第82話
黒騎士は私たちの会話を理解できている。色々と言い聞かせる為の説明やらをすっ飛ばす事が出来るのでコレは有り難い事だ。楽である。
私たちは黒騎士を先頭に地竜の幼生体が居た部屋へと向けて進んでいた。
しかしあの斬り捨ててほったらかしにしたクソ冒険者共の死体があるであろう場所のかなり前で黒騎士が止まった。
これに全員で警戒を上げる。何かがあったから黒騎士が止まったのだと。
私は直ぐに声を上げた。
「ヒジリ、後方に入って。マリエ、魔法の準備。エミコはヒジリの後方警戒。私は黒騎士と前に出るわ。」
即座に陣形指示、こう言う場面では躊躇ったらその分だけ後手に回される傾向が強い。覚悟を即座に決める。
そこで私の目に入って来たのは背筋が薄ら寒くなる光景だった。
「・・・アイツら、ダンジョンに吸収される前にゾンビに変わりやがった。跡形も無く燃やして処理しておけば良かったわ。後悔先に立たずってヤツかぁ。」
「うわぁ、気持ち悪。聖属性魔法で消すのが一番手っ取り早いかなぁ。」
斬って致命傷を与えるだけではダメだった。ダンジョンに呑まれて死んだら即座に消えると思って放置する選択肢を取ったのは悪手だった訳だ。
私はコレを「判断を間違えた」とは思えども、後悔はしていない。
あのクソ冒険者共は因果応報を充分に感じながら死んでいけば良いと思っていたから。
これにひょっこりと黒騎士の背後から顔を出して状況を確認したヒジリが顔を顰めて魔法の「溜め」に入り掛ける。
ソレを制したのは黒騎士だった。そしてその後に黒騎士が取った行動は。
「ギョ!?アンタ何いきなりしてくれちゃってんのよ!?」
組合の買い取りカウンターで襲撃された時の一件で空間収納?に放り込んだあの「爆発物」をゾンビ共に向けて解放したのだ。
まだ推進力がそのままに残っていた様で余裕でゾンビ共に命中、爆破。
幸いにも距離があったので爆風は流れて来ても飛来物は無かったのでこちらに被害は出なかったが。
「やるならヤルと言ってから一拍置いて発射しろよこのヤロ!馬鹿か!?馬鹿なのか!?」
速攻で私は怒鳴る。危ない真似すんじゃねーと。
しかし黒騎士の様子が妙な雰囲気を出していたのでその気持ちも直ぐに萎えた。
コレに即座に気付いたヒジリが黒騎士の困惑を指摘した。
「ねえ、アンちゃんってもしかしなくてもロケット弾がこんなにドッカーンするって思ってもみなかったんじゃ無い?」
私はコレに唖然。マジか、と。それに対してエミコが。
「あー、ソレは有りそうね。だって黒騎士、どう考えても「現代」の「中の人」じゃないわよね。もしかしなくても見た目通りな「中世」とか言った感じかしら?時代も常識も違うのならば、こんないきなりの行動も納得・・・は、しちゃうと今後も危ないわね。またそう言う「ズレ」で自爆なんて事になると目も当てられ無いもの。」
「ほほう、ほう、そりゃ危険がアブネーにゃぁ。黒騎士は現代物をゲットしたら私たちにちゃんと使い方を教わるんやでー。それにしても、テロって来た奴等ってば本気で冒険者協会を敵に回してんじゃんよ。これロビーで爆発してたらドンダケ死人出たか分からんにゃぁ。」
エミコの説明に納得したようにウンウンと首を縦に振りながらマリエが呑気な事を言っている。
だがそんな事を気にしてはいられ無かった。ゾンビに動きがあったのが私の目に入ってきたから。
「気を緩めるのは早いみたいよ。爆炎が収まって無い中に蠢く影があるんだけど。・・・寄り集まってるわね。・・・ウゲッ!?気色悪い!?」
爆発と爆炎で木っ端微塵になったはずのゾンビ共の肉体がもぞもぞと床を這って集合しているのが見えてしまった。
私はこの衝撃映像に吐き気を催しつつ剣を構える。
ここでこの現象に答えを出したヒジリ。
「うにゅー?これってフレッシュゴーレム化した?ゾンビ全部合体しそうな勢い?再生能力発揮するだけじゃ無くて肉片が自立して動き出すとか異常過ぎるって。もしかすると私のターンアンデッドも効かないかもしんない。ゾンビ共の総合した魔力量と存在強度によっては弱らせる事も出来ないっぽい。」
この発言にマリエが驚きの声を上げるのが、視線をゾンビの方に向けたまま警戒をしていた私の耳に入って来る。
「ウソやん?ヒジリでも無理?・・・あー、もしかしてアイツら、元々に持ってた魔力量高かった?それとも魔法系ジョブ持ち多かったんかな?性格がクソで、死んでからもこっちに迷惑かけるとか、ソレ、ゴミ以下のカス以下ですやん。往生際が悪い、を通り越してる。笑えねーなマジで。本気でツマンネー奴等だなぁ。」
マリエの意見に私は全面同意なのだが、声も出さなければ頷くと言った事もしない。
何故ならばもうそろそろ「ゾンビの集合体」の完成が近かったから。
そんな状況で意識を他に大幅に向けている場合じゃ無かった。




