表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/103

第96話

(持ったら即座に怨嗟の声が頭の中に響いて来ていた。確かにアレは生者に害を及ぼしていただろうな。私くらいの精神の強度が無ければその心を呑み込まれて壊されていたかもしれん)


 赤黒く光る魔石、これはどうやら残しておいても百害あって一利無しな代物だ。即座に破壊して正解だった。


 イチカの言葉だとこの魔石はどうにも今までに話にすら聞かなかったモノであるらしいとの事。


 どうやらこのダンジョンでは異変が静かに進行中なのだろうと私の勘は囁いて来る。


(その変化が私に起因するのだとすれば、責任は私にあるか)


 イチカが言うに、これまでに見た事も聞いた事も無い魔物、ソレを倒せばこれまでにあり得なかった代物が出て来た。


 そしてそれは私がここに現れてからなのだとすれば。


 どう考えても時期的に私がその変化の引き金を引いたのではと勘ぐってしまう。


 これ以上ダンジョンに私は入るべきでは無いのかもしれない、そんな風にも思ってしまう。


(ふぅ、間違えてはイカンな。今回の事について、誰にもその様な予測など出来ていなかっただろうし、誰に責任があるなどと言った事でも無い)


 ソレでも何かしら追究したいと言う者が居るのなら、それは「神」にでも言えという話だ。


 私たち程度の存在が自分たちの理解の及ばない出来事に遭遇したのであれば、それは神がもたらした事だと受け止めて一旦諦めるべき事だ。


 人などと言うちっぽけな存在が超常なる存在である神を責める事など出来るハズも無いのだから。


 神を責めてみた所で虚しいだけだ。怒りや憎しみ、その他の感情をソレに向けた所で返って来るモノなど何も無いのだから。


 そう言った熱量はそもそもに目の前に起きた事象に対してどの様に対処するかに向けた方が余程に有意義で。


(まあそうした前向きになれない所があるから、人は愚かな存在なのだが)


 そんな事を出来る人間は早々に居ない。誰もが誰も理知的で理性的で冷徹になれていれば、世に争いなど起きはしない。


 さて、そうして今後の行動を如何にするかの話し合いが始まる。


「このまま調査隊に合流で良くない?戻ってもまた協会内で襲撃されるのがオチだと私は思うなぁー。」


「長官に連絡は取れていないの?協会長と今、通話はできそうなの?撤退の要求を出したいんだけど。」


「協会長は今出れないみたい。長官へのコンタクトも無理の様ね。向こうもドタバタして私たちに構っていられない状況になったのかもしれないわね。」


「うむ~?ねえねえ?今の私たちのやる事の一番大事な事って、何?優先順位を付けるトコから始めんか?長官と交わした契約書の内容が一番け?それとも協会長から指示を受けた調査隊との合流が一番?」


 マリエの言葉が真っ当だった。私の中では何時も金と食事の事しか大体言っていない印象だったのだが。


 ここで四人が私の方を見て来る。どうにもその表情はふざけてはいない。


「アンちゃんの行く先に付いて行くのが、正解?」


「あー、冒険者としてダンジョン庁と契約書を交わした訳だから、ソレが一番の優先事項か。今の私たちは依頼を受けている状態にある訳ね。で、その内容が、黒騎士に付いて回るっていう。ソレに先ずは従わなきゃいけない訳だ。」


「協会長からの指示はその次、では、無いわね。もう一つ下、三番目って所かしら?冒険者は自身の命を第一に考えなくちゃいけない。二番目は私たちの安全の確保、って感じかしらね。」


「一番と二番が状況によって入れ替わるから、じゃあ今はどんな?って話しな感じ?現場の突発異変の調査も冒険者に課せられた・・・えー?何だっけ?努力義務?そうなると私等は今、命の危険に晒されていて「逃げ帰らせて貰う!」って切羽詰まった状況とは言え無いんじゃね?判断難しくね?」


 私に同行してその動向を監視、ソレが長官との契約。


 そこでもしも命の危険が迫って来ていれば、彼女らは自身を守る為に契約関係無く逃走、撤退を出来ると。


 だが今の状況は「命の危機」とは微妙に言え無い状態で。


 優先順位の三番目にあたる協会長からの指示は無効に出来るかは微妙な所と。


 そしてダンジョン変動が発端と言えそうな、初見の魔物に、ソレを倒した後に出て来た危険な魔石の件はできうる限り、なるべくなら情報を集める努力をするべきと。


(どうやら今後の決定権を私にゆだねると言う事なのか。・・・ヒジリは私の行く所には何処にでも付いて行くなどと言っていたなそう言えば)


 私がこのまま調査隊との合流を目指すなり、協会に戻るなり、どちらにしてもその動きに従うと言う事。


 ヒジリはどうにも私と共に居られれば満足らしく。


 イチカは自暴自棄になってしまっているが、自身の命は惜しいと、安心安全を欲する。


 エミコはあっけらかんとした笑顔で今この時を心底楽しんでいる様に見えて。


 マリエは何も深くは考えていないらしく「どすんの?」と言った呑気な顔でいる。


(はぁ~、どの様な選択肢を採ろうが、どうにも先行きが不安な事は変わらんのだろうな)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ