第45話 諸々のこと
テイカーロッジを出たマキアはレイダーズフロントの施設まで来ていた。
着くとすぐに案内されヴィクターが待つ部屋まで通される。
「忙しいところ申し訳ありません。お掛けください」
ヴィクターはマキアに丁寧に接すると、座ったのを確認してから話しを切り出す。
「事前にお話ししていたように、今日は賞金の件とレイダーランク上昇の件についてになります」
ヴィクターはそう切り出すとテーブルの上に置いてある資料に目を向けるよう促す。
「懸賞首の討伐ありがとうございました。まずはその代金についてです」
マキアは巣から逃げる際に懸賞首となったグルーワームを討伐した。その懸賞金がマキアには支払われる。
「賞金は248万リムになります。指定の銀行に振り込んでおいたので、後ほどご確認ください」
「分かりました」
それから、とヴィクターは続ける。
「懸賞金に加えてグルーワームの巣を破壊したことによる追加報酬。グルーワームの素材はこちらで回収したので、その分の代金を支払います。こちらが合計で52万リムとなります」
となると300万リム程度が一気に手に入った形になる。
ドロクマの討伐報酬だけでも現実感が掴めない金額だったというのに、今回はその三倍。
とても実感がない。
夢のような金額に呆けるマキアを見て、ヴィクターが笑いを零す。
「今や、あなたは地下都市でも中々いない百万越えのレイダーです。ぜひとも、この調子で頑張ってください」
賞金の件はすぐに終わって、ヴィクターはもう一つの話題にシフトする。
「次にレイダーランクの件ですが、『3』に昇格した際にレイダー証を作り直すのでそのお手続きがあります」
レイダーランクは最高位の『7』から最低位の『1』まであり、マキアはレイダーになって一か月ほどで『3』にまで上がった。レイダーランクが『3』になるとこれまで紙一枚のペラペラだったレイダー証から正式なものへと作り直される。
その際に一部個人情報が必要になるため、レイダーランクが『3』になったレイダーはレイダーズフロントの施設を訪れて作り直すことが義務付けられている。
「これからは作り直したレイダー証が身分証の役割を果たしますから、提携店舗にて割り引きを受けたい場合は必ず持って行ってください」
作り直されたレイダー証はレイダーズフロントの権威ある発行物として、身分証の役割を果たすようになる。
加えてレイダーランクに応じて、提携店や企業で割り引きで装備の購入やサービスを受けられるため、今後もレイダー活動を続けていくのならば絶対に必要なものだ。
「さて、事前にお伝えしておいた用件はこれですべてです」
話が終わるとヴィクターが一度座り直す。
「まだ何か?」
事前に伝えていなかった別件もあるかのようなヴィクターの口振りに、マキアが首を傾げるとヴィクターはテーブルの端に置いてあった別の資料をすべらせて、見るよう促す。
「実は一つ頼みたいことがありまして、未探索領域の調査になるのですが」
未探索領域の調査は前にミケも行っていた。
その様子を思い出しながらマキアは尋ねる。
「未探索領域の調査って……おれでもいいんですか?」
未探索領域の探索難易度は非常に高い。マキアのようなレイダーに頼んでも良いことなのかと、マキアが疑問を口にするとヴィクターは軽く笑った。
「マキアさん。あなたには自覚が無いのかもしれませんが、レイダーランク『3』というのは地下都市では最も高いランクなんですよ」
ミケを除き、レイダーランク『3』というのは地下都市での最高ランクだ。
ジャンでさえ『3』であり、ミケがいなくなった今、高難易度任務を任せるとしたらマキアしか残っていない。
「そもそもとして、あなたはドロクマの女王の討伐や、懸賞首の討伐など、レイダーランク『3』のレイダーでも難しいことをやってのけています。私としては、あなたの実力はすでにレイダーランク『4』にも届きうると考えています」
それだけの実力を見込んでヴィクターはマキアに未探索領域の探索を依頼した。
マキアとしては素直に実績を褒められて嬉しく、思わずにやけそうになってしまう。
表情筋を総動員して頬の緩みを抑えると、取りあえず話題を変えた。
「どこの探索ですか?」
「数年前に放棄された前哨基地跡です」
詳しくは資料に書かれていた。
マガツモノの侵攻によって、数年前に放棄した前哨基地跡の探索だ。
今は立ち入り禁止になっており、特別な許可を得てマキアは中でレイダー活動をする。
その際にレイダーズフロントから支給される情報端末を用いて前哨基地跡の情報を持ち帰りながら、マガツモノを討伐し生体情報も得るのが大まかな仕事だ。
加えて。
「前哨基地跡の中心部に発電機があるのですが、そちらの稼働も止めてください」
「そう、なんですか?」
「はい。詳しく話すと長くなるので一度持ち帰ってからお返事を下さい。分からないことがありましたら、連絡していただければ即日返答致しますので、遠慮なく」
「分かりました……」
マキアが資料をバックの中に詰めるのを確認すると、ヴィクターが口を開く。
「私からは以上です、マキアさんから何かありますか?」
「……」
マキアは少し考えてから、駄目もとであることを頼む。
「今……加工屋が使う加工用の機材を探してるんですけど、安く仕入れられるルートとかありませんか、それかリムでも買える機材があればいいんですけど」
「そうですね」
ヴィクターは特に悩むことなく頷いた。
「レイダーズフロントがアーサーさんたちのようなレイダーを雇っているように、私たちは加工屋も抱えています。ちょうど古くなった備品を交換しているところなので、その中古品でよければ、倉庫に保管してある分を安くお渡しできますよ」
そこでマキアはメーテラが以前勤めていた場所を思い出す。
地下都市に来る前、メーテラはレイダーズフロントに所属してアーサーたちのようなレイダーに装備を作っていた。
事前にメーテラから話を聞いていたため、マキアはすんなりその話を理解することができた。
「ありがとうございます!」
目途の立っていなかった機材の購入について、こんなにも早く解答が得られるとは思っておらず、マキアはソファから身を乗り出して頷いた。
ヴィクターは子でも見るような気持を抱きながら、微笑んだ。
「では、後で機材についての詳細をまとめてメールで送るので、決まったらお返事をください」
「はい!」




