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第78話

 ダンジョンに私は入りたかった。四人をここに残して。


(話し合いは終わったのだがなぁ。何故この部屋から動けないのか)


 腕にはヒジリが抱き着いて来ていて自由に行動できない。振り解く事も可能だろうが、ソレを無理にしたくはない。


 それは今後の事も考えて友好関係をこのまま続けておきたかったからだ。


 今後に関わらない様に、しかし、それに嫌悪や拒絶などをされ無い様にと言った良い塩梅を探したいのだが。


(この娘らの身の安全の為にも私から離れるべきだと思うのだが。イチカだけは危険を理解している様だけれども、残りの三人が何を考えているのか分からん)


 どうして部屋に留まっているのかと言えば、調査隊との合流は一時中止としここで待機、と言った命令が協会長から直々に下されたから。


 こうなると何も出来ない。只時間が過ぎて行くのを待つしかない。


(まあ私はその命令に従わねばならない義理が無いのだが。ここで私が動けばこの四人が無理にでも一緒について来てしまうだろうしな)


 私と言う存在が居るだけでこの国に迷惑を掛けていると言うのは自覚している。


 しかし、だからと言ってじゃあ「他所に行きます」とか「何処かに隠れ潜んで出てこない様にします」とか「自殺します」などと言った事は出来ない。


 行く当てが無いし、このまま無抵抗で消滅させられる気も無いから。


 今の私にできる事が全く無いのがどうにもモドカシイのだが、出来ないモノは出来ないし、動きたくてもどうすれば良いのかの案は思い浮かばなかった。


「地竜の幼生体の魔石、売り払って来ない?ここで待ってるだけってのは時間の無駄でしょうから、ちょっとくらいは有効活用しましょ。」


 そう言ってエミコが席を立った。そして私に向かって言う。


「本当にビックリな特技を持ってるわよね、黒騎士は。有れよね?インベントリとか、アイテムボックスとか、もしくは空間魔法って言って良いのかしら?ソレ、私にも覚えられる?教えて欲しいわ。」


 あの青く光る石は回収して私が収納している。協会長との話し合いの中ではこの「魔石」の事は触れられていない。


 話の内容は主に襲撃して来た者たちの件のアレコレや、今後の協会長の動き、国の動きに関しての件などだった。


 その為に魔石の買い取りと言った事は重要では無い案件との認識だったのか、それとも単純に忘れただけか、その点の処理に関しては協会長から何も指示がされてはいなかった。


 なので私とヒジリ、エミコが部屋を出て受付へと向かう。部屋に残るのは見事に机に突っ伏して寝ているマリエと、脱力して椅子に座って天井を眺めているイチカ。


 こうして私たちは周囲の視線を受けながら魔石買取の手続きを行った。


「ま、魔石の買い取ですね?こ、こちらにどうぞ・・・あ、おっきい・・・って、これ、何から出た魔石です?ってか!幾つ出してるんですぅ!?」


 これで何度目か。どうやら私関連の対応をする受付嬢は固定の様だ。こうも連続で顔を合わせれば何となく分かる。


(まあ他の者に代わる代わる対応されて、その度に恐れられるのは私としても勘弁して欲しい所だったからな。この受付嬢には悪いが、今後に長い付き合いとなるだろう。よろしく頼む。慣れて行ってくれ)


 私は内心でそんな事を考えていたのだが、ソレをこの受付嬢が読み取れるはずも無く手続きは進む。


 机の上にはゴトゴトと魔石が十を超えて転がる光景になる。一個の大きさは握り拳よりも二回り程大きい。


「で、では、こちらは後で鑑定に出して査定を致します。金額が決まりましたら記録カードをまた次に来ていただいた際にお渡しします。ま、またのお越しをお待ち・・・したく無いんだよなぁ・・・」


「受付さん、本音が最後の最後に漏れてるわ。ふふ、聞かなかった事にしておいてあげる。まあ怖いわよね黒騎士。この迫力じゃあね。アナタの気持ちも分からなくもないわ。」


 エミコが苦笑いを浮かべながらそんな言葉を口にした。どうやら受付嬢はもう二度と私と接触はしたく無いとの事だ。


 とは言え、私も魔力を消費しっぱなしでこの魔石を収納し続けたくはない。


 引き取って貰えるのならばそうして貰いたいので、今後も利用させて貰う事になるのだろう。そこは我慢して貰うしかない。


 そんなやり取りを追えた時に遠距離から火を噴く、私の知らぬ見た事の無い形をした砲弾がこちらに飛来して来た。


 それは私を狙った物。相当な勢いであり、コレが私以外に当たれば致命と成りえる攻撃。


 避けても、防いでも、斬り捨てても、恐らくは周りの者たちに迷惑が掛かる。ソレを瞬時に私は察して動く。


(コレはマトモに受ければ周囲に被害が出るな。なら、少々奇手を使うか)


 無関係の人間たちを巻き込むであろうやり方。朝に襲撃して来た者たちと同じ感覚を受ける。


 それは私の嫌いなやり方だ。なのでここで遠慮も出し惜しみもしない。


 目の前まで迫って来たその砲弾を、私は一瞬で「虚」に沈めた。

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