第六話 空中城の第二知識庫
## 第六話 空中城の第二知識庫
アルグラード文庫の地下書庫。
慎太郎は古地図を広げていた。
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そこに記されていた奇妙な一文。
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> 地上が失われる時、
> 空の城に知識を託す。
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さらに続く。
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> 第二知識庫
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> アストラ・ライブラリア
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考古学者たちは首を傾げた。
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「伝説でしょう」
「神話では?」
「空飛ぶ城なんて」
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慎太郎だけは違った。
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「ある」
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「え?」
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「知識庫を作った連中ならやる」
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アルグラード遺跡を調査した彼には確信があった。
古代文明は派手な魔法文明ではない。
だが異常なほど堅実だった。
だからこそ。
文明崩壊に備えた予備知識庫を作る可能性は十分あった。
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数か月後。
慎太郎は変身する。
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高高度飛行形態。
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翼幅数十メートル。
高空巡航能力。
長距離飛行能力。
下面には観測用魔導レンズ。
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王国の誰にも真似できない探索方法だった。
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「では行ってくる」
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情報局員。
「隊長」
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「なんだ」
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「普通の冒険者は飛びません」
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「そうだな」
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「自覚あります?」
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「最近少し」
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そして飛び立った。
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高度一万メートル。
さらに上昇。
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雲海の上。
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青空しかない。
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数日。
探索は続いた。
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何も見つからない。
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だが慎太郎は諦めない。
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古代文明が残した資料には特徴があった。
嘘が少ない。
無駄が少ない。
だから書いてある以上は何かある。
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七日目。
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雲海の向こう。
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何かが見えた。
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巨大な影。
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山のような質量。
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空に浮かぶ城塞。
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慎太郎は思わず叫んだ。
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「本当にあった!」
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アストラ・ライブラリア。
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全長数キロ。
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巨大な浮遊都市。
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崩壊しかけているが、
なお空を漂っている。
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外壁には古代文字。
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中央塔。
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研究棟。
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保管施設。
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巨大図書館。
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慎太郎は着陸した。
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数千年ぶりに人類が踏み入れる。
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静寂。
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風の音だけが響く。
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そして入口の石板。
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> 知識を求める者よ。
>
> 争うな。
>
> 独占するな。
>
> 後世へ渡せ。
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慎太郎は少し笑った。
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「同じ考えだったか」
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アルグラードの管理者たちと。
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館内へ入る。
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広大だった。
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本棚。
本棚。
本棚。
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その全てに魔法保存が施されている。
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数千年経っても劣化していない。
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慎太郎は震えた。
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「これは……」
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アルグラードの十倍。
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百倍。
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いや。
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比較にならない。
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第二知識庫は文明そのものだった。
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天文学。
数学。
行政学。
建築学。
農学。
医学。
冶金学。
航海術。
気象観測。
人口統計。
教育制度。
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人類文明の集大成。
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その時。
中央制御室に到着する。
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そこには水晶があった。
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まだ動いている。
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慎太郎が触れる。
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光が広がる。
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映像が現れた。
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古代人の記録だった。
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白衣の老人。
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「もし君がこれを見ているなら」
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「我々は滅んだのだろう」
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「だがそれで構わない」
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「文明はいずれ終わる」
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「だから残した」
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映像の背後には膨大な本棚。
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「知識を守れ」
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「国家のためではない」
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「人類のために」
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映像は消えた。
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慎太郎はしばらく動かなかった。
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そして深く息を吐く。
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「了解した」
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王国へ帰還した彼は国王と宰相へ報告する。
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会議室は沈黙した。
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「第二知識庫?」
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「はい」
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「空飛ぶ城?」
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「はい」
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「知識量は?」
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慎太郎は答えた。
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「アルグラードの百倍以上です」
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全員が固まった。
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宰相は椅子にもたれた。
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「また仕事が増えた……」
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慎太郎は笑った。
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「冒険も増えます」
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こうして王国は新たな国家事業を開始する。
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**空中城アストラ・ライブラリア調査計画。**
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後に歴史家たちは言う。
アルグラードの発見が王国を豊かにしたなら、
アストラ・ライブラリアの発見は王国を賢くした。
そして智慎太郎は、
「知識を発掘する冒険者」
として大陸中に知られる存在になっていくのであった。




