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第77話

 明確な敵、それが判れば良いのだが、そう上手く行かないのが世の常だ。


(四人をこうして怪我無く守れているのは、只運が良いだけなのだろう。このまま襲撃される事が続けば、その内に後悔するだけでは足りない事態に陥る事になる)


 どうやら私の事を狙った者たちが犯行に及んでいると言った事なのだろうが。


(朝に襲撃して来た者たちと、ダンジョンの中で待ち伏せして来ていた者たちはどうにも同じ所から差し向けられたモノでは無いと感じるな。最低でも二つ、狙って来ている組織があると言う所か)


 意識を持ち、自由に振る舞う「アンデッド」である。


 こんな存在は研究者なら喉から手が出る程に欲するだろうとは、私でも分かる。納得する。


 しかし逆の考えもあるだろう。その様な意味不明で不気味な存在を認めず、早々に「消す」と言った判断を下す者だって居るハズだ。


 恐らく今回の件はこの二つでは無かろうか?


(コレは時間が経てば経つ程に問題が複雑化して行きかねんな。この国の中だけでは無く、他国に情報が行けば間者の類も増え、横槍も多く入って来る事になるだろう。うーむ、今まで自身の事を余りにも軽く見てしまっていたな。コレはどんな着地点に集約すれば解決するのか)


 恐らくは勝手な言い分を並べて他国が問題に介入して来るだろう。


 ソレをこの国が阻止すると言った方向性を示すのなら、私の存在、その扱いをどうするのかを纏めなくてはならない。争ったり対立している場合では無い。


 だが私は知っている。そう言った組織同士が協力などする事は皆無だ。


 そんな事を考えながら「かいぎしつ」なる部屋にて協会長が来るのを待って居る。


 ヒジリは相変わらず私に密着してきてニマニマと満足そうな顔になっている。


 イチカは椅子に座って腕組して目を瞑り黙っている。


 エミコは魔道具「すまふぉ」なる物を操作して何やらしており。


 マリエは机に顔を乗せて居眠りし始めた。


(自由だな。どうにもこの空気に巻き込まれると危機感が薄れて行く。この先の事を深刻に考えている事が馬鹿らしくなる)


 そんな風に思って私が気を緩め始めた頃に協会長が部屋へとやって来た。


 そこにすかさずイチカが質問を飛ばした。その言葉には若干の怒りが籠められているのが分かった。


「協会長、何も隠さずに全て説明してください。事と次第によっちゃあ、私、冒険者辞めますよ。と言うか、今直ぐ辞めたいんですが?もう黒騎士と今後一切関わり合いたく無いんですが?」


(命を狙われたのが二度、ソレも今日と言う日に短時間で。当たり前だな。私と関わりたくないと思うのは)


 イチカの気持ちは分かる。私だって少々ウンザリな気分だ。


 ここで「言ってやったぞ」と言わんばかりのイチカの顔は先程まであった怒りの感情は消えていた。


 これに協会長が深い溜息を吐いて諦めた様に口を開いた。


「黒騎士を狙う組織の炙り出し、長官の狙いはソレ。貴方たちを利用する様な事になった事は謝るわ。でも、契約書にサインしたのは貴方たちの意思で行った事だから、そこは呑み込んで。あの時に断わられても別に私も長官も貴方たちへその後に圧力や不利益を与える気はサラサラ無かったのよ。ソレと、私はこの件の深く「先」の事までは長官から説明は受けていないわ。御免なさいね。車での襲撃の時も一定の位置まで行ったら「こちら側」の味方が出て来て襲撃者たちの確保に動く予定だったの。でも、結果は貴方たちも見てた通り黒騎士がその前に、ね。長官から説明されて私も「上物の釣り餌」として、納得してあの場に出たの。そう言った部分を考慮に入れて貰えると助かるわ。」


 どうやらこれは長官の方で行った情報操作で早々に動き出した組織が出た結果と言う事らしい。それにしても早過ぎないか?と私は思うのだが。


 しかしイチカはどうにも納得できない部分がある様で。


「ダンジョンでの調査隊と合流するルート、アレはどう言う事ですか?」


「・・・アレ?どう言う事?」


 どうやら協会長は何も分かっていないらしい様子が見て取れた。


 なのでここでイチカがダンジョンの中に入った後の事を最初から説明し始めた。


 ソレを最後まで聞いた協会長の顔色は悪くなっている。


「嘘でしょう・・・?こんな短い間にモンスターハウス?しかも地竜の幼生体が十体以上?それで良く生きて戻って来れたわね・・・いえ、違う、そうじゃ無い。黒騎士の実力は想像を遥かに超えるわ。・・・で、待ち伏せしていた輩の身柄が分かる物は取って来てあるの?」


 イチカがダンジョン内で襲撃者たちに致命傷を与えて放置して来た事には何も無いらしい。


 協会長はその襲撃者たちの所属を判明させる証拠などを取って来たかと聞いて来るが。


 これに寝ぼけながらマリエが答えた。


「んにゅ~?金目の物だけ巻き上げた。後は知らん。アイツらが何だったのかなんて興味にゃーもん。」


 協会長がこの答えに顔を手で覆って大きく溜息を吐いた。


 そこに追い打ちでのイチカの言葉。


「捕縛を目的にしていたらしいから、多分どっかの研究所関連だと思いますよ。あの屑共が誰なのか興味も無いし、そいつらを雇った奴らが誰なのか何てどうせ隠蔽されてて分からないんじゃないですか?正体晒して直接に依頼するとか、幾ら何でもそこまでアホ集団じゃ無いでしょうし?長官が何処にどんな情報流したか何て知りたくも無いんで。私たちは自分の命最優先で動かせて貰います。契約内容にもそこら辺の事は詳しく縛って来る文言は無かったですからね。自由にやらせて貰います。良い様に利用されて堪るかっての。今回の事で協会長への信頼も減りましたよ。そこら辺の事を今後くれぐれも気を付けてくださいね。この後も隠し事をして来る様ならこっちにも考えがありますよ。」


 そう言ってイチカは協会長を脅していた。

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