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隊長補佐代理見習い

「まぁいいや。お前、新人の面倒見ろ」


「お断りさせて頂きます」


先輩が指す『新人の面倒』とは、『新人研修部隊隊長の座に座れ』という意味である。


正気の沙汰じゃない。


アグレッシブなアタオカ共の面倒なんて見ていたら、こっちまで狂う。


『探偵』の二文字に釣られて出てきた厨二病。

尾行特定を趣味としてやってた犯罪者。

なんか、、、、マジでよくわかんねぇ奴。


まともじゃないヤツがこの仕事を探し出す。

そんな連中の面倒を見る役職?

冗談じゃねぇ、タダでさえ仕事したくねぇのに。


「工藤なぁ」

「はい」


「自分の立場考えてみろよ」

「はい」


「首が危ないぞ」

「、、はい」


俺は絶妙なタイミングで相槌を打つ、

この仕事で身についた技能の一つだ。


「わざわざ締めてやらないと理解できないか?」

「いえ」


「ここだけだぞ、お前が稼げるの」

「はい」


「お前、マジでーーーーーーーーーーーー」




こういう詰めは私には効かない。

耳に結界を張る術を体得しているからだ。




「うんちゃらがかーたらのこーぴゃらのぺっぺらへぇ」

「はい」


申し訳なさそうな顔。



「うんひゃらのどーたらがあっぱらぱーのぺっぺらふぇー」

「えぇ、、」


困り眉。



「かーひゃらのどーたらのうんたらばっぱーとぱぁ!」

「、、はい、、」


反省顔。


完全防御である。


そして先輩はため息を吐いた。


「手当がつくぞ」


「はい?」


話が変わった。


「いくら?」


私は金の話をしている。


真剣な話だ。


先輩達も察したらしい。


雰囲気で分かるぞ、同業だからな。


失礼な奴等だ、金額を聞いただけだと言うのに。

聞いただけ。


三分後。


面倒な話を省いて結論を言うが、私は条件交渉を行っていた。


「責任者は嫌です」


「なンで?」


「責任が発生するので」


「研修部隊とはいえ隊長よ」


多分だけど一番面倒な奴じゃねぇか。

何も知らない奴等の尻拭き。

介護職になった覚えはない。


「肩書だけで、話はそれからです。」


「無理だなぁ」


「では仮で」


「仮?」


「隊長補佐代理見習いで」


「長いな」


「責任は発生しません」


「するよ」


何度口説いても頑なに首を縦に振らないコイツと口論を続ける事、一時間。


下らぬ戯言を完全防御して

説教中に目を開けて眠り

首を絞め落とされかけて


最終的に。


「隊長代理(仮)で」

「もういいよそれで」


握手を交わして『契約成立』。


形だけの責任者で金だけ増える、そんな感じの落とし所に収まった。


世の中、交渉である。

これが工藤優菜だ。


「、、居るんでしょう。

 ドアの前、さっきからずっとスタンばってる奴が」


何かあるんでしょうな、

俺が隊長代理(仮)になるのに関係ある奴が。


先輩方はお気に召した様に笑い、呼びかけた。

「入れ」


「失礼しますっ」

よく通る声だ、俺の知らない声だ。


ドアが開いた。

ずいっと重金属製のドアを体重を掛けて開ける。

これはのし掛かるのでは無く、通常のドアを開ける際と同じ腕の角度で、身体を入り身に、

腕だけで開かず、少ない身体の倒しを活かして、ドアを自然と開ける。

身体の使い方もそうだがその様にして開ける場合、骨では無く腕の筋肉に頼ることとなる。


覗いたその姿は俺と同じ程の背丈の黒髪、

こう、、後ろにまとめて、前髪があって、横に髪を垂らして、まぁよくある髪型。


肌色の腕は筋肉の凹凸は映える。鍛えられている。

その肌色が肩まで、

黒いタンクトップ?

なんつー格好してるんだ。


無駄のない立ち姿。遊びがない、不自然、きっちりかっちり頑張ってます!とでも言いたげな、息が詰まりそう。


そして次の動作で軍式被れなのを察した


敬礼。


「本日付で部隊へ配属となりましたっ」


でかい。

声がデカい。

息を吸い込む音を遅れて認知した。

腹から出ている。


「⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎(氏名)ですっ、よろしくお願いします!」


「、、、、、、、、、、、」


あぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁ、、、


はあぁぁぁぁぁぁぁ、、、


ぁぁぁぁ、、


はぁァ、、


、、


チッ



『探偵』の二文字に釣られて出てきた厨二病ならばまだマシだった。


尾行特定を趣味としてやってた犯罪者ならどうでもよかった。


想像もつかなかった面倒そうな奴が来やがった。


先輩方コイツらは、わかってて面倒を押し付けやがったな、、


はぁ、、今更言っても後の祭りか、、もう少し探りを入れるべきだったと教訓にしておこう。


それでも、憂鬱な心持ちへの慰みに、こんな独白でも吐けば、少しは気が紛れるかも知れなかった。




私の平穏な探偵人生は、今終わったのかもしれない。



言うて平穏な人生なんて、送れた試しが無いけれど。


ここは降下探偵事務所。


それが探偵、工藤優菜。

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