第三話 空飛ぶ調査隊長
## 第三話 空飛ぶ調査隊長
北方遺跡への出発準備をしていた慎太郎だったが、ふと気になった。
「そういえば、王国の正確な地図ってあるのか?」
情報局員たちは顔を見合わせた。
「ありますが……かなり古いです」
「領主ごとに測量方法が違います」
「国境付近は特に曖昧ですね」
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慎太郎は考え込んだ。
前世では当たり前だった。
正確な地図。
国土面積。
交通網。
人口分布。
しかしこの世界ではそうではない。
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「なら調べるか」
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数日後。
慎太郎は誰もいない山中へ向かった。
そして変身する。
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巨大な翼。
流線型の胴体。
高高度飛行が可能な特殊形態。
もちろん人間ではない。
だが彼の変身能力は「男性」への変身だけでなく、研究の末に「男性として認識される特殊存在」にまで応用できるようになっていた。
情報局でも極秘中の極秘だった。
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上空。
雲のさらに上。
慎太郎は王国全域を飛行した。
下面には魔導カメラ。
連続撮影機能付き。
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東部平原。
西部森林。
南部農業地帯。
北方山脈。
主要街道。
河川。
港湾。
すべて撮影する。
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数か月後。
情報局地下で巨大な地図が完成した。
王国史上最も正確な地図である。
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宰相が呟く。
「これは凄い……」
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国王も驚いた。
「我が国はこんな形だったのか」
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最終的な測定結果。
**シアロアルス王国国土面積:約17万平方キロメートル。**
周辺諸国と比較しても中堅以上の規模だった。
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さらに慎太郎は考えた。
「情報伝達も遅いな」
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当時。
伝令馬。
徒歩伝令。
商人便。
どれも時間がかかる。
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そこで目を付けたのが鳩だった。
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各地の塔。
宿場町。
城塞。
港。
行政都市。
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「鳩便網を作ろう」
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情報局主導で建設開始。
しかし予算が足りない。
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その時。
一人の老貴族が申し出た。
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「昔の戦時国債がある」
「ほう」
「先王陛下の時代のものだ」
「まだ持ってたんですか」
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老人は苦笑した。
「換金の機会を失ってな」
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慎太郎は資料を見る。
額面は大きい。
しかも信用も十分。
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結果。
戦時国債を担保に資金調達。
鳩便網建設が始まった。
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一年後。
完成。
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鳩便拠点。
**80拠点。**
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主要都市を全て結ぶ。
軍事要塞も繋ぐ。
港も繋ぐ。
山岳砦も繋ぐ。
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それまで。
王都から辺境まで十日以上かかった情報が。
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今では二日。
急報なら一日以内。
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王国中が驚いた。
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商人。
「市場価格がすぐ分かる!」
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領主。
「盗賊情報が早い!」
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軍。
「国境警備が楽になった!」
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国王。
「便利すぎる」
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宰相。
「もはや情報局が国家の神経ですな」
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慎太郎は苦笑した。
「ただ鳩を増やしただけなんだが」
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その頃。
他国の諜報機関は混乱していた。
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「なぜあの国だけ連絡が速い?」
「何が起きている?」
「魔法か?」
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答えは単純。
鳩だった。
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こうして慎太郎は、
スパイ隊長でありながら、
地図作成者、
通信網整備者、
情報改革者としても知られるようになる。
しかし本人は王城の窓から冒険者ギルドを眺めながら、今日も呟く。
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「遺跡探索まだかな……」
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情報局員たちは知っていた。
巨大な国家事業をいくつも成功させた男が、
本当にやりたいことは、
古代遺跡で宝箱を開けることだと。




