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マガツモノ  作者: しータロ(豆坂田)
第二章 地上の景色

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第46話 次に必要な物

「……やった」


 街中を歩くマキアは周りの迷惑にならないよう声を抑えながらガッツポーズをした。

 約300万リムの報酬が振り込まれたことや、加工用機材という難題の解決策を見つけられたことで、喜びが爆発している。

 すぐにでもメーテラたちにこの喜びを伝えたいところだが、マキアにはその前に行くところがあった。

 

「ふう」

 

 目的地にたどり着いたマキアは一度息を吐いて呼吸を整える。

 目の前には前にも訪れた『ナカムラアームズ』の店舗があった。

 訪れた要件は単純明快。

 以前購入した武器の受け取りだ。

 ここ数日は色々とありすぎて、ほぼ購入したことを忘れてしまっていた。

 本来ならばもっと受け取りに来ることができたが、グルーワームの巣に落ちたりして行くことができなかった。

 その後は病院で治療を受けていたり、テイカーロッジの事務所に帰ってからも用事があったりして、行くことができなかった。加えて、受け渡しの期限についてはほぼないようなものなので、いつでも行けるということもあり、行くのが遅くなっていた。

 

「お待ちしておりました」


 事前に連絡していたため、店の中にマキアが入るとすぐベンジャミンが出迎えてくれた。


「本日はLK-MOTO『R』と弾薬のお渡しでよろしいですか?」

「はい……あと、それと……前に買った防護服と同じやつを買えますか」


 マキアはグルーワームの一件で買ったばかりの防護服も破壊された。20万リムも払った割りには短い生涯だった。そのおかげでグルーワームの腹の中でも命を繋ぐことができたので、そう考えると20リムという値段は安かったのかもしれない。

 今は幸いにも20万リム程度ならば払える程度の余裕がある。

 

「分かりました。在庫があればLK-MOTO『R』を持ってくる際にお渡しいたします」

「ありがとうござます」


 ベンジャミンは一度店の奥の方に姿を消して、マキアはカウンターで待つ。

 2分ほど待つとすぐにベンジャミンがLK-MOTO『R』と防護服を持って帰って来た。


「お待たせしました。こちらで良かったでしょうか」


 カウンターの上に置かれたLK-MOTO『R』と防護服を見て確認する。

 防護服は実際に使ったこともあり、違いがあればすぐに分かるため、少しみてカウンターの上に置き直す。

 問題はLK-MOTO『R』だ。

 実物を見るのはこれが初めてだ。購入する際にホログラムで造形を確認したが、やはり実物は違う。


(か、かっけぇ……)


 洗練された無駄のない造形美というのにはやはり惹かれる。

 重厚感のある手触りならが重量は重くなく、取り回しは容易。

 分類としては狙撃銃に入るため銃身は長いが、N-41ガルディンと似ているため、慣れるのにそう時間はかからないだろう。


「はは、随分と気に入られている様子で」


 まじまじと見ているマキアを見てベンジャミンが微笑む。

 

「あ、すいません……」

「いえいえ」


 ベンジャミンはLK-MOTO『R』を手に取り、チャンバー内を一度確認する。

 

「基本性能とオプションの追加について、ここで確認を行いますか?」

「……じゃあお願いします」


 マキアが答えるとベンジャミンがLK-MOTO『R』の説明を始める。

 マキアが買った銃はミリパワー社が製造しているLKシリーズの狙撃銃——MOTOモデルの『R』カスタムだ。

 価格はカスタム料金を合わせて約70万リム。

 防護服の代金を含めると全財産を叩いた買った銃だ。

 その甲斐もあって、基本性能は高く、狙撃銃でありながらある程度は連射が可能だ。その分、内部機構を痛めてしまうが、カスタムしてより高品質な部品に変えてもらっている上に、整備しやすいようにもなっている。

 反動は大きいがマキアの身体能力を持ってすれば抑え込める程度。問題は弾代ぐらいなもの。

 LK-MOTO『R』に使われる弾丸——SR-12タロンは汎用性の高い狙撃銃用の弾丸であり、小銃用のものと比べて高い。

 その上、対マガツモノ用の弾丸としては、一般的に使われている狙撃銃の弾丸より高くなっている。

 これからは弾代も気にかけなくてはならなくなった。 

 

「以上が簡単な説明になります。何かご質問などはありますか?」

「いえ、特には」


 マキアがそう答えるとベンジャミンはLK-MOTO『R』をガンケースにしまってマキアに渡す。

 その際、ベンジャミンは言葉を投げかける。


「良いサブウェポンも取り揃えておりますので、ご希望の際は是非とも」


 ベンジャミンは満面の笑みだった。

 マキアが懸賞首を討伐したというニュースはすでに地下都市で広まっている。懐が暖かい今ならマキアは躊躇なく武器を買える。

 それにサブウェポンはLK-MOTO『R』に何かあった時のために必要になる可能性がある。そのおかげで命が助かるのならば安い。

 しかし、マキアは機会を見送った。


「じゃあまた必要になったら来ます」


 おそらく、今回稼いだ約300万リムはすべて加工用の機材の購入に消える。

 無駄遣いをしてはいられなかった。


「では、またのご来店をお待ちしております」


 マキアはベンジャミンに見送られながら店を出た。


 ◆


「メーテラさん、この中から選んでください。予算は一応270万リムぐらいまで大丈夫です」


 事務所に帰って来たマキアは、ヴィクターから送られてきた加工用機材の中古品のリストを見せていた。

 加工屋スミスではないマキアにはリストに載っている機械が一つも分からないので、選択はすべてメーテラに任せている。


「そ、そんなに使ってもいいの」


 270万リムという予算を耳にしてメーテラはタブレットを持つ手を震えさせていた。

 ついこの前まで十万程度の稼ぎで喜んでいたが、気が付くと何百万という金を扱っている。そのギャップについてこれていない様子だった。


「でも安いのでも一つ百万以上しますよ。そのぐらいの予算ないと何も買えなくないですか?」


 リストに載っている機械は高いのであれば1000万リムを越える物もある。最安値のもので172万リムだ。

 今回の懸賞首討伐で稼いだ全財産を使わなければまともな物が買えない。

 

「むむ……それはそうだけど」


 マキアが稼いできた金はマキアに使って欲しいという気持ちがメーテラの邪魔をする。

 するとソファでリストを見ていたメーテラの肩に、後ろからそっと頭を預けてタブレットを覗き込んでいたリディアが、ふいに口を挟んだ。


「いいじゃん。あいつが好きに使っていいっていうなら、予算全部使っちゃおうよ」

「むむむ……」


 すでにメーテラの視線はある機械に釘付けになっていた。値段は248万リム。他に備品なども買うとしたら予算ぎりぎりか、少し超える程度の値段だ。

 欲望と現実の間で足踏みをするメーテラを見て、マキアは『長くなりそう』だと買ってきたばかりのLK-MOTO『R』をガンケースから取り出して準備を始めた。


「メーテラさん。今すぐ決めなくてもいいですから。あ……ただ長引くと中古品が処分とか買い取られちゃうかもしれないので、その辺だけ気を付けてください」

「え、え、えぇ」


 早く決めた方がいいのか、早く決めない方がいいのか。

 マキアの余計な一言でメーテラはさらに悩む。

 そんなメーテラを横目に見ながら、準備を終えたマキアが店の奥へと向かう。その際、リディアに呼び止められた。


「あれマキア、どこか行くの」

「レイダーズフロントの人から依頼が入ってて、今から向かう」

「それでなに? マガツモノのいるところに行くの」

「そうなるな」

「じゃあ黙って出て行かないで。ちゃんとどこで何をするか、何時に帰って来るかを連絡して」

「……わかった」


 レイダーはいつ死んでもおかしくない仕事だ。

 事前に危険な場所に向かうのならば仲間への連絡は必須。

 当たり前の事実を忘れていた。

 もしかしたら女王や懸賞首の討伐で気づかぬうちに慢心しているのかもしれない。

 

「じゃあ後で連絡する」

「気を付けなさいよ」


 リディアの次にメーテラからも「待ってるからー」と言葉を投げかけてもらうと、マキアは「行ってくる」とだけ残してガレージへと向かった。

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