第八話 海底都市ネレイス
## 第八話 海底都市ネレイス
王都レノアオ。
海底都市探索会議。
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海軍提督。
「普通なら潜水艦が必要です」
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学者。
「深海用魔導具も必要です」
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技術者。
「水圧対策が必要です」
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全員が真面目に議論していた。
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慎太郎。
「俺が見てくる」
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会議終了。
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「待ってください隊長」
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宰相は額を押さえた。
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「今回は本当に危険だ」
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「だからこそ見てくる」
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「一人で行くな」
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「分かった」
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「おお」
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「護衛艦隊も連れていく」
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「そういう意味ではない」
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しかし止められなかった。
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数週間後。
王国海軍。
調査艦隊。
十五隻。
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沖合五百キロ。
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巨大な渦潮海域。
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そこだった。
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海面に時折見える。
石柱。
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人工物。
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学者たちは興奮した。
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「本物だ!」
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「古代文明だ!」
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慎太郎は海を見下ろした。
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そして変身する。
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今回は高高度飛行形態ではない。
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深海探索用特殊形態。
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筋肉密度増強。
耐圧構造。
水中推進能力。
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情報局でも存在を知らない形態だった。
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海軍提督。
「……」
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学者。
「……」
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宰相代理。
「もう驚きません」
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慎太郎は海へ飛び込んだ。
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深度百メートル。
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二百。
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五百。
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千。
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普通の人間なら即死。
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だが慎太郎は進む。
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暗闇の世界。
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魚群。
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巨大な海洋魔獣。
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沈没船。
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さらに下。
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そして。
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見えた。
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光。
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深海の底で輝く巨大都市。
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ネレイス。
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それは都市だった。
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神殿。
広場。
運河。
塔。
住宅街。
研究区画。
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全てが巨大な透明結界に守られていた。
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数千年。
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都市は眠り続けていた。
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慎太郎は結界を通過する。
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その瞬間。
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都市の灯りが点いた。
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ゴォォォォ……
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古代装置が起動する。
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街灯。
水路。
施設。
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まるで主人を待っていたかのようだった。
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中央管理塔。
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入口。
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石碑。
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そこには古代文字。
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> 第一知識庫が失われても
>
> 第二知識庫が失われても
>
> ここが残る
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慎太郎は笑う。
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「本当に徹底してるな」
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さらに奥へ進む。
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そして見つけた。
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第四の記録。
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古代文明の最後の日。
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映像記録だった。
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数万人の市民。
学者。
職人。
農民。
兵士。
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彼らは争っていなかった。
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避難していた。
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知識を運び。
種子を運び。
資料を運び。
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文明を未来へ託していた。
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最後に一人の女性学者が映る。
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> 我々は滅びる
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> だが人類は滅びない
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> 次の文明へ渡せ
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> 知識は所有物ではない
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> 贈り物だ
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映像終了。
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慎太郎はしばらく動かなかった。
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やがて呟く。
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「だから三つも作ったのか」
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黄金を残すためではない。
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支配するためでもない。
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知識を未来へ残すためだった。
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その後の調査で判明する。
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ネレイスには。
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数百万種類の植物記録。
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数万年規模の気候記録。
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海流観測データ。
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失われた生物の図鑑。
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世界地図。
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そして。
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まだ未開封の保管区画。
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巨大な封印扉。
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そこに書かれていた文字。
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> 最終保管庫
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慎太郎は眉を上げた。
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「まだあるのか」
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その時。
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管理塔の奥。
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今まで存在しなかった扉が開いた。
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ギギギ……
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暗闇の向こう。
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古代文字が浮かぶ。
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> 月面保管計画
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慎太郎。
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「待て」
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沈黙。
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「月?」
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深海の都市で。
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王国最強の冒険者は。
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数年ぶりに本気で頭を抱えた。
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「古代人、お前らやり過ぎだろ」
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こうして第三知識庫の奥で発見された資料は、
王国史上最大の衝撃をもたらす。
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空でもない。
海でもない。
地上でもない。
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第四の知識庫は、
空のさらに彼方。
月に存在する可能性が浮上したのである。




