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人界魔討伝〜三魔〜  作者: 人工サンマ
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第十七魚 針蝿

 闇ありし所にサンマあり。

 死をもたらす災厄の化身。

 サンマの前にあるのは絶望による死のみであった。

 だが、人は希望の光を手に入れた。

 人を守り、人を導く存在。

 人は彼らを称えてこう呼んだ。

『日魔星』


(前奏)

 ゆけ〜さんまの戦士〜

 魔を討つ戦士よ〜

 秋刀魚を掲げて〜

(オォォォォ~)

 鳴り渡るサンマの咆哮

 終わりを告げる魔笛

 散りゆく人の運命(さだめ)

 響く

 慟哭を聞け

 さんまの戦士よ

 叫べ!

 怒りの声

 振るえ!

 怒りの秋刀魚(やいば)

 戦え!

 怒りの戦士

 正しき心

 秋刀魚の一太刀

 魔を討つ戦士 三魔〜!!


  『戦え!日魔星』(字数稼ぎ)


「 へぇ…。あの時の女の子じゃないか」

 闇から声が響くと同時に、こちらへ迫る足音。

「私の事をおぼえているかい?」

 闇から現れたサン魔が私に問いかける。

「…な、なんで…なんでお前が生きている…でありますか」

 体中に悪寒が走る。

 目の前に現れたサン魔。

 それは確かに…

「私は不死身なんだよ」

 確かに、三魔さんが私の目の前で討ち滅ぼしたはずだった。

「君の目の前で親を引き裂くのは心地よかったよ」

 サン魔が嗤う。

 両親を引き裂いて、私から大切な人たちを奪ったサン魔が嗤っている。

「-----っ!!」

 怒りで声にならない叫びをあげる。

「小娘!!落ち着きなさい!!」

 秋魚女の静止が遥か遠くから聞こえる。

 秋刀魚銃(サンマグナム)をサン魔に向け放つ。

 サン魔力は底を尽きかけていて、視界が霞む。

 秋刀魚銃はサン魔力を爆発力に変えて放たれる。

 サン魔力が尽きかけている今、一発の弾丸を撃つことですら危険だ。

 サン魔力が底を尽いた場合、代わりに支払われるのは生命力そのものでまさに命懸けだからだ。

 構わない。

 構うものか。

 頭痛(アラート)を振り切って発砲する。

 真っ直ぐに飛んだ弾丸はサン魔の肩を抉る。

 続いて二発目。

 硬いもので殴られたように頭へ衝撃が走る。

 サン魔の胴体を貫く。

 三発目。

 視界が紅く染まる。

 頭の中で何かが切れる音がすると同時に、発射されサン魔の頭を吹き飛ばす。

 頭を吹き飛ばされたサン魔はそのまま地面に斃れる。

「はぁ……っ…はぁ……」

 身体中から力が抜けていき、地面が近づいてくる。

 既のところで受け止められ、抱えられる。

「こんなに無茶を!!」

 秋魚女は私を抱え、顔を覗き込んでくるのだけどその顔が歪んで表情が読み取れない。

「直ぐに医者にみせますわ」

 秋魚女の背に抱えられ、揺れ始める。

「どこに行くんですか?」

 背後から声をかけられる。

 と、同時に秋魚女が飛び上がり旋回すると振り返る、

「私は不死身のサンマガタマハリバエですよ」

 先程現れたサン魔と全く同じ姿をしたサン魔が底に立っていた。

「小娘…逃げますわよ」

 秋魚女は私につぶやくと、サンマガタマハリバエに背を向け走り出す。

「秋魚女…下ろして欲しいであります」

「ダメよ」

「お願いであります。奴を絶対に倒すであります」

「無理よ」

「ええ、無理です」

 秋魚女が急に立ち止まる。

 道先にサンマガタマハリバエが立っていた。

「どういうこと?」

 秋魚女に背おられたまま、後ろを見る。

 そこにもサンマガタマハリバエがいた。

「私からは逃げられませんよ」

 サンマガタマハリバエが嗤う。

 二体のサン魔に挟まれ、退路はない。

「前言撤回よ…やるしかありませんわ」

 秋魚女がしゃがみこむと私を木に預け立ち上がる。

「そこで待ってなさい」

 秋魚女は呟くと、まず道先に現れたサンマガタマハリバエへ秋刀魚大銃(サンマシンガン)を撃ち放った。

「オラオラオラオラーですわー!!!」

 気合いの叫びと共に、掃射される銃弾の雨はいとも容易くサンマガタマハリバエを肉塊へと変えた。

「たわいないですわ!!次!!」

 直ぐに振り返り、私を追ってきたサンマガタマハリバエへ銃口を向ける。

 しかし、サンマガタマハリバエは既に秋魚女の目前へと迫っており、鉤爪を振り下ろす。

畜生(sit)!ですわ」

 後ろへ跳ねながら、それを躱すと照準を合わせて撃つ。

 サンマガタマハリバエ目掛けて一直線に飛ぶ弾丸だが、右にかわされる。

 躱したサンマガタマハリバエは地面に着くと、踏み込むで再び秋魚女へ鉤爪を振り下ろす。

 対する秋魚女は先程とは逆に、引かずにサンマガタマハリバエへ向かって飛んだ。

 一瞬の交差。

 秋魚女は鉤爪を秋刀魚で受け止め、そのまま力任せに秋刀魚を振り上げた。

 鉤爪が弾かれ、反動でサンマガタマハリバエの胴体ががら空きになる。

 秋魚女は秋刀魚を振り下ろす勢いで投げつけ、右肩に秋刀魚が突き刺さる。

「ぐっ!」

 痛みに呻くサンマガタマハリバエ。

 秋魚女はすかさず、秋刀魚大銃を突きつけ掃射する。

 穴だらけになったサンマガタマハリバエが倒れ息絶える。

 秋魚女は秋刀魚を引き抜くと私のところまで戻ってきた。

「さあ、行きますわよ」

 私を担ごうと身を屈めた。

 その瞬間であった。

 上空よりサンマガタマハリバエが秋魚女の真後ろに降り立ち鉤爪を振るう。

 秋魚女はそれに気づき、躱そうと足を伸ばす。

 が、一瞬躊躇う。

 そのままサンマガタマハリバエの鉤爪が突き刺さり、怪我をしていた右肩を貫通する。

「…っぐ!!!」

 痛みに耐えながら、秋魚女は歯を食いしばり無理やり身をよじる。

 鉤爪が身を裂き、秋魚女の右肩を留めなく血が滴る。

「舐めるんじゃ!!ないですわよ!!」

 無理やり鉤爪を外して振り返ると左腕で秋刀魚大銃を再び放つ。

 至近距離で躱しょうもなく、サンマガタマハリバエは肉塊へと果てた。

「こんどこそ…行きますわよ」

 苦痛に顔を歪ませながら、秋魚女が言い放つ。

「なんで…なんで躱さなかったでありますか?秋魚女なら避けられたはずでは無いのでありますか?」

「…別に、勘が鈍っただけでしてよ」

「…違うでありますよね…。自分がいたから、秋魚女が避けると自分に当たるからでありますよね?」

 秋魚女が庇ってくれた。

 ボロボロになりながら。

 その事実に困惑すると同時に、憤りを感じる。

「そんな無茶をしてまで助けられたくないであります!!なんでそんなことをするでありますか!!」

 それが理不尽だと分かっていた。

 けれど、口にしなければ収まらなかった。

 秋魚女は私の叫びに苦々しい顔を浮かべ、答えた。

「三魔と約束したからですわ」

「…それだけ…でありますか?」

「ええ。それだけ…」

 秋魚女は途中で言葉を呑みこんだ。

「しつこいサンマは嫌われましてよ」

 周囲を威嚇するように言い放つ。

 秋魚女が言い放った方向に目をやる。

 サンマガタマハリバエが一体…二体、三体ほどいた。

「無尽蔵でありますか…」

「そんなことありませんわ。必ず仕組みがあるはず」

 秋魚女は秋刀魚大銃を構える。

 が。次の瞬間、膝をおって地べたに手を着く。

「秋魚女…!?」

「こんなところで!!」

 秋魚女は立ち上がろうと、足を踏み出すのだが、踏み出した足が震え上手くたてそうにない。

 …限界なのだ。

 秋魚女は私と合流する前からサンマと戦っていたようだ。

 そこから、銃火器を使うサン魔にサンマガタマハリバエと連戦している。

 いくら、サン魔力の高い秋魚女でも限界なのだ。

 視界が歪む。

 敵は不死身と名乗るサンマ、対するこちらは二人とも限界だ。

 背筋を冷たい何かが撫でる。

 死の気配だ。

 今、私達二人は限りなく死に近い。

 このままではサンマガタマハリバエに殺されてしまう。

 両親を殺したあのサン魔に。

 それだけは…それだけは許せるものか!!

 気力を振り絞り、震える足を押さえつけ立ち上がる。

 鉛のように重たい腕を持ち上げ、秋刀魚銃を構える。

 引き金を引く。

 身体中を七輪で焼くような熱が走る。

 発射された弾丸は大きくそれ、サンマガタマハリバエに当たらない。

 引かぬ痛みに耐えながら再び引き金を引こうとする。

 しかし、球がない。

 その様子をみてサンマガタマハリバエが嗤う。

 ゆっくりと、敢えて恐怖を与えようと近づいてくる。

 一歩、一歩、迫る死の気配。

 半狂乱で引き金を引くのだが、虚しく空砲が響くのみである。

 目前まで迫ったサンマガタマハリバエが鉤爪を振り上げ…

 死が訪れる。


「この子を使いなよ」

 サワンナ法師に本殿まで案内されると、馬のような生物を紹介された。

 胴体は逞しい馬なのだが、首から上はさんまだ。

「この子はね、秋刀馬(さんま)という特別なさんまなんだ」

「珍しいさんまですね」

「紀伊半島名産のさんまさ。この子ならサンマウンテンバイクよりも速く走れるよ」

「有難く使わせていただきます」

「気をつけてね」

「はい」

 サワンナ法師にお礼を告げ、秋刀馬に跨る。

「ンマーン」

 変わった鳴き声を上げ、秋刀馬が走り出す。

 風邪をさき、車すらも追い越し駆ける。

「すごい…!!これなら…!!」

 直ぐに行く。どうか無事でいてくれ…。

 サンマウンテンバイクで長時間かけてやってきたというのに、月が真上に来る頃にはサンマランドに着いていた。

 サンマランドに着いて一番最初に感じたのは静寂であった。

 普段であればさんま料理で盛り上がっている秋刀魚商工会はもぬけの殻だった。

 秋刀馬を屋敷へと走らせる。

 母秋刀魚と合流して状況を掴まねば。

 屋敷へ近づくにつれ、その惨状が目に映る。

 至る所に人とサンマの死体が転がり、さながら地獄の様相だ。

 嫌な予感を感じつつ、屋敷へ着くと至る所から火が上がり、屋敷は半壊状態だった。

 立ち上る黒煙の元へ向かおうとしたその時。

 裏手にある森の方から秋刀魚大銃の音がした。

「秋魚女が戦っているのか?」

 そちらに意識向ける。

 その瞬間、秋魚女のサン魔力が途絶えた。

「秋魚女のサン魔力が…消えた?」

 秋刀馬を蹴り、森へ駆ける。

 森へ向かうほど、多くのサンマの気配を感じる。

 駆けつけたその先には。

 右肩に傷を負い、倒れふす秋魚女とボロボロになり膝を着くマリアンヌ。

 そして、マリアンヌに鉤爪を振り下ろそうとするサン魔。

「間に合え…!!」

 間合いからは多少距離があるが、攻撃を逸らすだけで良い。

 秋魚女を振るう。

 凝縮されたサン魔力の太刀が駆け、サン魔の鉤爪を逸らす。

 その隙に秋刀馬を走らせ、サン魔へ突撃。

 サン魔を吹き飛ばすと、飛び降りてマリアンヌと秋魚女を背に着地する。

「大丈夫か…?」

「三魔さん…?」

「待っていろ、すぐに片付ける」

 秋刀魚を抜き放ち、上段に構える。

「痛いじゃないですか」

 突き飛ばしたサン魔が立ち上がる。

 そのまま、踏み込んでサン魔が突貫してくる。

 正直なほど直線的で読みやすい挙動。

 分けなく避け、斬り捨てる。

「まだであります!」

 背後でマリアンヌが叫ぶ。

「ええ、この程度では死にませんよ」

 周囲から声が反響しサン魔が現れる。

「あなた、あの時の日魔星ですね?ふふふっ、是非ともあなたをぶち殺したかったんですよ!!」

 サン魔が吼える。

「奴は、サンマガタマハリバエ。不死身…らしいであります」

「確かにあの時討ったサン魔だ。不死身か…どうやらあながち嘘ではないようだな」

 周囲にいるサンマガタマハリバエは四体。

 数の差では不利だろう。

「不死身か。ならば死ぬまで斬るまでだ」

 秋刀魚を向け宣告する。

 それを契機に三体のサンマガタマハリバエが飛びかかってきた。

 一歩足りとも引かない。

 背後にはマリアンヌと秋魚女がいるため退路はない。

 ならばやはり斬り捨てるのみ。

 秋刀魚を一閃。

 ただ飛びかかるだけの単調なサン魔を斬り捨てるなど造作もない。

 ほぼ同時に三体のサンマガタマハリバエを屠る。

 残る一体に秋刀魚を向ける。

「たかが数で押すことしか脳のないサンマなど恐ろしくない」

「ふざけやがって…!!」

「どうした?もう仲間はいないのか?」

「くっ…!!」

「大した不死身だな」

 サンマスラオの元で身につけてきた散魔ノ太刀。

 その技を使うまでもない。

 上段に構え、サンマガタマハリバエへ駆ける。

「く、来るな!」

 鉤爪が振り下ろされるが俺の身に届く前に斬り捨てる。

 サンマガタマハリバエが悲鳴を上げる。

 そのまま秋刀魚を切り返し、下段より袈裟斬り。

 サンマガタマハリバエの体を両断する。

「他愛ない」

 秋刀魚を収め、マリアンヌと秋魚女の元へ駆けつける。

 マリアンヌはサン魔力が尽きた弊害でボロボロだが、命に別状は無さそうだ。

 秋魚女も右肩に大怪我を負っているが、サンマイナスイオンで治療すれば問題なそうだ。

 秋魚女の方が重症のため、抱えて秋刀馬に乗せる。

 意識は朦朧としており、されるがままだった。

「マリアンヌ立てるか?」

「な、なんとか」

 マリアンヌが立ち上がるが、その足取りは陸に上がったさんまのようでとても歩けそうにない。

「無理をするな」

 マリアンヌを抱え、歩き出す。

 秋魚女を抱えた秋刀馬が跡をついてくる。

 森の出口まで着き、ようやく屋敷が見える。

 …その場所に。

「所詮児戯と侮っていたが。…三魔、お前と再び死合えるとなれば足を運んだ甲斐があるというものだ」

 サンマキシマムが立っていた。

「マリアンヌ…少し待っていてくれ」

「…三魔さん…やつは?」

「サンマキシマム…やつを倒さなければこの戦いは終わらない」

 マリアンヌを近くの木に預け、サンマキシマムと相対する。

「腕を上げたな?面白い。だが、今宵は見逃したりせぬぞ」

「ああ。結構だ」

 秋刀魚を抜き構える。


 惨劇の終幕が始まる。

 決闘。

 剣士による至上の舞台こそ、幕引きに相応しい。

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