第五十魚 敗走
おサンマをキメる時は周囲を明るくし、精神状態を整え、周りの目を気にしながらキメましょう。
『三魔との約束だ!』
「僕の名前は荒筋亜番。ある時、異形のサンマを目にし、世界の真実を知りました。闇の中で秋刀魚を武器に異形のサンマと戦う日魔星達を見て、僕の中で何が変わりました。そんな中、三魔さんに迫る影が!それはサン魔力により超人へと変身する三魔人のサンマックス!!どうなる?三魔さんー!日魔星がいつの日か全てのサンマを討ち倒すことを信じて…!!」
「それでは、せーのっ!」
「闇ありし所にサンマあり。
(Saury in the dark)
死をもたらす災厄の化身。
(Incarnation of the disaster that causes death)
サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。
(Despair and die by saury)
だが、人は希望の光を手に入れた。
(But people got the light of hope)
人を守り、人を導く存在。
(Those who protect and guide people)
人は彼らを称えてこう呼んだ。
(People praised them and called)」
『日魔星』
貫け!走れ!
刃を振るえ!
金色の夢を抱いて〜
常闇の街に
狂笑が鳴り響く〜
絶望の到来
終末の鐘が鳴り渡る〜
誓いを込めた
刃を胸に
サンマを裂く刃金
金色の夢を抱く者よ
飛び立て〜闇黒の空に~
闇を討ち倒すために!
貫け!走れ!
獅子の如く駆けろ!
喪おうとも吼えろ!
魔を裂く刃となれ
三魔~~~!!
『駆けろ!三魔』
────────────────────────
『いいから行け!!』
荒々しく発せられた声にその真剣さを感じ取り、サン摩耶山を駆け下りる。
必死に足をバタつかせ、縺れそうになる足を強引に前へ、前へと押し出す。
視界が開けていき、麓の街並みが見えてくる。
あと少し、あと少し走ったら、三魔さんを待とう。
何故、三魔さんが私に離れるように指示を出したのかは分からないが、危機的な状況であることは感じ取れた。
応援を呼んで、来るまでは待機しているのが得策だろう。
息を乱しながら走り続け、サン摩耶山の入口まで辿り着き足を止める。
一人の老人が道を塞いでいた。
「も、申し訳ないであります。そこを通りたいであります」
私を視界に収めながら全く動じる気配のない老人に断りを入れ、歩み寄る。
老人は私が目前まで迫っても動かないが、右にすり抜けようと足を向けると次の瞬間にはその方向に立つ。
まるで、私を通せんぼしているみたいだ。
「い、急いでいるでありますから」
強引にも通り抜けるために、押し抜けようと手を伸ばす。
しかし、その手を掴まれ押さえつけられる。
「ここを通す気はなくてね」
老人がニヤリと笑うと同時に私の体が宙を浮き、困惑する間に投げ飛ばされる。
受身を取ることが叶わず、地に叩きつけられ背中から走る衝撃で視界が歪む。
頭の中で危険信号が鳴り響き、痛む背中を庇うように丸めて立ち上がると、秋刀魚銃に手をかける。
「あなたは…」
声を絞り出し問う。
「君たちの敵と覚えてくれればいいさ」
「……っ!!」
敵意に反応し、秋刀魚銃を引くぬと老人に向ける。
「どういうことでありますか?」
「人が人に牙をむく時は、憎い以外の意味はないんだよ」
老人は獣のように口角を釣り上げ、私へと吶喊する。
手にした秋刀魚銃の銃口は老人を捉えており、引き金を引けば老人の体を鉄のさんまが貫くだろう。
老人はブレることなく私に向かって吶喊して来ている。
この距離では躱すことは不可能。
引き金を引くだけでことにカタがつく。
私の理性が冷酷に戦況を把握し、もっともな解決法を提示する。
引き金にかけた人差し指を本の数センチ動かすだけ。
それを理解していながら、私の指先は鉛のように重く数ミリも動かすことが出来ない。
「っ…!!」
戸惑いながら、左に跳ね吶喊を躱す。
「撃てませんよね」
吶喊を避けた私に振り返りながら、戸惑いを見透かすように老人がニタリと笑みを浮かべた。
「憎しみがないあなたに」
背筋に悪寒が走る。
私は一度、人に銃口を向けた。
あの時は友達を目の前で殺されて、何も迷うことなく銃口を向け、引き金を引いた。
相手を殺そうと思った。
憎しみがあった。
だが、今の私にそれはない。
秋刀魚銃を構えたまま立ち尽くす。
「く、くるなであります!!」
震える銃口を向ける。
「諦めなさいな」
老人がそう呟くと、踏み込み一瞬で目前まで迫ると腕を引く。
「死になさい」
「----ッ!!」
甲高い音が鳴り響く。
「やらせないよ」
私と老人の間に割って入った男が、秋刀魚で老人の拳を受け止めて言った。
「お前、日魔道士だろ?」
「…骨のありそうな若造ですね」
「見る目はあるなっ!!」
老人の拳を受け止めた男──達はそう吼えると、もう一方の秋刀魚を走らせて老人の首元を狙う。
「危ない」
一言呟き老人が飛び退く。
「マリアンヌちゃん、そこでじっとしててね」
私に言い放つと達が駆け出す。
「はぁぁぁあ!!はぁっ!」
左右別方向より、挟み込むように二刀の秋刀魚をふるう。
老人はその風貌から考えられないほど体を柔軟に動かし、上体を反ると刃を潜る。
「はぁぁぁ!」
すかさず達が足蹴を放つ。
老人の膝に当たり、上体がぐらつく。
達は出来た隙を逃す前と秋刀魚を振り下ろす。
「つっ!!」
老人は振り落とされた秋刀魚を腕で受け止め、押さえ込もうと踏ん張り、秋刀魚と腕が拮抗する。
「どうしたんだい爺さん。俺をやるつもりは無いのか?逃げるんじゃねぇ!!」
達が吼え、秋刀魚を押し込む。
押し任され、首元まで刃が迫った老人は慌てて飛び退くが、逃すまいと達が秋刀魚を突き出す。
「ぐっ……」
何とか老人の肩の肉を抉るが軽傷。
老人は肩を抑えながら、達と距離をとる。
「マリアンヌちゃん、三魔はどこだ?」
老人を睨みつけたまま、達が問いかけてきた。
「三魔さんは奥に…いきなり、私に逃げろと」
「そうかい…ならそっちが本命だろうな!」
達が答えると、地を蹴り老人に迫る。
三魔さんの方が本命。
達が口にしたことを反芻し、その意味に気づく。
この老人は時間稼ぎに過ぎないのだ。
狙いは三魔さん。
おそらくこの老人よりも格上の者が三魔さんと戦っている。
直ぐに応援に向かわねば。
今来た道を振り返り、踏み出そうとして止まる。
自分が駆けつけたところで盾になれるかどうか。
今、老人と戦っている達でもなければ応援にならないだろう。
一刻も早く老人を倒して、達を向かわせなければならない。
そこまで考えて、吸い寄せられるように銃口を老人に向けた。
達の二刀を捌き続けることに意識を割いている老人は私が銃口を向けていることに気づく素振りはない。
慎重に狙いを定めて、タイミングを測る。
達が秋刀魚を横に薙ぎ、老人が飛び退く。
その瞬間、引き金を引き、鉄のさんまが音ともに宙を駆け、老人の胸に吸い込まれていく。
老人の体が跳ね、地に膝をつく。
「なっ……」
胸を抑え、何が起きたのかも分からずに顔を上げる。
そして、自分に迫る刃を視認し、瞠目しながらその首を斬り落とされた。
「………ごめんな」
達は幻聴ではないかと感じさせられるほど小さな声で呟くと、秋刀魚を納刀して振り返った。
「さあ、三魔のところに行こうか」
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「三魔ライジング!!」
「お気に入りのサンマを集めて君だけのドリームチームを作り上げよう!」
「三魔ライジング第1弾 始動 篇」
「鮮魚売り場で好評稼働中だ!」
「東京ホームに三魔がやってくる!?」
「三魔と愉快なサンマ達によるドリームショー!」
三魔「東京ホームで俺と握手」
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「終わりだな」
体の至る所を斬り裂かれ、膝を着く俺に万浄が告げる。
紙一重で致命傷を避けてきたが、万浄に一太刀も浴びせることなく追い詰められている。
「よく耐えてくれた。いいデータが取れた」
今までの戦いがただのテストだったと言わんばかりに万浄が言う。
「最後にこれを試させてもらおう」
万浄が秋刀正国を納刀し、腰を落とす。
居合術の構えである。
震える足を強引に従わせ、立ち上がると中段に構える。
このふらつく足では背を向けている間に斬り捨てられるだろう。
万浄の一刀を受けきる。
生き長らえるためにはそれしか残されていない。
「皆既日魔剣」
その一説で納刀された秋刀正国を中心に漆黒のサン魔力が溢れ出る。
陽の光を飲み込み、世界を犯すウィルスのように広がる漆黒は、銀の鎧武者を包み込み、闇黒へと変えていく。
「ソーリィ・エクリプス」
死が放たれる。
純粋な闇を纏う銀の刃金。
対敵の命を貪り喰らう純然たる刃。
俺の体中の毛が逆立ち、血液が沸騰するように熱く駆け巡る。
迫り来る死を回避しろと本能が叫ぶ。
俺は構えた村正刀魚を振り、その刃を受ける。
「魚オオオオオオオオオオオ!!」
生きるために命を燃やし、吼え立てる。
己の全霊を掛けてその一刀を受ける。
秋刀魚と秋刀魚が衝突し、刃鳴る。
刃を押し返そうと、刃を当て踏み込む。
されど、闇を纏う刃が少しずつ俺の命に喰らいつかかんと迫り来る。
なおも吼え続け、刃を当て返す。
それすらも無為。
それが必然だとばかりに刃は迫り続け、纏わりつく闇が俺の頬を撫でる。
────死。
その存在が俺の脳の一遍から湧き出て、染め上げる。
「俺が終わらせてやる」
万浄が宣告し、踏み込んだ。
──瞬間。
「秋刀魚ノ弐衝華!!」
両刀と化した秋刀魚が烈風の如く現れれ、万浄の秋刀正国に衝突する。
「…何度目だよ、この展開!!」
達が現れ、怒鳴る。
「三魔、俺が力を貸してやってんだ。さっさとそいつを弾け」
「…応ッ!!」
達の呼び掛けに応え、踏み込むと同時に村正刀魚を振り切る。
闇が弾け、光が爆ぜる。
闇黒と化していた万浄の鎧が白銀に戻り、後ずさる。
「…まだ出力に改善点があるか」
万浄が淡々と口にする。
「金さんま級が二人、銅さんま級が一人か。…やれないことも無い…が」
万浄は秋刀正国を納刀し、秋刀魚仮面に手をかける。
「三魔人体・解除」
再び万浄を光が包み込み、銀の鎧が消え失せる。
「十分なデータは取れた」
万浄は身を翻し、俺たちから離れるように去っていく。
「待て…!!」
その後ろ背に怒鳴り、追いかけようと足を伸ばす。
しかし、鉛のように重い体に引っ張られ、躓く。
「三魔さん…!!」
マリアンヌが駆け寄ってきて、俺の体を支える。
「見逃してくれるっていうんだ。今は命を大切にしな」
達が俺の前に立ちはだかり、呟く。
俺と万浄の力の差は歴然であった。
俺は確かに、万浄に見逃されたのだ。
「くそぉっ!!」
己の不甲斐なさに憤り、地を殴り付け吠えた。
────────────────────────
夕陽に縛られて
広がるあなたの影
その影に縋りたくて
あなたの傍を歩きたくて
振り返らず
「さよなら」は言わないで
夕闇に溶けた
思い抱えて走るよ
いざ進め!私よ進め!
恐れを振り払って
涙は要らない
いざ進め!私よ進め!
きっと いつの日か
たどり着くと
信じて───
『進め!日魔星』
ナレーター「次回の三魔は!?」
敗北。
そして再起。
敵を打ち破るために新たな力を手に。
ナレーター「次回、複製。パクるのか?三魔!!」
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宗教法人三魔の会
SANDAI
三間建設




