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第74話

 その武装した男たちは内心でこう思っていた。「簡単な仕事だ」と。


 合計で十五名、コレだけの数が居ればアンデッドナイトなんて簡単に片づけられるし、取り巻きにいた小娘共も楽に始末できると。


 始末する前に存分に弄んで楽しむ余裕すらまである、そんな外道な事まで思考している。


「俺たちにもツキが回って来たってもんだ。成功報酬は五百万だろ?しかも一人につきって。太っ腹だぜ全くよ。」

「こんな楽な仕事は無いぜ。ヤバイ仕事だろうがこの額を出されちゃ受けざるを得ないって!」

「しかも待ち伏せして奇襲とか言う簡単お手軽仕事とか。こっちに標的が来なかったとしてもソイツの行き先を即座に連絡してくれるサポート付きって至れり尽くせり過ぎる。」

「おい、この先って確か地竜の幼生体がひしめいてた部屋が在るんだろ?ソレがこっちに押し寄せて来るとかは無いのか?」

「は?アイツら足おせーじゃん。逃げ切れるべ。何?お前小学生の時の駆けっこビリだったタイプか?マジウケるぞソレ?」

「ぎゃははは!良いなソレ!もしも追っかけられたらお前の事を囮にすれば良いって事だろ?なら安心じゃん。」

「っていうかよ?そもそも俺たちがターゲット追い込むだけで良いじゃんその部屋に。俺たちが手を下すまでも無いとか楽チン過ぎる。」

「おいおい、そうなったら女どもとやれねーじゃねーかよ。こっちはあの「四姉妹」をヤれるって朝から想像してギンギン何だぞ。死なれちゃ困るぜ。」

「そうそう。ヤって殺して、罪はアンデッドナイトに擦り付ける。完璧っしょ。」

「あー、早くやっちまいたいぜ。んでもって報酬で派手に遊ぶとかマジ俺ら勝ち組じゃん。」

「お前ら何に金使うんだ?車か?女?酒?クラブ?・・・あ?なんだ、ありゃ?」


 一人がやっと通路の先の異変に気付く。しかしそれに対して正確な状況を理解する訳も無い。


 男たちは立ち止まらずに通路を何らの緊張感も無く進み続ける。


 そしてその存在の姿が見えて来ても足を止めない。それは愚かで、それは遅きに過ぎた。


「あぁ?ありゃ標的のアンデッドじゃね?」

「ぼーっと突っ立ってるだけかよ。何してんだ?」

「んな事どうでも良いだろ。女は?まさか地竜に食われたのか全員?は?何してくれちゃってんだよ。」

「おいおい、じゃあアレは何だってんだ?あのアンデッドだけ残ったってか?」

「まあ良いだろ。女は勿体無かったし残念だったが。目標が確保出来りゃ今後の人生バラ色ってな。女は後で金で最上級を買えば良いのさ。四姉妹なんて目じゃ無いのをな。」

「おい、囲うぞ。取り合えず捕縛だ。ワイヤーロープ出せ。逃がすなんて結末が一番つまらねえ。確実にやるぞ。」

「何だよメスガキども居ねーのかよ。泣き叫んでるのを無理やりに犯すのが良いのによ。」

「コレだけ居りゃ逃がさねーよ。ノンビリやろうや。こっちはコレだけ居るんだ。失敗するはずがねえ。」


 ゲラゲラニヤニヤとその顔を醜く歪めた男たちは無防備にアンデッドナイトに近づいて行く。


「こいつ、確かこっちに手を出して来ないって事だったじゃねーか。お前ら焦んなよ。っていうか、こいつ反応ねーな?・・・あ?」


 男たちは気付くのが遅れた。余りにも鈍かった。


 自分たちに向かって迫って来る炎の渦に唖然とするばかりだった。


 それはマリエの放った広範囲の攻撃魔法。準備は既に完了しており、後は呑気に近づいて来た男たちに向けて放ったもので。


「ぐああああああ!?何だくそおおお!?」

「あちいいいいいいいい!?あちいいいいいいいいい!」

「うごぉ!?ぐふぇぇぇ!」

「うがッ!?うがあああああああああ!」

「おあ!おあ!おああああああああ!?」


 叫び声、炎に焼かれて熱と痛みで上げる悲鳴。


 そこに「しゅ」と小さな風切り音が飛ぶ。その音が鳴った次の瞬間には男たちの脚や腕、わき腹などに矢が刺さる。


 それはエミコの弓による仕業。魔法で燃える男たちに向けての追撃。


「うりゃ!このド屑どもが!くたばれ!」


 そこに火傷の被害が小さく体勢を立て直そうとしている男たちに向かってイチカが斬り掛かる。


 混乱からまだ抜け出せていない男たちはコレに簡単に背中を、腕を、胸を、脚を斬られて悶え転倒して行く。


 そんな騒ぎが収まった時にはマトモに戦闘をできる様な男は残っていない。


 受けた被害で大きな動きが出来なくなった男たちは自分たちが置かれた状況、目の前の現実に理解が追い付かず。


「このクソガキどもがぁ!やってくれたなぁ!テメエら覚えてやがれよ!とことん痛めつけてから殺してや・・・」


 と男たちは威勢の良い事を口にしながらも逃げ出す姿勢を見せる。しかしコレはもうそもそもに決断が遅い。何処までも遅過ぎた。


「逃がす訳無いでしょ。馬鹿なの?」


 イチカがそう言った途端に男の一人が床に倒れる。背中を大きく切り裂かれて。


「あんたら、覚悟はできてたのよね?私はもうできてるわよ?・・・まあ、殺しはしないわ。けど、致命傷は与えるから今直ぐ死なないってだけ。こっちの命を狙っていたんだから、反撃されて自分たちが死ぬって事も了承の上での襲撃でしょ?納得しなさいね。自業自得って知ってる?まあ、しなくてもやるけど。こっちはもうあんた等みたいな屑どもを手に掛ける覚悟なんてとっくの昔にしてんだよ。」


 イチカはそう宣言して男たちに致命傷を与えるべくその手の剣を大きく振りかぶって次々に男共に斬り掛かる。


 それらは怪我を既にしている男たちに避ける術は無く。反撃をしようとする暇も与えず。防ぐ事も許さず。


「舐めてんじゃないわよ!もうこっちとら自棄なのよ!素直に「ハイソウデスカ」って言って簡単に殺されて堪るかっての!この屑どもが!」


「イチカ久々にキレてるねー。まあこいつ等の屑っぷりには確かに同意~。」

「雇い主は誰かしら?聞き出さなくて良いの?あ、そう?確かにイチカを今止める方がヤバそうね。」

「でしょでしょ~。ああなるともう無理無理だよねぇ。取り合えずこいつ等の持ってる金目の物が燃えて無くなってなければ良いなぁ。慰謝料は貰っとかんとなぁー。」


 その様な会話がされている間に男たちはあっと言う間に全滅したのだった。

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