第98話
調査隊への合流に向けて私たちは動き出した。
取り合えず今の所は私の力で対処できない敵が出て来た訳では無い。
四人には後方で何時でも逃走出来る位置に居て貰い、出て来た魔物は先ず私が相手をすると言う形になっている。
その際に私の手に負え無いと判断したならば直ぐに合図を送り、四人は即撤退をする手筈だ。
この時の殿は当然私がする。当たり前だ。
(今の所で出て来たのはゴブリン、獣人モドキに、鋼で出来た人形、不定形生物・・・?に怨霊か。それぞれが三体から五体での集まり。どれも脅威と呼べない代物だったが)
「私たちが相手をしていたらどれもこれも死を覚悟するレベルの奴ばっかだったんだが?コレ、先を行ってる調査隊大丈夫なの?ヤバいんじゃない?早いトコ合流しなくちゃマジでマズイ気がするんだけど・・・」
イチカがそんな事を言っている。まあ、この四人娘たちだけで戦っていれば確かに殺されてしまう可能性があった。
その程度には力を持った魔物だった。私には簡単に倒せたと言うだけで。
ゴブリンはその体躯が子供程度のそれでは無く、大人程のモノになっていて、その手には多少の手入れをされた剣、短槍、小盾などの武装をしていてソレが五体。動きも連携が多少あり、俊敏さも上がっていた。
獣人モドキに至ってはその瞬発力が私が以前屠ったモノに比べて三割増しと言った感じで四体。動きも直線的では無く、幾らかは踏み込みに「虚」を混ぜて来ていた。
鋼人形となればその表面は鉄であり、イチカやエミコの攻撃では掠り傷程度しか付ける事が出来ず、ソレが四体。振るう腕の向きや早さは遅かったものの、その力は侮れない程度には強かった。
不定形のぐにゃぐにゃした透明な体躯の魔物はその内部にある弱点であろう赤い小石を破壊出来ねば倒せず、ソレが三体。そのモニョモニョとした様子からは想像が難しい程に俊敏な動きをして来た。
怨霊に至ってはその身に黒い外套を纏っていて、ヒジリの聖属性の魔法を受けてもその威力をソレで防いで一撃で消滅させられず。ソレが三体。巨大な鎌が武器でその攻撃範囲は広く、イチカやエミコが攻撃してもソレはすり抜けて傷を与えられなかった。
これらの魔物はマリエの魔法が当たっても一撃で倒せず、獣人モドキや不定形の奴などに至っては回避して来るなど。
四人娘だけであれば、慎重に安全を確保して丁寧に立ち回ってやっと倒せると言った所。
ソレでも下手を打てば倒せた所で重傷を負わせられ、運が悪ければ重体、と言った感じか。得られる魔石と天秤に掛ければその労力に見合わないと言って良いだろう。
(まあそれらも私の魔力刃で全て一撃で屠って終わらせたのだが)
「うにゅ~、アンちゃんに私の良い所を見せたかったのにー。聖魔法で消せ無いゴーストとか一体何なんよー?」
「結構本気でヒジリ魔法撃ってたよな?ソレで倒せないとか、多分調査隊で遭遇してれば逃げるしか手が無いでしょ・・・どうなってるの今のダンジョンは・・・出て来る魔物の脅威度上がり過ぎじゃボケェ・・・」
「もしかして私たちが運が悪いだけとかもあるかもしれないわ。こうしてタブレットにこちらのルートの情報が乗っているのだから、調査はされている訳でしょう?その際に調査隊はこの魔物たちとは遭遇していなかったって事じゃないかしら?出会っていたらその時の損害で協会に帰還しているはず。」
「でも、そうじゃ無さそだよねェ。なら、今も調査隊は先に行って奥まで進んでる?何かしらのトラブルがあったとしたら撤退してるかも知らんけど。でも、それすらも出来無い状況に陥っててその場に留まって助けが来るのを待ってるって事もアリアリ?」
マリエが調査隊の現状、その最悪の一歩手前の想定を口にする。
ソレを聞いて私は少々急ぐべきかと悩んだが。
(いや、この四人の安全をしっかりと確保した上でこの道を進むべきだな。その上で調査隊の方で最悪が起きていたとしても、その時はその時だ。仕方が無かった事だろう)
どれだけ完璧な準備をした所で、想定外と言ったモノに遭遇すれば最悪にまで至る事もあろう。
未知へと踏み込むのであるならば、そう言った部分の覚悟などを持たねばならない。
まあ誰もそんな「最悪」は望んだりはしない。しかしソレは起こりうるのだ、どんな事にでも。
どんな展開が起こるかを幾ら想定したとしても、そんな事を嘲笑うかの様に現実はこちらを裏切って来る。
(まあ私がこんな身になったのは油断と見て見ぬふり、それと「そんなまさか」と言う怠慢からであるが)
私が生前に罠に嵌められた事に関して言えば、それはまた別。
予想外とか想定外と言う前に自身が招いた事態であると言わざるを得ない。
しかしまあ、その後の黒龍との戦闘後にこの身に起きた事は、人の出来る想像から掛け離れた事象であり、そこは予想とか想定と言った次元を超えている。
そしてまたこの国にどう言う訳か来てしまった事も想像など出来ない次元の問題だろう。
思考の死角、などと言った言葉で終わらせられる訳も無い事態だ。
そうしてその後も私たちは調査隊が全滅していない事を祈りながら先へと進んだ。




