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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第四十五魚 死体

 おサンマをキメる時は周囲を明るくし、精神状態を整え、周りの目を気にしながらキメましょう。

『三魔との約束だ!』


 闇ありし所にサンマあり。

 死をもたらす災厄の化身。

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

 だが、人は希望の光を手に入れた。

 人を守り、人を導く存在。

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

『日魔星』


 貫け!走れ!

 刃を振るえ!

 金色の夢を抱いて〜


 常闇の街に

 狂笑が鳴り響く〜

 絶望の到来

 終末の鐘が鳴り渡る〜


 誓いを込めた

 刃を胸に

 サンマを裂く刃金

 金色の夢を抱く者よ

 飛び立て〜闇黒の空に~

 闇を討ち倒すために!


 貫け!走れ!

 獅子の如く駆けろ!

 喪おうとも吼えろ!

 魔を裂く刃となれ

 三魔~~~!!


『駆けろ!三魔』


 じわりと粘つく熱気が俺を包み込む。

 手にした模擬秋刀魚(しない)が汗で滑る。

 再度握り直して、案山子に打ち込む。

 力の限り打ち込んだつもりなのだが、案山子は微動だにせず、手応えは感じられない。

『この案山子を打ち破らなければいけない』

 どういう訳か、そんな強迫感めいた思いに駆られ一心不乱に模擬秋刀魚を叩き込み続ける。

 けれど、どれほど叩き込んでも案山子は微動だにしない。

『早く、早く、早く』

 早く打ち破れと頭の中で声が響く。

 辺りは少しずつ闇に染っていき、案山子の周りは真っ暗だ。

 なぜこの案山子はこんなにも頑丈なのか。

 頭を捻って考える。

 鉄製なのかもしれい。

 でも、手応えは柔らかく鉄のようには感じられない。

 模擬秋刀魚が悪いのかもしれない。

 でも、模擬秋刀魚は確かに案山子を切り裂き血に塗れている。

 模擬秋刀魚を握り直して、案山子を見つめ直す。

 どこかで見たことがあるような顔。

 ずっと小さな頃からこの顔を、この人を知っている。

「ああ、そうか」

 秋魚女だ。

 納得して刃を突き刺す。

 確かな手応え。

 案山子は今までの堅牢さが嘘かのように崩れていく。

 壊れた案山子を見下げ、帰ろうと踵を返す。

 すると、目の前に細蘭が立っていた。

「…お前もいたのか」

 虚をつかれ、息を飲み、それから刃を突き刺した。

 細蘭はその場に倒れた。

 細蘭を貫いた模擬秋刀魚は引き抜くと血に塗れてボロボロになっていた。

 その場に投げ捨て、傍らに落ちていた村正刀魚を拾う。

 一刻も早くここから出て行きたいのだけど、出口までの道には沢山の案山子が立っていて塞がれている。

 道を塞ぐ案山子を斬り倒し進む。

 一歩ずつ、着実に。

 ようやく出口まで辿り着くと。

 俺の案山子が立っていた。

 自分と同じ顔を見ているとどうも気持ち悪い。

 言いえない不快感を感じながら村正刀魚を振り下ろして最後の案山子を倒す。

 開けた視界には光が差し込むで口が映る。

「もう刃を振るわなくてもいいのだな」

 安堵しながら光に向かって踏み出す。

 その先には足場のない奈落が広がっており、俺は終わりのない闇へと落下していった。


 夢を見ていた。

 奈落へと落ちていく夢を。

 その(ビジョン)はテレビの電源を切り落としたようにプツンと消え失せた。

 瞼の先に光を感じる。

 重たい瞼を押し上げ、光を視認すると俺がまだ生きていることを知る。

「やっとおきたかい?」

 視界の端から覗き込むようにサンマッドドクターが現れた。

「おまえさん、いっつも重体だねぇ」

 サンマッドドクターが呆れたと言わんばかりに呟いた。

 以前もサンマッドドクターに会ったことがあるが、その時は死の淵に追いやられていた。

 だが、サンマッドドクターがいるということは…

「ここは?」

 自分の状況を掴めず問いかける。

「ここはサンマランドの病院さ。ちょいと用事があってきてみりゃあ、おまえさんが血だらけで運び込まれてくるじゃないの。仕方ないから手助けしてやったのさ」

「またお世話になりました」

 自分の不甲斐なさを噛み締めながら、頭を下げるために上体を起こそうとする。

「ったく、そのままでいいよ。傷は一応塞いだだけだ。安静にしてればすぐくっつくだろうけどまだ寝てなさいな」

「申し訳ない」

「お礼も謝罪もマリアンヌの嬢ちゃんにやりなさいな」

「マリアンヌ…?そうか、あの場に…」

「あんまりあの子に心配かけるんじゃないよ」

 サンマッドドクターが語気を強めて言う。

「はい…最大限努力します」

 サンマッドドクターの圧力に屈し、胸に誓う。

「わかりゃあいいんだよ」

 頭を振りながら、そう応えサンマッドドクターがしばらく沈黙する。

 それから、

「…っと、話は変わるんだけどね。あんたさん、散魔ノ太刀(さんまのたち)を今まで何回使った?」

 と、問いかけてきた。

「…数回ほど」

「サンマスラオから一応は話をされてるんだろ?数はちゃんと覚えておきな」

 サンマッドドクターに戒められる。

 散魔ノ太刀はサンマキシマムに打ち勝つためにサンマスラオの元で修行し身につけた剣技だ。

 だが、伝授される際にサンマスラオから

『この力に頼りすぎるな』

 と繰り返し忠告された。

「サンマスラオからどう伝え聞いたかは知らないけどさ…今のあんたならその危険性が身に染みて分かってるんじゃないか?」

 サンマッドドクターが静かに、そして重い声で問いかけてくる。

「はい。散魔ノ太刀の力は…」

「分かってるんならいいよ」

 サンマッドドクターに遮られる。

「ともかくだ、マリアンヌの嬢ちゃんを泣かせることだけはするんじゃないよ」

 そう言い残すと、サンマッドドクターが部屋を後にした。


 ただ寝転んでいるだけだと、時間の進みが長く感じる。

 サンマッドドクターが病室を後にしてから一時間ほどしか経っていないのだが、もう数時間ほど過ぎ去ったような気分だ。

 時計を見ると午後の十五時をさしている。

 一時間ほど前に目を覚ましたが、日付は一日しか進んでおらず、半日ほどの眠りで済んだようだ、

 サンマの鉤爪を背中に受け、失血で気絶するほどの重症だったというのにこの程度で済んだのは偏にサンマッドドクターのおかげ…いや、それも大きいがマリアンヌがあの場に居合わせていてくれたことおかげでもあるのだろう。

 マリアンヌにはしっかりとお礼をしなければ。

 と、考えているとドアをノックされる。

「三魔さーん?起きているでありますか?」

 ドアの向こうからマリアンヌの声が聞こえ、その声に応じる。

「お休みするところだったら申し訳ないであります」

「いや、ちょうどマリアンヌに会いたかったところだ」

「…っ!?」

「お礼を言いたかったんだ」

 そう告げ、視線をマリアンヌに移す。

「寝たままで申し訳ない」

「あ………いえ、気にしないであります」

「ありがとう、マリアンヌのおかげで何とか一命を取り留めたよ」

「そんな別に…サンマッドドクターのおかげでありますからね」

「治療してくれたのはサンマッドドクターだが、マリアンヌが助けを呼んでくれなかったら危なかった。本当にありがとう」

「そ、その…どういたしましてであります」

 少し照れたようにマリアンヌが応えると、ベットの横にパイプ椅子を並べて座った。

「具合どうでありますか?」

「しばらく安静にしていれば問題ないようだ」

「よかったであります…」

 マリアンヌがホッとため息をついて顔を綻ばせる。

 それから少しの間、他愛のない話を続ける。

 サンマーマレードが何に合うだとかそういった話だ。

 そして、俺は聞くべきであるそれに触れた。

「……俺を撃ったあの少女はどうなった…?」

 問われたマリアンヌは少し複雑な顔をしてから語り出した。


 消灯時間が過ぎ、室内の明かりが月明かりのみになる。

 少しずつ慣れた目が室内を収め、昼のようにとは言えないのだがある程度鮮明に捉える。

 半日も寝ていたせいか眠気が訪れず、冴えた目を凝らして室内を見ていた。

 その甲斐があって、異常に気づく。

 ドアが音を立てないようにゆっくり引かれ、出来た隙間から誰が入ってくる。

 その人物はゆっくりと俺の方へ近づいてくる。

聖良(せいら)…だろ?」

 俺の方へ歩む影に声をかける。

 影は一瞬、その場で固まるが意を決して音を立てて俺の傍に来た。

「なんでわかった?」

「来ると思ってたからな」

 部屋に差し込んだ月明かりで影が照らされる。

 そこには俺を撃った少女が立っていた。

 口調は荒いが、年齢はマリアンヌより一回り歳が低い十代前半ぐらいに感じられる。

 容姿は少女らしいあどけなさがあるのだが、俺を見つめる瞳は荒々しく尖っている。

 ポニーテールではなくマリアンヌのようなストレートのロングヘアーで黒い。

「一応、拘束扱いらしいがな」

 聖良と名乗る少女はまだ幼いとはいえ、日魔星を狙って引き金を引いたため、屋敷で拘束されることとなった。

 だが、人手不足も相まって事実上軟禁が関の山だ。

「あれぐらい抜け出すのに苦労はない」

 訳もないと少女が答える。

「それで、俺を殺しに来たか?」

 一度は俺を襲った身、何ら不思議ではない。

「ああ…そうしたい」

 聖良は懐に手を伸ばす。

「お前を殺したい」

 短く、事実のみを告げた言葉。

 その言葉に確かに俺への怨嗟を感じる。

「何故だ?」

「お前が仇だからだ」

「誰の?」

「…私の父だ」

 先のとがったボールペンを取りだし俺に向けた。

 重体の俺であれば、首に突き刺すだけで容易く命を奪えるだろう。

「お前のお父さん…海で俺たちを襲った日魔道士か?それともあの路上にいた?」

 俺が奪った命は一つではなく、聖良に問いかける。

 問われた聖良は俺を憎々しげに見つめ、答えた。

脂紀(あぶらのり)…それが私の父の名だ。…お前を海で襲った、最低下劣な男の名前だよ」

 吐き捨てるように聖良が告げる。

「口汚いし、ろくに稼ぎもない最低な父親…だけど、私の唯一の肉親」

 ボールペンの先を俺に向け、聖良が続ける。

「お前が憎い。お前を殺したい」

 親を奪われた子として、当然の思い。

 聖良は俺に向かって呪詛を吐く。

「お前を許さない」

「あぁ…そうだな。俺は許されない。人を殺して許されるはずがない」

「なら、ここで死ね」

 聖良がボールペンを振り上げ、俺の喉に向けて構える。

「……お前の父親も人を殺した。それは知っているか?」

「…関係ない」

 ボールペンが振り下ろされる。

 俺は、咄嗟にベッドから転げ落ちて躱す。

 サンマッドドクターの治療のおかげで、激しい運動はあまり出来ないが重体というほどでは無い。

「なっ!?」

「サン魔の医療技術を舐めるな」

 俺の咄嗟の行動に呆気を取られた聖良の手を抑え、ボールペンを奪い取る。

「時期に人が来る。さっさと部屋に戻れ」

「離せ!!離せ!!クソっ!!」

「激しい運動は禁止されてるんだ」

 聖良を押さえ込み、そう答えると人が来るのを待った。


 日が傾き始めた頃合。

時刻にして午後の三時といったところだろう。

 母秋刀魚の屋敷に一体のサン魔が訪れる。

「わざわざあたしを呼びつけて見せたいものとはなんだい?」

 サンマッドドクターが母秋刀魚に問いかける。

「実際見ていただいた方が早いでしょう…こちらです」

 母秋刀魚に連れられ、サンマッドドクターが屋敷の奥に踏み込む。

「これです」

 屋敷の奥。

 母秋刀魚が管理する部屋の一角までやってくると、部屋の中央に据えられた台の上にあるものを見せる。

「なんだい……これは…?」

 サンマッドドクターがそれを見つめて驚愕する。

「あらかた話を聞いている…だけど、だとするならこれは…」

 考え込むようにサンマッドドクターが息を飲む。

「三魔とマリアンヌの嬢ちゃんにはもう話したのかい?」

「…いえ。言えるはずもありません。…特に今の三魔には」

 母秋刀魚が俯いて、低い声で吐き出した。

「今の三魔には、かい。そうさね、親心としては言いたくないだろうね」

 サンマッドドクターが母秋刀魚の気持ちを組み、しみじみと呟く。

「言えるわけがないさね…この死体のようなナニカについては…」


 ────────────────────────

 三魔「サンマ!良い子のみんな!ついにDX日魔星七輪の登場だ!これを懐に入れて君も今日から日魔星だ!!」

 DX日魔星七輪〜好評発売中〜

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