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第57話

 そうして私はこの四人との行動を強制されたと言っても過言では無い。


「今日泊まるのは物凄くおっ高いホテルだよー!楽しみだねーアンちゃん!」

「長官ってば太っ腹過ぎるわね。でも、その拒否権が私たちに無いのが、如何ともしがたいわ。でも、借りが出来たとは思えないのが、まあ、相手が相当に金持ってるからだし、政府からの正式な要請だからって所があるわよね。後ろめたさを全く感じないわ。エグイ。」

「ねえねえ!ここのホテルの夕食バイキングすっごい有名なんだよ!何時か行ってみたいと思ってたんだ!ヒュー!長官ってば最高だぜ!」


「・・・もう後には引けない。自棄食いするか?でも、ソレをした所で絶対に後で後悔しか、し無いんだよね・・・ははハ・・・貸し切りって、どう言う事ヨ?やり過ぎでしょ・・・何?夢見てるの私?それとも、壮大なドッキリ?ありえへん・・・」


 私はこの四人と、その他十五名以上の数に監視されてこの「町」を歩いている。大きなマントを頭からすっぽりと被せられながら。


 まるで犯人の護送だ。しかしマントの隙間から私の視界は周囲へと向けられている。


(凄まじい光景だ・・・何と言う事だろうか?一つ一つの建物が王城、いや、それ以上の建築技術で建てられているのだろうな。ソレに、道のこの舗装があって、この様な高速で走る乗り物が町中を縦横無尽に移動できているのか)


 私たちのこの異様な状態に視線を向けて来る国民だろう者たちの着ている服も種類が豊富で洗練されている。


 その質も王家の方々が着ていた服に対して遜色無しに私の目には映る。


 何やらどの者たちも奇妙な手の中に納まる大きさの魔道具を持っていて、その普及具合は持っていない者は居ないと言う程。


(一般人が魔道具などと言った高級な道具を誰もが使用できる国か・・・祖国と比べたら雲泥の差だ。敵わん。何もかもが、敵わん)


 自分の生きていた国と比べてしまう。そして、何もかもが、生きる世界が違うと。


 私は自分の知る世界が如何に小さい、小さ過ぎる、小石以下の物であったのかを知る。そんな感想が出てくる。


 そしてその後はどうやら一旦の目的地に着いた様なのだが、そこには大きな車輪の付いたのであろう鉄の箱があり、ソレに入る様にと促された。


 私はコレに拒否する態度を出さずに流れに身を任せて乗り込む。


(これはそこら中を高速で走行していた乗り物か。私を何処かに連れて行こうと言うのか?・・・罠、では無いか。そんなもの、今更だな。もしそれが罠であったとしても、その時にはその時、何があろうとも受け入れよう)


 もしかしたら私を油断させての拉致、その後に辿り着いた場所で私への処刑と言った罠を思いついた。


 しかしソレも溜息一つで呑み込む。こちらを消滅させる準備万端の場所にこのまま、まんまと連行されても私はソレを受け入れる気になっていた。


 アンデッド、もはやこの事実は覆せるモノじゃ無い。


 今の私は生者であれば誰しもが恐れ敬遠する存在なのだ。そう言った措置を取ろうと思わない方がオカシイと。


(うん、コレは貴重な体験だ。馬よりも早いのではないか?揺れも無い。快適と言って良い。王族の乗る馬車など比べ物にならん。打ちひしがれるしか無いな)


 この鉄の箱が走り出せば私の心はもう「どうにでも成れ」になっていた。余りにも文化が、生活水準が、技術力が違い過ぎる事にもう正直に言って私の心は負けを認めていた。


 その後に到着した場所にも驚かされる。これ以上は無いと思っていたのに。


(何だ?この巨大建築は?城?いや、ここに来るまでの建築を見て来て、どれもこれもが我が国の自慢の城と同等かそれ以上と言えるモノばかりだった。ここはソレに相まって気品が付いている。この様な所に連れて来て、何か?この国の王にでも会わせようと?私を?アンデッドを謁見させる?・・・は?)


 馬鹿な、としか思えなかった。この先に何が待ち受けているのかと身構えて、そして大いに混乱させられる。


 しかし鉄の箱から降りる様にと扉が開く。私は唖然とさせられて素直にソレに従って流れに身を任せるしか無かった。


 そんな私に直ぐに側に寄って来て腕に抱き着いて来るヒジリ。


「わッはー!凄いホテル!何なの此処!外見からしてめっちゃキレーなんすけど!凄すぎなんですけど!アンちゃんヤバくね?テンション上がるー!」


 どうやら興奮している。上機嫌なのはこれまでにずっとそうだったのだが、今はソレに輪を掛けてぴょんぴょんと跳ね上がって喜びを表現している姿が微笑ましい。


(私の内心が気が気で無いのは、察しては貰えんのは当たり前か。気合を入れんとな)


 こちとら顔は骸骨だ。その表情を察して貰えないのは当然の帰結である。


 アンデッドである私の表情を確実な精度で読み取れる者など居はしないだろう。


 そんなやり取りをしていたらヒジリに腕を引かれてその建物の方に引っ張られる。


 何故こうも気楽に居られるのかが私には分からない。これから王との謁見では無いのか?と。


 だがこの考えはどうにも、何だか的外れな様子がじわじわと広がっていて。


「あーあ、着いちゃったわね。じゃあ、もう満喫しますか。折角だしね。今が我が人生の絶頂期、なーんて思って無いとやってられないわ。」

「部屋って超絶スイートルームでしょ?ヤバみ凄くね?ちょっと今更ながらにブルって来ちゃった・・・どうしよ、イチカぁ・・・」


「何でマリエは今更ながらにビビッてんのよ・・・遅いわよ。テンション急激に下がるタイミングがいつも分かんないわあんたの場合。大体いつも突然に冷静になって現実を見るわよね。エミコみたいに何時も平静を保って・・・って、エミコもエミコで常時あんなテンションで居られるのも呆れるけどもさ・・・」


 警備の兵も、メイドやら執事などが一切この場に居ない事で私はここがやっと王城では無い事を悟った。

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