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第81話

 さて、ダンジョンの中に入ったは良いが、一先ずの目標と言うか、指針を立てなければならない。


(調査隊への合流を目指すか、或いは何処か一カ所に滞在し続けて協会長、或いは長官の動きを待つか)


 敵の襲撃に備える為に拠点を築いて動かずに居る、と言った選択肢は有効だ。


 私たちが囮になって敵の目をコチラへ注目をさせ、他に気が向かない様に仕向けて相手に隙を作り出す。


 そうして仲間が、味方が、そこで動き易くなる状況を作り出し、一気にその敵の油断に切り込んで打撃を与える。これは嵌まればかなり効果的だ。


 しかしそれは消極的と言った備えであり、後手に回る事を是として機を待つと言う根気の必要な作戦になる。


 コレには我慢比べなども時として発生する事だろう。精神面との戦いとなりかねない。


 そしてこの作戦には外部との綿密な連絡が不可欠。コレを敵に看破されて連携を妨害されればこちらが孤立無援と為りかねない危険性も含む。


 有効な面も有れば、不利になる部分もある。難しい判断を迫られる所だ。


(情報が少な過ぎるのも問題だな。長官が考える今後の指標などもこちらは知らされていない。敵の目的は私なのだろうが、何処までの「線引き」をしていると言った事も読めずにいる。さて、中々に見通しの悪い現状だが、どう動けば良いものか)


 どうやら敵はなりふり構わずと言った動きを見せている。そう言った敵は私の経験上では、調子に乗させると何処までも肥大して行くのを知っている。


 しかしそう言った他を顧みずに目的を達成しようとする輩は、早々に本拠へと攻め込んで潰し戦力を大幅に激減させてしまうと自棄を起こしてより一層に大きな被害を出す行動を取って来る可能性が高くなる。


 死なば諸共、そんな覚悟をさせてしまう。そこら辺を抑える為の加減、塩梅が難しいと言った事もある。


(面倒だ。根切りできればそれが一番良い結果、と言うのは簡単だ。ソレを為すには何処に残党が隠れ潜んで居るのかまで虱潰しにしなければならないし、敵が当然に秘匿しているであろうソレらを詳らかにするには労力も時間も人員も資金も、何もかもが必要になる。そして敵を一人も逃さない事も求められる。今の私たちはソレが出来る様な状態でも、状況でも無いからな)


 そんな長期戦は勘弁だ。こちらの安全を確実に確保しようと思うのならば、眩暈がしそうな程の人員も年月も必要なのだ。そんなモノを今の私たちが捻り出せるはずが無い。


 当たり前だ。これは組織、協会長や長官と言った立場の者がすべき仕事だ。


 今の私は一介のアンデッド。一体である。そんな私の出来る事など目の前に現れた敵を屠るくらいが精々だ。


(もう騎士団の団長では無いからな。動かせる者など一人も無しだ。この身一つでできるのは剣を振るう事だけ。この四人を守る事が今の私の為すべき事だ)


「調査隊に合流するのは、無しね。余り考えたくは無かった事だけど、その調査隊の中に敵のスパイがいる可能性も否定でき無いからね。信じたいんだけど、過信して痛い目見る事になるのは避けたいから。」


 私がそんな事を思っていた時にイチカがそう意見を出した。これに私は納得した。


 敵と味方を区別する為の材料が今の私たちには無い。


 当初は調査隊に合流をしてその仕事を手伝うと言った事だったはずなので、当然に私は調査隊が「味方」だと思ってしまっていた。


 しかしこうして襲撃をされた後での状況では話が変わる。何処に敵の間者が潜んで居るのか分かったモノでは無い。


「そうね、それが良いかしら。でもここ、出入り口付近にずっと居続けるのも問題になりかね無いわよね?そうなればどうするのが良いかしら?」


「もしもアンちゃんを狙うスパイが調査隊に居たとするとさー?中途半端な距離で調査隊と付かず離れずの位置を取っていたりすると後から入って来た敵とスパイとが私たちを挟み撃ちにして来るとかあり得そう。」


「どっかの行き止まり探してそこで籠城とかすれば良くね?・・・あー、毒ガスとかやられたら逃げ場がないし防げないしで死にますわー。却下だきゃっかー。」


 エミコ、ヒジリ、マリエの順で意見が出る。この三人娘たちは普段は何も考えてい無さそうなのに、こうして危機を目の前にするとどうやら思考がしっかりと切り替わる。


 ソレを私は頼もしく思いながらこの話し合いの落ち着く所がどうなるかを見守る。すると。


「狭過ぎる場所はダメ。広過ぎる所も同じく。うーん、地竜の幼生体の居たモンスターハウス、あそこが迎撃にもまぁまぁな広さかなぁ。そこで居座るにしても警戒しなくちゃいけないのは部屋に繋がってる通路二本だけ。籠城するのにやり易いか。交代で見張りを立てれば難しい事は無さそうね。うん、っていうか、ここ以外で確実性が分かる場所って無いのよね。選べる選択肢が他に無いわ。」


 イチカはそう言って魔道具「たぶれっと」で出したダンジョン内の通路図を見つめながら眉根を顰める。


(最初に調査隊への合流を目指して動き出して直ぐに問題発生で、次に連続して襲撃と。その後も帰還を選んだからな。他の通路の様子を見ると言った余裕も今有る訳で無し。土地勘と言った部分の情報も無さ過ぎだな。コレはどうしようもない)


 そう言った訳で一旦はそこに向かう事となって私たちは移動を開始した。

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