研修調査問題
俺は新宿の西らへんを歩いていた、うざったるい新人を連れて。
降下探偵事務所新人研修部隊隊長代理(仮)に就任する契約を結んだ工藤優菜こと私は、半ば追い出される形で。
なんて言われたっけな、『俺達は忙しいからさっさと研修させて来い』とかなんとか。
舐めんなよ、俺だって忙しいわ。
適当に水曜日のダウンダウンの『フューチャークロちゃん』でも見せてビデオ研修させる算段だったのに。
音楽を聞こうとイヤホンケースを開けたタイミングで新人は話しかけて来た。
なんて言ってたっけな、うんたらがかーたらだとか。
『初めまして!本日付けで部隊に配属される事となりました!〇〇です!』ってのはさっき言ったか?
まぁ似た様なモンだろ、わかるわかる。
長時間耐久して音楽を流せる事がウリのこのイヤホン、ノイズキャンセリング機能は付いていないが規定値を越えた音量を設定する事で、その代替に成り得る。
曇り空を高嶺たるビル群の窓が反射するのを見上げながら、俺は雰囲気でいい感じに合図を打つ、聞いている風を装う。
「ーー〜なーがー〜〜〜」
「あん」
「〜ー〜ー〜てー〜ーーんー」
「そだな」
「ーーーー〜ー〜って、」
(頭を動かし頷きの代替とする)
「ーはーーーおり〜ーます〜〜、ー探偵、工藤優菜。」
「・・・」
あ゛?
人は名前に敏感なモノで、イヤホンでシャットアウトする俺の耳にもしっかりその名前は届いた。
殺意のままイヤホンをしまい、振り返り、目を見て言う。
「もう一度言ってみろ、」
殺すぞ
「、、、、『名探偵工藤優菜』、さんの、お話は、かねがね」
「、、、、」
ああ、
そう言う事か。
「その呼び方はやめろ、蔑称だからな」
「えっ、そうなんですか?」
天然を装った訳では無いと見受ける、本当に知らなかっただろう。
「そうだ、誰かしらに教わらなかったのか?前の所属は?」
こういう奴に仕込んでやる為の『研修部隊』だろうが、何やってるんだ、
「いえ、これまでもなにも、これが、今日が初めてで、所属も、ここが初です。」
、、、、
そうだった。
俺が研修部隊隊長だった。
仮だけどな!
しかも代理っ!
気怠さの中「そうか」と相槌を打つと向こうは続けて来た。
「探偵学校で基礎知識を学びましたが実践は初で、でも免許は持ってます。」
「そうか、」
それならそれなりに戦える人材か、ってならねんだよ。
探偵学校とは、要するに代々木アニメーション学園とかと同じだ。
国から正式に認可された学校では無い、学校法人でも無い。学歴として残せないので最終学歴が専門卒になったりしない。
怪しいセミナーみたいなモン、てかまんまソレだ。
適当な探偵知識でご高説垂れて試験に挑ませて免許を取らせる、生徒に金を払わせて。
腐ってやがる、
まぁ学校てのはどこも同じか、クソが。
俺は適当に新人の免許を出させ、政府の印が押された正式な物であるのを確認、返した。
「探偵学校ではどんな事を学んだ?」
探りを入れる。
探偵学校でなにを教えると言うのか、
カメラの扱い?
傘の振るい方?
それともバレない尾行の仕方?
最悪なのは探偵免許を取得する為の座学。
情弱に金払わせて足らない知識を垂れ流すクソセミナー、ありそーー
そこまで思案したところで、俺は面接官みたいな質問をした事に驚いた。
「カメラの扱い方とーー」
一台のスマホをグループで共有するeスポーツ学校よろしく、カメラに群がる情弱共が目に浮かぶ。
「ーー尾行の仕方と、法律関係の知識です。」
「ふぅん、」
法律関係、、触れたり犯したり穴を突いたりした瞬間にチクりそうで面倒だな。
そういう奴なのか?お前。
どうせ尾行って言ってもカスみたいなレベルなんだろ、たかが知れてるぜ。
それよりも、
「お前、傘は?」
「いえ、今日は降らないって、あっ折り畳み傘なら/「いい」
折り畳み傘ならここにと懐に手を入れた新人を俺は伸ばした右掌で制する。止まれと、
試しに聞いて見る。
「お前、、バリツは?」
「、、えっ、すいません何て?」
、、驚いた、こいつ本当に何も知らないんだ。
学校はなにを教えてるんだ、、
、、状況を整理する。
新人研修をしてこいと新宿に追い出された私、工藤優菜。
その新人は免許は持っているものの実戦経験は無く傘もバリツも知らない。
しかも法律云々の融通が効かずいつも通りに仕事をした場合チクられて酷い目に合う可能性がある。
新人研修部隊隊長の代理(仮)として働く契約の為ほっぽり出して放棄した場合苦しい罰を喰らうだろう。
Q.法知識だけのズブの素人にも出来る、新人研修の内容とは?




