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第71話

 恐らく待ち伏せだろう事をしている敵の居る場所、そこと調査隊の経路が重なる。


 そしてこちらが行くべき指定がされている通路は全くの別。


 ダンジョンの変動とやらが起きた事による影響らしく、入ったばかりの出入口の前は広場となっていて五つの道があるのだ。


「ここ、私等が脱出した時にはこんなのじゃ無かったわよね?もしかしてその時に辿って来てた道もまた変動で変わってて記録が役に立た無くなってるんじゃないかしら?」


「あー、ソレあるっぽいわね。あの時にはまだ変動が安定、確定して無かったって事かー。じゃあこのタブレットに載ってるのって、その後にある程度は安定した後のって事になる?」


 エミコが予想を口にし、イチカがソレを肯定する。


「マジでだるぃ~。それってまだ変動起きる可能性あるって事っしょ?調査隊に合流するまでにソレ起きないって確証無いっぽくね?また遭難勘弁マジ無理み過ぎるんですけど~。」


「アンちゃんが居るから大船に乗ったつもりで安心安全!出て来た奴等はアンちゃんの剣の錆になるのだぁ~、ワハハハハ!」


「ヒジリ、テンションがおかしくなってるぞ?そんなキャラじゃ無いでしょアンタ。結婚とか口にし始めてから頭のネジがまだ数本追加で外れてんの?理性どこやった?抑えろ?マジで問題起こすなよ?マジで。マジで。もう何なの・・・」


 マリエが危険性を述べ、それをヒジリは大丈夫だと否定し、そこにイチカがそのヒジリの様子を「頭大丈夫か?」と心配する。


(混沌だ。コレがこの子らの「何時もの調子」なのだろうか?短い付き合いなのでそこら辺がまだまだ解からん。全く、分からん)


 ダンジョンからの脱出の間だけと思っていたものが、蓋を開けてみればこの様な展開だ。


 この先も長い付き合いになる事はもう既に確定路線と言って良い状態になってしまっている。


 なので私は悩む。ここが分岐点ではないのか?と。路線変更するならこの時では?と。


 私の今の現状、状態が余りにも不透明過ぎ、そしてこの先の未来の行く末もこの分であればキナ臭いとしか言えない状況で。


(これ以上この子らの負担、迷惑にならぬ様にここで分かれるべきでは?)


 しかしそんな事を私が思った所でヒジリが私の腕に抱き着いて来て引っ張って言う。


「行き先の確認はしたし、いっちょレッツらゴー!アンちゃん、大手柄を立てて協会にもダンジョン庁にも認められよう!皆のDOGIMOを抜いてやろうぜぃ!」


(でゅぎもう?まだ聞き慣れ無い発音や習っていない言葉は集中していないと訳が解らない。此処からは言語習得の方には集中できそうにもないな)


 警戒や戦闘で、この先はもう意識を散漫には出来ない。


 少し油断しただけでダンジョンとは命を落とす場所だと言う事を忘れてはならないのだ。


 既にダンジョン内にコチラを狙っているのであろう敵の陰もある。比重を傾けるべきは安全。この国の言葉を覚えるのは今しか無い訳では無い。急務では無い。


 今はこの子らの命を優先して動くべきだと私は腹を据える。


 こうなってしまったのは、流れに身を任せる事を決めた私にある。その責は私の判断の過ちにある。


 そうなれば迷いは無い。全力だ。


(全身に魔力を漲らせろ。出て来る敵には容赦は無しだ。研ぎ澄ませ。どんな些細な事も見逃すな)


 私は即座に気持ちを切り替え意識を高める。


 その準備が終わった後は「たぶれっと」に示された道の方へと歩を進める。


「ちょ・・・あんた何いきなり本気モード出してんのよ。物凄くビビったじゃ無いの・・・」


 イチカが何かを私へと言っているのだが、戦闘に関係する事では無いのは解かったのでそちらには意識を割かずに進みを止めずに行く。


「アンちゃん待って待って~。でも、ガチなアンちゃんマジイケメン過ぎる。これは止められん~。」


 ヒジリも何かを言っているが、意識を警戒に大幅に向けているのでボンヤリとしか意味が分からない。


「うは、マジで敵対存在じゃ無くて良かったって思うわねコレは。うーん?大丈夫かしら?刺客が出て来ても今の黒騎士と対峙したらそれだけで死んじゃわない?ソレ程に出してる殺気?ヤバイわよね?」


 エミコは何やら誰かしらの心配をしている様だが、ソレも今の私は気にしてはいられない。


「いやー、コレは魔石ガッポガッポの予感しか無いんじゃが?めっちゃヤバイ魔物出て来ても今の黒騎士なら無敵っしょ!超デカ魔石ゲットのよかーん!」


 マリエの言葉も今の私には耳に入っては来ない。


(見敵必殺・・・どんな相手であろうが、この子らの命は守ってみせる)


 そう覚悟を決める私は先頭を進み続けた。


 そして。


「うわ・・・マジか。入って直ぐのこんな所でモンスターハウス?殺意高過ぎるでしょ・・・」


 イチカの引いた声音が耳に響いて私はより一層に魔力出力を上げた。

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