表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/55

第51話

 私はダンジョン庁、長官をしている者だ。


 この度は新宿支部にて大規模なダンジョン変動が起きたと言う事で現地に足を運んでいる。


 詳しい状況などを直に聞く為だ。まあこれ程にフットワーク軽いのは他の庁の長官に苦言を言われていたりする。


(クソ爺の頭の固まった害悪どもには分からんだろうな。ダンジョンの脅威など甘く見ているんだから)


 やれ担当官を派遣すれば良いだの、一番上の立場の者が浮足立ってあっちにこっちにと直接に飛んで行くとは情けないだの、どっしりと腰を据えて机の前で報告を聞くだけで良いはずだなどと。


(そんな事をしていれば間に合わなくなるのがダンジョンだ。最悪の場合など想定をしていないんだろうよ。報告官など待ってはいられないし、指示を出すにしても時間差が起きてしまう。それは、それでは致命傷なんだ、この国には)


 新宿支部は駅の側の立地。ここで何か、それこそ魔物の氾濫など起きれば堪ったモノでは無い。


 被害がどれ程になるか等を想像したくもない惨状となるのが、老害どもは理解できていない。


 冒険者たちの事などダンジョンの「掃除屋」としか認識していない節もある。


 命を賭けて大金を得ている野蛮な者たち、とか陰で言っている。トンだ阿呆だ。


 クソな議員たちを着の身着のままでダンジョンの奥地に置いてけ堀にしてやりたい気分に駆られる。


(しかもアンデッド、それも騎士級が現れた?突然?ソレを良く今までこちらに隠し通していたモノだ。まあ、気持ちは解る。分ってしまう。あの老害どもにゴチャゴチャと五月蠅い事を言われたくは無かったんだろうし、研究者共も危険など顧みずに研究させろと迫っていただろうからなぁ)


 解ってしまってはいけないのだろうが、解ってしまう気持ちが。


 私も協会長の立場なら同じ事をしてしまう可能性が高いと感じるから。


「長官、お越しいただきありがとうございます。つきましては今回の問題に関してなのですが。」


「ああ、みなまで言わずとも良いです。理解しています。頭の痛くなる問題です。共に考えて対応していきましょう。」


「・・・はぁ、有難うございます。長官が貴方で良かったですよ、本当に。他の誰かではこうはいかない。絶対に。」


「頭でっかちの偏屈な若い議員が間違った正義感でダンジョンに踏み込んでは欲しく無いですからね私も。この椅子は暫くは誰にも譲らないので安心してください。で、状況は?」


 この後は暫くの間、調査隊の編成、調査委員会の発足、救助隊のバックアップ体制の構築などなど。


 取り合えずは最低限の事を決めて即座に実行に移した。


 最早この新宿支部は戦場とそう変わらぬ現場と化している。


「回復薬の数は足りているか?」

「怪我人収容場所は確保しましたけど、葬儀屋も呼んでおきます?」

「それは後回しで良い。それよりもダンジョン内の変動に関しての事情聴取の部屋の確保もしておいてくれ。」

「武器防具の点検とマップアプリのダウンロードは済んでいるか?緊急用の心肺蘇生装置も持って行けよー!」

「精神科の医者も呼んでおけ。トラウマ抱えちまった奴等が出てる可能性もある。」

「すみませーん!報道記者会見の会場のセッティングはどなたの担当ですかー?」

「あー、ハイエナ共がもう嗅ぎ付けて来たか?なら余ってる冒険者を引っ張って来て牽制させておいてくれ。」

「軽食の用意もしておいてくれると有難い。誰か調理の得意なヤツいないか?」

「救助者三名!怪我無し!意識もはっきりしてる!誰か付き添いアリで!事情聴取と報告書の作成お願いしまーす!担当官誰っすかー!」

「おーい!こっちは自力で脱出して来たってよ!はい、案内するからコッチに来てくれ。」

「なあ?十階層から帰還用アイテム使って帰って来た。これって協会が保証してくれね?高かったんだよ・・・」

「私が引き継ぎます。ハイハイそちらの手続きはあちらで。先ずは無事の帰還、おかえりなさい。今回の問題では協会が何割かは保証金出しますから安心してください。」

「救助者二名追加!こっちは軽傷!医務室先に連れて行って!」


 私は会議を一旦終えて解決に向かい始める空気を感じながら休憩時間にコーヒーを啜る。


「他の政治家共だったらこうもスピーディーにはいかなかっただろうと自負していますよ。協会長はどうです?」


「貴方で本当に良かったですね。もし別の方であれば、恐らくは丸一日、いや、それ以上遅い。」


「高い評価を貰えて嬉しいですね。それで、今日中に・・・アンデッドナイトに私は対面出来そうですか?」


「いきなりブッ込んできましたね・・・それは私の口からは何とも言え無いですよ。」


 協会長は苦い顔をするが、そこに私は遠慮をしない。


 酔狂が過ぎるなどと、私のこの発言を他の議員、政治家共が聞けば気が狂ったのかと言われてしまうだろう。


 だが、コレは絶対にやっておかねばならない事だ。


 魔物が恐くてどうしてダンジョン庁長官などやっていられようか?


 それこそ正しく現場を知らずして出来ない仕事だ、ダンジョン何て。


 世界情勢とか、外交とか、そう言った話とは訳が違う。次元が違う。


 今でこそダンジョンが世界中に現れ、蔓延り、安定し、余計で無駄な争いが人類から一つ減ったとは言え。


(愚かさを人が克服できた訳じゃ無い。自分たちは賢者などでは無く、何処までも極めて愚者である事を自覚していない者が多過ぎる)


 今集まっているアンデッドナイトの情報を頭の中で改めて整理した私は覚悟を決めてその時が来るのを仕事を熟しつつ待つ事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ