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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第四十七魚 放浪

 おサンマをキメる時は周囲を明るくし、精神状態を整え、周りの目を気にしながらキメましょう。

『三魔との約束だ!』


 闇ありし所にサンマあり。

 死をもたらす災厄の化身。

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

 だが、人は希望の光を手に入れた。

 人を守り、人を導く存在。

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

『日魔星』


 貫け!走れ!

 刃を振るえ!

 金色の夢を抱いて〜


 常闇の街に

 狂笑が鳴り響く〜

 絶望の到来

 終末の鐘が鳴り渡る〜


 誓いを込めた

 刃を胸に

 サンマを裂く刃金

 金色の夢を抱く者よ

 飛び立て〜闇黒の空に~

 闇を討ち倒すために!


 貫け!走れ!

 獅子の如く駆けろ!

 喪おうとも吼えろ!

 魔を裂く刃となれ

 三魔~~~!!


『駆けろ!三魔』


「情けないところを見せているな」

「全くだ。これだからポニテフェチは」

「あ?」

 病院の一室で三魔と達が見合っていた。

「ポニテフェチがどうしたって?」

「不甲斐ないと言ったんだ。今のお前の姿を見て他の感想が湧くか?」

「俺を悪くいうのは構わない。だが、ポニテを悪くいうのは許さない」

 己の仇とばかりに三魔が達を睨みつける。

「怖い怖い…」

 達は苦笑し背を向けると出口に向かう。

「そんだけ元気があるならさ、さっさと治して俺に撤回させろよ」

 肩越しにそう言い放つと、三魔の反応を待たず部屋を後にする。

 部屋に背を向け、廊下を進む。

「お前が休んでる間は俺がやっとくからよ」

 相手に聞こえるはずもないのだが、そう呟いた。


 夕日に沈みゆく街中を歩く。

 目的地など考えず、心の赴くままに放浪するのは好きだ。

 殺人秋刀魚(サンマーダー)は管轄を持たない。任務の度に東から西へ南から北へ日本中を駆け回る。

 それが、染み付いているのだろうか。

 ともかく、一点の場所に留まり続けるというのは性にあわない。

 放浪者(アウトロー)と言ったら些か大袈裟すぎる気もするが、そう名乗るのは悪い気がしない。

 男児たるもの人生に一度や二度は放浪者を気取りたいものだ。

 街中を見回す。

 サンマランド(ここ)はとにかくさんまに溢れている。

 日魔星の拠り所とはいえ、サンマーラーメンやサンマダイの料理屋が並ぶのは日本中でここだけだろう。

「悪くは…ないんだけどね」

 街の観光資源であるサンマーライオンの前に立ち止まり、口からさんまを吐き出し続ける様を眺め呟く。

「ここは明るすぎる」

 サンマーライオンが飾られている広場は夕刻だというのに家族で溢れ活気に満ち溢れている。

 いや、この広場だけではない。

 ここは日魔星とその家族だけではなく、サンマの被害にあった人々も受け入れている。

 必然的…と言ってしまうのは悔しいが、人が多く集まる街だ。

 サンマの恐怖を知り、絶望を知り、それでもこの街の住民たちは今を笑い合い、明日のために生きている。

「…俺の性にあわない」

 自嘲気味にそうつぶやく。

 日に当たるこの街は俺には眩しすぎる。

 苦笑を浮かべ、大通りから外れる、

 物理的に日の当たらない場所を好んでいるわけではないのだが、人の少ない場所で心を落ちつけたかった。

 疎外感。

 この街が悪いのでは無い。

 俺自身が抱えているものが、この街を受け入れない。

 好きだとか嫌いだとか、好悪の感情ではなく。

 ただ、性にあわない。

「まったく…面倒なやつだよな」

 日当たりの悪い裏路地を歩きながら自嘲する。

 やがて、夕日が沈み夜がやってくる。

 サンマ共の時間だ。

 普通の日魔星であれば、待機場所でサンマがいつ出現してもいいように待機し続けるのだろう。

 だが、待機などせずに歩き回りながら連絡を待つ方が俺らしい。

 気の赴くままに裏路地を歩き回る。

 すると、

「きゃーーーーー!!」

 路地に甲高い女性の声が響く。

「サンマのお出ましか」

 アスファルトの地面を蹴りだし、駆けだした。

 ────────────────────────

 ラッキーセットっ!

 ラッキーセットに三魔が登場だ!

「僕のは三魔!」「僕は達!」「私はサンマスラオ!」

「「「あはははははははは!」」」

 三魔「サンマは俺が討つ!」

「「「喋ったァァァァァァァァァァァァ!!!」」」

 愉快な仲間たちとサンマを討とう!

 アイ・ライク・ユー・ソー・バッド


「めっちゃ泣けましたー」

「また観たいです」

「「三魔、サイコー!」」

 劇場版三魔!!

 この夏

 最も熱いサンマを体感せよ!!

 劇場版三魔〜愛惜〜

 三魔「前売り券を買って旬のさんまをゲットだ!」

 〜特典付き前売り券発売中〜

 ────────────────────────

「はぁ!!はぁ!!はぁぁぁ!!」

 二刀の秋刀魚がサンマの体を引き裂く。

「魚オオオオ!!はぁっ!!」

 胴体に刃を受け両断されたサンマがその場に倒れる。

「待ってて、ツインテールが似合いそうなお嬢ちゃん。すぐに助けるから」

 二体のサンマの陰で怯える少女に声をかける。

「行くぜ」

 二刀を円相に構え直して突き進む。

 一直線に突き進む俺に向かって一体のサンマが飛びかかってくる。

 飛びかかってくるサンマに踏み込み、鉤爪が俺の身に至る前に半回転。

 弧を描くように振るわれる刃がサンマの胸の肉を断つ。

 攻撃するつもりが胸を斬られたサンマが驚きながら、後ろへ退くために構えるが、逃がすはずもなく秋刀魚を突き出してトドメを指す。

 続いて残る一匹へ吶喊する。

 サンマはその場から動かず、俺の刃を受ける姿勢をとる。

「はあぁぁっ!!」

 間合いを詰め、二刀の秋刀魚を振り下げる。

 サンマはその動きを呼んでいたとの如く、足を引いて秋刀魚を躱す。

 サンマは隙をついて俺を屠ろうと鉤爪を構えるが、振り下げた秋刀魚をそのまま突き出し、胴体を貫く。

 二つ穴を開けられ、瞠目するサンマをそのまま左右に斬り払い両断。

 三体のサンマを屠った。

「大丈夫だった?」

 少女に笑いかけ、問う。

「うん…」

 震える声で少女が答える。

 秋刀魚を納刀し手を差し伸べ、

「じゃ、帰ろっか。お家どこ?」

 と問いかける。

「はははっ、俺の部下をああも容易く。やるではないか日魔星」

 少女の手を握ろうとした瞬間、背後から声をかけられる。

「誰だ」

 振り返りながら問うと、身体中を銀色のゴツゴツとした物質に覆われたサン魔が立っていた。

「俺はサンマグネシウム!」

「そうかい。お嬢ちゃん、ちょっと待っててね」

 再び秋刀魚を抜刀し、駆け出す。

「はぁっー!」

 両方の秋刀魚を垂直に振り下ろす。

「ふっ」

 だが、手応えは重く、刃はサンマグネシウムの体表で受け止められる。

「なっ!」

「その程度では俺を斬れぬよ」

 不敵に笑うとサンマグネシウムが頭突きを繰り出し、重い衝撃が俺の顔に響くと視界が揺れる。

「ぐわっー!」

 衝撃に押され、後ずさりする。

 歯を食いしばり、体勢を整える。

「いってぇな!!」

 吼え立て先程より深く踏み込み秋刀魚を振るう。

 再び重い手応えが走り、秋刀魚が受け止められる。

「なっはははははっー!」

 俺の秋刀魚を受止め、サンマグネシウムが高らかに笑う。

 再び頭突きを放とうと構えるサンマグネシウム。

 二度も食らう訳には行かず、後ろに飛んで避ける。

「お兄ちゃん…!」

 押されている俺を見て少女が心配そうに声を上げる。

「大丈夫だよ、すぐに倒すから」

 笑みを浮かべ答える。

 しかし、状況は悪い。

 刃が通らない以上、他の方法で倒さなければいけない。

 あの硬い皮膚を打ち破る方法で。

 少女を横目で見る。

 俺の不安が伝わってしまったのか、顔を曇らせ俺を見つめている。

 全く、情けない。

 己の不甲斐なさに歯噛みする。

「くっ…」

 考える時間が無駄だ。

 刃を構え直し、吶喊する。

「お兄ちゃんがんばれー!」

 サンマグネシウムに吶喊する俺に向かって少女が声を上げた。

「がんばれー!がんばれー!お兄ちゃんがんばれー!」

 声を振り絞り、少女が懸命に応援してくれる。

 その声援を受けて…。

 負ける訳にはいかないのだ。

 体の底から活力が湧いてくるのを感じながら、サンマグネシウムを斬りつける。

「きかーぬ!」

 秋刀魚を受けて勝ち誇るサンマグネシウム。

 体表に傷一つすらついていない。

 だが、手を休めることなく秋刀魚を振るい続ける。

「魚オオオオオオオ!!」

「きかぬ!きかぬ!きか…なっ!?」

 そこでサンマグネシウムが己の変化に気づいたのだろう。

 表情を変え、俺を引き剥がすために鉤爪を振るう。

 だが、鈍重。

 容易く躱し、休めることなく秋刀魚を振るい続ける。

「やめろ…やめっ!あつっ!」

 先程まで勝ち誇っていたサンマグネシウムが悲鳴をあげる。

「やめっ!やめて…やめてくれっ!」

「誰がやめるかよ!!」

 サンマグネシウムの悲鳴を一蹴する。

 そして。

「くっそ!この俺が人間に!うがっーーー!!!!」

 恨み言を吐きながら、サンマグネシウムが爆発した。

「マグネシウムだったのが…お前の敗因だ」

 秋刀魚を納刀し、コートを翻すと少女の元に歩み寄る。

「さぁ、帰ろうか」

 手を差し出す。

「うん!お兄ちゃんありがとう!」

 少女が俺の手を握り返す。

 小さな手の熱を感じ、その手を引きながらサンマランドを歩く。

「…悪くは…ないんだよな」

 ────────────────────────

 ジュワァァァァァァァ(七輪でさんまを焼く光景)

 ナレーター「次回の三魔は!」

 伸ばした手が空に届かないことを知ったのはいつの頃だっただろう。

 空は俺の両手よりも広くて、俺の頭よりも小さい。

 そんな空に手を伸ばす。

 手が届かないと知っていながら。

 手を届かせるために。

 ナレーター「次回、真鴨。三魔よ空へ!」


 この番組は、ご覧のスポンサーで提供しました。


 秋刀魚商工会

 株式会社秋刀魚

 SANDAI

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― 新着の感想 ―
[良い点] もりもりの新要素 全然効いてないけどとりあえず殴ればいつか死ぬ!と言わんばかりのサンマグネシウ厶の最後。とくに必然性のない爆発は幼い頃見たヒーローショーを彷彿としました。 [気になる点] …
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