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第67話

「で、この状況は何なんですか!」


 私は叫んだ。だってホテルを出ていきなりカーチェイスになると誰が思うか。


 しかも運転は協会長で。私はてっきり付き人が居ると思っていた。運転手くらい居ると思っていた。


「あちらさん拳銃持ってますよ!しかも撃って来てるんっすけど!?協会長!言ってた事と全く違うじゃないですか!どう責任取る気です!?」


「動きが早過ぎる・・・協会内に裏切り者が居るんでしょうね。もしくはダンジョン庁かしら?まあ、この車は全部が防弾仕様だから安心して。」


「何でそんな特殊車両で来てんすか!?用意周到?解ってた!?絶対にソレ!分かってやってるんでしょ!協会長が「私が同行していれば襲撃される可能性はかなり低い」って言っていましたよね!?嘘じゃん!協会長!アンタ一人で来てるってオカシイを通り過ぎてるんですよ!自分を囮に敵を誘き出す心算だったんだ!騙したんですね!?私等を!と言うか何してくれちゃってんですか!?アンタ自分が何者か!自身の立場とか分かってんのか!協会長って命張った現場に来ちゃダメでしょう!そうじゃないでしょう!そもそもに自身の命を囮に使う輩が組織の一番上の役職やってるとかマジで無い!狂気の沙汰でしかない!」


「ちょっと黙っていた方が良いわよ。運転荒れるから。舌噛まない様に注意しなさい。」


 ダンジョンに潜って魔物と戦うのはまだ良い。魔物に殺されるかも、と言う事は想定してた。当然だ。


 ふざけたノリで四人で小遣い稼ぎしていた頃でだって、そのくらいの事は覚悟を決めていた。


 だけど、こんな「人と人が殺し合う醜い争い」などと言った事を私は許可しちゃいない、受け入れていない。


 だから協会長には文句を付ける。舌を噛まない様にと言われるだけの荒い運転中なので今は心の中で。


(この!協会長は何でこんなぶっ飛んだ事しやがったんだ?自身で直接動くって、黒騎士の存在はそれだけヤバイ山って事じゃん!想定していた状況の斜め上とかじゃ無い!真上にぶっ飛んでるよこんなの!こうなるって最初っから分かってりゃ無理にでも契約を断ってたってば!)


 私はしっかりと毒吐く、ソレを協会長にも後でぶつける為に。


 協会長の暗殺、ついでに同行者の私たちも襲撃者共は殺す心算なのだ。それとこの分だと黒騎士の始末も視野に入れているはずだ。


 過激派とか言う生温い物じゃ無い。コレはテロだ。どんな犠牲が出ようとも向こうは目的の達成の為には手段も被害も関係無いのだ。


 こんな所で死にたくはないし、死ぬ気も無ければ殺されてヤル気も無い。


 だけどそんな気持ちでいる私の事など御構い無し。ここでまたしてもシリアスぶち壊しな三人が。


「うひょー!?アクション映画ばりのカーチェイスぅ!イケイケゴーゴー!」

「これ、特別手当とか出るのかしら?ダンジョン庁に正式に抗議と慰謝料請求を申請するべきかしら?」

「待って待って!酔う!朝食べた物が全部出ちゃう!」


 この車には全員スシ詰め状態だ。私は車には詳しく無いのだけれども、デカい4wd?で。


(最初は何でこんな車で迎えに来たんだって疑問だった。しかも協会長一人でとかあり得ないって。でも、そこで気づいておくべきだったんだ。でも・・・こんなの初めから気付いておけ何て土台無理に決まってんでしょうが!)


 ソレに全員乗れとの協会長の指示をその時に拒否できる訳が無い。


 車に乗り込む時にはヒジリが黒騎士の隣に座って「きゃー!密着みっちゃくぅ~!」とか言って黒騎士に抱き着いて喜んでた始末だ。


 そんな回想シーンで私が現実逃避していたそこで、黒騎士が動き始めたのが視界に入り嫌な予感に晒される。


「・・・ちょ!何してんのアンタ!?勝手な真似すんなっての!こら!どうする気だ!?」


 私はパニックになりかけた。だってその黒騎士の行動が余りにもアレで、ソレだったから。


 嫌な予感は的中。ドアを開けて一人?一体?アンデッドはどちらを単位にして数えれば良いのか?


 そんな下らないどうでも良い事が思考を掠めている間に、黒騎士が外に飛び出したのだから。


 そしてソレを追って私が視線を後部の窓へと向ければ、そこには綺麗に着地している黒騎士が目に入り。そして。


 剣を抜き、一閃。縦に。まだ襲撃して来た車とは相当な距離が開いていたのに。剣など届くはずが無いのに。


 しかし私たちを追って来ていた、襲撃を仕掛けて来ていた車が正面から真っ二つ。真ん中から、綺麗に。


 二つに分かれた車はバランスを崩してガッシャンドッシャンドッカーン、と地面を転がり、ガードレールにぶつかりと派手にぶっ飛んで。


 私は思わず心の中で叫ぶしか無かった。その光景に。


(何処の斬鉄剣の使い手だよ!お前は石川ゴ◯モンか!何処の神出鬼没の大泥棒の仲間だよ!)


「おー、かっこいー。アンちゃん、つまらぬものをきってるなー。」


 ヒジリが私が我慢して口にしなかった言葉を吐いた所で協会長が車を急停止した。そして忠告を飛ばしてくる。


「車の外には出ないで!早くドアを閉めて!黒騎士を回収後は直ぐにまた走り出すわ!相手がまだあれでも意識があれば撃って来るかもしれない。危険よ。」


 車をバックさせて黒騎士の居る所まで下がらせる協会長。しかしそこに不穏な事を口にする馬鹿が。


「それ、フラグじゃね?」


「それを言うんじゃ無いってのマリエ!思ってても口に出すんじゃねぇ!ああもうツッコミさせんなこんな下らん事でぇ!何でそこまで危機感無いんだよあんた等三人はさぁぁぁぁ!今の私たちの置かれてる状況はマジもんなんだぞ!?分かれよ!空気読めよ!つかエミコ!お前も冷静過ぎるんだよぉ!恐怖とか感じて無いんかい!」


 私は喚く。だってこんな襲撃を掛けて来る巨大暴力組織が私等を、と言うか、多分、本命は協会長、或いは黒騎士を狙っているのだ。そんなのに巻き込まれれば私たちみたいな小娘一捻りで殺される。


 そんな状況で冷静になれる訳も無い。訳が無い。文句の十や二十を悲鳴を上げる様に叫んだって良い。コレが普通だ。だけど。


「イチカうるさいよー。そんな大声出さなくても聞こえるってばー。何があってもアンちゃんが守ってくれるから大丈夫だよぉ。もうちょっとおちつこ?ホラホラ、あれ見てみ?アンちゃんカッコ良過ぎひん?」


 ヒジリが何事も無いとばかりに指差すのでそちらを見れば、黒騎士がまだ剣を振るっていた。


 しかもその後には何と黒騎士の足元、その地面にチャリンチャリンカチャリンと、小さい金属片が落ちているのが目に入って。


「・・・有り得ないでしょ・・・」


 それは自身に飛来する拳銃の弾を斬って、そして同時にその威力を減衰させて地に落とすと言う「ふざけんなぁぁぁ!?有り得るかぁぁぁぁ!?」と叫びたくなる光景で。


「あー、アレは「神業を超えた何か」としか言い様が無いわね。これってまさかとは言わず、黒騎士を討てる人物ってこの世に存在しないんじゃない?軍隊で相手にしても無理くね?」


 エミコがそんな分析をするのを私は唖然としながら聞くしか無かった。

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