第92話
黒騎士が、もう何百体目か分から無い魔物を斬り捨てる。
パペット、そう呼ばれる魔物が黒騎士を取り囲んでいる。それは幾ら斬っても一向に数が減ってこない。
ソレを私たちは他人事の様に傍から見ていた。
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あの後に私たちは黒騎士を先頭にして移動を開始。そのまま不気味な程に順調に進む。
魔物との戦闘など一切無く、嵐の前の静けさと言った感じでコレを私は不安に思っていた。
それでもタブレットに表示されているルートを進む。画面に映し出されたのは一本道であり、見た所は何らの問題も無かったから。
しかし現実に進んだ先には何も無い部屋。その広さはサッカーでも出来そうな程のモノ。
「ねえ、これどう見てもモンスターハウスよね?このルートどうなってるの?誰がどう調査してんのよ、いい加減に過ぎる!・・・これ入ったら四方を囲む様にして魔物がいきなり出て来る仕掛けになってんじゃないの?エグ過ぎでしょマジで。」
その部屋の入口で止まって私はぼやく。どう考えてもおかしいと。
いや、このタブレットの指示のあるルートを通って調査隊に合流しようとするのがそもそもの間違いだった。
以前の時には地竜の幼生体の件に襲撃して来た奴等の処理などで思考の余裕が無かったし。
流石に今回も色々と起きた後の事で余裕も無く、ルート変更などと言った所に思考を割く発想も起きなかった。
「だからっておかしいでしょ。まだ変動止まって無いって事?何が原因?まあ、ダンジョン変動の研究とかってそもそもに発生数が少な過ぎるから調査とかも精査とかも予測とかも全然出来る程に研究進んで無いのかもしれないけどさぁ・・・」
罠がある、そんな見え透いた場所に何の準備もせずに入る何て阿呆な事を私たちはしない。
けど、そこへと堂々と進んで行く馬鹿が居た。
「黒騎士!勝手に行くんじゃないっての!おい!解ってるだろ!聞こえて無い振りすんな!マジで何なのよ!」
そう、黒騎士だ。私が止まれと言ってもソレを無視して自然な歩みでその部屋の中心に向かって行ってしまった。
私の隣ではエミコがヒジリを捕まえて黒騎士について行かない様にと制止している。
そこに呑気な声でマリエが「全部任せときゃ万事解決!」とか言っていて私の頭は痛くなる。
(そりゃ黒騎士に全部任せとけば良いかもしれないけども!あんたらは少しくらいは慌てなさいよ!何で私一人がこんな気を揉まなくちゃいけないのよ・・・)
馬鹿馬鹿しくなってくる。この中にマトモな奴なんて私以外に一人も居ない。
私の気苦労は一体なんなのか?そんな風に思っていればやっぱり罠は発動した。
黒騎士が丁度部屋の真ん中程に到着すればいきなり何処からともなく魔物が何十体と現れた。
コレに別段驚くと言った事も無い。事前に予想していた通りになったのだから。
とは言え、その出て来た魔物と、その数には驚かされた。
「パペットじゃん。・・・でも、異常な数過ぎるわね。私たちだけだったらアレ、全滅確定でしょ・・・」
だけども真に驚くべきは次だった。黒騎士は剣を抜いてその場で一回転。これで全方位を囲っていたパペットが全滅。
その胴を一閃されて上と下に体が分かれて消えて行く光景なのだから。
「出鱈目じゃん・・・あ、まだ出て来るの?・・・は?今度は武装してる?そんなのアリなの?」
パペットがまた現れたと思えばその数は最初に出て来たそのままに、今度は全てのパペットのその手にナイフを持っていた。
この魔物はまるでその見た目が「マネキン」で、まるで操られているかの様な動きをするのでその名が付いた。
戦闘能力は低いのだけれども、そこそこにその体は硬く倒し難いと評判だった。
大体遭遇するにしても二体か三体が固まっているのが大抵で。
戦闘して倒したその労力と魔石の買い取の値段が微妙に釣り合わないとして不人気な魔物。
「おいおい、パペットが武装してるなんて話、噂にも聞いた事無い。どうなってんのよ・・・」
私の驚きはヒジリもエミコもマリエも同じだったらしく呆然とその光景を見ていた。
けれども黒騎士はまた一回転。関係無いとばかりにパペットを処理。全滅させる。
「いや、何だよ・・・理不尽過ぎるだろその強さ。剣が届いて無いヤツも真っ二つじゃん。どう言う原理だよ・・・訳分んねーよ。」
あっと言う間に片付いたと思ったのも束の間。またパペットが同数現れる。
そして今度はナイフに追加で腕に丸いスモールシールドを付けて出て来て。
「・・・これって何処まで続くんだ?マジか?もしかして倒し続けて行くとその内に武装が一つ一つ増えて行って終いには全身フル装備のパペットが出て来るのか?冗談じゃ無いぞ?」
そんな事を想像して私は呆れた。そんな仕掛けのモンスターハウスは流石に悪い冗談が過ぎると。
しかしコレに黒騎士は何らの動揺も無い。また同じで一回転。剣を横に一閃。パペットが盾を装備しようがその程度は関係無くまた魔物を全滅させた。




