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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第四十四魚 魔猿

 おサンマをキメる時は周囲を明るくし、精神状態を整え、周りの目を気にしながらキメましょう。

『三魔との約束だ!』


 闇ありし所にサンマあり。

 死をもたらす災厄の化身。

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

 だが、人は希望の光を手に入れた。

 人を守り、人を導く存在。

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

『日魔星』


 貫け!走れ!

 刃を振るえ!

 金色の夢を抱いて〜


 常闇の街に

 狂笑が鳴り響く〜

 絶望の到来

 終末の鐘が鳴り渡る〜


 誓いを込めた

 刃を胸に

 サンマを裂く刃金

 金色の夢を抱く者よ

 飛び立て〜闇黒の空に~

 闇を討ち倒すために!


 貫け!走れ!

 獅子の如く駆けろ!

 喪おうとも吼えろ!

 魔を裂く刃となれ

 三魔~~~!!


『駆けろ!三魔』


 街灯に照らされる路上を走る。

 胸に巣食う不安を押しのけ、足を伸ばし続ける。

 アスフォルトを打つ音が耳朶に。

 目的地が朧気になるほど必死に走り続け、やがてその場に行き着く。

 その路上に出た瞬間、鼻をつく鉄錆の臭いを感じる。

 街灯に照らされる灰色だった地面。

 赤く染まり、もはや元の色など感じられない。

 視界に広がるのは赤で彩られた地獄。

 人の世、とりわけサンマの前では人の命は風前の塵。

 この光景生み出したものがサンマなのであれば、それはある種の必然なのだろう。

 なのだが。

 この光景を生み出したものは人。

 故に地獄と称さざる負えない。

 三人の人間の死体が転がる路上。

 その中心に血塗れた刃を払う三魔さんが立っていた。

 声に出して、名前を呼ぼうとする。

 名前を呼んで、この場を離れようと。

 けれども、唇が震えて声が出せない。

 早くここから離れなければ。

 その考えが頭の中を逡巡する。

 必死に声を絞り出そうと唇を震わせて。

「ひ…人殺し!!」

 私の背後、電柱の影から声が響き一つの影が躍り出た。

 私よりも一回り背が低い女の子だ。

 女の子は三魔さんを睨みつけ、その場で立ち尽くす。

 私が声を上げるよりも早く、三魔さんが振り向く。

 そして。

 女の子が手に持った秋刀魚銃で三魔さんの胸を撃った。


「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 甲高い悲鳴に包まれながら、胸に受けた衝撃で宙を舞う。

 ゆっくりと視界が流れていき、地に叩きつけられる。

 自分の体が血溜まりに背をつけ、血飛沫があがる。

 胸に広がる痛みで意識が明滅する。

 心臓の早鐘の音が耳朶を打つ。

「やった…やった…!」

 弾むような少女の声と共に足音が心臓の音に混じり聞こえてくる。

 その音を聞きながら、どうにか意識を繋ぎとめ痛む胸を抑えながら立ち上がる。

「…!?」

 視界に見知らぬ少女の顔と、地べたに崩れ落ち俯くマリアンヌを捉える。

「な、なんで死んでない!!」

 まるで四足歩行する異形のサンマを見たかのように少女が驚きの声を上げ、手に持った秋刀魚銃を構える。

「覚えておくといい…」

 呟くと同時に身を屈め、少女の視界を掻い潜り手を掴むと無理やり銃口を外す。

「たかが銃弾で七輪を貫けると思うな」

 日魔星は懐に七輪を入れておくのが常識である。

 このように突発的な奇襲も、またこちらが奇襲をかける際も、サンマ祓いにも、急にさんまを食べたくなった時でも、とにかく七輪は色々場面で活躍してくれる。

「勉強不足だったな」

 指先に力を入れ、秋刀魚銃を無理やり奪い取る。

「それで…何者だ?何故、秋刀魚銃を持っている…何故を俺を撃った?」

 少女の一挙一足を注視しながら問いかける。

「何者か…?……ただただお前が憎い復讐者だよ!」

 顔を上げ、俺を睨み付ける。

 そのまま俺が握ってる秋刀魚銃を奪い取ろうと手を伸ばす。

「三魔さん!!避けて!」

 一部始終を見ていたマリアンヌが叫び声を上げ、同時に背後からサンマの鉤爪が迫ってくる。

「くっ…!」

 マリアンヌのおかげで何とか気づくことができた俺は強引に少女を抱き抱え、マリアンヌの方へ飛ぶ。

「なっ…!」

 少女が俺の腕の中で体を震わせ、離せと訴えかけるのだが強く引き付けて離さない。

 だが、咄嗟に少女のを抱き抱えた拍子に秋刀魚銃を落としてしまう。

 一足にしてマリアンヌの元へ飛ぶと、少女を下ろす。

「マリアンヌ、頼む」

「お前!まだ話は終わって」

「後にしてくれ」

 怒声を飛ばす少女に背を向け、有無を言わせずに言い放つと村正刀魚を抜刀して構える。

 刃先には茶色い体毛に覆われたサン魔。

「キーキッキ!!俺はサンマシラ!おめぇさんの命貰うっキィ!」

 奇妙な喋り方でサンマシラが俺を威嚇する。

「たかが猿風情が…!!」

「俺はサンマだっキィ!」

「どっちでもいい!!」

 心の底から叫び、踏み込み間合いを詰める。

「キィイイイイイ」

「魚オオオオオオ」

 雄叫びが交差し、鉤爪と村正刀魚が交差する。

「キィ?」

 村正刀魚が打ち勝ち、サンマシラの腕の肉を薄く斬る。

 あと一歩踏み込めていれば斬り落としていただろう。

「お前中々やるキィ!」

「お前は大したことないな」

 飄々と告げ、サンマシラを煽る。

「なんだっと!!この人間風情が!!」

「語尾はどうした!!」

 逆上し勢いよく鉤爪を振り上げるサンマシラのふところへと潜り込み、胴体に一閃。

「キィイイイイイ!」

 サンマシラは奇声を上げながら飛び下がる。

「惜しいな。じっとしていれば今ので痛みなく逝けたのに」

 村正刀魚を上段に構え直し、サンマシラに告げた。


「さ、流石であります」

 サンマシラと名乗るサン魔をものともせず、三魔さんは軽くあしらっている。

 その差は誰が見ても歴然だろう。

 無論、戦いの場で油断することは命取りで、サン魔を舐めてはいけないのだけど、思わず気が緩むほど三魔さんが押している。

「これは見ているだけ…でありますね」

 不甲斐ないと思いつつ苦笑する。

「…確かに凄いよあの日魔星」

 腕の中で少女が呟く。

「君は…やっぱり関係者でありますね…」

 サンマを見ても動転する素振りもなく、三魔さんの戦いを見ていた。

「さぁね…」

「何者でありますか?」

 声のトーンを一段落として問いかける。

「聞こえてなかったの?ただの復讐者」

「復讐…三魔さんに?」

「そうだよ…あいつは仇だ」

 三魔さんへの恨みが滲んでいるような低い声で呟き、少女は三魔さんを睨み付ける。

 三魔さんに向けられる視線の元を辿り、瞳を覗きこむ。

 その瞳はただ憎々しげに三魔さんを移すばかりで、月明かりのない晩のように仄暗い。

 真っ暗な瞳は独特な引力を持つようで吸い寄せられ、視線が外せない。

「だから…」

 少女がつぶやくと同時に、私の指に痛みが走る。

 少女が力の限り私の指に噛み付いたのだ。

「いっ──!」

 思わず声を上げ、気を取られてしまう。

 その隙に少女は私の腕から抜け出して駆け出す。

「なっ、行かないでであります!」

 少女の背後に叫び、引き留めようとするのだけど止まり素振りはなく一直線に走る。

 その先は、先程三魔さんが落とした秋刀魚銃。

「ま、まさか!」

 少女の言動から何をするのかは明白で、慌てて追いかける。

 けれども、少女の方が早く秋刀魚銃にたどり着く。

 そして、鮮血が舞った。


「生意気な人間風情が!」

 サンマシラが怒声を上げながら鉤爪を振るう。

 その速度は最初に奇襲をかけられた際の速度に大きく劣る。

 あの一撃を見るに、このサンマシラは機敏なサン魔だと感じる。

 事実、先程からサンマシラが振るい続ける鉤爪は今まで戦ってきたサン魔の中でも屈指の速度で振るわれ、気を抜けば容易く俺を裂くだろう。

 だが、逆上し単調に振るわれ続けるだけの鉤爪など恐るに足らず。

 一つ一つを冷静に躱しながら、斬り捨てる為の隙を窺っていた。

「クソ!クソ!クソぉぉぉ!」

 苛立たげにサンマシラが鉤爪を振るい続けるがその速度はどんどん鈍くなっていく。

「そろそろ終わらせてやる…」

 村正刀魚で一閃しようと身構える。

「キィイイイイ!」

 サンマシラは猿の野生の勘で察したのか、俺が振るうよりも早く後に飛び退く。

「勘はいいな」

 村正刀魚を構えながら、吐き捨てる。

「なんてやつだっ…」

 サンマシラは俺を恨めしそうに睨み付ける。

 そして、一転。

 俺を恨めしいとばかりに広がっていた表示が、何かを企む猿のような嫌らしい笑みに変わる。

 その変化を見逃さず、腰を落として村正刀魚を構え直す。

「キッキッキッキィイイイイイ!」

 奇声を上げながらサンマシラが俺に吶喊してくる。

 それだけか?と疑問に思いつつ合わせて間合いを詰めようと足を伸ばした瞬間。

 サンマシラが飛び上がって俺の頭上を超えていく。

 瞠目しながらサンマシラを追うと、その先にはマリアンヌに預けたはずの少女が。

 先程俺が落とした秋刀魚銃を拾おうと身を屈め、迫るサンマシラに気づく様子もない。

 反射的に体が動いた。

 間に合え、間に合え、間に合え。とただその言葉だけが頭の中を駆け巡り、足を伸ばす。

 地を蹴りつけて、少女に向かって飛ぶ。

 少女と俺の目が合う。

 突然飛びかかってきた俺に少女は目を見開き、手にした秋刀魚銃を構える。

「キィキッキッキ!」

 サンマシラの笑い声。

 と、同時に俺は少女を抱き抱え、無防備な背中をサンマシラに引き裂かれた。

「ぐわぁぁぁぁぁ!!」

 七輪の火を押し付けられるような痛みが背中を駆け回り、鮮血が飛ぶ。

 自分の肉が裂かれる感触と共に、温かいものが吹き出し体が冷えていくような感覚。

 視界が急にピントから外れたようにボヤける。

「計算通りっキッ!」

 背後でサンマシラが勝ち誇ったように声を上げているのが聞こえる。

 朧気な思考の中、サンマシラを討てと心が叫ぶ。

「これで終わりっキッ!」

 サンマシラの鉤爪が空を裂き迫る音が聞こえる。

 明滅する視界の中。

 俺の陰になり、唖然とする少女の手元に目がいく。

 そこにある物を拾い上げ、反射的に後方に放つ。

 銃声が二発。

 地に何かが叩き落とされる音が一つ。

 崩れていく視界。

 それでも痛みのおかげで何とかを気を保つことが出来、俺は震える足取りで何とか立ち上がる。

 手にした秋刀魚銃を構え、地に倒れ付したサンマシラに向かって三発の銃弾を叩き込み、確実にその命を奪う。

 直後、俺の意識は暗闇に包まれて始める。

「三魔さん…?三魔さん!!」

 マリアンヌの悲鳴を聞きながら、意識を闇に投げ出した。

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