第84話
やってみればそんなに難しい事でも無かった。
少しずつ肉塊を外周から削ぎ落して行って半分程の体積になって来た所で弱点と思わしき物が見えて来たのだ。
(ああ、恐らくはコレを叩き割れば良いのか?なら、簡単だ)
青く輝く石、これが中心になっている様子。私の勘はそう捉えた。
肉の隙間から覗いていたソレに向かって私はその石を斬る軌道で剣を振るう。
それは何らの抵抗無く通り、肉塊とその石を左右に別つ。
その後は直ぐに肉塊はまるで幻かの様に消えて行ってその場には真っ二つにした「魔石」が残された。
「やっぱりさ、私思うんだよ。アイツ一人で大丈夫なんじゃねーかな?と言うか、私たちが寧ろ黒騎士の足を引っ張ってる、御荷物だろ、完全にさ。」
イチカがそんな言葉を盛大な溜息と共に吐き出す。
しかしヒジリはソレに聞く耳を持っていない。私へと駆け寄って来て抱き着いて来て口を開けば。
「最高!カッコイイ!アンちゃん最強!」
称賛の言葉を連呼して来る。
マリエもイチカの言葉など耳に入ってなど居ない。
「この大きさの魔石とか一体お幾ら万円!綺麗に二つに分かれちゃってるけど、スイカくらいの大きさかな?かんけーねーくらいにデカいから問題無し!」
相変わらずマリエは魔石を換金した際の金額を気にしてハシゃいでいる。
エミコだけが警戒を解かずにいて他に何か違和感や異変が無いか周囲に気を張っていた。
「ねえ、取り合えずは一旦目的の場所まで入ってからにしない?気を抜くにしても今じゃ無いでしょ?さっきので魔物が終わり、っていう保証も無いんだからさっさと気持ちを切り替えて頂戴な。」
今の場合はエミコが言った事が正しい。ここはダンジョンの中、何処にも安全が保障されている場所など無い。
一旦の目的地にしていた場所だって、そこに到着したからと言って安心できると言った訳でも無い。
「私は別に気を抜いた訳じゃ無かったけどね。この二人だけよ、お気楽なのはね。」
イチカはエミコの言葉に反論する。一緒にするなと。
(まあ全員が気を抜いていたとしても、私が警戒を怠らずにいるからな。少しくらいは大目に見ても良いだろう)
私は彼女らに傷を負わせる気は無い。何があろうとも自分が身を挺して守る心算でいる。
この様な状況になってしまった原因の一端は私が流れに身を任せてしまったと言った点がある。
ならばその責任は私自身が取るべき所だ。
(この娘らが幾ら自身の意思で私に付いて回る仕事の契約を交わしたと言ってもだ。あれは国からの要請と言うほぼ「強制」と言っても良い様な代物だ。それをあの場で断れる訳がなかっただろうしな)
私から見てまだまだこの四人は子供だ。幾ら戦える手段を持つとは言え、ソレでも私の中の「騎士」から見てもこの娘らは「守るべき対象」なのだ。
大人としても子供を守るのは当然の事である。しかし過度に保護すべきと言った事では無い。
この子らの「覚悟」を見極めつつ、ソレを傷つけない位の距離を保つ心算ではいる。
(とは言え、そこが難しい所なのではあるのだがな。ましてや女子だからなぁ。コレが男児であれば理解の出来る範疇が広かっただろうに)
直近で思い浮かべた悩み所と言うと、取り合えずそんな下らない部分だ。
ソレを思えば「このままやって行けるのか?」と言った疑問が即座に浮かんで来るが、そんな事を悩む段階はもうとっくの前に過ぎてしまっている。
今更と言うヤツだ。もっと早い時点で思いついておくべき事項である。
そんなこんなで私たちは歩き出し、仮の拠点として目指していた広場に到着だ。ここで一旦の休憩を挟む。
そこで私の空間収納に入れておいた食料を取り合えず全部取り出してみる。
何故全部なのかと言うと、その種類が多くマリエが何を欲して食するかが分からなかったから、なのだが。
「コンビニおにぎり久しぶりに食べるなぁ。シーチキンマヨは外せないぜぇ。あ、ソレとシソ昆布は私が貰うんじゃぁ!ついでに「わーい、お茶」も貰う!」
「アンタねぇ・・・自由過ぎる・・・でも、コレがいつもの調子なのが本当に、もう、本当に何なのかしら・・・今までの私は何でコレを受け入れてこいつらと上手くやって行けてたんだろ・・・以前の私に問いたい。マジで何なん?」
マリエの何時もの変わらぬ自由さにイチカが悟った様な顔になっている。
これにエミコが「ふふふ」と面白そうに笑って言う。
「ピクニックに来た訳じゃ無いのだけれど。でも、コレが私たちの何時もの光景ってやつね。さて、私はサンドイッチを貰おうかしら。ハムと卵。飲み物は・・・無糖紅茶を貰うわ。」
ヒジリも今は私に抱き着くのを止めて食事を選んでいる。
「じゃあ私はこの「ジャンボピザパン」と「チョコメロンパン」で。うーん、後は「カフェオレ」貰おっかな。」
このノンビリとした空気感に私は「ここ、ダンジョン何だがなぁ」と思いつつも、この部屋に繋がる通路への警戒を静かに続けた。




