第89話
「何故だ?たかが小娘四人と骸骨一体だろう?どうして事がこうも上手く運ばない?」
暗い部屋の中で八人の男たちが顔を突き合わせて話し合いをしている。
その内容とは、イレギュラー魔物の件。
現在、女性冒険者四名と何故か同行してダンジョンの一角に滞在し続けているアンデッドナイト。
これまでに集めた情報からその存在は研究のし甲斐があるとして、非正規に集めた戦力で捕獲しようとしていた。
しかしその甘過ぎる見込みは尽くに潰れている。
根本的に何もかもが「間違っている」研究者たちの思考。
ソレを自覚していない、出来ない者たちの集まりなので、どうした所でアンデッドナイトの、黒騎士の捕獲など出来るハズも無い。
室内での研究ばかりで現場に出ないので「現実」と言ったモノが全く見えていない、知りもしない者たちだった。
有用な研究をし、実験、実用化まで漕ぎ着けた事もあるが、基本的に自分勝手で他を慮ら無い性格の者たちの集まりである。
やっている事は非合法、裏サイトで冒険者崩れ、社会不適合者を募集して事を成そうとする。法を犯していると言う認識が無い。
自分たちの行っている事は人を、社会を、成長させる事だと信じて疑わない。
なまじ頭が良く、プライドが高いので妙な部分を履き違えていて、ソレが「間違っている」と認識できていない。
この「黒騎士捕獲」を正規での申請をしても却下されるだろう予測をする程度の小賢しい知恵を持ち。
もしも正式に許可が下りるとしても、その許可自体が下りるまでかなりの時間を要するだろうと思っての行動である。
勝手に動いて現物を手にしてから政府へと「じゃあ研究しても良いですよね?」と、無理やりに許可取りを打って出る作戦と言う、余りにも頭の悪い事を本気でやろうとしている。
集めた兵隊に銃器まで提供できる程度に「裏」に程良く通じており。
その者たちがアンデッドナイトに同行する四人の女性冒険者を「どうするつもりなのか」迄を考え無い位には他に興味が無い。
研究対象が手元に来ればそれで良い。後の事はどうでも良い、何も知る気が無い。
何処までも質の悪い、そしてその自覚を持たない研究者の集まりであった。
だから、直ぐに潰される。今回の事は余りにも目に余る行動だったから。
「全員動くな。罪状は色々あり過ぎてこの場では読み上げない。時間の無駄だからな。牢屋に全員をブチ込んでからゆっくりと教えてやる。お前たちは一線を越え過ぎた。今後研究に一切関われ無いモノと思え。」
部屋の中にいきなり入って来た男の声が響く。
その直ぐに警官二十名以上が部屋に入り込み、驚く研究者たちの手首にあっと言う間に手錠を掛けて行く。
「な!?何をする!私たちが誰だか分かっていないのか!」
「何だ!何なのだ一体!?コレはどう言う真似だ!弁護士を呼べ!不当だ!」
「待て!一体私に何の罪があると言うんだ!?こ、コレを外せ!罪人扱いなどされる憶えは無いぞ!?」
「わ、私は何もしておらん!こいつらが勝手にやっていた事だ!私は関係無い!」
見苦しい言い訳を吐き出し続ける研究者たちは連行されて外に待機させてある輸送車に乗せられていく。
「冒険者協会長も、ダンジョン庁長官も御怒りだよ。それだけ言えば分かるだろう?何たって頭の良い研究者様たちだからな。さあ、お前らが犯して来た罪を数えるんだな。」
警官チームのリーダーであろう男の口から最後にそんな宣告を受けた研究者たちは顔を青褪めさせて黙った。
それはやっとの事に自らの行いが相当に重い事を今更に自覚した証拠だった。
「こっちは簡単に片が付いたが。さて、もう一方はもっと時間が必要だ。捜査員を今できる最大限に動かしちゃいるが。相手はロケットだかバズーカだか持ち出して来る組織だからなぁ。自衛隊を呼ばにゃイカン事態になるんだろう。はぁ~、気が重い。」
警官リーダーはそんな言葉を盛大な溜息と共に吐き出してパトカーに乗り込んだ。
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一方その頃の協会長は秘書から報告を受けていた。
「今の所は何処からも犯行声明と言ったモノは一切出ておりません。コレを考えますと協会に敵対する組織の線が低くなって参ります。もしかすると聖教会、と言った線が少し濃くなりますな。」
「・・・一番厄介なのに目を付けられたって事になるのね。バレるのも、刺客を送られて来るのも、もっともっと後だと思ってたわ。聖教会の「暗部」が、今回の件に絡んでると見るのが一番可能性高いって事よね?長官は本気で何考えてるのかしら?この国のダンジョン経済をぶち壊しにする気なの?聖教会の暗部に好き勝手に暴れられたらウチじゃどう考えても対処しきれないわ。ダンジョン庁でだって何処まで抑えられるか分かったモノじゃ無い。と言うか、今回の件、対処できて無いじゃない完全に。あーもう!連絡を取ろうにも何回掛けても長官は電話に出ないし!どうなってるのよ・・・」
まだまだ解決まで遠い、遠過ぎる。その事を思い協会長は頭を抱えていた。




