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マガツモノ  作者: しータロ(豆坂田)


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第12話 資格の危機

 特に何事も無く非保護区域に入る時に使った扉の場所まで帰って来たマキアは、認証を終わらせて保護区域に入ると、まず最初にマガツモノの死体を片付けるところから始めた。

 保護区域に入ってすぐ道路を曲がってレイダーフロントの解体施設へと向かう。

 今から行うのはマガツモノの解体と売却だ。

 マガツモノの死体は腐るのが早いためすぐに解体しなければならない。解体せずとも売ることはできるが、レイダーズフロント側に解体する業務が生じる以上、売却額は低くなる。

 テイカーロッジの設備を買うために少しでも多く稼いでおきたい。それにマキアには解体知識もある。できるだけ売却額を高めてから売る必要があった。加えて、禍具を作るための素材を少し回収する必要ある。


「よし……」


 保護区域について胸をなでおろしてすぐ、マキアが工場のような見た目の施設に辿り着く。

 今から受付をして、車両を中に運び込んで、解体をして、売却する。 

 合計で二時間はかかるだろうか。

 マガツモノの戦闘で死にかけて、今後は別の業務。

 重労働だ。

 

「いっちょ、やりますか」


 小さくため息をついてから業務へと取り掛かる。


 ◆


「帰ってきました」


 マキアがテイカーロッジに帰って来たのは夜遅くだった。すでにマキアは以前まで住んでいた自宅を解約し、今はテイカーロッジの事務所に住んでいる。そちらの方が生活費が抑えられるし、何かと便利というただそれだけの理由だ。


「おかえりー、怪我はない?」


 メーテラが事務所の受付でマキアを出迎える。すでに保護区域に入った時に生還した旨は伝えていたので、メーテラが過剰に喜ぶことはなかった。


「メーテラさんの方はどうでしたか」

「今日も今日とてお客さんはゼロだよー」


 昨日の夜にマキアはメーテラとホームページのことについて話し合った結果、『そのままでいい』という結論に至った。

 加工屋(スミス)が地下都市の中心街以外にいるということはなるべく避けておいた方がいい。

 三番街やその他の組織に目を付けられる可能性があるからだ。

 当然、三番街と取り引きをしたいのならばホームページを修正するべきだが、マキアの想像では厄介ごとが増えるだけにしか思えない。


 理由を説明するとメーテラは快くマキアの提案を承諾した。


「もうやることがほとんどなかったから、ずっと『これ』とにらめっこだよ」


 メーテラがそう言ってマキアに見せたのは何かの参考書だった。


「どうですか、順調ですか」

「たぶん大丈夫だと思うけど、失敗はしないようにしないとね」


 レイダーハブを運用するにあたって必須の資格が幾つかある。メーテラが持っている参考書には、その資格試験の科目の一つに関する過去問題が載っていた。

 

「メーテラさん、あとこれ」


 マキアがバックパックからマガツモノの素材を取り出してメーテラに見せる。


「『核』の加工に必要なんですよね」

「……うん、そうだね」


 メーテラがマキアから素材を受け取ってすぐに口を開く。


「でも……せっかく取って来てくれたところ申し訳ないんだけど、これじゃ駄目かな」

「……なんですか?」

「マガツモノの素材にも『核』と同じように等級があってね。基本的に禍具の制作に使われる素材は『核』とつり合いが取れるように、最高等級のやつじゃないと駄目なんだよね。事前に説明しておけばよかったです、申し訳ない」


 頭を下げるメーテラに慌ててマキアが頭を上げるよう言う。


「いえいえ! ぜんぜん、よく聞かなかったおれが悪いですし。それにこの素材なら腐りにくいので明日売れます」

「……そっか、よかったよ」


 マキアとメーテラの二人は持っている情報があまりにも違うため、互いに補完し合う関係ではあるが、(たま)に話が合わないこともあった。


「いや~、ここに来てからちょっとしか経ってないから、教えてくれてありがたいよ~」

「『ここに』って、どこから来たんですか」

「え、わたし? 私は()|()から来たよ」

「え?」

「へ?」


 なぜメーテラと話が合わないのか、マキアは今まさに原因に気が付いた。

 とても地下都市で生きて来たとは思えぬほどに、地下情勢に無知で無防備なメーテラが、なぜ加工屋(スミス)としてテイカーロッジを開いたのか。


「メーテラさん……地上から来たって、絶対おれ以外の人に言わないでくださいね」

「大丈夫だって、さすがにそこまで無知じゃないよ。地下都市(ここ)の人が地上の人をどんな風に思ってるのか知ってる」

「そうですか……それは良かった――ですけど、何でここに来たんですか」

「まあ? それは、いろいろとあって?」


 メーテラが露骨に目を逸らした。

 どうやら話したくはないらしい。

 レイダーとして装備面で手助けしてもらった恩があるため、マキアは()は目を瞑ることにした。


「分かりました。じゃあ取り合えず、これが今日の稼ぎです」


 マキアはそう言って紙幣を差し出す。


「グロウラーの素材すべてで約5万リムです」

「そんなに?」


 マキアも5万リムという金額には最初、衝撃で口が開いたまま閉じなかった。確かに、マガツモノと命のやり取りをした上に解体までして得られた金額が5万リムというのならば少なく感じる。

 しかし解体処理の仕事をしている時はさらに酷い稼ぎだった。

 2万リムも貰えれば十分だと考えていたマキアにとっては目が飛び出るような金額だ。


「なんか、グロウラーは少し高いらしいです」


 グロウラーは小型に分類されるマガツモノだが、人間と同じか少し下程度の体躯がある生物だ。

 危険度は高く、防護服を着ていても噛みつかれればまず生きて帰れない。

 そういったことや、まずグロウラーを殺すためにはN-41カルディンなどの対マガツモノ用の装備が必須であることを考慮すると、5万リムという金額は適正ともいえる。

 何せ、N-41カルディンの価格は中古品であっても30万リムはする。地下都市の住民が簡単に手が伸ばせる金額ではないのだ。だからといって安い武器を使ってマガツモノ討伐に臨めば………結果は知れている。

 

 様々な幸運が重なって得られた5万う金額には最初、衝撃で口が開いたまま閉じなかった。確かに、マガツモノと命のやり取りをした上に解体までして得られた金額が5万リムというのならば少なく感じる。

 しかし解体処理の仕事をしている時はさらに酷い稼ぎだった。

 2万リムも貰えれば十分だと考えていたマキアにとっては目が飛び出るような金額だ。


「なんか、グロウラーは少し高いらしいです」


 グロウラーは小型に分類されるマガツモノだが、人間と同じか少し下程度の体躯がある生物だ。

 危険度が高く、防護服を着ていても噛みつかれればまず生きて帰れない。

 そういったことや、まずグロウラーを殺すためにはN-41カルディンなどの対マガツモノ用の装備が必須であることを考慮すると、5万リムという金額は適正ともいえる。

 何せ、N-41カルディンの価格は中古品であっても30万リムはする。地下都市の住民が簡単に手が伸ばせる金額ではないのだ。だからといって安い武器を使ってマガツモノ討伐に臨めば………結果は知れている。

 

 様々な幸運が重なって得られた5万のすべてをマキアはメーテラに渡した。 

 しかしすぐにメーテラは断る。


「いらないよ5万リムぐらい、私もと地上の人だよ? 自慢するわけじゃないけど、其れなりにお金持ってるから」

「でも……」


 事務所を家として使っていることや夕食を奢ってくれたこと、装備のことなど踏まえて稼ぎは取り合えずメーテラに渡すべきだと、マキアは考えていた。


「確かに、加工設備を買うためには……それはもう馬鹿みたいなお金が必要だけど……だから5万リムじゃあったところであんまり変わらない」


 テイカーロッジの方針は決まっている。

 マキアがマガツモノを狩って、溜めたお金で『核』や素材を加工する加工設備を買うことだ。

 メーテラが加工屋(スミス)だということもあり、加工品を売った方が稼げる。

 だから加工設備が整うまでは取り合えずマガツモノの素材をレイダーズフロントで売って金にして、ひたすらに貯金というのが基本方針だ。


「その5万リムは好きなように使って。たぶん、N-41カルディンの整備とか、運搬用ロボットの修理とか、ほら……仲のいい整備屋(メカニック)がいるんでしょ?」


 リディアのことを思い浮かべながらマキアが「そうですね」と肯定した。


「じゃあ明日はその5万リムを握り締めて装備の確認をしてらっしゃい。もし何かあった時に不具合で動かない……だなんて最悪だからね」

「……分かりました」


 メーテラが言っていることは正しい。 

 素直に従うことにした。


「よし、じゃあ夜ご飯にしよう! お姉さん、飛び切り美味しい料理つくっちゃうぞ!」

「手伝いますよ」

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