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第91話

 まだもう少しここに残るのが良いと私は考えていたが、協会長はどうやら調査隊との合流をして欲しいと言う。


 この件で今後にどの様な選択肢を採るのが良いのかを私を除いて四人が朝食を摂りながら話し合っている。


「むむぅ~?別にアンちゃんと一緒なら何処でも行くけど~?」


「アンタは好い加減に黒騎士基準で物を考えるのをもうちょっと控えなさいよ・・・私は合流には賛成かな。ここに何時までも居るのにも限界があるだろうし。」


「あら?イチカは反対だと思っていたわ。そうねぇ、私は逆かしら。合流はまだ早計だと思うのよ。敵とか味方とかじゃ無く、黒騎士の存在自体が受け入れられないって人は確実に居るでしょうしね。協会長が幾ら安全だって伝えていても、そこら辺は個人の受け止め方一つ、生理的に無理とかどうしようも無い意見が出るでしょうね。幾ら私たちがこれまで黒騎士と一緒に居たのが安全保障、証明になるって言っても、今後は分からないとか言い出す人は絶対に出て来るわ。」


「ここに居ても全然稼げねー。ダラダラ待ってるだけも悪く無いけどさー?やっぱダンジョン入ったら魔石ゲットせにゃいかんでしょー。金にならねー奴等ばっかり相手するのはテンション駄々下がり~。」


 賛成2、反対1、どうでもいい1、と妙な別れ方をした。


 私は今の所は様子見でまだここに居るのが良い様に思っていたので、ヒジリの意見は「反対」と捉える事も出来る。


 そうなると賛成反対が同数になってしまう。しかしここで反対表明していたエミコが意見を翻した。


「まあ結局は協会長からの指示だから、それに従う他無いのだけどね。本当だったら今頃は順調に行っていれば調査隊と合流していたはずだろうし。意見を出し合ったのは今後の行動に不満があるなら今の内って事だっただけだから。それに懸念点があるなら先にそこは共有しておいた方が良いでしょ?この先にどんな危険がありそうかを予測しておくのは大事だわ。」


 確かに言う通りだった。本来の私たちに課せられていた仕事は現段階でそもそもに取り下げられていない。


 襲撃者が存在しているとは言え、ソレを理由に仕事を疎かには出来ない。


 上司からの指示に従う、当然の流れだった。


(とは言え、今の現状はソレを入れても従うか従わないかは、現場の者が決めても許される場面だ。軍とは違う。彼女らは冒険者だ。自分の命を最優先に動くべきだな)


 コレがもっと深刻な事態に陥っている状況なら指示を無視すると言った事も有り得ただろう。


 だが今は別段これと言って焦る必要も無い段階であり、どんな選択肢を採ろうがその先の結果がどうなるか迄を予測できる情報が揃っている訳でも無い。


 どんな行動を取ろうとも、それは等しく危険を孕んでいる。


 自分たちでこの先の動きを決めきれない様な場面である今はこの指示に従うのは間違いでは無い。


 もしもここでもっと良い案があるのならば、ソレに沿って動くのでも構わないのだ。


 それがコチラを狙って来る敵の思考の死角を突ける作戦なら大歓迎である。


(とは言ってもソレが簡単に出ていればこうはなっていない。こんな時に妙案が出せる程に頭が良い訳では無いのだよな、私も)


 団長をしていた頃の自分は決定に責任を取るのが仕事であり、そう言った作戦などと言ったモノは参謀の立場の部下に頼っていた。


 その後の戦場指揮、指示出しはその参謀任せが多く。自身はその間に何をしていたのかと言えば、ほぼ最前線に出て戦うなどしていた。


(そう言った事も貴族出の他の団の団長に良く思われ無かった原因の一つだったのだろうな)


 そんな事を思い出していれば四人の食事も終わり、動き出す。


 先ず出た食事のゴミの処理。どうにも私にはその食事を覆っていた包装の素材が何なのか分からない。


 透明な布?だったソレや紙で出来た器やら、簡易式厠の「中身」が入った使い捨てだろう袋などなどを一纏めにして、マリエが魔法で跡形も無く全て一瞬で燃やす。それは炭も灰も残っていない程の高温。


 衝立や厠は折り畳み式であり、片付けは素早く終了する。


 ソレを持ち運ぶのは私の空間収納だ。移動の準備は即座に整う。


「はぁ~、行きましょ。気が重いわ。この先のルートもダンジョン変動でどうなってるのか判ったモノじゃ無いし。無事に調査隊と合流できるのかしらホント。」


 イチカが今更の心配を口にするが、どうにもできないコレばかりは。


「イチカー、それ、フラグでしょ。でも、何が出て来ようともアンちゃんが全部ぶっ飛ばしてくれる!アンちゃん最強だから!」


 もうヒジリのそれは何かの狂信であり、何らの根拠も無い。


「デッケー魔石、ゲットだぜ!黒騎士がいればガッポガッポ!ゲハハハ!勝ったな!」


 マリエは何故だか知らないが下品な笑いで勝利宣言をし。


 コレをイチカが何も言わずに無表情に白い目で見ていた。

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