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第72話

 コレは流石に黒騎士でもダメだろう、そんな感想が即座に私の中には浮かんで来ていた。


 そこには高さ一メートル、体長三メートルはあろうかと言った「コモドドラゴン」が十体以上ひしめいていた。


「即座に撤退でしょ、こんなの!」


 私は即座にそう思ってヒジリの腕を掴んで通路に引っ張る。


 しかしコレに抵抗するヒジリが「ふぁぃとー!アンちゃん!」などと言って黒騎士がそのモンスターハウスに入って行くのを応援していて。


「ちょっと!?幾ら何でも無茶でしょうに!エミコもマリエも止めなさいよ!つか、通路に退避しろって!っていうかそうじゃ無い!逃げるわよ!」


「んー、大丈夫じゃないかしら?まあでも安全の為に下がっておくのが無難よね。」


「戻るのはどうかと思うのよねー。だって、これ、魔石ガッポリボーナスタイムじゃね?まあ主に蜥蜴ぶちコロするのは黒騎士がやってくれるんだけどもー。」


 こう言う奴等だった。私は今更ながらにと言うか、再認識。自身がパーティを組んでいる仲間の性格を思い知った。


「ああもう良いから!変動後のダンジョン殺意が高過ぎるんだよ!難易度上がり過ぎじゃないのさ!アタシのこれまでの日常を返せー!」


 私は八つ当たりを叫ぶ。この黒騎士が現れてから碌な事になっていない、としか言い様が無い。


 このダンジョン変動と黒騎士の間に何かしらの関連すら疑ってしまう。


 だけどもそこを「陰謀論が過ぎる」と思い止まる。今は目の前の危機にどう対処をするか考えるべきだと思い直したから。


 けれども私の目に映る光景はソレを全否定して来るもので。


 それは黒騎士がそれこそ超が付く大きさの蜥蜴を難無く屠っているから。


「・・・ねえ、あれ、腐っても、本物と比べたら小さくても、ドラゴンの幼生体よ?しかも地竜種よね?私の目に映ってる光景、幻じゃ無いわよね・・・?」


 呆れてモノが言え無い。黒騎士が次々に魔物の首を一刀で斬り飛ばしていくから。


 それは人間業では無い。いや、黒騎士は「アンデッド」なのだけれども。


 それにしたって現実味が無いその光景に私だけじゃ無く、流石に何時も冷静でいたエミコも同様な感想を持っていたらしく。


「ええ、イチカ。私も同じ意見だから安心して?ソレでもまあ、信じられ無い光景ってのはこうも連続で突き付けられると夢でもまだ見ていて、ベッドの中なのかしら?と思いもするわね、これじゃあ。」


 地竜種、その鱗は頑強にして堅固だ。幼生体でもその特性は持っていて普通は剣でなど斬れるはずも無い代物なのだ。


 けど目の前で起きている現実は違う。何をどうすればその硬さを豆腐の如くスパスパと斬れるのか?と言う問題で。


「うひょー!見てみアレ!信じられ無いくらいでっかいっしょ!幾らになるかな!」


 マリエの相変わらずな視点は魔石、金だけを見ている。その良い意味でも悪い意味でもブレ無いその態度に私もエミコも落ち着きを取り戻した。


 取り戻して、今にも魔石を拾いに行こうとするマリエを私は後ろから羽交い絞めにして止める。


「アンタ目が眩み過ぎでしょう幾ら何でも!まだ戦闘中だっての!アレの一匹でも私等には荷が重い所か一瞬で踏み殺される敵なんだから現実の方に好い加減に視点を戻せこの馬鹿!」


 ここでエミコが協力してマリエを止めてくれた。まあその方法は額にデコピンと言う「子供か!」と言った止め方だったけれども。


 それで「は!?私ってば一体何を?」などと言うリアクションでマリエが正気に戻るのは、幾ら何でもどうかと私は思わざるをえなかったのだが。


 ここでハッと気づいた。何時も黒騎士ヒャッハーしているヒジリの事を。


 そして視線をその問題児に向ければ何時も「アンちゃん好き好き」と事ある毎に連呼していたヒジリが珍しく黙っていたと思ったら、ジッと熱の入った目で黒騎士を見入っていた。


「ヒジリ、あんたの事はもう「HENTAI」と呼ぶしか無いのね・・・」


 今はもう残りの魔物が三体しか残っていない。ヒジリがソレまでの一部始終をずっとその熱視線で見続けていたと言うのなら、もうヒジリが冗談で黒騎士に「結婚」などと言っていたのでは無いのだと理解してしまう。


(本気なんかい・・・こいつはもう人間として扱うべきでは無いんじゃないかと思う。ヒジリ、あんたの脳味噌どうなってんの?別次元だろもうそんなの・・・)


 そんな事を思っていれば黒騎士がスパッと最後の一体を軽く片づけていた。


 そこで私はこの自由な奴等過ぎるパーティを纏める為の一言を吐き出す。


「・・・あー、皆、ちょっと作戦会議。集まって。いや、いい。マリエは魔石拾ってて良いわ。と言うか、先に掃除が先か。それから話し合いしましょ。手分けして魔石拾いね。はぁ~、もうヤダ。この先、もっと面倒事ばっかりの予感しか無いじゃない。こいつ等の面倒を私が見なくちゃいけないとか、最悪を通り越して地獄何だが?」


 私は不安しか無い先行きに大きな溜息を吐くと言う抵抗くらいしかできなかった。

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