新人調査
私の名前は工藤優菜。
降下探偵社所属、調査員、探偵だ。
探偵。
聞こえだけはいい。
依頼者の為に頑張ります!とか死んでも思わん。
私の二つ名は《眠魔》だ。
今日の任務は『新入社員の行動調査』。
要するに――サボってないか確認してこい、だ。
二十二歳の営業職、新人。
それを朝から尾行していた。
外出。
駅。
会社。
営業鞄。
クソみたいな仕事の為に満員電車に毎朝潰されて、
しんどいよな、わかるぜ。だって隣で同じ目にあってるもん。
てかお前を尾行ける為に朝っぱらから寝所を出て電車に乗って君を待ち、でまた電車に乗ってんだぜ俺。
しばくぞ?
あー、疲れてんな。
九時過ぎ。
対象が営業かなんかで会社から出てくる。
出てくるタイミングぐらい一報入れろよ依頼者ァ、
対象が歩く。
硬い革靴を鳴らす。
そして入るはーー
パチンコ《ベガス》。
観察眼が大事だ。草食動物の視野で全体を見渡し、期待値が高そうな台に俺は座った。
訳分からん奴が喚いてきたが『私は工藤優菜だ』の一言で黙らせた。
俺は事務所の経費が許す限り打ち続け、負け続き、冷めたので隣の対象者を盗撮し店舗を出た。
店舗を出る瞬間を見張って、四曲分の時間が経った頃。
開く自動ドア、店舗看板に対象者。
ベストショット。
顔を俯かせてる。
負けたな。
午後。
対象はまた移動。
住宅街のそこそこ広い公園、そのベンチ。
スマホを見ながらコンビニ弁当を食べる。
脇には同コンビニのお茶。
世知辛いな、
俺は草場の影であんぱんを牛乳で流し込んでいた。
いい風が吹いていやがる。
日差しも落ち着いていて、過ごしやすい気温。
一句読みたい気分だ。
飯の後
静かな公園
春の風
工藤優菜-春の一句。
私はカメラ越しに対象が横になり目を閉じるのを見守った。
俺も寝てしまいたいが、しくじったら首が危ない。
私の二つ名は《眠魔》だ。
対象にも気を配りながら時間を有効活用し、夕方五時。
焦る様子も無く改札を通り、電車に揺られた。
『九時五時』というのも今は贅沢な話の様で対象は六時過ぎに会社に戻った。
上からの指令は『朝の外出から十九時退社まで調査せよ』だ、
そして十八時半過ぎの今対象に動きは無いし、そう報告してなんら不自然は無い。
帰っていいのだ。
この工藤優菜の数ある美徳のうちの一つに『撤退判断が早い』というのがある。
つまりもう帰っている、その辺で報告上げながら飯行こうとか考えている。
悪いな新人、これが私の仕事だ。
これから対象者が詰められようが知ったこっちゃ無い。
それが降下探偵事務所。
サラリーマンに囲まれながら報告を済ませ、そのタイミングで定食が届く。
飯うま。
これが工藤優菜。




