると視線を向ける。

「下がってて」

少年に告げ、手でも伝える。

フラフラと今にも倒れそうな足取りで少年が路地の奥へと歩いていく。

それを見届けて秋刀魚を構える。

眼前に現れたサン魔。

一言でいえば、その姿はピントが合わない。

まるで霧に包まれているようで姿を正確に捉えれない。

「そんなに見つめるなよ」

空間が歪むようように震え、鉤爪が迫る。

鉤爪との正確な距離を掴めず、ともかく背後に飛ぶ。

咄嗟の行動で受け止めていた男の体を離してしまい、瀕死の男は地に倒れる。

「勘がいいな」

どうやらサン魔の鉤爪は空を切ったようだ。

着地し、秋刀魚を構える。

「構えなくていいぜ。どうせ結果は同じだ」

サン魔が俺に歩み寄り、手前に倒れている男の頭を潰した。

「っ…!!」

「睨むなよ?離したお前が悪いぞ」

悪びれる様子もなくサン魔が呟くと、飛び上がり俺の方へ急降下する。

「はあっ!!」

地面を蹴りつけて、サン魔に向かって飛翔とぶ。

空中で向かい合い、秋刀魚を振るう。

カンっ。

子気味良い刃金が衝突する音。

確かな手応え。しかし、サン魔に押され秋刀魚を振り抜けない。

押し返されるように、後方に弾き飛ばされる、

膝を倒しながら地面を滑り、止まると立ち上がってサン魔に駆け出す。

俺の動きに合わせてサン魔も駆け出し、再び刃金が交差する。

「人間にしてはやるな」

「お前こそ」

刃金を通し、お互いの目を交錯させ刃を走らせる。

「残念だがサン魔と踊る趣味はなくてな…もうそろそろ幕引きと行こうかッ!」

吼え立て秋刀魚を肩口に構えて吶喊する。

「来いッ!」

サン魔が腰を落として腕を広げると構える。

そのサン魔の頭上。

並ぶ家屋の屋根を駆けた一つの影が空を舞い、月光を背にサン魔へと迫る。

「くっ……!!」

気配に気づいたサン魔は落ちてくる影から飛び退く。

「遅いぞ、沙咲」

「ごめんね、お兄ちゃん。私は直ぐに用意出来たんだけどね」

サン魔との闘いに乱入してきた妹か拳を構える。

「行くぞ」

「うん」

短い応対を終え、サン魔を挟み込む。

「はあっ!はあ!はあっっ!!」

沙咲と呼吸を合わせて秋刀魚を振るう。

サン魔は四方、あらゆる角度から自分に迫る秋刀魚を捌くが、防戦が精一杯のようだ。

あと一歩、あと一歩踏み込めればこのサン魔を討てる。

その一歩を踏み込もうとサン魔の隙を窺うが、それが遠い。

防戦一方であるサン魔であるが、的確に俺たちの攻撃を捌き続けるサン魔の実力は確かなものだ。

何とか隙を作らねば。

サン魔を挟んだ向こうにいる沙咲に視線を向けると、視線が重なり合う。

その視線は俺に何かを訴えかけているようだ。

沙咲の動きを見て、言動を振り返りそれを察する。

(了解だ)

心の中で呟くと、サン魔の気を引くために手数を増やして攻め込む。

どれもサン魔の命を狙ったものではなく、気を削ぐために振るう。

「っ…!」

功を奏したようでサン魔は俺の方に意識を向け、体を向ける。

そして、ついに俺へ向けて鉤爪を振り下ろす。

「待ってたぜ」

一言呟き、腰を落として地に根を張るとその一撃を秋刀魚で受け止める。

刃金が衝突する甲高い音。

秋刀魚と鉤爪がぶつかり合い拮抗する。

「今だ!!」

天に吼えるように叫ぶ。

「秋刀魚ノ祟斬はんまのたたき」

俺の叫びに答えるように頭上よりその一節が謳われ、烈風を纏った秋刀魚が回転しながらサン魔に迫る。

己に迫る秋刀魚にサン魔が気づき、瞠目しながら避けようと身構える。

だが、逃すまいと俺と沙咲で挟み込み、サン魔は動けない。

「くっ…馬鹿…なっ!」

驚嘆の声と共に、サン魔の首に秋刀魚が掛かり、紙を割くように身を切り裂いた。

トンっ。

軽い音を立てて、サン魔の首が地に落ちる。

「三人いたとはな…」

「気づかなかったろ?」

サン魔の恨み節に答え、父さんが俺の背後より現れた。

「中々優秀なんだ、ウチの子は」

「ウチの子…くくくっ…貴様ら家族か…」

「ああ、そうとも。日魔星一結束の強い最強一家だ」

父さんが口角を上げながら自信満々に笑う。

「家族…家族…家族っ!!くくくくくく!!お前らの顔を覚えた…くくくっ…恐怖するがよい!!」

サン魔が嗤う。

「恐怖だと?今死ぬお前を怖がることは無い」

「死か…くくくっそうだな、死だな」

「ああ、死だ」

父さんがサン魔に短く告げ、秋刀魚を振り落とすとトドメを指す。

何ら抵抗することなくサン魔の頭に秋刀魚が突き刺さり、沈黙する。

「何かを企んでいるようだけど…」

「こうなってしまえば何も出来ない」

一抹の不安を零す俺に父さんが訳もないと答える。

「そう…だね。とりあえず帰りたいけど、その前に」

路地の奥へ向かい、少年の手を引いて連れてくる。

「サンマに襲われててさ」

「そうか…この子も連れて帰ろうか。名前、なんて言うんだ?」

父さんが少年に声をかける。

(はや)

掠れるような声で少年が名前を告げる。

「そうか、はやね」

路地裏を出て、大通りに出る。

そこには主の居なくなった車と、その先で血溜まりに溺れた少女の遺体。

「こいつは…酷いな。サンマのせいか?」

残状を目にした父さんがため息混じり呟く。

「その子はこの子の妹みたいだ。その子がそうなったのは…俺の責任だ」

「どういう事だ?」

「……いいや、今は家に帰ろう」

妹の死体を見て呆然とする兄のてを強く引き、その光景に目を背けると家の方へ足を向け歩き出す。

父さんと沙咲は言葉を飲み込んで俺の後を着いてきた。

そして、数歩歩いた所で、背後にいた沙咲が崩れ落ちた。

「どうした!?沙咲?」

振り返り、しゃがみ込むと沙咲に問いかける。

「…っく……」

沙咲は胸を抑えながら、目元を歪ませて苦悶の表情を浮かべていた。

「どこか怪我をしたのか?」

肩を掴んで目を走らせながら聞く。

「う、ううんっ…大丈夫だよ…ちょ、っと体調が」

沙咲が域を荒くしながら答える。

「大丈夫なわけあるか!」

語気を荒くして沙咲に言い放つ。

「達、大丈夫だ」

父さんが慌てる俺に冷静な声で告げた。

「大丈夫なわけあるか!!」

「大丈夫だ、いいからお前は先に家に帰ってろ」

有無を言わせない口調で父さんが言うと、沙咲に駆け寄った。

「早く行け」

低い声で再度告げられ、俺は納得できない思いを飲み込んで二人に背を向け、迅と帰路に着いた。

────────────────────────

「どうだったかな?劇場版は達の話みたいだよ!」

「達と共に戦っていた妹とお父さん。家族で日魔星とは驚きだね!」

「さあ、これから達とその家族たちはどうなって行くのかな!」

「ワクワクする気持ちを抑えて公開を待とう!」

「それじゃ、今回はここまで!じゃあね!」

────────────────────────

夕陽に縛られて

広がるあなたの影

その影に縋りたくて

あなたの傍を歩きたくて

振り返らず

「さよなら」は言わないで

夕闇に溶けた

思い抱えて走るよ

いざ進め!私よ進め!

恐れを振り払って

涙は要らない

いざ進め!私よ進め!

きっと いつの日か

たどり着くと

信じて───


『進め!日魔星』


この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りしました。


宗教法人三魔の会

SANDAI

三間建設



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