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第63話

 慌てているイチカの態度を見て私は何が悪かったのかと、書いた文章をもう一度読み返す。


 ヒジリがどうやら読めたし、発音も私に聞き取れたから間違ってはいないと思うのだが。


(意味もこの分だと通っている。では何をイチカは驚き慌てているんだ?・・・ああ、言語理解と習得が早過ぎると。いや、それだけでは無い様子だが・・・はて、どう言う事だ?)


 イチカがブツブツと難しい顔で呟いている言葉は私の耳には入って来ず。


「ねえイチカ?何でそんなに変顔してるの?あ、アンちゃんを笑わそうとしてる?めっちゃオモロイ顔になってるよ?私もやろっかな!」


 むへー、と言った感じの顔になってヒジリが私の方に向く。コレが何をしているのかが私にはサッパリ分からず。


「うへー、滑ったぁ~。もう!イチカのせいだぞ!アンちゃんが笑ってくれれば大成功だったのに!・・・んむぅ?ねえ、イチカ、どしたん?本気でさっきから変だよ?」


 ヒジリが何時まで経っても様子がおかしいままのイチカを心配しているのだが。


「・・・ねえ、ヒジリ、この事は先ず誰にも言わず黙っていて。このメモは私が預かって置く。これ、隠しておくべき案件だと、私は思う。しかもかなりヤバイ代物だ。核爆弾級。もしこの件を軽い気持ちで喋って周囲に広める何て事すれば、最悪私たち、社会的に殺される可能性ある。」


「・・・はぁ?何言っちゃってるのイチカ?アンちゃんはそんな厄ネタじゃ無いっしょ。失礼失礼、アンちゃんに失礼過ぎるっしょ。あやまって、アンちゃんに。」


「いや、マジだよ。ふざけて言ってる訳でも、冗談で言ってる訳でも無い。ヒジリ、空気読め。」


「・・・」


「おい、アンデッドナイト、あー、もう長いから「黒騎士」って呼ぶわ今度から。それで、あんた、自己紹介は今後するな。誰にも。言葉が解っても良い。意思を伝えるのも良い。けど、自分の出所とか身分とかは伝えるな。良いな?アンタの為でもある。これは、私たちは見なかった、聞かなかった事にする。文字を書けるのも、なるべくなら周囲に知らせない方が良いわね。」


 真剣な顔でそうイチカに言われてしまう。どうやら深刻な国際問題に発展するので自身の出自はこれ以上は文字にするなと言う事らしい。


 私は自分の名を教えたのだが、それすらも使われずに「黒騎士」などと言った呼び方をして来たのがその深刻さを現わしているのだろう。


(なるほど、確かに私は全身が有り得ない程に黒い。着ている鎧も剣も黒くなってしまったからな。骨も真っ黒、有り得ん。まあ、どうしてそうなったのか全く分からんが。解からん方が良い事は世の中には大量にあると言う事か)


 政治的に見ても私と言う存在は在ってはならないと言う事であろう。


 そりゃアンデッドなどと言う存在を政府が「個人」と認めて交流を図り、ましてやソレを利用しようとしている現実だ。


 曖昧にしておきたい部分はそのままにしておきたいのは深く理解できる。


(そう言ったモノを許せない潔癖な騎士も居たな。大体は貴族出身の、ソレも教育がキッチリかっちりされた頭の固い者たちだったなそう言うのは。融通が利か無い者たちだった。言いくるめるのが一苦労やら二苦労あったな)


 私がちょっとだけそんな昔を思い出した所で、ヒジリがムスッとした顔でイチカの言う事を納得した様子で首を縦に振った。


「分かったよ。アンちゃんの事は触れない様にする。何か確かにさっきの文章を改めて思い出すと勘が「ヤバイ」ってジワジワしてる。でも、アンちゃんにこうやってスキンシップするのはオッケーっしょ?」


 ヒジリが私に抱き着いて来る。まあ、別にソレは私としては今更どうとも思わないので構わないのだが。


 イチカはコレに呆れ顔になっている。それは私も気持ちは解る。


「好い加減にしろって言っても、あんたは止め無いんでしょ?なら、良いわ。黒騎士も拒絶して無いし、勝手にしな。だけど明日からは気合入れてね?恐らく黒騎士と一緒にダンジョンに入らされて変動の調査やらされるからさ。」


「えー?マジ?でもアンちゃんと一緒なら何処でも良いよー。魔物が出て来てもアンちゃんがぜーんぶ倒してくれるもんね!カッコイイ!アンちゃん最高!」


「・・・感性が本気で理解できんわ。ヒジリの頭の中はどうなってるの?まあ良いわ。「勘」の方はどう?アンタのそれって大抵は当たるからね。そう言う部分だけは信用してる。」


 そんなヒジリとイチカの会話に割り込んで来たのは。


「えー?大丈夫じゃね?だって変動から脱出できたじゃん?しかも魔石もガッポガッポ。大儲け~。お金持ちになったし、買いたい物たくさん!うひょひょー!ってね!」


 マリエだった。どうやらあの青い光る石の換金に関しての事だろう。どうやら換金率が高いみたいで。


「どうやら調査に同行して得られた魔石は私等の物にして良いらしいし、だったら明日は稼ぎ時ね。将来の為にもここでドカンと大金を得ておきたいなーってね。政府の後ろ盾があるって最高じゃ無い?」


 エミコも参戦してまたワチャワチャとした空気にこの場が変わった。

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