第二話 影の冒険者
## 第二話 影の冒険者
隣国。
**ラウゼン公国。**
シアロアルス王国とは友好国だったが、最近になって不穏な動きが報告されていた。
武器の買い付け。
傭兵の増加。
秘密会談。
王国情報局は警戒していた。
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慎太郎は変身した。
今度は二十代半ばの旅商人。
茶髪。
細身。
どこにでもいそうな男。
名前は適当に考えた。
「シン・アルト」
もちろん偽名だ。
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公国へ入国したその日。
慎太郎は酒場へ向かった。
情報は酒場に集まる。
これはどこの世界でも同じだった。
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傭兵A
「最近羽振りいいな」
傭兵B
「まあな」
傭兵A
「どこから金が出てる?」
傭兵B
「知らねえ方が長生きするぞ」
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慎太郎は静かに酒を飲む。
聞いているだけ。
それだけでいい。
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翌日。
市場。
商会。
兵舎周辺。
港。
数日歩いただけで違和感が見え始めた。
「戦争準備にしては規模が小さい」
慎太郎は首を傾げた。
もっと別の目的がある。
そんな気がした。
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その夜。
尾行を始める。
万能武術LV5は戦うだけの能力ではない。
足運び。
気配消し。
索敵。
追跡。
全て平均以上だった。
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黒い馬車。
深夜。
倉庫街。
秘密会合。
慎太郎は屋根の上から見下ろした。
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そこにいたのは。
ラウゼン公国の貴族。
商人。
傭兵団長。
そして。
見知らぬ男。
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男が言った。
「計画は順調だ」
「資金も集まった」
「予定通り一年以内に開始する」
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慎太郎は耳を澄ませた。
だが肝心な部分が聞こえない。
距離が遠い。
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その瞬間。
背後から声。
「誰だ?」
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慎太郎の背筋が凍った。
気付かれた。
屋根の上に警備兵がいた。
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だが。
慎太郎は慌てない。
物陰へ飛び込む。
そして変身。
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数秒後。
そこにいたのは。
警備兵と同じ制服を着た別の警備兵だった。
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警備兵
「おい、怪しい奴を見なかったか?」
慎太郎
「向こうへ逃げました」
「何!」
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警備兵たちは走り去る。
慎太郎は平然と反対方向へ歩いた。
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「便利だなあ」
思わず本音が漏れる。
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数日後。
さらに調査。
そして驚くべき事実を知る。
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敵は公国ではなかった。
公国内部に潜む組織。
名は。
**灰色同盟。**
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目的は国家転覆。
戦争による混乱。
王家の排除。
その後に商人たちが実権を握る。
そんな計画だった。
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「面倒くさいな」
慎太郎は呟いた。
国家同士の戦争ならまだ分かる。
だが権力争いは複雑だ。
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しかし。
調査を進めるうちに。
もっと大きな問題が見えてきた。
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灰色同盟の背後。
さらに上。
資金源。
武器供給。
連絡網。
全部が不自然だった。
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「誰かいるな」
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慎太郎は確信する。
黒幕は別にいる。
しかも複数国家にまたがる巨大組織だ。
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王都レノアオ。
情報局本部。
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報告書。
五百七十八ページ。
地図四十三枚。
関係者名簿二百名。
証拠多数。
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局員たちは顔面蒼白だった。
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「隊長」
「何だ」
「本当に一人で調べたんですか」
「うん」
「嘘ですよね?」
「本当だ」
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その報告は国王にも届けられた。
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国王は資料を読み終える。
沈黙。
十分。
二十分。
三十分。
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そして一言。
「怖い」
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宰相も頷いた。
「怖いですね」
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「敵に回したくない」
「その通りです」
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その頃。
慎太郎は。
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王都の冒険者ギルドにいた。
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依頼書を見る。
薬草採取。
ゴブリン退治。
護衛任務。
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「いいなあ……」
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受付嬢が笑う。
「隊長殿、また来たんですか」
「冒険者になりたかったんだ」
「まだ諦めてないんですね」
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慎太郎はため息をつく。
国家機密を追う毎日。
暗殺者。
陰謀。
諜報戦。
確かに刺激的だ。
だが。
彼が本当に憧れていたのは。
仲間と焚火を囲み。
遺跡を探索し。
宝箱を見つけて喜ぶ。
そんな普通の冒険者生活だった。
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しかしその夜。
情報局へ緊急連絡が入る。
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「隊長!」
「何だ」
「北方山脈で古代遺跡が発見されました!」
「ほう」
「各国が調査隊を派遣しています!」
「ほう」
「どうやら古代文明の遺産らしく――」
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慎太郎の目が輝いた。
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「遺跡?」
「はい」
「冒険できる?」
「たぶん」
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三秒後。
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「出発準備だ」
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局員たちは見た。
普段は冷静な隊長が。
少年みたいな笑顔になっているのを。
こうして智慎太郎は、
国家の陰謀を追うスパイ隊長としてではなく、
一人の冒険者として、
人生初の本格的な古代遺跡探索へ向かうことになったのであった。




