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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第二十一魚 仮面

 闇ありし所にサンマあり。

 死をもたらす災厄の化身。

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

 だが、人は希望の光を手に入れた。

 人を守り、人を導く存在。

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

『日魔星』


 Saury in the dark!! Saury in the dark!!

 闇の中へ〜

 Saury in the dark!! Saury in the dark!!

 刃を掲げ〜

Hope is a sword!!

(前奏)

 血に飢えしサンマ〜

 大罪の炎がその身を灼く

 夜を駆け

 奴らを狩れ

 正義の刃

 悪を切り裂け〜

 Saury in the dark!! Saury in the dark!!

 闇の中へ

 Saury in the dark!!Saury in the dark!!

 刀は掲げ〜

 サンマを断て!!

 正義の刃を執り

 運命を討ち破れ!

 Hope is a sword!!


『斬り裂け!サンマ』


 夜を駆ける。

 眼下には日の灯った街並みが広がる。

 燦々と輝き地を照らす太陽の代わりに、夜ごとに人が作り出した光が夜を照らす。

 しかし、それが全ての闇を照らすわけではない。

 人の営みが届かぬ闇。

 その深淵にこそ、サンマが蠢く。

 今宵もサンマが現れ、人に仇をなす。

 秋刀馬が駆け、住宅街の屋根から屋根へと飛び移る。

 秋刀馬の蹄で蹴られ、屋根が砕け散って行くがそれよりも人命が優先である。

「見つけたであります!」

 サンマイクより、サンマを発見したと報告が入る。

「どこだ?」

「今の三魔さんの位置から北に四百メートル程であります!」

 マリアンヌに詳しい場所を伝えられ、そちらへ手綱を引く。

 秋刀馬が北に首を向け、走り出す。

 数十メートルの道路を挟んで向かいに住宅があり、サンマはおそらくその先にいる。

 手綱を占め、夜空へ舞い上がる。

 力強く飛び上がった秋刀馬は夜空を駆け、やすやすと道路を飛び越え屋根へと移る。

 着地すると同時に走り始め、飛ぶ。

 眼下にはサンマが三体降り、うち一体を秋刀馬で踏みつける。

「ンマ!?」

 上空より現れた闖入者にサンマが戸惑う。

 秋刀馬から飛び降りて、抜刀する。

 秋刀馬に踏みつけられ、地を這うサンマに刃を振るい、トドメを刺す。

「次はお前らだ」

 村正刀魚を向ける。

 サンマのうち一体が意を決して俺の方へ飛びかかってくる。

 馬のように逞しい足をしたサンマが地を蹴り、闘牛の如く突貫する。

 その突貫だけでも並大抵の人間であれば致命傷になりうるだろう。

 しかし、俺は引かない。

 逆にサンマへ向かって駆ける。

 サンマの体が俺に迫る。だが、サンマの体が俺に当たるよりも早く、間合いに入る。

 村正刀魚を上段より振り下ろし一閃。

 容易くサンマを両断する。

 血を払い中段に構える。

 残り一体のサンマは恐れおののき、後ずさる。

「直ぐに終わらせる」

 宣告し、距離を詰める。

 サンマは一転し、俺に背を向け駆け出す。

 細い雑路を駆け、大通りへと。

 後ろから迫る対敵から逃れんと走り続けた。

 やがて大通りが見え、サンマは一抹の安堵を感じたように笑う。

 大通りへと出て、そのまま対敵を撒こうと。

 一目散に駆ける。が、雑路の出口に一人の少女が立っていた。

 邪魔をするなと如く、サンマは鉤爪を振り上げ、少女に突貫する。

 瞬間。

 音が爆ぜ、サンマは胴体を貫かれた。

「逃がさない。でありますよ」

 胴体を貫かれ、痛みに呻くサンマへマリアンヌが秋刀魚銃を叩き込む。

 サンマは無抵抗のまま死に絶えた。

「済んだか」

「三魔さんのおかげであります」

「いや、マリアンヌ、強くなったよ」

「本当でありますか!?」

「ああ。…帰るぞ」

 嬉しそうにはしゃぐマリアンヌを宥め、帰路につく。

 サンマランドが襲撃にあってから丸三週間たった。

 襲撃の跡はまだ残り、復興の最中だ。

 …多くの日魔星が死亡し、サンマランド中が悲しみにくれている。

 死亡した日魔星の中には、長年肩を並べて闘い、競い合ってきたものも少なくなく…そして、秋魚女も含まれていた。

 連日、彼らの葬式が行われ遺族や親交のあった者が悔やまれない気持ちを抱えながら涙を呑んだ。

 誰もがサンマと戦う以上、死の覚悟をしておりその家族も少なからずは覚悟をしていたはずだった。

 それでも、大切な誰かを失うということは、どれほど覚悟をしていても確実であるわけがなく、誰もが悲しみにくれていた。

 母秋刀魚はサンマランドの長として遺族に頭を下げ、その都度罵声を浴び、地に頭を擦り付けていた。

 母秋刀魚のせいでは無い。

 それを理解していても、遺族たちの怒りの矛先は母秋刀魚へ向かい、感情の奔流を浴びせ続けていた。

「全ての責任は私にありますから」

 その一言で母秋刀魚は責任を背負い続けている。

 秋魚女の葬式にも参列し、喪主も務めた。

 秋魚女は俺と同じで幼い頃に親を亡くし、母秋刀魚が母親がわりだった。

 日魔星は人々の営みを守り続けるものなれど、その活動はあくまでも秘密裏だ。

 多くの一般人から見れば日魔星なぞただの怪しい集団で、例え小さな女の子でもそんな集団に身を置いていた親の子など引き取り手が現れなかったのだ。

 秋魚女の葬式には俺とマリアンヌ、幾人かの同期だけという寂しいものであった。

 秋魚女は勇敢に戦い続け日魔星としての務めを果たしてきたが、遺体すらも残らず寂しく埋葬されていった。

 そんなことが彼女の末路であるなどと認めたくは無かった…。


 秋水三魔とサン・マリアンヌがサンマを狩っていた同時刻。

 場所はサンマランドの外れの埠頭。

 そこにもサンマが出現して()()

 いたのだ。

 コンクリートの地面に両断されたサンマの体が打ち付けられ、灰色の地面を赤く染めていた。

「ひ…ひぃ!」

 サンマの死体を前に、漁師が尻もちを着いて恐れからか糞尿を垂れ流していた。

 黒衣を纏い秋刀魚仮面(サンマスク)を被ったさながら幽鬼の如くの出で立ちをした男が、刀が帯びたサンマの血を払い問いかける。

「答えろ。お前は生きたいか?」

 怯える漁師は、後退りをしながら口を開き、嗚咽する。

「あ…ひぃ!」

「もう一度問う。お前は生きたいか?」

 再度問われ、漁師は怯えながら首を縦に振る。

 男は漁師が首を縦に降るのを見ると、血払いをし銀色に輝く刃を目にもとまらぬ早業で一閃。

 漁師は自分の身に何が起きたのか理解する間もなく息絶えた。

 再び血払いをし、男は刀を収め、その場を離れようとした。

「あんた、何もんだい?」

 その場を去ろうとする男に一人の女性が問いかける。

「私は聖域(サンマクチュアリ)から派遣された日魔道士でねぇ。あんたみたいな怪しいヤツを見過ごせないんだよ」

 女性…日魔道士の細蘭が構える。

「……日魔道士か」

 問われた男が振り返り呟く。

「ああそうさ。私は細蘭、あんたを倒すもんさ!」

 細蘭がコンクリートの地面を蹴り、一気に距離を詰めると拳を放つ。

 恐るべき速度であった。

 常人どころか、並大抵のサンマならば細蘭の動きを視認する間もなくその拳で肉塊と成り果てていただろう。

 しかし。

 細蘭の拳は放たれる直前に、男に押さえ付けられ放たれることは無かった。

「…!?」

 細蘭は日魔道士の中でもとりわけ優秀である。

 その実力は、同年代の日魔道士の追随を許さず、組手では一人たりとも彼女の拳を捉えられる者はいなかった。

 つい最近まで、彼女と互角に組手を行えるのは一部の熟練の日魔道士とサンマランドから訪れていた三魔だけであった。

「なんてやつだ…!!」

 動揺を隠せず、声に漏らしてしまう。

「お前を斬るつもりは無い」

「そうかい。女には優しくってか!?」

  押さえ付けられ腕をそのままに、腰を落とし、重心を下げ、力強く地面を蹴って蹴りあげる。

 サンマーソルトキック。

 熟練の日魔道士と言えど、この蹴りを喰らって無事でいられるものはいなかった。

 強烈な蹴りが男の顎に向かって迫る。

 しかし、サンマーソルトキックが放たれた次の瞬間にはその場から消え失せ、細蘭の背後に立っていた。

「筋は悪くない。だが、俺を相手取るには未熟すぎる」

 男はそう告げると、刀の頭で強く細蘭の首を打ち付けた。

 衝撃が走り、細蘭の意識が揺れる。

「かっ…は!!」

 揺れる意識の中、細蘭は持ちこたえ、男に一矢報いようと手を伸ばす。

 が、その手は届かず彼女の意識は途絶えていった。

「忘れるな。我らの敵はサンマ…それと人よ」

 途絶えていく意識の中、細蘭はその言葉を耳にした。

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