第十八章:カンニブ - 抗魔の男
「どうしたんですか?」アルベールは詰め寄るように尋ねた。
ダリウスはため息をつき、窓際の椅子に座った。彼はカーテンを少しだけ開け、雪に覆われた通りを見やる。彼の顔に刻まれた新しい傷跡が、弱々しい光の下で浮かび上がっていた。
「あの二人だ。俺たちを追ってきた二人。」彼は声を低くして言った。「俺がお前から離れたのは、お前を守るためだ。そして、あの場所にいた人々を守るためだ。もし俺があいつらと、人々の近くで戦えば、どれだけの人間が死ぬかわからん。」
アルベールは黙った。それから尋ねた。
「なぜ、奴らは師匠を追いかけてくるんですか?」
ダリウスはしばらく黙っていた。彼の頭の中に、古い記憶が蘇る。
*若い頃、ダリウスは有名なギャンブラーだった。彼はよくアラタスナリアの首都――この国最大の賭博場がある場所――に足を運び、夜通し札を捲っていた。そして、大負けした。借金は山のように積み上がった。ある時、借金の取り立てに来た賭博場の者たちを、彼は殴り倒した。その結果、彼はその地域の賭博場全てで、永久に出入り禁止を言い渡された。*
*だが、ダリウスは恐れることを知らない男だ。最近になって、彼は別の地域の賭博場に足を運んだ。だが、賭博場のシステムは互いに連携している。彼らは簡単に彼を見つけ出した。*
*そして、あの二人……彼らは非常に強い。賭博場が、借金を返させるために雇った者たちだ。*
ダリウスはこれらのことをアルベールには話さなかった。彼はただ肩をすくめた。
「ただの……昔の借金だ。」
アルベールは彼を見たが、あまり信じていなかった。しかし、彼はダリウスを知っている。彼は話したくないことは話さない。
「危ないとわかっていて、なぜそこに行ったんですか?」
ダリウスは笑った。傲慢な笑みだった。
「俺が強いからだ。」
アルベールは言葉を失った。このオッサンには、本当に何を言っても無駄だ。彼のそばに長くいれば、自分もこの過剰な自信を受け継いでしまうかもしれない。
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ダリウスはアルベールの心の奥底をえぐった。
「それで、例の女の子からの手紙は? 返事は来たのか?」
アルベールの顔は、瞬時に曇った。彼は顔をそむけ、窓の外を見た。雪はまだ降っている。白く。冷たく。まるで今の彼の心のように。
「まだです。」彼は小さな声で言った。
ダリウスは彼の肩に腕を回した。
「まあ、気にするな。どうせただの女の子だ。どうせお前たちは、まだ何でもない関係だったんだからな。」
アルベールはしばらく黙っていた。それから言った。
「でも……あの子は、俺のタイプだったんです。遊びじゃなくて、結婚してもいいと思えるような、そんな子だったんです。」
ダリウスはそれを聞いて、吹き出した。
「おいおい、勘弁してくれ。まだガキのくせに、結婚だの何だの考えるなよ。」
彼は座り、酒を一杯注いだ。
「忘れたのか? この中央大陸には、まだまだたくさんの国がある。俺たちは全部回るつもりだ。そして、どこに行ったって人はいる。お前の好みに合う別の女の子だって、きっと見つかるさ。」
彼は酒を一口含み、それからからかうような口調で続けた。
「それに、他の大陸だってあるんだぜ。獣人種の女の子の、あのケツのラインを知ってるか? ドラゴン族の、あの巨大な胸は? 人魚族の、あの瑞々しさは? どれもこれも、素晴らしいもんだぞ。」
アルベールは顔を赤らめた。
「師匠……何を言ってるんですか!」
「まあ、元気を出せよ。」ダリウスは彼の肩を叩いた。「それに、この国を探検してみたくないか? ここには独自の文化がある。それに、この国はアイスクリームのコーンのように、屋根が螺旋状になった城で有名なんだぜ。」
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ダリウスはアルベールを街の散策に連れ出した。
彼らは白い樺の並木道、狭い路地、賑やかな広場を通り過ぎた。アルベールは、ここがかなり寒いことを認めざるを得なかった。ここの人々は背が高く、美しかった。金髪に青い目、雪のように白い肌の少女たち。広い肩、長い脚、力強い足取りの青年たち。
アルベールは彼らを見て、心の中に静かな悲しみが湧き上がるのを感じた。
彼女は、俺のことが好きじゃないのかもしれない。
もう、諦めたほうがいいのかもしれない。
彼はため息をつき、心の中でつぶやいた。「まあいいか。彼女が俺を好きじゃないなら、無理にどうこうできるものでもない。」
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ここで、ダリウスは一人の友人と連絡を取った。
それは、武術のプロの選手だった。この国では非常に有名で、その名声は遠くまで響いていた。ヴィナにいたアルベールでさえ、その名前を何度か聞いたことがあった。
そして、彼は抗魔の者だった。
今日、ダリウスはアルベールを、彼の道場に一週間預けるつもりだった。
アルベールは、抗魔の者が非常に強いという話を何度も聞いていた。しかし、想像できなかった。素手だけで、魔法使いに勝てるなんて? どうも信じられなかった。
彼はダリウスに尋ねた。
「もし彼と戦ったら、どっちが勝ちますか?」
ダリウスは自信満々に、自分の方を指さした。
「当然、俺だ。」
アルベールは唇を尖らせた。
「嘘つき。彼は国際レベルの選手なんだぞ。」
ダリウスはただ笑って、何も言わなかった。
そしてアルベールは、抗魔の者は弱いという確信をさらに強めた。
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彼らは道場に着いた。
それは、木と石で建てられた大きな建物で、高い窓があった。中では、武術家たちが稽古に励んでいた。拳の音、蹴りの音、息遣いが、そこら中に響き渡っていた。
そして、アルベールは彼に出会った。
カンニブ。
巨大な男だった。UFCの選手のように、筋肉が盛り上がっている。黒くて濃い、立派なあごひげ。角ばった、男らしい顔立ち。鋭く、ナイフのような目。
ダリウスと彼は、楽しそうに笑いながら話した。彼らは抱き合い、背中を叩き合った。久しぶりに再会した旧友のように。
「こいつはアルベール。ジェラルドの息子だ。」ダリウスが紹介した。
カンニブはアルベールを見た。彼は目を細め、頭のてっぺんからつま先まで、じろじろと品定めした。それから、笑った。
「よう、坊や。俺はカンニブだ。」
アルベールは彼を見た。この男から放たれる、目に見えない圧力を感じた。しかし、恐れはしなかった。彼はもっと強い相手と対峙してきた。そして、勝ってきた。
「俺と手合わせしてください。」アルベールは、傲慢な口調で言った。
カンニブは眉を上げた。
「手合わせ?」
「ああ。俺は魔法を使う。あんたは素手だ。どっちが勝つか見てみよう。」
カンニブは断った。
「俺は弱い者とは戦わない。」
アルベールは怒った。
「誰が弱いって?」
「お前だ。」カンニブは平然と言った。「お前はまだ若い。本当の強さが何なのか、わかっていない。」
ダリウスがそばで笑った。
「まあまあ。どうせジェラルドの息子だ。一戦やってやれよ。どれだけの腕か、見てみたいんだろ。」
カンニブはダリウスを見た。それからアルベールを見た。そして、頷いた。
「わかった。だが、警告しておく。手加減はしないぞ。」
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試合は道場の中央で行われた。
カンニブの多くの弟子たちが、見物に集まった。彼らは輪になって立ち、好奇心で目を輝かせている。彼らの師匠――伝説の男――が、見知らぬガキと戦うのだ。
審判は、灰色のローブをまとった中年の男だった。彼は手を上げた。
「構え。」
アルベールは深く息を吸い込んだ。集中する。体内の魔力の流れを感じる。
「始め!」
と同時に、アルベールは大きな炎を作り出した。炎が二人の間に燃え上がり、カンニブの視界を遮る。そして、糸を張る。何百本もの糸が放たれ、互いに絡み合い、厚い網となってカンニブを包囲した。
アルベールは口元を歪めて笑った。勝った。
しかし、その時……
二本の筋肉質な腕が、彼の体を締め付けた。
アルベールはぎょっとした。カンニブはもう彼のすぐ後ろにいた。どうやってか、彼は炎をかいくぐり、網を破り、一瞬で彼に接近していたのだ。
その腕は、きつく締め付ける。あまりにも頑丈に。あまりにも強く。アルベールは動けなかった。魔法も使えなかった。何もできなかった。
カンニブは彼を地面に投げ飛ばした。
大きな音が響く。アルベールの背中が板張りの床に叩きつけられた。激痛が走る。そして、すべてが暗転した。
アルベールは意識を失った。




