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第56話

 四人娘の同行を拒否したのだが、しかしどうにも妙な流れになっている。


(また動く絵か。・・・翌日になってからダンジョンに入れと?何故だ?その説明もこの後に流れるのか?)


 私はまず落ち着く為にと、そう思って動く絵を流し続ける魔道具を見続けていた。


 すると四人娘が食事をして睡眠をとって翌朝に起きる絵が出て来た事に確信を持つ。


(ふむ、この男はどうやら無理やりに彼女らを私に付ける気なのだな)


 これを無視してダンジョンへと別に入ってしまっても良い。私は昼夜関係無く動く事が出来るアンデッドだ。


 体力の事など気にせずに行動できる。食事、睡眠不要で活動し続ける事が可能なのだ。


 しかしその場合、私への追跡をこの男は四人娘にさせるに違いない。


 するとどうだ。そもそもにダンジョンから出てくるまでに遭遇した危険な魔物たちとの戦闘が考えられてしまう。


 それらは四人娘たちだけでは荷が重い物ばかりだった。


(その様な危ない目に遭わせてしまうと分かっていて無視など、選べる選択肢では無いな。この男、やってくれる)


 こちらの意思など関係無くこの男は私に監視を付ける気だったのだと今更に気づいた。迂闊だった。


 友好関係を築ければソレは幸いだと思い込んでいた。それは少々間違いであり、ある意味では間違いでは無かった。


 忘れていた記憶が蘇って来る。それは私が黒鋼騎士団の団長をしていた際、友好的な態度でコチラへと接して来ていた貴族出身の「赤熱騎士団」の団長の事だ。


(敵対していた訳じゃ無かった。無視されていた訳でも無い。ただ、私の事を油断させる為に友好的な態度をしていただけ。その裏では「監視」をしていた、こちらの動向を「上」に報告していた)


 最初の頃は嬉しいものだった。平民出の私に貴族出身の他団の団長が話しかけて来てくれる事に。彼だけは私を認めてくれていたのだと。


 しかしそんな気持ちも直ぐに冷めてしまう出来事に遭遇して悩まされたものだ。


(偶然にも密告現場に遭遇してしまったのは何の呪いなのだろうな。見聞きしてしまった、相手の正体を知ってしまった事を悟られぬ様にいつもと同じ通りに接するのが難儀だったな)


 それは結局の所は相手にバレていたのか、バレていなかったのか。


 どっちにしろ私がこの様な身になるまでその関係は崩れずにいたのは幸いだったのか、そうで無かったのか。


 もし私が赤熱騎士団の団長に事実を知った事で詰め寄っていたのならば、私はこんなアンデッドの身にならずに済んだのだろうか?


(そんな過ぎた事は考えてもどうしようも無い事だ。こうなってしまったからには、ソレが全てか)


 食事をし終わった四人娘が休憩をしている姿を横目で見る。


 どうやら私は彼女らとダンジョンに潜らねばならなくなってしまった。


(最深部を目指してダンジョンを攻略する、と言うのは出来なくなってしまったか。まあ、それは良いだろう)


 しかし困っている者、助けを求めている者、危機に瀕している者らに助けの手を差し出すと言う事は譲れない。


 どうせこの身は一度は死んだ身だ。そう言った救いを求める相手の為にこの命を捨てるのは構わない。


(そう簡単にやられてやる心算も無いがな。ふむ、そうだな。また「龍」と戦う時が来たら、その時が命の使い所か)


 黒龍に殺された身だ。いや、相打ちだろうか?その果てに今の自分がある。


 しかしこの身がアンデッドとなってこうして意思を持って動けているのは生きていると言えるのか、そうで無いのか。


 死んでいるのに命があるとは、これ如何に、である。


 そんな下らない事を考えていたら私に一番なついて来ていた娘が正面に来てこちらの顔をジッと見つめて来た。


 そして私と目線を合わせると自身を指差して。


「ヒジリ」


 次には私を指差して。


「アンちゃん」


 また自身を指差して「ヒジリ」と繰り返して来たので直ぐに察した。


(自らの名前、か?ヒュージリ?いや、もっとこう、ヒジュリ?もう少しサッパリと・・・ヒ、ジリ?そうか。で、何で私の事は「アンチュエン?」どうしてそうなった?)


 その後は他の三人の娘をそれぞれ「イチカ」「エミコ」「マリエ」と順に指差してソレを三周ほどさせて私へと名前の周知をして来る。


「マリエ」と言う名の娘はどうやら食事を摂って満腹になって眠気に襲われ負けたのだろう。机に突っ伏して眠ってしまっている。


 どうやらヒジリと名乗る娘は「これから長い事一緒にやって行くから自己紹介」と言う心算らしい。


(今更に名前を教え合うなどとなるのは、どうなんだろうか?と言うか、私はどうせ口を開いても彼女らの名前を呼んではやれ無いんだがな)


 私が口を開いても呻くだけしかできない。こちらの言語もまだまだ分からない。


 しかしそれで良いのだろう。交流すると言う点で見れば今更ながらの大きな一歩だ。


 彼女らとは短い付き合いでしかないが、妙な情が移ってしまったらしい。


(放っては行けないな。はてさて、やれやれ。この先どのくらい一緒に居る事になるのやら)


 仕方無い、そんな気持ちで私は溜息を小さく一つ吐く。


 交渉した相手の男の思惑にキッチリ嵌められた事に対しては少々の思う所があったが、しかしこれも何かの縁かと四人娘が付いて来る事を私は呑み込んだ。

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