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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第二十八魚 症状

 おサンマをキメる時は周囲を明るくして、精神状態を整えてからキメましょう。

『三魔との約束だ!』


 闇ありし所にサンマあり。

 死をもたらす災厄の化身。

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

 だが、人は希望の光を手に入れた。

 人を守り、人を導く存在。

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

『日魔星』


 Saury in the dark!! Saury in the dark!!

 闇の中へ〜

 Saury in the dark!! Saury in the dark!!

 刃を掲げ〜

 Hope is a sword!!

(前奏)

 血に飢えしサンマ〜

 大罪の炎がその身を灼く

 夜を駆け

 奴らを狩れ

 正義の刃

 悪を切り裂け〜

 Saury in the dark!! Saury in the dark!!

 闇の中へ

 Saury in the dark!!Saury in the dark!!

 刀は掲げ〜

 サンマを断て!!

 正義の刃を執り

 運命を討ち破れ!

 Hope is a sword!!


『斬り裂け!サンマ』


 舞台は再び血みどろの大広間。

 サンマの悪意の権化、最も禍々しく凶ろしいモノが深い闇を包み隠しながら穏やかに笑っていた。

「サンマッチャーくん?」

「はい…サンマリス様…」

「君は失態を冒した。そうだよね?」

「はいその通りでございます」

 サンマッチャーは幽鬼の如く顔を青ざめさせ答える。

「それで、君はサンマシーンを壊した日魔星を屠るつもりで刺客を送ったんだよね?」

「はい…その通りでございます」

「僕はね、例え解決にならなくても君が一生懸命に考えてとった行動なんだから成功したら許してあげようかと考えていたんだよ」

「は、はい…ですが」

「そうだね。なんで失敗してるのかな?」

「そ、その…刺客に送ったサンマーシナリーが報酬に見合う仕事ではない…と」

 サンマッチャーが言い終えると、サンマリスが何も言わず、歩み寄る。

 サンマッチャーの方に手を置き、それから首に爪を走らせる。

「君をこのまま処分するのは容易い。でもね…僕は君に最後のチャンスをあげよう」

 サンマッチャーは肩を震わせ、俯きながら呟く。

「ありがたき幸せ」

「よしてくれよ。まだ許した訳ではないのだから」

 サンマリスの爪がサンマッチャーの首に食い込む。

「ひっ…ひいいい…!!」

 サンマッチャーが悲鳴をあげると、食いこんでいた爪が離される。

「いいかい?一度しか言わないよ。研究用に欲しい素材がある。僕は他の件で忙しいんだ、取ってきてくれるかな」

「…な、なんなりと」

 サンマッチャーが深く頭を垂れ、サンマリスの命令を聞いた。

「す、直ぐにご用意します」

「うん、任せたよ」

 悪意が嗤う。

 その矛先は果たしてどこに向かっているものなのか…。


 腰落とし、右手を脇まで引くと回転を加えつつ拳を突き出す。さながら小さな旋風で打ち込まれた案山子にははっきりと拳の後がつく。

 腰を落とし、右手を脇まで引く。拳をつきだす。その繰り返し。

 一の技を千の繰り返しで形にする。形にした一を更に千の繰り返しで二の技へと。

 一と千の螺旋。

 物量による最高率、それがサン魔拳法の基礎であり最奥である。

 矛は誰もが持ち、誰もが研ぎ澄ませるもの。

 技を得るのに才覚は必要なし、求めるは自己探求(ストイック)

 やる(do)(or)やらないか(not to do)

 故に、細蘭(わたし)は一と千を繰り返し続ける。

 日魔道士は多くのものが道中半ばにて命を落とす。日魔道士において十年というのはほぼ寿命に等しい。

 自分と共に矛を磨いていたものの内、幾人が今も命の灯火を燃やしていることだろう。

 幾人が己の矛を破られ、幾人が己の矛を破り、幾人が己の矛で破れただろう。

 おおよその末路は知らず、されど己とてそれらの末路へと歩んでいる。

 どれほど時間が残されていようか。

 その問いに意味はいらず、歩み続ける。

 破滅のみであろうと、この道こそが己の歩むべき道なのだからと。


 サンマイクより伝令を伝え聞き、夜の街を駆ける。

 紀伊半島から連れてきた愛馬の秋刀馬に跨り、サンマが出没した港へ迎えう。

 つい最近、港で嫌な記憶があるのだが、サンマが出没したというのに選り好みはしていられない。

 潮の匂いが強くなり、真っ暗な闇と化した海原を視界に収めると秋刀馬の手綱を引き、足を止める。

「ここか…」

 秋刀馬から飛び降りると、周囲の気配を探る。

 どことなくサン魔力を感じる。

 ダダ漏れのサン魔力で、下等なサンマなのだろうと足を潜めて近づく。

 サン魔力は、手前のコンテナを裏から感じ取れ、コンテナに登ると音を立てないようにゆっくり歩く。

 サンマを叩くには頭を狙うのが上等であるが、サンマの顔の位置は高く狙いづらいのが常である。

 可能であれば頭上からの奇襲が有効的であり、それができる狩りはとても楽な仕事だ。

 内心、幸運を感じつつも緩みすぎないように気を占めサン魔力の源へ近づく。

 一歩手前まで来ると、身を乗り出し眼下を探る。

「……」

 眼下の光景に些か呆れつつも、できるだけ静かに飛び降りる。

「マリアンヌ、サン魔力がダダ漏れだ」

「……細蘭でありますか!?」

 突如上空より現れた私に驚きを隠せずにマリアンヌが大声をあげる。

「静かにしろ。もうサンマに悟られているだろうと言うのに、わざわざそんな大声を上げたら呼んでいるようなもんだぞ」

「失礼しました…であります」

 マリアンヌは慌てて自分の口に手を当て、押し殺して声を上げる。

「いちいち手を当てなくていいと思うが、それでいい」

 マリアンヌに背を向け、手招きをする。

「行くぞ、どうせ会ったなら二人でやった方が早い」

「はい!であります」

「…なるべく静かにな」

 マリアンヌが私の後ろをついてくる。

 日魔道士の任務で多くの戦いを経てきたが、誰かが後ろにいるというのは随分久しぶりに感じた。

 そういえばこちらに来てから誰かと任務に出ることが多くなった。

 そんな感傷に浸りながら、港内を組まなく探る。

 やがて、その影を捕える。

 倉庫の裏手に普通のサンマが二体。

「雑魚だけか」

 マリアンヌに自分が先行するように合図すると駆け出す。

 二体のサンマは迫る対敵に口を大きく開き、鰐のように鋭きその牙を曝け出すと威嚇する。

「それがなんだってんだい!」

 意識を浅く、己をサンマなのだと知覚する。体内をサン魔力が巡り、早鐘を打つ心臓とともに身体中に焼くような痛みが走る。

 日魔道士として戦うための費用対効果。

 身体能力を常人の何倍も強制的に釣り上げ、地面を蹴る。

 景色が崩れるように移り変わり、十間程の距離を一蹴りで詰める。

 目の前まで迫ったサンマの一体に拳を放つ。

 弾丸のごとく飛び掛け、勢いのまま振るわれる拳はサンマが視認するよりも早くその身を穿つ。

 胴体に大穴を空け、あらゆる内蔵機能を穿たれたサンマは抵抗もなく地に伏す。

「一匹」

「…これ、自分いらないのでは?であります」

 鋭敏になった五感は後方でマリアンヌが呟いた声さえ拾う。

「…そうだといいんだけどね」

 マリアンヌに聞こえる訳では無いのだが、呟き残る一体に向か拳を構える。

 サンマは今見た光景に困惑したようで、後ろ足を引いていた。

「逃がすか」

 再び弾丸の如く飛びかかろうとサン魔力を貯める。

 身体中に走る痛みを無視して、サンマを狩る一個の矛と化す。

 アスファルトの地面が砕けるほどの勢いで飛び上がりサンマへ急降下、蹴りを放つ。

 言うならば矢。サンマの脳天に向かって放たれた鋼。

 サンマが頭上より迫る私を視認し、避けようと身構えるがもう遅い。

 サンマが後ろへ飛び跳ねるよりも早く私の蹴りがサンマの体を貫き、地面を砕く。

 二体のサンマを易々と屠ると、立ち上がる。

「終わったよ」

 振り返り、マリアンヌに声をかける。

 マリアンヌは私に向かって声を上げる。

「細蘭!!上であります!!」

 声に反射して、頭上を見上げると近くにあった倉庫の屋根からサンマが私に向かって飛び降りてきた。

 勢いに乗りながら鉤爪を振るい、その刃が私に迫る。

 マリアンヌのおかげですんでのところで気がつけた私は、直撃する寸前に背後に飛び跳ねてそれを交わすと、着地と同時にサンマへ向かって吶喊しようと…

 視界が揺らぐ。

 頭の中で何が泳ぐ回っているような不快感が駆け、七輪で炙られるような痛みが走る。

 足の、否、身体中の力が抜けて地面に倒れる。

「細蘭!?」

 酷く遠くからマリアンヌの悲鳴が聞こえた。

 朧気な視界でサンマを捕える。奇襲に失敗したサンマだが、目の前で倒れ伏す私を逃すまいと再び鉤爪を振り上げる。

 背筋に悪寒が走る。サンマは無様に転がるままの私を嗤い、鉤爪を振り下げる…のだが、私に到達する前に銃声が響き、サンマを撃ち抜く。

「あ、危なかったであります」

 構えていた秋刀魚大銃(サンマグナム)を下ろし、マリアンヌが私の元まで駆けつける。

「細蘭!?大丈夫でありますか?」

 駆け寄ったマリアンヌが私の体に触れながら、捲したてる。

「大丈夫だ…休めばすぐに…」

 震える声で答え、マリアンヌに壁際まで運んでもらうと壁に背中をつけて休む。

 身体中に広がる七輪で炙られるような痛みは続いだが、少しずつ体の感覚が戻り、立ち上がれるようになる。

「細蘭、もう大丈夫でありますか?」

 マリアンヌが心配そうに私の顔を覗き込む。

「あぁ…問題ない。……すまないが、このことは私とマリアンヌだけの秘密にしてくれ」

 マリアンヌの目を見つめて懇願する。

 私に見つめられ、動揺するように目を泳がせたマリアンヌであるがやがて、

「…わかったであります。でも、お医者様には見てもらって欲しいであります」

 と答えた。

「あぁ…治るならね」

 短く返答し、そのまま口を聞かずマリアンヌと帰投した。

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