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第75話

 四人の手際の良さに私は関心させられた。


 見事に襲撃者たちは全滅。まともに動ける者は居ない。


(まあ男共が鈍過ぎただけだなコレは。しかし、ハッキリとコレで分かったな。狙いは私か。しかも捕縛。うむ、舐められたモノだ)


 この男共が依頼主から与えられた情報に、どうやら私が反撃などをしないと言った事を吹き込まれていた様だが。


(それは余りにも見通しが甘いと言わざるを得ないのだがなあ。これ程に悪意を持つ外道に私が手を出さないとでも?)


 そこで私は考える。この刺客を放った黒幕はそもそもに私が既にもうこの国の言葉を理解できている事を知らないのだ。


 言語理解の事を知っているのは今はイチカとヒジリだけ。この事実はこちらの大きな「利」であると考えなおした。


(こうして襲撃を掛けられ、しかも罠まで張って来た相手だ。油断などできない相手だな。もっとこちらの手札を増やさねばならん事態か)


 敵の悪意を躱す、避ける、逃げると言った事だけでは追い詰められるばかりになる。


 しっかりと反撃をするのならその一手で、一撃で止めを刺さねばこの件は泥沼に嵌まる可能性が高まる。


(この程度の者たちを差し向けて来たのは恐らくはこの国の国民に私が被害を与える事は無いだろうとの予測からだろうが、それは私がこの国の言葉を分からなかったから慎重に動いていただけに過ぎんのだがな)


 悪印象を持たれ無い様に戦闘を避けていただけ。人として、騎士として、理性に則って動いていたのだ。


 だが今は違う。この刺客たちの発言を私は理解している。出来ている。


 イチカが男共に止めを刺していなければ、それはきっと私がやっていただろう。


(あのような言葉を吐いた外道、邪道、屑の類に問答は無用だ。言い訳や命乞いを口にさせる価値は無い。百害あって一利無し。生かしておく価値も無い。いや、最低でも、隷属の首輪をさせて奴隷として一生、鉱山採掘をさせると言った事には利用できそうか)


 その場合は「喋るな」「文字を書くな」と言った命令を追加する事を忘れてはならないだろう。


 他の奴隷たちと同調して反逆と言った芽を少しでも詰む事を忘れると、こう言った者たちは逆恨みでどんな行動に出て来るか分かったモノでは無い。


 突拍子も無い理屈や理由、他責観念で自身のやって来た悪事の事になど目を向けず、顧みもしない。


(おっと、この国では奴隷制度はあるのか?祖国では重大犯罪をした者には弁明など一切させずに直行だったからな。そこの所はどうなのだ?・・・私が気にする事ではなかったな)


「さて、どうする?調査隊に合流を目指す?それとも戻って報告する?私は戻るに一票。」


 ここでイチカが今後の方針を決める為に意見を述べた。コレを私は見守る事とする。


 私としてはどちらでも構わないからだ。狙われているのが私だとここでハッキリしたのだ。


 ならば私一人で単独行動、と言った選択肢もある。これは四人の安全の為、と言った事を思っての事である。


 まあそれは私に何かと隙があればくっ付いて来るヒジリが納得しないだろうが。


「んー?このまま合流目指しちゃって良くない?別にそこまで奥に入って来てる訳じゃ無いから戻るのも簡単だけどねー。でも、あっちのロビーでもこんなバカ共が絡んできたりするとメンドイ。アンちゃんとの一緒の時間を邪魔されたくはないよー。」


 そんな事を言ってヒジリがまた私の腕に抱き着いて来る。


 そこで次にエミコが意見を口にした。


「報告に一度戻った方が安全は高まると思うのよね。協会長にも一度この件を問い詰め直した方が良い気もするわ。あと、協会長に繋ぎを取って貰って長官に契約の件で値段交渉をしておきたい所かしら?報酬をもう一段階上げて貰わなきゃ釣り合わないわね、この調子で行くと正直に言って。」


 どうやらエミコは安全と金を重要視した模様だ。


 そこにマリエが同意の言葉を吐き出す。


「このまま調査隊に合流を目指してもその途中で他のクソ馬鹿どもが配置されていたりしない?なら、ちょっと面倒臭くても支部に戻っても絡まれるっていう可能性では同じっしょ。同じなら安全とお金が同時に得られる帰還の方が良いってばよ。この先でどれだけ時間を掛けると合流できるってのが分かん無いし?命掛かってるからね。安全の方も保障貰いたいとこじゃん?戻る一択。」


 金に何時も目が眩んでいる発言をするマリエが真面目な顔で考えを述べているのを見て、これにヒジリが「こういう時のマリエの意見には乗るのが吉」と言って簡単に自身の意見を翻していた。


 こうして全員の意見が一致し、一度帰還するのが早々に決まった。


 因みに帰還前に床に転がる瀕死状態の男たちの身包みをマリエがキッチリと剥がしたのを見て、私は少々の呆れを感じずにはいられ無かった。

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