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第52話

 無事に帰還出来た事を喜ぶべきなのだろう。彼女ら四人も何らの影響、怪我も無く済んだ。


 まあ、この様に突然に囲まれたりしなければの話だが。


(アンデッドなのを忘れていた訳では無い。油断もしていなかった。これは想定内だな)


 武装した五名がダンジョンから出て来た私たちを包囲している。しかも武器を抜いて今すぐにでも動ける様にして。


 挙句にこちらを誘導する様に圧力を掛けながらじりじりと迫って来ている。


 無言で「移動しろ」と言われている事を直ぐに私は理解できたが。


「うえーん、何この人たちぃ。何かヤバさがマジみなんですけどー。アンちゃん案件ん~?」

「これ、従った方が良いみたい。迂闊に勝手な事しない方が良いっぽいわね。」

「えー、お腹空いたー。なになに~?任意同行~?事情聴取~?ならソースカツ丼食わせてけろ~。」


「・・・マリエ、まだ言うのかこんな時にもなって・・・ああ、うん、もう言葉も無いわよ。」


 どうやら私だけでは無くこの四人娘も同行しろと言った様子なのが伝わって来る。


(この武装、気の張り方、中々に出来るな。別に素直に従ってやる必要も無いが、事を荒立てる必要も感じないか。何処かの組織に従事している?装備の均一化が見られるな。なら、連れていかれる場所と言うのは・・・)


 私は観察を一瞬で終える。そして気づいた事と言えば、連れていかれるのは恐らくはこの者たちの上司の前、と言う事になる。


 このまま戦闘に入ると言った事にはなるまいと思い、私は素直にこの武装して構える五名の圧力をかける方向に向かって歩く。


 相手の意を読み取るのは今の場合、別に難しい事では無い。修羅場を重ねて来た数が違う。


 相手は無言ではあるが、解り易く意識を向けて来てくれているのでソレに従う事など造作も無い。


 これが戦闘となっていたら、寧ろ読み易過ぎるその意識の発露は致命的となるのだが。


(話し合い、の前の威圧と言った所か。向こうの意をこちらに受け入れさせる為の事前の脅し。まあこの程度であるならば私には通用しないが本来ならば。しかし、今の場合は・・・)


 この四人娘の安全を考えると抵抗はしない方が良いのは一目瞭然だ。


 ここで私が少しでも敵意を出せば彼女らも「同罪」と見做されて攻撃を向けられてしまう可能性が否定できない。


 そこは避けるべき展開だ。私の「アンデッド」などと言う事情にこの四人娘が巻き込まれるなどと言った事は望んじゃいない。


(このやり方はどうにも性悪貴族のやり口を思い出させるな。僅かだが、不快だ。とは言え、ソレを私が言える立場に無いな。アンデッドなのだから)


 警戒を怠る事など相手側に出来るハズが無い。私だって相手の立場になったら同じ事をするだろうから。


 人類の明確な敵、嫌悪の対象、排除すべき存在、そう言った拒否拒絶な代物なのだ、アンデッドなど。


 私だってこんな身になってはいるが、その考え方は持っている。正当な理由だ、この様な扱いを受けるのは。何も間違ってはいないこの対処の仕方は。


(しかしこの四人娘たちにまでソレを押し付けないでやって欲しい所だ。せめて私と引き離して別々にするべき所では無いのか?)


 間違ってはいないとは言え、少々の疑惑も感じる。私たちを何故一纏めで連行するのかと。


 ソレにアンデッドなど即座に消滅させるべき相手であろうはずなのに、この対応は余りにも甘いと感じざるを得ない。


(とは言え、どうやら私の事を特別と向こうが思ってくれていると言う証拠でもある。有難いやら、どう受け止めて良いやら)


 相手が私と交流をしたいと考えてくれている、そう受け止める事も出来る。


 ならばどうやってこちらの意を相手に伝えるかと言った事になるのだが。


 そんな考えを相手側が打ち破って来た。


「やあ、君が件の「黒騎士」か。・・・君を議会場に連れて行って老害どもの腰を砕いてやりたいな。」


 連れて来られたのは以前にも入ったあの部屋だった。


 そこには二人の男性と、以前にも対面した少女が居るだけ。


 どうにも護衛と言った者たちを配すると言った気は無いらしく、私の方に近づいて来たその男が軽く手を振る。


 ソレに合わせて私たちをここまで案内して来ていた者たちがサッと離れて行って部屋を出て行った。


「あー、私この人の事、見た事あるんですけどー。何か、政府の偉い人?ニュースでチラッと特集されてたっけなー。」

「ダンジョン庁の長官ね。一番偉い人が何の用でここに居るのかしら?・・・あ、ダンジョン変動で?自身で即座にここに赴いて来たって事?・・・それは、凄いわね。」

「あれー?ごはんはー?もうマジ無理なんですけどー。だる~。」


「マリエ、あんたここまで来てまで、まだソレを言うの・・・しかも政府の、お偉いさんの前で・・・しかも協会長も一緒なのに・・・」


 この部屋の中でウンザリと言った様子を見せるのは二人。どうにも一人は空腹で、もう一人は緊張感が無い事を咎めている様子。


(まあ仕方が無い。ずっと歩き詰めだったからな。アンデッドの私は腹も空かん)


「食事を直ぐに用意させよう。食べながらの話し合いとしようじゃ無いか。すまないが、協会長、よろしく頼む。」


「はい、分かりました。直ぐに手配します。」


「ソースカツ丼んん・・・」


「・・・揚げ物は用意するのは時間が掛かりますよ?ソレでも良いなら調理担当に頼んできますが。」


「さっすが協会長!」


「マリエ、あんた・・・もう私は何もツッコめ無いわよ流石に・・・」


 彼らの会話の内容がサッパリだったのだが、どうにも緩い空気になった事を私は察した。


 これに警戒心を私は大幅に下げたのだった。

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