第80話
「アイツ、アンちゃんを犯罪者呼ばわりかよ・・・死すべし、慈悲は無い・・・」
(いや、そこまで言う程の事では無かろうに)
ヒジリが喉の奥からそんな言葉を恐ろしい雰囲気で出すのを見て私が少々引いている所で、エミコが動き出そうとしたヒジリを止める。
「止めておきなさいな。ほら、よく見て。今の馬鹿に同意する奴は居ないわよ。いえ、少ないって所ね。」
そのエミコの発言に私も周囲を見渡すが。
「馬鹿じゃね?どう考えてもバズーカこんな所で撃って来た奴等がテロだし、犯罪者だろ。頭こいつおかしいなマジで。」
「いや、ウケる。どう考えても今のは俺たちの事を何も考えずに巻き込もうとした攻撃だろ?明らかに撃ってきた奴等の頭がおかしいし、やってる事が非道であって、アンデッドナイトの方が被害者じゃん。」
「幾ら何でも、被害者のが悪いとか言い出す奴って大体は性格が捻くれていて他責思考のヤツが多いよな。あれもそうだろ。付き合ってらんねーんだが?」
「今のに同意する奴って要するに、自分の身可愛さに何の意思も持たず責任も取らずに他人の言う事を聞いてホイホイと軽い気持ちで迂闊に動く奴等だろ?顔憶えとこ。今後一切そいつ等と関わらない様にしないとな。」
「冒険者協会の判断からしても、今のは協会に喧嘩売る行為だし。と言うか、コレって協会長が黙って無くね?あんな爆発物いきなりブッぱなして来た犯人を血眼になって探すんじゃね?そう思えばソレをあからさまに「邪魔」になる態度や言動を取った奴って処分される可能性あるだろ。アンデッドナイトが悪いとか言い出した奴、後先考え無さ過ぎワロタ。」
どうやら先程の冒険者の言葉を真に受ける者は少ないらしい。
とは言え、居ない訳では無く。
「おいおい、どう考えてもそこの黒いのは疫病神だろうが。とっととそいつをどうにかしろよ。」
「いや、そう言うならお前が率先してやれよ。何で偉そうにして他人がやれなんて勝手な事いってんだ?自分で言い出したなら先ず自分で動けよ真っ先に。このチキンがよ。」
「ああ!?テメエ何様だこら!」
「いや、それ、おまいう?笑うんだが?」
つまらない争いが起きている。その内容はクソ。流石に私もこれには馬鹿馬鹿しいとしか思えない。
これらに真面目に付き合っている時間も惜しいのでさっさと私は歩き出す。
イチカとマリエにこの件を早々に話して決を取る必要がある。
(ダンジョンへと入れば襲撃者も逃げ隠れし難くなるだろう。その際に捕縛できればその時に考えれば良い。出来なくともダンジョン内の方が邪魔者が少ないので対処し易いしな)
こうして建物内に他の冒険者たちが居るから私も派手に動けないと言った所もある。
なのでこの問題を被害を抑えて対応していくならダンジョン内の方が寧ろ都合が良い。
そう言う訳で協会長には悪いが、早々に行動した方が良いのは私も同意だった。
そうなればエミコは先に食料を買い込んでくると言う事で別行動に。
私とヒジリは先に留守番二人に説明をする為に戻る事に。
そうして部屋へと戻って見ればイチカは難しい顔をして魔道具「すまふぉ」を弄っている。
マリエは変わらずグッスリと眠っていて。
「おーい!起きろマリエー。ダンジョン行くぞー。」
「・・・いきなり何を言い出すのよヒジリ。ちゃんと説明して。・・・その分だと何かあった、わね。はぁ~、もうヤダぁ・・・絶対にコレやばい事起きてるじゃん・・・長官との交渉が遠のく。私だけでもどうにかこうにか・・・無理だわ。どう考えても今の段階じゃ抜け出せない・・・トホホ。」
「うにゃ~・・・?おはよヒジリ。で、朝飯は?」
マリエは素早く起きたのだが、どうやら寝ぼけている様子。
イチカは嘆きを吐き出してはいるが、ダンジョンに入る準備を素早く取り始める。
ここで端的にザックリとヒジリが説明をする。
「クソ馬鹿共がさっき襲撃して来た。ここに居るよりもダンジョン内に入った方が邪魔な奴等が居なくて警戒し易い。協会長には後で報告、長官には後で上乗せ報酬請求。エミコは飯調達。以上!」
「何でそんなに勝ち誇った顔してんのヒジリは・・・訳が解らん。今の説明の何処にあんたが胸張るトコが在ったっていうのよ・・・そんな所にまで私にツッコミ入れさせないでよ・・・」
大あくびしているマリエはヒジリの説明を聞いていたのか、そうで無いのか分からない。呑気なものだ。
しかしイチカは呆れつつも真剣に今の状況を呑み込んで準備の為の動きを止めない。
(私たちが居ない間にイチカはダンジョン内で数日は過ごす為の道具を用意していたのか。心強いな)
どうやら反対と言った様子は二人に無い。ここでゴタゴタとして時間が潰れると言った心配はしなくても良い様子だ。
そこにエミコが戻って来る。そして一言。
「黒騎士、これ仕舞っておいて貰えない?結構な量を買い込んで来たから荷物が凄い事になったのよね。アナタの空間魔法?で収納して貰えるなら物凄く助かるわ。」
そう言うので私はエミコから荷物を受け取って「虚」の中へと、空間収納に放り込む。
エミコが買って来た食料は少し大き目の台車に山盛りだ。どうやらダンジョン内に長期間入り続ける想定でいるらしい。
これにイチカが何とも言え無い「しかめっ面」になっていたのが私の視界に入っていた。
しかしイチカはここで何も言わずに準備を整え終えたのだった。




