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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第四十九魚 変身

 おサンマをキメる時は周囲を明るくし、精神状態を整え、周りの目を気にしながらキメましょう。

『三魔との約束だ!』


「僕の名前は荒筋亜番。ある時、異形のサンマを目にし、世界の真実を知りました。闇の中で秋刀魚を武器に異形のサンマと戦う日魔星達を見て、僕の中で何が変わりました。日魔星がいつの日か全てのサンマを討ち倒すことを信じて…!!」

「それでは、せーのっ!」


「闇ありし所にサンマあり。

(Saury in the dark)

 死をもたらす災厄の化身。

(Incarnation of the disaster that causes death)

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

(Despair and die by saury)

 だが、人は希望の光を手に入れた。

(But people got the light of hope)

 人を守り、人を導く存在。

(Those who protect and guide people)

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

(People praised them and called)」


『日魔星』


 貫け!走れ!

 刃を振るえ!

 金色の夢を抱いて〜


 常闇の街に

 狂笑が鳴り響く〜

 絶望の到来

 終末の鐘が鳴り渡る〜


 誓いを込めた

 刃を胸に

 サンマを裂く刃金

 金色の夢を抱く者よ

 飛び立て〜闇黒の空に~

 闇を討ち倒すために!


 貫け!走れ!

 獅子の如く駆けろ!

 喪おうとも吼えろ!

 魔を裂く刃となれ

 三魔~~~!!


『駆けろ!三魔』

 ────────────────────────

 サン摩耶山の険峻とした岩肌を一つの人影が駆けていた。

 さながら針の山のような切りだった足場をものともしないその姿は獅子が平野を駆ける姿のようだ。

 その者は確かに人型である。

 しかして、岩場を駆けるその姿を見て誰が納得出来よう?

 遥かに人間を超えている。

 人の姿を保ち、人を超越した存在であることは誰の目でも明らかである。

 地を蹴り、加速しただ一直線に突き進む。

 眼光は偏に己が狩るべき者へと向けられ、肉食獣のそれそのものだ。

 その者は黒衣を疾風(かぜ)で靡かせひたすら突き進み続けた。

 岩場を抜け、木々の間を駆ける。

 そして、獲物の前に躍り出ると高らかに叫んだ。


 サンマガモを討ち倒し、血払いを済ませると納刀してマリアンヌに話しかける。

「怪我はないか?」

「大丈夫でありますよ」

 振り返り、一応目視で確認し本当に怪我をしていないことを確かめる。

「帰ろうか」

「はい、お疲れ様であります」

 溜息をつき一息入れながら撤収の準備を始める。

 勝手に持ち出した秋刀魚ノ手(サンマジックハンド)を小屋に戻し、参道に戻ってくると下山を始める。

 普段は登山客で多いサン摩耶山だが、サンマガモが出没したため一足が絶えている。

「人が少ないと下山が楽でありますね」

 マリアンヌが気が抜けたように呟く。

「ああ、楽…」

 マリアンヌに同意しようと言葉を発した瞬間、背筋を冷たいもので撫でつけられるような感覚に襲われる。

「マリアンヌ、走れ!!」

「え?」

「いいから行け!!」

 戸惑うマリアンヌに叫び、ここから一刻も早く離れるように指示する。

「は、はい、であります!」

 怒鳴るような俺の声で真剣さを悟ったのかマリアンヌが走って参道を駆け下りて行った。

 この背筋が凍りつくような感覚には覚えがある。

 対敵の命を貪る獣の気配と同質なものである。

 村正刀魚を抜刀し、気配の元へ振り返る。

 目先には参道から離れた深い森。

 空を覆うか如く枝を伸ばし続けた大樹の間を、黒き閃光が一直線に駆けていた。

 向かう先は俺。

 隠す気もない気配はそれが近づくにつれ強まり、その存在感を強める。

 そして、俺の前に降り立った。

 …それは言うなら人の形をした殺気であった。

 長身を黒衣で包んだ男であり、感情のない仄暗い瞳で俺を睨みつけている。

 死神。

 その言葉が相応しい風貌をしている。

 村正刀魚を向け、問いかける。

「お前は…何者だ」

「俺は万浄(ばんじょう)。お前の…死神だ」

 獣が唸るように歯をみせ嗤う。

「残念だがこの命、お前にくれてやることは出来ない」

「お前から貰う必要はない。奪うだけだ」

「やってみろ」

 村正刀魚を上段に構え、間合いを詰める。

 万浄と名乗る男はその場で不動。

 俺を嗤い、構えることもしない。

「魚オオオオオ!!」

 一足一刀の距離まで詰めると村正刀魚で袈裟斬りを放つ。

 手加減などするつもりもなく、踏み込みを加え全力で振るう。

 刃がこの男を捉えれば、その時点で決着が着くだろう。

 だが、俺の全霊で放った一刀は万浄が右半身を捻るだけでいとも簡単に躱されてしまった。

 心の中で驚嘆しつつも、直ぐに斬り上げてその首元を狙う。

 しかし、それすらも空を斬る。

 万浄が次は左へと半身を捻り躱したのだ。

 一度ならず二度も、刃を躱され戦慄が走る。

 この男の力量は本物だと本能が告げていた。

「くっ…!!」

 歯噛みしながら、村正刀魚を再び上段に構え袈裟斬りを放つ。

 万浄は先程同様、右へと躱わす。

 俺はそれを逃すまいと足蹴を放つ。

 万浄が俺の一連の動きを見て、合わせるように足蹴を放ち、蹴り出された足と足がぶつかり合う。

 ぶつかり合った衝撃で、自分の骨が軋む音が聞こえる。

 足を起点に全身に広がる震えに耐え、己の体重を乗せて足を押し込む。

 万浄は押し込む力に逆らうことなく力を抜き、背後に飛ぶ。

 その隙を逃すまいと村正刀魚を一閃。

 僅かであるが、万浄の影を捉える。

 万浄は俺の間合いの外まで飛ぶと、着地し不敵に笑った。

「噂通り中々やるな」

 コートを翻す。その先は僅かであるが俺の刃が届いた形跡がある。

「確かにお前であるならば、俺の全霊に当たるに相応しい」

「どういう意味だ…?」

 万浄は俺の問いかけに答えることなく懐に右手を伸ばす。

「それは…!?」

 万浄が取り出したもの。

 それは自らをサンマーベリックと名乗った男がしていたものと似た秋刀魚仮面(サンマスク)であった。

「サンマッークス!!Now is the season!!」

万浄が手にした秋刀魚仮面より奇怪な声が鳴り響く。

三魔堕天(さんまおろし)

 右手で秋刀魚仮面を被ると、肩に平行するように勢いよく横に突き出す。

 と、同時に万浄の体を光が覆う。

 そして、どこからともなく無数のさんまが現れ、海の中を泳ぐように万浄の周りを回る。

「Saury change!! Saury change!!」

 奇怪な音がどこからともなく鳴り渡る。

 さんまの回遊の速度は上がっていき、それに合わせるように光が強まり、万浄とさんまを包み込んだ。

 目をつくような閃光が迸り、辺りを染める。

 やがて光は収まり。

 俺の目の前には銀色に輝く鎧武者が立っていた。

 ────────────────────────

「あの大人気アニメ!ポニテマスターズが遂にスマホでゲーム化!」

「お気に入りのポニテっ子を自分好みに育成して、戦乱の世を統べよう!」

「ポニテマスターズ〜101人目のポニテ姫~」

「好評配信中!」


「Saury in the dark!! Saury in the dark!!

 闇の中へ

 Saury in the dark!!Saury in the dark!!

 刀は掲げ〜

 サンマを断て!!

 正義の刃を執り

 運命を討ち破れ!

 Hope is a sword!! 」

 三魔スターズ『斬り裂け!サンマ』

 NOW ・ON・SELL!

 ────────────────────────

「さあ、狩の時間だ」

 銀色の鎧武者が俺を指さして言い放つと、抜刀する。

秋刀正国(サンマサクニ)ッ!!HIGONOKUNI

 サン!!」

 抜き放たれた銀の刀身から奇怪な声が鳴り渡る。

「はぁつ!!」

 恐らく秋刀正国と思われる秋刀魚を構え万浄が突き進む。

 村正刀魚を下段に構え迎え撃つ。

 万浄が俺の間合いまで一足で詰め、秋刀正国を振り下ろす。

 合わせるように村正刀魚を振り上げ、秋刀魚同士が交差する。

 振り下ろされた秋刀正国の衝撃を受け、体中にのしかかるような重みを感じる。

 あわや腰が引けてしまいそうになるが両の足で踏ん張り耐え抜く。

 その重圧を払い除ける為に、踏ん張っていた力を村正刀魚を振る力に変え押し返そうとするのだが、逆に押し込まれる。

「くっ…」

 そのままでは押し込まれて斬り捨てられると悟り、後ろに飛び抜いて躱す。

 着地すると同時に体勢を建て直し、反復するように飛び掛る。

「魚オオオオオオオオオオ!!」

 叫び声と共に勢いに任せて村正刀魚を斬り下ろす。

 だが、俺の全体重を載せた一撃を万浄は片手で支えた秋刀正国のみで受けきる。

「なんて力だ!」

 驚嘆しつつも身を翻して距離をとる。

 まるで俺の一太刀が通じない。

 絶望的…と形容されても可笑しくないほど力に差がある。

 力押しで万浄に勝つことは不可能だろう。

 ともなると、技量で補う他ないが、鎧を纏ったというのに纏う前よりも俊敏性だ。

 技量で補うにしても刃を通すことは至難の業と言えよう。

 冷静に戦況を分析し、その絶望的なまでの戦力差を自覚する。

 この戦いは不利だ。

 …だが、命を差し出す訳にはいかない。

 俺はこいつを討ち倒してサンマを狩らねばならない。

 固唾を飲みこみ、打開の策を求めて思考する。

「何か…策はないのか」

 ────────────────────────

 ナレーター「次回の三魔は!」

 交わる刃金。

 例え始まりが同じとて。

 人は道を違える。

 ナレーター「次回、敗走。勝てるのか!?三魔!」


 この番組はご覧のスポンサーの提供で、お送りしました。

 さんま漁友会SANMA

 SANDAI

 集魚社

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